AWC トゥウィンズ・1 七章 (2/3) (21/34)


        
#893/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/ 9  20:19  ( 99)
トゥウィンズ・1 七章  (2/3)  (21/34)
★内容
 悪魔が再び稲妻を落としてくる。その稲妻は、僕の体の表面を覆っている青い
光の上に覆いかぶさり、全体を包み込んだ。
「いてっ!」
 また左手が痛んだ。でも、今度は楯を離さずに済んだ。
 僕の体の表面を覆っている青い光の、さらにその表面を包み込んでいた稲妻は、
ゆっくりと僕の右腕の上に流れていって凝縮した。僕は左手の痛みをこらえなが
ら、右腕を少しづつ持ち上げて、悪魔の方に向けた。
「てえっ!」
 掛け声と共に、右腕に軽く力を加えると、右腕に集まっていた稲妻の塊は剣先
に集まって、そのまま悪魔に向かって飛び出した。
「ぐわっ!」
 悪魔は自分の攻撃が自分に返ってくるなど予想もしていなかったのだろう。か
なり驚いたらしい。
「ええいっ! 火よ、飛べ!」
 悪魔が何やら攻撃をしかけてきた。指先から光が飛ぶ。それを楯で防ぐと、そ
れは反射して悪魔自身に返り、悪魔の体に火が付いた。
「うわっちっちっ! み、水よ、降れ!」
 慌てて、自分の体に水をかける。そのユーモラスな動きに、思わず笑みがもれ
る。
 ふっと笑ったあと、また、こちらから攻撃をしかける。剣を悪魔に向けて突く
と、剣先から、光の玉が飛び出す。悪魔は慌てて、それを避けようとしたが完全
には避けきれず、光の玉がかすった場所で、バシッていう音がして、悪魔の体が
ふっ飛んだ。
 悪魔は床に叩きつけられて、しばらくはふらふらしたようだが、もう一度立ち
上がってくると、こんどは、先刻、康司が持っていた剣を拾って、僕に突いてき
た。
 それを楯で軽く防ぐ。剣が楯に当たった瞬間、光が走って剣が真っ赤に燃え上
がり、そのまま融けてしまった。悪魔は慌てて、融けかけた剣から手を離し、別
の剣を拾う。
 そして、ふらふらになりながらも、指先を僕に向ける。と、僕の体が悪魔に吸
い寄せられる。多分、例によって例のごとく精を吸い取ろうとでもしたんだろう
けど、今はただ単に、僕自身が悪魔に近付いただけだった。
 悪魔は、ただ近付いただけの僕を見ると、自分の回りに黒い空間を作り、その
空間を大きくして僕の周りまで包み込む。悪魔の姿が一瞬暗闇に溶ける。でも、
僕の体から発する青い光と楯から発せられる白い光によって、黒い空間の中に悪
魔の影が映る。
 そして、いきなり攻撃を仕掛けてくる。自分の姿が見えていないと思っていた
らしく、ごく単純に、手にした剣を使って。僕は、悪魔の影の動きで、その攻撃
を楯でかわす。また、悪魔の持っていた剣が真っ赤になって融ける。
 悪魔が焦っているのが、雰囲気で判る。僕は持っていた楯で悪魔を軽く小突い
てみた。
 すると、バシュっていうような音がして、悪魔がひっくり返った。
 悪魔は、すぐに体勢を立て直すと、僕に向かって組み付いてきた。
 いきなり悪魔に組み付かれた僕は、押し倒されて焦り、体の表面を覆っていた
光が消える。
 悪魔は、そのまま力を込めて、僕の体を締め上げる。僕は全く身動きが取れな
くなった。
「くっ……ううう……。」
 締め上げられて肺から出てきた空気が、小さな悲鳴となって口からもれる。そ
して、全く空気を吸うことができない。
 だんだん息苦しくなってきて、顔中がほてり、耳なりが始まる。
 もう駄目か。そう思って目をつぶった時、左手には、まだ楯が握られているの
を思い出し、僕は力を振り絞って左手を動かして、悪魔の体に楯を押し付ける。
 じゅっという鈍い音がして、何かが焼けるような臭いがしてきた。それと共に、
悪魔が悲鳴を上げて僕の体から飛び退く。
 半ば呼吸困難に陥っていた僕は、そこで呼吸ができるようになり、肩で大きく
息をしながら、体勢を立て直そうとしたが、それより早く、悪魔が稲妻を落とし
てきた。
「わあーっ。」
 僕は、したたかに弾き飛ばされて、気を失いかけた。悪魔は再び組み付いてき
て、僕を締め上げようとする。僕は、半ば無意識に楯を使って、これを防ぐ。
 悪魔は、楯を間に挟んだまま僕の体に組み付いてきたため、反動で弾き飛ばさ
れた。
 その隙に、僕は体勢を立て直し、悪魔に対して身構える。体中に力をみなぎら
せると、青白い光が、また体の表面を包み込んでくれた。勿論、左手の薬指を除
いて。
 そして、悪魔が飛びかかってくる。僕は、再び宙に舞い上がり、これをかわす。
 悪魔は、飛びかかった勢いのまま、僕の後ろの方まで行ってしまう。
 僕は、後ろを向いて、背中を見せている悪魔に向かって剣を投げる。
「うわあっ!」
 悪魔は、背中に剣が刺さったまま、のけぞってひっくり返った。同時に、周り
の暗闇が消えて、景色が戻ってくる。
 僕は空中に浮いたまま、ひっくり返っている悪魔の上に移動し、そして、悪魔
の喉元に向けて、剣をまっすぐに突きおろす。と、それは見事に突き刺さった。
「うぐっ。ぐわーっ!」
 悲鳴をあげたあと、悪魔の姿が一瞬縮みあがり、そのあと、大爆発を起こした。
「うわあ!」
 爆発の中、僕の体は青い光に守られて、まだ空中に浮かんでいたんだけど、左
手の薬指だけ、まともに爆発の影響を受けてしまい、思わず悲鳴を上げる。
 そして、悪魔の体が跡形もなくふっ飛んだあと、そこら中が真っ白になった。
「ハアハア……。」
 僕は、まだ大きく肩で息をしながら、力を抜く。と、
「いててて。」
 左薬指の痛みが増してくる。そして、同時に僕を覆っていた光が消え、僕のペ
ンダントも光るのをやめ、僕は不思議な力を失って床に落ちる。左手に持ってい
た楯は、いつの間にか一美のペンダントになっていた。
 そして足元には直径1cm位の玉が転がっている。
 回りの白いふわふわしたものが飛び去ると、あとには健司、康司、一美、そし
てセレナ姫が立っていた。
「ふうー、よかったあ。皆、なんとか戻ったみたいだね。」
 皆の顔を見た途端、一気に緊張が崩れた。ところが……。
「博美、覚悟!」
 健司が近くの剣を手にして、突いてきた。
「うわ! け、健司、一体どうしたんだよ。」
 間一髪。慌てて、その攻撃を避ける。が、
「うるさい! 問答無用じゃ。」
 そう言って、さらに攻撃してくる。

−−−− 続く −−−−




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