AWC トゥウィンズ・1 六章 (2/3) (18/34)


        
#890/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/ 9  20: 7  ( 97)
トゥウィンズ・1 六章  (2/3)  (18/34)
★内容
「でも、なんでそれに博美が関係するんですか?」
「あの方は女神様に恋されたようでしてね。私が先程ちょっと覗いたところでは、
まあ仲よくやっておられたようですけどね。」
「まさか、博美がそんな……。」
「でも、確かにお二人で仲よく楽しそうにお話されていたようですよ。」
 一美と康司は顔を見合わせる。
 だって博美、男の子になんか興味ない筈なのに、なんで?
「あの、博美のところに連れてってもらえませんか?」
「いや、それはちょっと御勘弁願います。そんなことしたら、ディモス様の邪魔
をした罪により首をはねられてしまいます。」
 この時になって、一美と康司は、この城全体の雰囲気がおかしいことに気が付
いた。
「ちょっと康司くん。変よ。博美、探そう。」
「ああ、その方がいいな。今の召使いの言葉が本当なら、博美がどういうつもり
でいるのかも聞きたいしな。」
 だが二人とも、この城は不案内の上、片っ端から扉を開けてみる訳にもいかな
かったので、結局、博美を見つけることはできなかった。

 二、三日後、マース侯の所にプラネット公の所から一通の手紙が届いた。それ
は例の悪魔からのもので、中には、『我が仲間を倒し、その玉を手に入れたもの
全員を一週間以内にこちらに連れて来るように。無視すれば、お前の城も滅ぶこ
とになる。』という意味のことが書いてあった。
 マース侯は慌てて、それを一美達の所に見せにきた。
 でも、一美達は博美を探しているのに誰一人居場所を教えてくれなかったので、
マース侯や城の人間全員を信用できなくなっていた。
「その前に、博美が何処にいるのか教えてもらえません? この文面には、あた
し達全員が必要だて書いてあるし。」
「ええ、それはもう。ただ、もうしばらくお待ち下さいませ。こちらで少し用意
せねばならぬことがありますので。」
 マース侯は、それだけ言うと、どこかにいなくなってしまった。
 康司と一美は、あとに残されたまま、どうしたらいいか判らず、ポカンとして
いた。

 その頃、僕は、ディモスに部屋に監禁されたまま、三日目を迎えていた。でも
何もしないで三日というのは、すごく長く感じる。
「どうですか。三日経ちましたが、まだ気が変わりませんか?」
 ディモスが部屋に入ってくる。
 もう、死ぬほど退屈だったけど、こんな奴に屈服するのだけは嫌なので、そっ
ぽ向いて無視することにした。
「これに懲りて、私の妻になる気はありませんか?」
 ディモスはしつこく聞いてくる。こちらも、さらにしつこく無視をする。と、
ディモスは僕の顔を無理やり自分の方に向けて、
「ほら、どうですか? まだ私の妻になる気はしませんか?」
「冗談じゃない。それに一美達が捜し出してくれるだろうしね。」
 こう言い捨てて、プイッとあさっての方を向く。
「おや、それは残念ですね。でも念のために申し添えておきますけど、あの二人
には、この部屋を探しだせませんよ。あ、そうそう、こういう手紙が来ておりま
す。」
 そう言って、プラネット公の所から来た手紙を見せる。僕は、それをひったく
って読む。
「だけど、これだと僕も行かないといけないんだろ? このままだと、この城も
悪魔に滅ぼされることになるんだし。」
「ええ、そういうことになりますね。ですから、そうなる前に、早く私の妻にな
るよう忠告しに来たんですよ。そうしないと、あなた自身も死ぬことになります
からね。」
「はん、それは結構。どうぞ、御自由に滅ぼされて下さい。僕は、あんたと結婚
させられるくらいなら死んだ方がましだからね。」
 また、そっぽ向いて答える。
「死ぬなんて、勿体ないことを。それにね、それじゃ私が困るんですよ。」
「どうぞどうぞ、いくらでも困って下さい。お宅がいくら困ろうと僕には全然関
係ないんだし。」
「やれやれ、困ったお姫様だ。」
 ディモスは、そう言ってため息をつくと、僕の前に立って、おもむろに腕を掴
んだ。
「では仕方がない。こうするより他にないようですね。」
 そう言ってディモスは、おもむろに立ち上がると、いきなり僕の体を抱きすく
めた。
 次の瞬間には、僕も我に返って、ディモスを引き離そうとしたんだけど、ちょ
っと遅かった。
 ディモスの手に握られた布切れが、僕の鼻と口をふさぐ。その瞬間、すうっと
気が遠くなって、力が抜け、目の前が暗くなる。そして、そのままベッドに寝か
されたのが判る。
 そして、ディモスの声が遠くに聞こえた。少しエコーがかかった感じで。
「これ、誰かおるか。」
「はっ、何か。」
「女神との祝言の用意じゃ。早速、仕度をするように。」
「ははっ、かしこまりました。」
 そして、服を脱がされ、全身を洗われ、なにやら新しい服を着せられる感触が
あった。ついでに髪型も整えられて、化粧までされたみたいだった。
 最後に椅子に座らされて、誰かに支えられたまま、また鼻と口が布のようなも
のでふさがれたらしい。その途端、鼻から喉の奥の方にかけて、ツーンという感
じがして、頭の芯まで刺激され、意識が完全に戻って目が覚め、全身に力が戻っ
てきて、自力で座れるようになった。
 と、目の前に、何やら白い薄絹のようなものがかかっており、それを通して周
りが見えるようになっていた。じきに、その白いものが、実は頭からかぶせられ
たベールであることに気が付いた。
 そこで、下を見てみると、僕は純白のドレスらしいものが着せられているのが
判った。
 訳が判らないので、それを確認しようとしたが、手足が全く言うことをきかず、
体を動かすことができなかった。
 しばらくして、一人の女性が僕の脇にやってきて手を取ると、僕の手足は本人
の意志とは裏腹に、この女性のなすがままに動いて、ゆっくりと椅子から立ち上
がり、その女性について歩きだした。
 そのまま、ゆっくりと廊下を進む。
 とある部屋の扉をくぐると、そこには荘厳な感じが広がっていた。
 そして、部屋の向こう側には、りっぱな服を着たディモスがいた。
−−−− 続く −−−−




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