AWC ◆シビレ湖殺人事件 第2章・春田ー1   ぴんちょ


        
#1043/1158 ●連載
★タイトル (sab     )  16/01/22  18:35  (235)
◆シビレ湖殺人事件 第2章・春田ー1   ぴんちょ
★内容


アサー、目が覚めて、あーとあくびをしたが、瞼が浮腫んでいて目が開かない。
ぐーっと伸びをして、その手で頭を押さえてみると、髪が逆だっていて、
こりゃあサモアの原住民みたいになってんじゃないか、と思った。
頭を押さえつつ、俺はベッドの上で上半身起こした。
「パパイヤ鈴木みたーい」。いきなり隣のベッドのミキが突っ込んできた。
瞼を無理矢理開けてミキを見る。
タンクトップが寝ている間に延びてしまっていて、ノーブラで、
肌は青白っぽくて、多少の汗臭さが漂ってきている。
ミキは、あー、と長い腕を伸ばして伸びをした。脇の下も青っぽい。
手を後ろにまわして肩甲骨のあたりをポリポリかいた。テナガザルか。
俺のちんぽは、既に勃起していた。朝立ちではなかった。
窓の外から、ヒヨリとかヨーコとかの声が聞こえる。テラスに出ているんだろう。
「みんなの声が聞こえるじゃない。私も行こーっと」
言うとミキは起き出して、サンダルをつっかけて、スタスタと出て行ってしまった。
俺はズボンに手を突っ込んで、仮性包茎が巻き込んだ陰毛を引っ張り出した。 
やっちゃえばよかったのに、と思う。でも、そんな図々しさはないよ。

ベランダに行くと、ヒヨリ、ヨーコが、「昨日の放送はなんなんだったのよー」、
「ナベサダが喋ると口の端にツバがたまってキモい」、とか言い合っていた。
斉木は手すりに寄っかかっていた。
ミキはみんなに混ざって行って「今日も暑いわねー、曇っているけど」と言った。
「でもセミとか全然鳴いてないね」とヨーコ。
「だってここは黄泉の国だもの」
ヒヨリがペットの水をかざしていて「葉緑素が増えた気がする」と言った。
「こんなの飲んでも、がぶがぶになるだけだけど」
「だったら芋でも食う?」と俺。
「芋はあっても燃料が無いのよ」とヒヨリ。
「レトルトご飯だったら残っている」
「燃料が無い、ってんの」瞬間的に般若の面になった。
「ああ、そっか。テラスでもはがそうか」
「そんな事をしたら怒られんだろ」
手すりに寄りかかっていた斉木が「2日目のカリキュラムって、木こりだったよね」
と言ってきた。
「えーーー」全員が目を剥いた。
「まだカリキュラムをやる積り」とヒヨリ。
「ちょうどいいじゃない。燃料は無いんだし。
こっちの山道は土砂崩れなんだから向こうはどうなっているのかを見てきつつ」
それはそうよねぇ、と女子は納得しながら頷いていた。
俺はテラスの下から裏山に伸びている道を見た。
こっからだとロッジが邪魔になって見えないのだが、
夕べあの山の活断層みたいな割れ目で、牛島は死んだんだよな。
背中に、あの生臭くてぬるっとした巨大魚の重みが蘇ってきて、ぞっとした。
あのグロいご遺体は地下室に眠っているんだよな。
やべーな。こうしちゃいられないな。
「じゃあ、薪を運ぶ入れ物がいるな」と斉木。「もう僕のシャツもボロボロだし」
「じゃあ、牛島のシーツとか毛布とかとってくるよ」とヒヨリ。
言うと女子は二階に行ってしまった。
俺らは、台所まで行くと、キッチンカウンターの前にしゃがみこんだ。
ナイフとかと畜銃とかナタが並べてある。
ナタの柄を指で押さえて「こんなの使ったことある?」と聞いた。
「それは君にまかせるよ」と言うと斉木は地図を手にとった。
俺だって非力なのに、と思いつつ、ナタを持ち上げると、肘ががくがくした。
なんとか肩に担ぐ。

俺らは、全員が持つべきものを持って、湖畔の小道に出た。
つまり先頭の斉木は地図、ヒヨリは毛布、ミキはシーツ、ヨーコは枕カバーを、
しんがりの俺はナタを持っていた。
俺らは、キノコの傘のように樹木がせり出している下を歩いた。
しかし、50メートルも行かない内に、右に逸れていく脇道があって、
あっちに行くと何があるんだろう、と思った、次の瞬間、
俺は遠心力で脱線するプラレールみたいに、そっちを歩いていた。
そうすると緩やかな登りになっていて、そこをハァハァしながら上って行った。
すると、湖側に、台形を逆にした感じのでかい穴があって、
四方がシジミでもびっしり積み上げたような壁になっていた。
なんだ、これは。貝塚みたいなものかな。
ふと、牛島をここに捨てちゃえばいいのに、と思ったが、それは可哀想だな。
小便がしたくなったのでナタを森側に落とすと、貝塚に向かってちんぽを出した。
じゃーーーー。
あー、気持ちいい。一体どこの筋肉を緩めたらこんなに勢いよく出るんだろう。
きっと膀胱が風船みたいに膨らんでいて、ギューッと押し出すんだろうな。
めまいがするぐらいだ。
木々の向こうに他のメンバーが行進しているのが見えた。
あいつら俺がこんなところで小便しているのも気が付かないで、アホな奴らだ。
ヒヒヒ。
俺は、ちんぽをしまうと、ナタを拾い上げた。
その時、雑草の中に、笛になる草を見付けたので、
摘んでちぎると口にくわえた。ぴぃー。
俺は脇道から戻ったりしないで、そのまま前に進んで行った。
どっかで湖の周りの小道と合流すると思ったからだ。
雑木林を挟んだ向こう側では、俺と並行する感じでみんなが歩いていた。
ピーピー笛を吹いたのだが誰も気が付かない。ぴぃー。
更に進んでいくと、思った通り合流していた。
みんなの前に飛び出ると、笛を鳴らす。
「ぴぃー」
「びっくりするじゃない」全員がのけぞった。
「どこに行っていたのよ」とタマ。
「散歩。ぴぃー」
「散歩って。探していたんだよ。神隠しにでもあったのかと思って」
「ふん」とヒヨリが鼻で笑った。「こいつは何時でもこうなんだよ。
コンパの時に皆で待ち合わせをしているのに全然来ないから、
どこへ行ってんだ、っ携帯に電話したら、
腹減ったから途中でラーメンを食っている、だって」
「そういえば教室のPCが壊れて、みんなでムラウチに行ったのね。
そうしたら、突然春田君が消えて、どこへ行ったんだろうってみんなで探したら、
一人で雑誌のコーナーで『ファミコン通信』とか読んでんだよね」とミキ。
「つーか、そのPCでスカイプやっていたら、こいつ、雑誌読んでんだよ、通話中に。
携帯で話している時にも、突然関係ない事言い出すんだけれども、
宇多田ヒカルって結婚したんだー、とか。通話中に雑誌読んでんだろう。
通話料発生してんだぞ」とヒヨリ。
「そんないきなり、がーって言ってくることないだろう。ぴぃー」
「つーか、さっきからおしゃぶりみたいにぴーぴー吹いているけれども、
かぶれているよ」とヒヨリ。
「えっ」と俺は口の端に手を当てた。
「ヘルペスじゃないか」と斉木。
「いやだぁ、伝染るぅぅ」と女子が仰け反った。
「いや、あれは常在菌といって誰の体内にもあって、
抵抗力が落ちると出てくるだけなんだよ」
「へー、そうなんだ」とミキ。
「つーか、暑いから早く行こう」とヒヨリ。
「そうね。抵抗力落ちるものね」
「そうそう、いこいこ」
そして、俺らは軍隊の様に行進していった。

しばらく行くと、昨日の芋畑の入口の前に差し掛かり、そこを通り過ぎる。
そして、もうしばらく行くと、又入口が見えてきた。
斉木が、「ここだ。1時の方角だから」と言った。
そして全員で、ぞろぞろと右折していく。
と、そこは藤棚みたいに上から草が垂れてきていて、
そこを、いらっしゃーい、みたいに、暖簾をくぐる様に通り抜けて行った。
と、林に囲まれた原っぱあって、その真ん中に、
椎茸でも栽培するような丸太がごろごろと転がっていた。
「あれだ」と言って、ぞろぞろとそこまで歩いて行った。
「なんだよ、自分で切り倒すわけじゃないんだ」
俺は重かったナタを、丸太の一本に落とした。
サクッっと乾いた音をたてて、おっ立つ。
「切ったばかりの木なんて燃えないからなんじゃない?」とミキ。
「そうかもなあ。じゃあみんな、シーツを広げて、これを包もう」
と俺はヒヨリらに言った。
「ちょっと待って。その前に土砂崩れの状態を見に行くんじゃなかったっけ」と斉木。
「あ、そっか。忘れてました」
原っぱの向こうを見ると、夏草が生い茂っていて、その向こうには、
『遥かなる山の呼び声』的景色が広がっていた。
「そんじゃあ、草ぼーぼーだから俺らで見て来るよ」とホットパンツの女子に言う。
みんな太腿がむちむちだ。
「じゃあ、行こう」と斉木を促す。
そして斉木と草むらの中に入って行った。
青々としたススキみたいな草が胸の高さまで生えていた。
それを、かき分けたり、なぎ倒したりしながら、
ミステリーサークルでも作るみたいに進んで行った。
ところが、しばらく行くと、突然草むらが終わって、
俺らは地面の露出しているところに出たのだが、
そこで俺らが目の当たりにしたのは、想像を絶する驚愕の風景であった。
地面がぼっこり凹んでいるのだ。
「なんなんだ、これはッ」
近くにいってみると、幅10メートルぐらいのU字型の溝がずーっと続いている。
モスラの幼虫でも這って行ったらこんなになるんじゃないか。
エッジのところは、ゴルフ場のバンカーみたいになっている。
「なんなんだ、これは。これも地震の影響か?」
「いや、元々、こういう地形だったんじゃない?」
「もしかしたら学校がやったのかも知れない」と俺は言った。
「なんの為に?」
「俺らを逃がさない為に。
つーか、牛島んちの近くにラーメン二郎があって、
圏央道に抜ける道を造成しているのだけれども、
あそこがこれぐらいの深さでさぁ、あそこにあるぐらいのパワーショベルがあれば、
こんぐらいの溝は掘れるんじゃないかなぁ」
「そんな金は学校には無いよ。あってもやらないし。
それに、なだらかな感じだから自然に出来たんだと思うよ」
「じゃあ地震でもないのか」、
俺は落ちないように身を乗り出して、溝を見た。
深さも幅も10メートル程度だが、傾斜はなだらかだった。
「これだったら向こう側に行けるかも知れないな」
「いや。止めた方がいいよ。
真ん中辺が液状化していて沼になっているかも知れないし。
仮に向こう側に行けても、迷うだけなんじゃない」
「うーん。じゃあどうする?」
「とりあえず引き上げて協議だな」
「そっかあ」
という訳で俺らは踵を返した。
草むらの中を引き返していたら、
女子3人が切り株のところに突っ立っているのが見えてきた。
ミキ、ヒヨリ、ヨーコの3人は、Gパンをホットパンツみたいに切っていたのだが、
内側からポケットがべろーんと覗くぐらいに短い。
「それにしてもミキっていい体格しているなぁ」俺は何気、呟いた。
「えっ」と言って、斉木は立ち止まった。「今、そんな事を考えるぅ?」
「だって、夕べ一晩一緒だったんだぜ」
「やっちゃったの?」
「まさか」
「そりゃあそうだろうな。まあ、ミキは君には無理だと思うよ」
「えっ、なんで」
「いや、別に、君のモテ非モテに関係なく無理だよ」
「なんで」
「産婦人科的にはそう思うんだよ」
「なんで、産婦人科的にそう思うわけ?」
「うーん」と唸ると、腕組みをして片方の手を顎に当てた。
「あの3人の体格をよく見てみな」
向こうでは、左からミキ、ヒヨリ、ヨーコの順番で突っ立っていて、
何か話しをしていた。
俺らは女3人を観察するような感じになった。
向こうからはこっちは見えていない。
「一番骨盤がでかいのはミキだろう。それからヒヨリ、ヨーコの順番だ。
分かりやすく言うと、骨盤がでかい女ほど、気性が荒い。
だから産婦人科的に言ってもっとも抵抗するのはミキだと思うよ」
「えっ、まじー?」
「本当だよ。逆にヨーコなんて、ほとんど女の体をしていないだろう。
骨盤が小さくて、鳩胸で、顔がでかくて、浮腫んでいる感じ。
これはおっぱいとか受容体がないんでホルモンが行き場を失って
浮腫んでいるのだけれども。
あと髪の毛がもっさりしているのも特徴でね。うなじがないのが。
ああいうのは最も従順なんだよ。まるでロボトミー手術でも受けたみたいにね。
「マジかよ」
「なぜそうなるかっていうと、多分、性染色体が一本しかないんだよ。
普通、男はXY、女はXXだろう。
ところが彼女の場合、性染色体はX一本しかないんだよ。
両親のどっちかが高齢で、精子か卵子のどちらかに性染色体が無かったんだろう」
「そんなの見た目で分かるの?」
「だって、ダウン症とかだって 見た目で分かるだろ」
「うーん…。あ、そっか」
「そういう訳で性格はいたって従順、命令されれば、なんでもやるんじゃないか。
因みに、ターナー症候群って言うんだけれども」
「へー」
「その対極にいるのがミキ。
身体的特徴は、身長が高くて、骨盤がでかくて、痩せている。
おっぱいも骨盤もでかいから栄養はみんな吸収されちゃうんだね。
つまり受容体があるから浮腫まないんだね。
性格的には強情で自己ちゅー、って感じかな。
ああいうのはX遺伝子が3本あるんだよ。
名付けてトリプルX症候群、又の名をスーパーフィメール」
「すげーな」俺は斉木の知識にただただ関心するばかりだった。
「ああやって3人ならぶと、ミキ、ヒヨリ、ヨーコの順に、
XXX、XX、X だな。
そんで、産婦人科的に見ると、ミキって本当に女って感じがするよ。ホルモン的にね。
昔の人は、小股の切れ上がったいい女、とか、うなじが色っぽい、
とか言っていたけれども、ああいうのは当たっているんだね」
「へー」ため息が漏れた。
が、え、何で? と思った。
「X遺伝子が多いんだったらそれだけやりたいんじゃないの?」
「そういう事にはならないよ。性欲はあっても、強情なんだから、
こんなキャンプ場で遊びでセックスなんてしないんだよ」
「そうなんだ」
俺は草むらの間からミキの伸び伸びとした肢体を眺めた。
「じゃあ、行こうか」
と促されて歩き出す。




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