AWC レオン(4)/茶々


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#79/1165 ●連載    *** コメント #77 ***
★タイトル (kis     )  02/10/15  15:19  (142)
レオン(4)/茶々
★内容                                         03/03/14 15:20 修正 第5版
レオンは慌てて馬から飛び降り,彼女を抱きかかえた。彼女の周りには花篭と,積んだ花
が散乱している。
「義母上,しっかりしてください!義母上!」
義母を抱きかかえながら,レオンは彼女の全身を見回した。怪我はないようである。恐ら
く,いきなり馬が目の前に現れたショックで気を失ったのだろう。
「う・・ん・・」
程なく彼女は目を覚まし,目の前の息子の顔を驚くように見つめた。
「レオン,どうしてあなたが・・・ここに・・・?」
スミレ色の目に見つめられ,レオンは思わず顔をそむけた。その美しい瞳に見つめられる
のが,とてもつらい,という風に。
「大丈夫か?レオン!・・ソフィア王妃様!」
シリウスとサンダ―を木につないだフィリップが駆け寄ってきた。ソフィアを抱いたま
ま困惑しているレオンを見かねて,彼が王妃に手を差し伸べ,彼女を立ち上がらせた。
「お怪我はございませんか?王妃様。」
「ええ。少し驚いただけ。レオン,あなたこそ怪我はありませんか?」
心配そうにレオンを見つめる。だが,レオンは彼女の顔を見ようとはしない。
「・・私は平気です。義母上。」
決して自分を見ようとしないレオンの態度に,ソフィアの顔が曇る。
(大人気ないやつ・・・)
フィリップは,レオンの態度に内心ため息をついた。彼の気持ちを知っているだけに余計
情けなく思えてくる。
気まずい雰囲気が3人の中に漂う。そのときである。
「兄上―!」
小高くなった丘の向こうから声が聞こえてきた。声のするほうに目をやるとひとりの少
年が息を切らせながらこちらのほうへ走ってきた。
「ステファン」
少年はレオンの顔を見るなり,彼に飛びついた。
「向こうのほうからシリウスの姿が見えたから,もしかしたらと思って・・・。フィリップ
と遠乗りにいらしてたんですか?」
無邪気な瞳でレオンを見つめている。顔立ちは母にだが,肩で切りそろえた金髪と青い瞳
は父と同じだ。
「そうだよ。おまえは義母上や侍女たちと薬草積みか?」
「はい。でもぜんぜん面白くない。僕も兄上たちと一緒に行きたかったな。」
「だめよ,ステファン,わがままを言っては。あなたは未だ馬には乗れないでしょう?」
「えー,だって・・・」
母にたしなめられ,潤んだ瞳でレオンに訴える。そのしぐさがとてもいとおしくてレオン
はいつも弟を甘やかしてしまう。彼は弟の頭をなでながら
「そうだな,遠乗りは無理でも,この森の中ぐらいならシリウスに乗って散歩に連れてい
ってやろう。
「本当?いつ?」
「そうだな,天気がよければ2.3日うちにでも。」
「やった―!ねえ,良いでしょ,母上。」今度は母親に抱きついてせがむ。
王妃は少し困惑気味な顔をしたが
「私はかまいませんよ。義母上。」
レオンがそう言ったので安心したように彼に向けて微笑んだ。
「そう,ではお願いしますね。レオン。」
その微笑みにレオンの胸は締めつけられ、またも彼女から、顔をそむける。
(うわ,また・・・)
ステファンの出現で和やかになった雰囲気をまた壊してしまうのか,とフィリップが危惧
していたところへ、遠くのほうから王妃とステファンを呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ、ばあやだ。」
ふとリ気味の年配の女性が,息も絶え絶えに走ってきた。
「王妃様も王子様もいつまでも帰っていらっしゃらないから心配で・・・,おや,レオン様と,
フィリップ様。お二人もご一緒だったんですか?」
その質問にはフィリップガ答えた。
「ああ,森の入り口で偶然出会ってね。」
「乳母殿,ソフィア様とステファン王子はいらっしゃいましたか?」
5人が集まっているところへ,中年の貴婦人が,侍女を引き連れて現れた。
「母上,あなたもご一緒でしたか。」
レオンは婦人の前へひざまずき,彼女の差し出した手にキスをした。
「宰相夫人にして,我が親愛なる叔母上殿。お久しゅうございます。ご壮健であられまし
たか?」
「ええ,あなたもお元気そうで何より。それよりも最近,あなたがちっとも私たちの館に
遊びにこられないので,夫も長男のルイも寂しがっていますよ。」
「はい。申し訳ありません。」
「あなたはソフィア様が嫁いでこられるまでの7年間,私があなたを育てたのですから,フ
ィリップ同様私の息子と思っているのですよ。遠慮などしないで頂戴。」
従兄弟同様気さくな叔母に微笑んで返事を返す。
「わかりました。近いうちにお伺いするとお二人にお伝え下さい。」
二人の会話が終わるのを待ってフィリップが母に声をかけた。
「もうすぐ日も暮れてまいります。そろそろ城へ戻ったほうがよろしいのでは?」
「おお,そうね。ソフィア様。そういたしましょう。」
「はい,エレ−ヌ様。」
「ええ?もう帰るの?やだ,もっとここに居たい。」
ステファンは不服そうにほほを膨らませた。女ばかりと薬草積みもつまらないが城に戻
るのももっといやなようである。
「僕,未だ帰らないからね!」
逃げるように野原へ向かって走り出した。
「あれ,お待ちください,ステファン様!」
慌てて乳母がまた追いかけていったが,少年の足に年寄りがかなうはずもなく,たちまち
姿が見えなくなってしまった。
「まあ,ステファンたらしょうがない子ね。」
王妃の夫の姉であるエレーヌにとってはステファンもやんちゃな甥でしかない。
「仕方がないわね。フィリップ,ステファンを捕まえてきなさい。」
(なんで俺が…}
不満を感じたものの,母には逆らえない。
「かしこまりました。母上。」
しぶしぶ馬に乗り,ステファンの後を追っていった。
「私は他のご婦人方と合流します。レオン,あなたはここで王妃様をお守りしていて頂
戴。」
「え?」
レオンの,一瞬うろたえたような反応にエレ−ヌは怪訝そうにレオンの顔を見つめた。
「なに?なにかあるの?」
「あ、いえ別に何も…」
「そう?じゃ、おねがいね。」
そう言い残すと,エレ−ヌはきびすを返し,侍女とともにその場を立ち去っていった。
後に残された二人の間には不自然な沈黙が流れていたが,やがてソフィアが先に口を開い
た。
「…エレ−ヌ様のところも,のようですけれども,私どものところにも最近はお顔を覗かせ
てくださっていませんわね。国王様はとても寂しがっておいでですのよ。…私をお嫌い
なのはわかりますが,せめて少しでもいいから打ち解けては下さいませんか?私たちは神
のご意志により親子となったのですから…」
「…誰が親子ですって…?」
ソフィアの言葉をさえぎリ,彼女を嘲笑した。レオンの瞳には憎悪さえ浮かんでいる。
その瞳にソフィアはおびえ,それ以上喋れなくなってしまった。
「…あなたは父の後妻だ。それに俺は父上とは一滴の血のつながりのない,赤の他人なん
だ!
そんなこと,あなたが一番よくご存知のはずじゃないか!それなのに…親子だって?笑わ
せないでくれ、そんな偽善めいたこと…、おかしくて反吐が出そうだ…!」
「そんな…私はそんなつもりじゃ…」
彼女が言い終わらぬうち,ガラガラと大きな音を立てて数台の馬車が近づいてきた。
フィリップも先頭の一台に伴走して戻ってきた。
馬を降り,フィリップはソフィアに恭しく頭を下げる。
「たいへんお待たせいたしました。王妃様。どうぞお乗り下さい。」
フィリップにエスコートされて,ソフィアは馬車に乗り込む。
そこにはふくれっつらの息子と義姉が乗っていた。
馬車に乗り込む瞬間にちらりとレオンのほうを見たが彼は彼女を見ようともしていなか
った。
「伯母上,私はもう少しフィリップと森を散策して帰ります。では。」
言うや否や,馬の首を森に向け,走り去ってしまった。
「あ,おい,待てよ!それでは母上,私も失礼します。」
フィリップも慌てて馬に乗り,レオンを追いかけて森のかなたに消えていった。
「なあに,あわただしい子達ねえ。いったいどうしたっていうのかしら。」
半ば呆れ顔で大きなため息をついた。
ソフィアは,というと馬車に乗ったときからずっとうつむいたままだった。
そんな母を心配そうに覗き込んで
「どうなされたの?母上。ご気分でも悪いの?」
息子の顔を引き寄せほお擦りしながら王妃は寂しげに微笑んだ。
「大丈夫,何でもないのよ。」
そう答えた彼女の目にはうっすらと涙がにじんでいた。
                ・
「おい,いったいどうしたってんだよ。」
森の中で馬を止め,暮れかかった空を見上げていたレオンを見つけたフィリップはそう尋
ねた。
しかし,彼はそれには答えず,
「…さっきの賭け俺の負けにしてくれないか。おごってやるから今晩付き合え。」
「良いけど…,何があった?」
再びのともの問いにも答えず、独り言のようにつぶやいた。
「…もう,限界だ…!」







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