AWC 新種のあひる 〜初代佐野祭の生涯〜 7  佐野祭


        
#2/1165 ●連載
★タイトル (GVB     )  01/12/10  02:00  ( 77)
新種のあひる 〜初代佐野祭の生涯〜 7  佐野祭
★内容
 えーっと。7からでいいんだよな確か。
 なにしろ間がちょうど一年あいたからな。そうそう6の次は7。間違いない。
 みんな忘れていると思うが、この話は明治時代のウェブ作家初代佐野祭の開拓
者としての苦難の物語です。あらすじ終わり。てなふうに現代のウェブ作者たち
は更新間隔があかないように苦労しているわけだが、ここにも同じ悩みを抱えた
ものがいた。
 祭がぽつりとつぶやいた。
「いかんな」
 大門がよせばいいのに答えた。
「何が」
 祭はここぞとばかりに切りだした。
「なんでこのウェブというやつ、更新せねばならんのだろう」
「だって更新しなかったら、いつまでも同じものが出るじゃないか」
「そうなのだよ。そうすると、明らかに見る人が減るのだな」
「そりゃそうだろ。誰も毎度同じものを見ようとは思わない」
「いや」
 祭は妙に力強く否定した。
「大門、俺は思うのだが、ほんとにウェブというのは更新しなければならないの
だろうか」
「どういうことだ?」
「例えばな。完璧な冠婚葬祭の手引きを作ってウェブにしたとしよう。そしたら
便利だからみんな見るだろう」
「見るだろうな」
「でも冠婚葬祭のやり方なんてそうそう変わるものじゃないから、別に更新する
必要はない。あるいはだ。完璧な源氏物語の注解を作ったとしよう。そしたらそ
んなに数は多くはないかも知れないが、いつも誰かが見るだろう」
「見るだろうな」
「でも源氏物語の注解なんてそうそう変わるものじゃないから、別に更新する必
要はない。つまりだ」
 祭は一段と声を張り上げた。
「ウェブにとって更新とは、必需品ではないのだよ」
「でもさ」
 大門は一段と声を下げた。
「お前、完璧な冠婚葬祭の手引きとか完璧な源氏物語の注解なんて書けるの」
「そ……それは」
「完璧どころか穴だらけでも書けないんじゃないの」
「そう……なんだが……でも俺の言ってること理屈は合ってるだろ? 間違って
ないよね? ね?」
「まあね」
「そうなんだよ」祭は口の中でもごもごと言った。「あとは何をやるかなんだよ」
 それからしばらく祭は姿を見せなかったが、いつものことなので大門は気にも
とめなかった。それでも、ちょっと暇ができたので覗きに行くかと、祭の家を訪
れた。
「おーい、祭。できたか、完璧ななんとやらは」
 祭は不敵な笑みを浮かべながら画面の前に座っている。
「お、なんかできたのか?」
 祭は不敵な笑みを浮かべたままうなづいた。
「どれどれ」
 大門は画面を覗き込んで言った。
「何これ」
 祭はにやりと笑って答えた。
「これからの時代、これが必要になるのだよ」
「だから何これ」
「最近、就学率が急激に上がっているだろう」
「つまり何これ」
「教科書も全部国定教科書になったことだし、これからの教育は天皇中心の歴史
教育になる。しかしだな、うちらの親の世代が教育を受けたのはまだ徳川の頃だ。
子供に教えられるほど詳しくないのだよ」
「んで何これ」
 大門は画面を指さした。
 そこにはこう書かれてあった。
『神武綏靖安寧懿徳孝昭孝安孝霊孝元開化崇神垂仁景行成務仲哀応仁仁徳履中反
正允恭安康雄略清寧顕宗仁賢武烈……』
「七番目の字なんて読むの」
「い」祭は答えた。「これはだな、完璧な歴代天皇の一覧だ」
「はあ」
「すなわち、これぞ更新しなくてもみんなが見るページというわけだ」
「そう……なのかなあ」
 やがて祭が予言したとおり、誰もが学校で歴代天皇の名を「神武綏靖安寧懿徳
……」と呪文のように暗記させられる時代が来る。三十年後に。
 そのときに祭のこのページが残っていたかどうかは定かではないが、この七年
後に祭が更新したという記録は残っている。明治天皇が崩御し、大正天皇が即位
したのだ。
 更新しながら祭は、なかなか更新いらずのウェブというわけにはいかないな、
と思ったそうである。

                              続く





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