#63/569 ●短編
★タイトル (XVB ) 03/02/16 21:40 ( 43)
お題>焼け! $フィン
★内容 03/02/16 22:32 修正 第2版
おばあちゃん、またあのお話をして、今日も暖炉にあたりながら、可愛いひ孫がわ
たしに語りかけてきます。私はもう年です。もうとっくの昔ににお迎えがきてもよい
年です。この可愛いひ孫が知らない恐ろしいお話をしてあげましょう。
私の家族はアリサが嫌いでありました。アリサは美しい娘で、太めでにきびのある
私の家族たちとは違い、彼女は美しい娘でありました。美しいアリサに村の男たちの
関心が集まっているようでした。酒場で集まってもアリサの美しい姿に男たちの話で
持ちきりです。それを聞いている女たちは面白くありません。だけどもそんな美しい
アリサに男たちは話をするだけでなかなか近づこうとしないのでした。それというの
もアリサがこの地方特有の赤毛ではなく黒髪の持ち主のよそ者だということだったの
です。この村は保守的な村でありました。よそ者のアリサには辛いものであったので
しょう。
アリサは老いたロバと共に粗末な荷物だけを持ってこの村にやってきました。そし
て村外れの廃屋にただ同然で、彼女にとっては一財産であったのでしょうが、借りる
ことになりました。彼女は、村のどこにあるのか草をとって村人を治しはじめました。
薬学も発展して成分のはっきりしたものでありますが、その当時は薬学もない暮らし
であります。村人は蜂に刺されるとアリサの元にいき、熱が出るとアリサの元に行き、
アリサの元に行くとなんでも治ると、当初彼女は村の救い主となったものでありまし
た。だけどもある時、アリサの作った薬草を飲ませた後、ある子供がひきつけを起こ
し死んでしまいました。普通ならそれが子供の運命だったと諦めがつくでしょうが、
死んだ子供が村の有力者の子供だったから大変でありました。有力者の家族は怒りま
した。そして彼らはアリサに今まで持っていた悪感情を爆発させました。羊が死んだ
のはアリサのせい、牛の乳がとれなくなったのはアリサのせい、綿花が枯れたのはア
リサのせい、生まれたばかりの子供が死んだのはアリサのせいともろもろ悪いことは
すべてアリサがやったことになりました。そして都から名のある聖職者を呼び寄せ、
アリサを裸にさせ、あざがないか調べさせました。するとあったのです。小さなもの
でしたが、腰とお尻の間に赤く蝶のあざがあったのです。そうと決まると早いもので
す。魔女裁判です。水攻め、鞭せめもろもろの刑で魔女であることを白状させました。
そしてアリサは火あぶりにかけられました。ぼうぼうぼうと身体が燃え、村人はは焼
け! 焼け! 焼け! と騒ぎたてました。あたり一面肉の焼けるぱちぱちはじける
音と悪臭があたり一面に漂ったと言われます。そしてアリサは最後に「呪われよ子よ」
と呪いの言葉をかけたそうです。
それでアリサの処刑が終わったかのように思われますが、これには後日談がありま
す。この村で、アリサが魔女裁判をかけられる原因が子供がその後生き返ったのです。
そして有力者の家族は喜びその子供を普通に育てることにしました。その子は普通に
育って子をなし、普通に成長しました。ここらで賢明なあなたならわかるでしょうが、
その子供がわたしです。あなたはもう千才、そしてわたしは千三百歳です。この暖炉
の火を手に焼け! と念じてかざしてごらんなさい。肉がぱちぱち焼ける音が聞こえ
ますが、手はすぐ再生されてきます。私たちは身体を焼いても焼けることもなければ、
死ぬこともありません。アリサは死ぬ前に私たち一族に焼け! 焼け! 焼け! と
泣いて頼んでも死ぬことのない呪いをかけたのでした。この死の灰が降る無人の街に
私たち一族だけ残したのでした。ああ、アリサよ。私たちの魂の安らぎのあらんこと
を祈る。