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★タイトル (AZA ) 14/06/29 23:04 ( 26)
本の感想>『世界記憶コンクール』 永山
★内容
・『世界記憶コンクール』(三木笙子 東京創元社ミステリフロンティア)
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“記憶に自信ある者求む”――新聞に載った求人広告に、義父の勧めで応募
した博一は、即座に採用された。大学教授を名乗る男から記憶力を高める訓練
を受けつつ、報酬を得ていた博一だったが、ある日を境に男とは連絡が取れな
くなる。ホームズ譚の「赤髪連盟」を彷彿とさせる出来事に、何が隠されてい
るのか(「世界記憶コンクール」)。
表題作をはじめとして、美貌の天才絵師・有村礼と雑誌記者・里見高広、そ
して彼らにまつわる人々が関わった事件とその顛末を描いた短編集。
前作『人魚は空に還る』に続くシリーズ第二弾。前作に比べると、レベルア
ップしています。冒頭を飾った表題作は、シリーズの特色を表すのに最適な出
来だと思いました。続く三編も、高広の両親の馴れ初めを描いたり、前作で登
場した事件関係者の成長を描いたり、あるいは高広と有村との出会いを描いた
りと、実にバラエティに富んでおり、楽しませてくれました。
人の優しさだけでなく、黒さも描いており、そこからさらに話をまとめる手
腕は、かなりのもの。明治・帝都の風俗や慣習などを取り入れ、それを事件と
絡ませ、魅力的な謎に仕立てている点も見逃せない。前作に比べると、解決の
方も鮮やかになったと感じました。
本作で不満を述べるとしたら、有村の存在の薄さ。美貌の天才絵師だなんて、
いわゆる萌え狙いっぽいキャラクターを用意しておきながら、名探偵ではなく
ワトソン役(しかも記述はしない)というのは前作からの設定なので仕方ない
として、今回はほとんど動いていない。もうちょっと活用のしようがあるので
はないかと。
ではでは。