#2534/5495 長編
★タイトル (HHF ) 94/ 3/22 14:26 ( 80)
「家族になりたい」 (7/7) ■ 榊 ■
★内容
焼け落ち、解体の進んだ店の跡地で、家族ははじめてそろいあった。
青空のきれいな、日曜のことだった。
「傷跡が痛々しいね」
親父が子供達の火傷を見つめながら、呟いた。
傷をおっていないのは親父だけだから、心配するのもしかたがない。
おもむろに立ち上がり、親父はいった。
「今の家を売り払う。そして、そのお金で、ここに店付きの家を建てます」
いつもの親父とは思えない、高らかな声だった。
あれ以来少しやつれた弥生さんを、親父は見つめた。
「そこに……、一緒に住んでいいですか」
二人は見つめあった。
そして、弥生さんの瞳から、涙がこぼれ落ちた。
「子供以外の、全てを失った女です。こんな女でも、いいのですか?」
静かな涙が、地に落ちる。
「あなただから、いいのです」
親父、よくいった、と悟は心の中で叫んだ。
「どうぞ……宜しくお願いします」
弥生さんは消え入るように、呟いた。
親父は今度は、子供達の方に向きなおった。
「子供達はどうでしょうか。反対の人が一人でもいるかぎり、私達は結婚しない
つもりです。ただし、家はちゃんと建てます」
水香、海、華歩、果菜、加羅、火斗、そして悟は、静かに親父を見つめた。
「反対の人は手をあげて下さい」
親父の声が厳然と響いた。
悟は見るのが恐くて、目をつぶった。
手だけは、死んでも挙げるつもりはなかった。
沈黙の時が過ぎる。
そして、父親が呟いた。
「誰もいませんね。じゃあ、これから一生、宜しくお願いします」
その言葉が静かに胸にしみわたった。
目を開ける。
そこには、家族になった八人の笑顔が広がっていた。
「家族になりたい」 終わり
written by 榊京夜
main cast 悟 <サトル >
水香 <スイカ >
cast
海 <カイ >
華歩 <カホ >
果菜 <カナ >
加羅 <カラ >
火斗 <カト >
弥生 <ヤヨイ >
親父 <オヤジ>
磐田 <イワタ >
music "Blue Gray" Miwa Hayakawa
無伴奏チェロ曲 J.S.BACH
...and, I am looking forward to seeing you again. Thanx.
---- 後書き ----
自分の家でも離婚騒ぎがありました。ことなきを得たのですが、それ
でもあまりにも身近に離婚と再婚が多くて、びっくりしています。話に
はそれほど意味はないのですが、皆さん末永くお幸せに。
悟は、当初もっと落ちついた雰囲気で、ある意味で自分の理想像をと
いうのを考えていたのですが、いつのまにか鈍な男になってしまった。
漫画「サイファ」のシヴァとディーナの話を読んで、イメージを作った
というのに……だいぶ、違うものに出来上がってしまいました。
次回作があります。大したお話ではありませんが、よかったらまた読
んで下さい。あなたに会えたことを感謝して。