#2261/5495 長編
★タイトル (GKE ) 93/ 8/ 1 19:21 (197)
「ハピエストランド」その14 ひとときのユートピア
★内容
]W (アトランティス) 63
<インスター>
目指す場所はスペインとフロリダ半島、それに南米エクアドルの三点を結んだ
大西洋の三角海域、アトランティス大陸。 時は今を遡ること一万四百年前、当
時の貴方の意識に問いかけて下さい、貴方の中に潜む自分の記憶をたどって下さ
い、自分を信じて自らに問うて下さい、当時の貴方に会いに行きましょう。
{回りの風景がみるみる流れ、やがて大きな広場の一角に二人は立った。
結構大勢の人が行き来している、服装はローマ時代の人々を思わせる}
<テス>こんにちはxx君、私の名はテス。 貴方のもう消滅していた過去意識
の一人です。 インスターさんのおかげでまた自分の個性を取り戻すことが出来
ました。 さあさっそくご案内いたしましょう。 此処はアガシャー広場
と呼ばれています。 今あそこを掘り返させている人達は我々の敵、理神
論を信奉するクザーヌス派の僧侶に仕える狂信的な人達です。
彼らは、毎月一回この広場で10万人以上を集め説くアガシャー大王の
その愛の教えを喜ぶ国民を見て、自分達僧侶の保身を考えるようになり、
ついにクーデターを起こしました。 大変残念なことですがそのクーデタ
ーは成功し、アガシャー大王の心優しい側近達は次々に捕らえられました。
国民に自分達のクーデターの成功を誇示するため、この首都ポンティス
の中心であるこの広場に生き埋めにすべく、彼らに自らの墓穴を掘らせて
いる処なのです。
「えっ、では王様も殺されたのですか?」
<テス>大変悲しいことにもう殺されてしまったようです。 もう此の国は何か
が狂ってしまったようです。 理神論を信奉するクザーヌス派の僧侶達は
自分たちの科学技術に酔いしれ、アガシャー大王の説く愛や霊といった非
論理的なものは国を滅ぼすと言うのです。 ご覧なさいあの巨大なピラミ
ッドを、そしてあちこちに在るそれぞれの大きさのピラミッド、太陽エネ
ルギーを利用した光通信施設です。 ピラミッドの中心で光霊エネルギー
を取り込み、その動力をまかなっています。 あそこに飛んでいる鯨のよ
うな飛行船に背びれのよう三つ見えてるのもピラミッド発電機なのです。
今そこを通って行った、エイのような形をした二輪車は植物の細胞分裂
の時に生じる生体エネルギーを利用してあの尻尾についているプロペラを
回しています。
「あっ、それでエンジン音がしないのか」
<テス>私も彼等理神論派の人に狙われております、長居は危険です取り合えず
私の家へご案内いたしましょう。
{三人でテスの家へ向かって歩き始める}
「太陽エネルギーと云い植物の生態エネルギーと云い、此の国のエネルギー
はみんな無公害エネルギーなんですね。 こんな昔にあった素晴らしい発
明がどうして現代世界に受け継がれなかったのでしょう」
<インスター> 此の国はそれほど急に滅びていきました。 最初は今から一万一千年
前その大陸の東の三分の一が沈みました。 第二段はその三〇〇年後西
の三分の一が沈み今は真ん中の三分の一が残っているだけですが、今此
の大陸はその文明のピークを迎えております。 まもなく第三段の沈没
が起ころうとしておりますが、この時はそれこそ一晩で此の大陸の総て
が海底深く、約一〇〇〇メートルも沈んでしまう事になるでしょう。
もちろんそういった事は折に触れ予言が成されていたのですが、科学
の進歩により人間は万能であると云った思い上がりが、大勢であり、な
かなかそう云った予言に耳を貸そうと云う人は少なかったのです。 幸
いにも理神論派に追われ沈没前に逃げ延びた数少ない人々が僅かにその
痕跡を後世に伝えたにすぎません。
今のエジプトに残っている"アモン・ラー伝説”はこの時アトランティ
スを飛行船で脱出した、実在のアガシャーの長男アモン二世の話なので
す。 アモン二世はこの時エジプトに渡り太陽信仰を説きました。 や
がてその高い文明により人々の尊敬を集め、初めは自分の祈祷用に作っ
たピラミッドが広まり、あの巨大遺跡として今でも残っていますね。
「そうですか、世界の七不思議と言われるほど、数学的に精密に出来ている
ピラミッドの謎がその話を聞くと総て納得がいきますね、でも何だかもっ
たいないなあ。 植物から取る無公害エネルギーなんかは是非今日の石油
エネルギーに取り替えたいものです」
<インスター> 大丈夫ですよxxさん、地球文化は発展と衰退を繰り返してはおりま
すが、長期的に見れば確実に右肩上がりで進歩しているのです。 二一
世紀にはこの植物エネルギーの利用も進みますが、それよりももっと強
力な無公害原子力エネルギーが利用できるようになります。 今の原発
はその前哨に他なりません、今後数十年で無尽蔵の海水からクリーンな
原子力エネルギーを人類は取り出していることでしょう。
<テス>着きましたxxさん、さあどうぞお入り下さい。
{テスの部屋の中}
「あの日当たりの良い窓際に置いて在る球根みたいなのはなんですか」
<テス>あのフラスコの中に入っているのはご覧のとおり球根です。 先程貴方
が見たエイの形をした二輪車に積んであった発電装置と同じもので、あれ
だけでこの家のエネルギーは総て賄われています。
「それはとても経済的ですね、でもいったいどうしてあんな物でエネルギー
が出てくるのでしょう」
<インスター> 今の文明ではアインシュタイン博士の提唱した物質の質量は即ちエネ
ルギーであると言う理論に基づいて、ウランの崩壊する時に放出される
エネルギーを取り出して利用しているのが原子力エネルギーですが、こ
のアトランティスにもクートフーミーという偉大な救世主が現れ生体エ
ネルギーを発見しました。 アトランティスの文明は此処から始まった
と言ってよいでしょう。
このクートフーミーという魂は現代ではアルキメデスという名前で出
たりニュートンという名前でも出ていますから知らない人はいないでし
ょう。 彼は一粒の種に興味を持ちました。 水を掛けるだけで発芽し、
茎が伸び葉を茂らせやがて花を咲かせていく、いったいこのエネルギー
は何処に潜んでいるのだろう。 二〇年くらいかけた研究のすえ、生命
はそれ自体がエネルギーであり、その形状が変化するときに巨大なエネ
ルギーの変換が行われている事に気がついたのです。 彼はそれからさ
らに一〇年の歳月を費やし、ついにそのエネルギーの抽出に成功したの
です。 ここで気が付いて欲しいのですが、この宇宙の創造主がその念
いにより作り出した、物質にしろ生命にしろ、それ自体がエネルギーの
凝縮された物に他ならないと云うことなのです。
即ち太陽エネルギーも生体エネルギーも原子力エネルギーも基をたど
れば唯一の処から発せられている巨大な念エネルギーにすぎないのです。
科学の進歩の究極の行き止まりがこの念エネルギーの発見といえるでし
ょう。 地上の物の運動を完璧に表現したニュートン力学はやがてアイ
ンシュタインの登場で、その絶対だと思われていた時間と距離が実は相
対的な物であると分かり、今度は超ひも理論により貴方の住む三次元空
間は他の空間からのコントロール下に置かれている相対空間である事が
判明しようとしています。
そしてやがてこの地球上でも後一〇〇〇年もすればこのへんの総ての
時間論、空間論、宇宙論も研究し尽くされてくるでしょう。 その時こ
そあなた方、そして我々この地球霊界に住まう魂が新たな魂修行のため
新天地を求め次なる未開の星を求め又果てしない宇宙の旅へと旅立つ時
となるでしょう。
「そうか、僕はこんな科学の発達した便利な時代に生まれて良かったと思っ
ていたけど、もう一〇〇〇年生まれるのが遅ければよかったな」
<インスター> いえいえ今此処にいるこのテスさんも貴方自身であるように、又貴方
の分身がやがてその1000年先にも地上へ誕生することになるのです。
時代により変わるのは科学だけではありません、社会の仕組みもこの
時代は今とは随分違うのです。 テスさんこの国の税金の仕組みを説明
してあげてくれますか。
<テス> 税金というのは何ですか、よく分かりませんが。
「税金というのは国民が政府機関に支払う分配金のような物ですよ」
<テス> エーお金というのは政府が国民に支払うもので、国民はその働きに応
じて国からその報酬として受け取るものですが。
「エー、それじゃあ税金なんか無いわけだ、お金が国から出ると云うことは
民間会社のようなものがないと言うことですが、共産社会だったのでしょ
うか?」
<インスター> 今の共産国家のように平等に賃金を支払うと云うようなものではなく、
人々は自由に働き、そしてその1年の働きを自分で政府に申告するので
す。 税金の確定申告ではなく、労働価値を自己申告しました。 そし
てその申告をチェックする人が必要になりますが、その検閲をしていた
のはこの時代の僧侶達でした。 この時代の宗教家達は人の心が読めて
いたようで、虚偽の申告をした人はその内容をチェックするまでもなく
発見されていたようです。 そして面白いことにお金を国民に配る側の
お役人の勤労評価は国民の投票により決められていたのです。 国民の
中から無作為で500名くらいを抽出して、その人達は前年度と比較し
てその住民サービスの質を評価し投票します。 その結果でその年のお
役人の給料が決められたのです。 今と方法は全く異なっておりますが
何とも民主的な行政が行われていたと云えるでしょう。
当時世界最大の都市であったこのポンティスの人口でさえ70万人位
しか居なかったからこそこんな仕組みが成り立っていたのかもしれませ
ん。
「インスターさん、こちらに来るときにこのアトランティスが今の日本やア
メリカに似ているとおっしゃっていましたがそれはどんな点なんですか、
ずいぶん今と違う処ばかりが目に付くのですが」
<インスター> その話に移る前にこのアトランティスの歴史を少し話しましょう。
そもそもこの大陸もこの時代を遡ること6万5千年ほど前は現代のイ
ギリスほどの大きさの島だった所が海底火山の爆発により浮上して出来
た大陸です。 そして人が住み着くようになるのはその後3万3千年ぐ
らいたってからのことです。 その頃の地球では今のインド洋上にあっ
た菱形をした巨大大陸レムリヤがその文化の花を咲かせようとしだした
頃でした。 そのまだ未開のアトランティスに文化の兆しが見え出すの
が更にそれから2万6千年くらい経った、紀元前1万4千年の頃、さき
ほど話したニュートンの過去世であるクートフーミーがこの地に誕生し
てからである。
クートフーミーの発見したエネルギーにより漁業と、狩猟の生活が徐
々に変化してきました。 特にその功績は農業に現れます。 その窓の
外をご覧なさい。
「そこに植えてあるのはお米ですか、こんな狭い庭にお米を植えても食べる
には不十分でしょうね」
<テス> いえこれで家族三人充分な量が採れます。
<インスター> クートフーミー以降此の大陸には数々の銀色光線の光の天使が降り徐
々に科学文化が花開いていきます。 xxさんその稲は此処にある発育
促進光線で、蒔かれた籾が収穫されるのに一週間しかかからないのです。
「ホントですか、たったの一週間で!」
<テス> それでしたらその窓辺に置いてある鉢に植えてある実は一日で収穫で
きるのですよ。
「エーではあの赤いトマトのような実は昨日には無かったという事ですか」
<テス> はい今朝光線を当てたところです。
「では今の日本なんかよりずっと進んでいるではないですか」
<テス> でも良いことばかりでもないのです。 この光線は動物には有害のよ
うです。 今でこそ改良されましたが、かつてはこの光線の影響でとて
も口では言えないような奇形動物が出来てしまった、そんな恐ろしい事
件もあったようなのです。
<インスター> 人間はいつの時代でもそういう過ちを繰り返しているのです。
しかしこの大陸にとって決定的な発展の鍵は、太平洋にあったムー大陸
の沈没により逃げ延びてきた人から伝わった、太陽エネルギーの利用装
置ピラミッドの発明と云って良いでしょう。 更に丁度その時を同じく
して救世主九次元界からマイトレイヤー如来がクザーヌスという名前で
この地に肉体を持ちました。
この聖クザーヌスは、理性的なるもの、科学的なるものは神の心にかな
うのだと言った"理神論”を説き、ピラミッドパワーによって人類にもた
らされる恩恵、太陽をその信仰の中心に据えました。 紀元前一万三千
年の頃でした。
これ以後の科学万能の風潮は丁度今の地球文明と酷似しております。
テスさん、最近新興宗教のような団体が雨後の竹の子のように出ていま
せんか。
<テス> 良くご存じですね。 空中浮揚とか、水中に15分以上潜るだとか云
った奇跡を売り物にしている教団が今この辺では勢力を伸ばしているよ
うです。 又病気治しとか手かざしと云ったことを売り物にしている団
体は何十もあるようです。 それにあちらにもこちらにも世界の終末を
予言する団体が出てきておりますし、また科学万能を拒否し自然の中で
生きようと云って集団で都会を捨てていく若者も出てきています。
「なるほど良く分かりました、何だか恐いくらいに現代日本と類似していま
すね」
{グラグラ、大地が揺れだした}
<インスター> 始まったようですね、もう明日にもこの大陸は姿を消してゆくでしょ
う。 再びこの大地が太陽の恵みを受けるようになるのに一万年以上の
歳月を必要とします。 予定では西暦二三〇〇年頃、アメリカ大陸の沈
没の反動を受け再びこの大地が隆起してきます、しかしこの時は独立し
た大陸ではなく今のカナダと地続きとなるでしょう。 その大きさはカ
ナダの三分の一くらいだと思われます。
「此処に居ては危ないのですか」
<インスター> 慌てることはありません、今の貴方は肉体を離れていることを思い出
して下さい。 肉体のない貴方に死はありません。 意識体であること
を再度自覚したらこのチャンス、しばらく上空から見物しましょう。