#2256/5495 長編
★タイトル (GKE ) 93/ 8/ 1 12:53 (196)
「ハピエストランド」その10 ひとときのユートピア
★内容
]U (念仏地獄) 42
{一段階暗くなる、
遠くの方から念仏を唱える大勢の声が聞こえて来る}
いよいよ念仏地獄と呼ばれている処に入って行きます。
大勢いるでしょ。 誰か一人捕まえて話しを聞いて見ましょう、近くの人に声
をかけてご覧なさい。
「アノー、ちょっと、おばあさん・・・すみませーん・・・ちょっとお聞き
したいのですが・・・」
{お婆さんこちらの方を向いてきょろきょろするが見えていない}
むこうは貴方が認識出来ないようですね。 貴方がいつも不満に思っている井
上部長の事でも考えながら、貴方も一緒に念仏を唱えてごらんなさい。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
{お婆さんが一人こちらへゆっくりと近づいて来る}
<お婆さん>今何か呼んだかね!
<守護霊> こんにちわお婆さん、忙しいところをごめんなさい。 お婆さんは
ここでどのくらい暮らしているのですか?
<お婆さん>そうだのう、よう判らんが、三百年くらい居るような気がするのー。
<守護霊> ここは随分薄暗いように思うのですが、どうしてこんな薄暗い処に
居るのですか、お婆さん。
<お婆さん>そのことじゃがね、こんな寒くて薄暗い所から一刻も早く出たいん
じゃが、それもこれもみーんな家の嫁のせいじゃよ。
<xx> そうですかお気の毒に、それでいったいどんなお嫁さんだったのです
か、その方は?
<お婆さん>よう聞いてくれたのう。 それがもうとにかく派手好みの嫁で、ど
うしても自分がちやほやされないと気が済まない、わしが食うもの食
わずに節約して息子に渡した金を皆嫁がつこうてしまう。 わしが金
使いが粗い、と注意したら「おかあさんこそもっとまともな身なりを
して下さい」なぞと言いおって、おまけに近所のもんには、わしがけ
ちじゃ、けちじゃと言いふらしよる。 おまけにもうこんな家厭だか
ら出よう出ようと言って息子をそそのかし、わし一人を置いて家を出
ていってしもうた。 息子も息子じゃ、あれだけ苦労して育ててやっ
たのに、恩知らずがあんな尻軽女にだまされてのこのこ出ていってし
もうて、わしゃあもう悔しくて悔しくて・・・。
{お婆さんの目から涙が出て来る}
<xx> そうですかそれはお気の毒でしたね。
<お婆さん>そう思うじゃろ、悪いのはあの嫁じゃ、あんな女八つ裂きにしても
飽きたらない。 そのままわしは病気になり看病してくれる人もない
まま寂しく寂しく、苦しい死に際だったよ。 あんな女は絶対に許し
ちゃおかないヨ。
{メラメラと怒りの妖気がお婆さんの体から立ち昇る、
目が吊り上がり、口が裂けてくる}
<守護霊> そうすると悪いのは皆お嫁さんの方なんですね・・、それではどう
して被害者のお婆さんがこんな寒い世界に来てるんでしょうねえ?
{その事だと言わんばかりにピシャリと手を打って}
<お婆さん>それが解らんのですよ!!
和尚さんに「念仏を唱えなさい、念仏を唱えたら必ず救われますよ」
と言われて、いつもいつもナンマイダー、ナンマイダーと仏様を拝ん
でいたのですが・・・こちらに来てからも、きっとこれは信心が足り
ないからなんだと、一生懸命一年中念仏を唱えているのですが・・・、
あんな立派だった和尚さんが間違っているはずもないし???
<守護霊> お婆さん。 生前お嫁さんとの関係で、自分には悪い所は無かった
のだろうかと、反省してみた事はありますか?
<お婆さん>そんな事ある分けないでしょ、悪いのはあの女なんだから。
<守護霊> ではどうして悪いはずのお嫁さんがこちらに来てなくて、悪くない
はずのお婆さんがこちらに居るんでしょうねえ。 ・・・そのお嫁さ
んにもどこか良い処が有りませんでしたか、何か一つぐらい良い処が
有ったんじゃありませんか・・。 何処かに善いところがあったのな
ら、それを教えてくれませんか。
<お婆さん>そりゃあ有ったさ、人間なんだもの。
<xx> それはどんな処だったのか、私達にちょっと聞かせてください。
<お婆さん>ウーン・・自分勝手じゃったが、とにかく明るかったな・・・彼女
の周りにはいつも笑い声があった、そんな処にやっぱり息子も惹かれ
たンじゃろうなー・・・それに比べてわしは何時も何時も目くじらを
立てて、仕事仕事と、自分一人がなんでこんなに働かなきゃいけない
んだと、息子夫婦の団らんに無性に腹が立って、なにかと邪魔してし
もうたなー・・・わしの若かった頃は食うもんが無くて、働いて働い
て、爺さんとの団らんの時間なんぞ無かったもんじゃから、息子夫婦
が羨ましかったのかもしれん・・・考えたら悪い事をしたもんじゃ。
自分勝手だったのはわしの方じゃったかもしれん。 顔も美人だっ
たし、なんせ陽気だったから、爺さんは随分可愛がっていて、その事
もわしが意固地になっていた原因かもしれん。 わしも随分あの子に
冷たく当たってしもうた、あの子の若さに対するどうしようもないね
たみ心があったんじゃろう。
申し訳のない事をしてしもうた・・・ウッウッ。
{お婆さんの目から反省の大粒の涙が溢れ出てくる}
{ピカッ! お婆さんの中心から鋭い閃光がほとばしった
その瞬間お婆さんの姿が消えてしまった}
「どうしたんですか、なにが起こったのですか。 お婆さんは何処へ行った
のですか?」
]V (反省の価値) 45
お婆さんは気づきました、自分の誤りに気がついたのです。 よかったー
今僕たちは、僕たちの力で一人の人間を救うきっかけを作り出す事が出来たみた
いです。
「本当ですか、それは嬉しいなー、それで此処から消えてしまったのですか」
消えた訳ではありません、ほらあのずっと上の方を見てご覧なさい、ここの出
口に誰か迎えに来ているでしょ。 きっとあれはお爺さんでしょう。
自分の過ちに気づき、素直に嫁に詫びたとき、お婆さんの心は明るい世界へと
通じ、もはやこのマイナスの思いの充満した世界に居られなくなったのです。
あっ、インスターさんもお婆さんを迎えに来たのかしら。
<インスター>xx君よくやったね、お爺さんが本当に喜んでいたよ。
「いえいえ、私は何もしていません。 ただお婆さんの話を聞いていただけ
です。」
<インスター>大切なことは貴方の心なんです。 君は今心からお婆さんに同情し、
君の心からお婆さんに対する優しい労りの心が出ていました。 意固地
になっていたお婆さんは、生前には家族のみんなから疎まれるようにな
っており、それがますます自分を殻に閉じこめ、回りから発せられる非
難の念いから、身を守るためさらにその殻を堅くしていったのです。
貴方から放たれた優しい想いが、そのお婆さんの心の殻を溶かした為、
お婆さんは素直な心を取り戻し、自らを反省することが出来ました。
ここは念いのエネルギーがすべてを動かしています、みんなの出した念
いのエネルギーが総てを変えていくのです。
ョ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「イ
、誰も直接人の心を救うことは出来ません。 、
、 それがお釈迦様であっても同じです。 、
、 いくら念仏を唱えても、お願いしても、救われません。 、
、救われる方法はたった一つ 、
、 自分を救えるのは自分だけ 、
、 自分で自分の過ちに気がつくこと 、
、 自らの反省 以外にはその方法はありません。 、
、反省とは自分を虐めることではありません。 、
、 自分を信頼し、自分の過ちを発見する最上の武器なのです。、
カ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「コ
<インスター>反省の意味も知らなかったお婆さんですが、貴方の思いやりにふれ、
偶然自らの反省が出来ました。 300年間、神頼みをして救われなか
ったお婆さんが、ちょっとしたきっかけにより反省し、自らの力で自分
を救いました。
想いの力というのは強力なエネルギーです、貴方が地上で肉体の中に
あるときは、肉体にシールドされ、想いのエネルギーは本来の一割以下
しか発揮されません。 ところがこの霊域では、そのエネルギーが10
0%伝わります。 だからこそこの地獄が現れ、逆に貴方の発する優し
い想いが強力な武器として威力を発揮したのです。 おめでとうxx君、
優しさで人を救った今日のこの感激を忘れずにいてください。
でももう一つ君に気づいてもらいたいことがあります。
あんな普通のお婆さんが、特に何も悪いことをしているようには見受け
られない人が、どうしてこんな薄暗い世界で300年も暮らさなければ
ならなかったのか、その訳を知らなければなりません。
人間の死後肉体を離れた魂が帰る世界は、光の世界か闇の世界、人はそれを天
国と地獄と表現しています。 その天国と地獄を分かつもの、それは総て生前の
その人の出した思いにより決まります。 その人が生前何を成したか、ではなく、
何を考え、どんな思いを出してきたか、により決まるのです。
]V (地獄直行便) 46
ョ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「イ
、 この宇宙は、かくあるべしという強大な思考エネルギーにより形作ら、
、れています。 そのエネルギー場のなかで我々人間の魂は生存が、また、
、活動が可能となっているのです。 ですからそのエネルギー波動と同調、
、する念いを出せれば、貴方もその宇宙の一構成要因としての存在理由が、
、出て参ります。 この宇宙に充満する意志エネルギーと同質の思考エネ、
、ルギーを貴方が出しているときが、貴方の幸せなときであり、反する念、
、いを出しているときが貴方の不幸なときなのです。 、
、 貴方はどんなことであれ、貴方の心に浮かんだ念いには方向性があり、
、ます。 この根本エネルギーと同質の想いがプラスの念いであり、異質、
、の想いがマイナスの念いなのです。 、
、 この根本の意志エネルギーとは 、
、 愛を広げようとする想いであり、 、
、 善を押し進めようとする想いであり、 、
、 正義を貫こうとする想いであり、 、
、 礼儀を重んじる想いであり、 、
、 智恵を伸ばそうとする想いであり、 、
、 勇気を奮い立たせる想いであり、 、
、 何よりも信ずる念いです。 、
、 、
、 優しさであり、 、
、 明るさであり、 、
、 美しさであり、 、
、 希望をそこに内包しております。 、
カ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「コ
お婆さんは嫁をねたみました。 嫁を恨みました。
お爺さんや近所の人に愚痴ばかり言っていました。
息子にも相手にされなくなり寂しい思いを出し続けました。
そしてまた嫁が悪いと裁き続けました。
全て地獄行きの片道切符を買い込み続けていたわけです。
]V (ねたみ心) 47
それでは人の心にわき起こるねたみ心というのは、いったいどうして起きてく
るのでしょうか、妬んでいる自分の姿が好きだという人は一人もいないでしょう。
このねたみ心の対局にあるものは、祝福する心です。 この人の喜びも自分の喜
びと変えてしまう祝福する心をいつも出せる人は、とても幸せな人といえるでし
ょう。
このお婆さんも自分の息子の幸せは祝福したはずです、息子を取り合う自分の
ライバルだから、嫁の幸せがねたましかったのでしょう。 息子に対して祝福す
ることが出来るという事は、本来このお婆さんは誰に対しても祝福の心を出す事
が出来る素質を持っていると云えるでしょう。
xx君、君はどうですか、貴方の大好きな美子さんの幸せは貴方にとっても幸
せなことでしょう。 そして貴方の良きライバルである、土井君に対してはどう
ですか、同期の彼が貴方より先に主任に抜てきされたとき、貴方は彼を妬みます
か、それとも心より祝福できるでしょうか。 少し考えてみてください・・・現
実に起こっている問題ではないですから、今なら冷静に考えることが出来るでし
ょう・・・。 そのいずれであるにしろ、冷静に考えたとき、他人の喜びは祝福
できる自分でありたいと、総ての人は考えるはずです。
まず第一に大切なことは、
ねたみ心や、嫉妬心を出すことはいけないことである。
ということをはっきり自覚することです。 そして次に、
自分の努力により、嫉妬心を祝福心へと調律できる。
という事実を知らなければなりません。
皆さんその事実を知らないが為に、自分の心からわき起こるねたみ心を止めよ
うともせず、だらだらと垂れ流し続けているのです。
一人の人が幸せとなり、 その他人の幸せを祝福する人が出る、
その祝福人の清々しさに触れた人はまた幸福を受け継ぐ。
こうして一人の幸せは、その祝福心を媒介として、幸せの輪へと発展していき
ます。
それに比べこの嫉妬心には行き場がありません。 自分の発した行き場の無い
ねたみ心は結局自分の処に戻ってきて、何よりも一番大切な自分自身の魂を傷つ
けていきます。 その事が解らない人は、自分の放った嫉妬心で苦しむ自分さえ
も人のせいと考えさらに恨み心を増幅し、ますます不幸街道を驀進していきます。