AWC 「ハピエストランド」その2 ひとときのユートピア


        
#2235/5495 長編
★タイトル (GKE     )  93/ 7/25  10: 6  (173)
「ハピエストランド」その2 ひとときのユートピア
★内容

 (レジストレーション)

 さあそれでは覚悟の決った人からいよいよコンピュートピアへお入り頂きますが
肉体から離脱する前に、貴方が又地球社会へ復帰する為の準備として、貴方の現状の
プロフィールのご登録をお願いいたします。

        性別 (1.男性 2.女性)
           (1.既婚 2.未婚)
        子供 (1.なし 2.  人)
        職業 (1.会社員 2.経営者 3.自営業 4.学生 5.主婦)
        年齢     才
            ちなみに中へ入ってしまえば今の年齢は関係なくなります
                貴方は貴方の好きな年齢で存在出来ますし
                貴方の好きな容貌で現れる事も出来ます
                その為ここには身体障害者は居りませんし
                おまけにうら若き美貌の女性ばかりです。

 次のドアを潜りぬければ自動的に貴方の意識だけがハピエストランドへと導かれ
ます。
 もう一度申し上げます。 一旦ここを潜りぬけた方は幸せにならない限り、若し
くは幸せへの確かなきっかけを掴んだ方でない限り2度と脱出する事は出来なくな
ります。 過去にこの世界に入られ、未だに脱出出来ない人々の群れが実は地下に
たむろしている人達なのです。
 そしてついでです、何もかも脱ぎ捨てた貴方なら、今抱いている未来に対する希
望も一旦私にお預け下さい。 このハピエストランド内での思考の障害とならない
ように。 全くの裸となって、そう、丁度赤ん坊のように。
    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 覚悟の決らない人はここでお引上げ下さい、ここからならまだ間に合います。
それでは もう一度幸せへの強い強い希望を心に抱かれ次のドアへお進み下さい。
貴方の強い願望こそが貴方を真の幸福へと導いて行くのです。

             {意識離脱トンネル通過
                        ・
                        ・
               意識だけが抜出した}

V(トレーニング室)

                  {薄暗い世界何もみえない自分さえも}
 私は"インスター”私の声が分かりますか?
 そうです貴方の胸の内から、貴方の中心から響いて来る声のようなもの、それ
が私の語り掛けている内容です。 分かったら返事を下さい。 そうです戸惑っ
ておられるようですが、貴方が想えばそのまま私に伝わります。
 肉体の無い自分に少し恐怖心を感じておられるようですが、どうか心を
落着かせて下さい。
         {回りが明るくなったり暗くなったりしている、不規則に}
何も心配する事はありません。少し訓練すればすぐに慣れて来ます。どうぞ安心
して下さい。
                    {瞬間明るくなる インスターの姿だけが見える}
 やっと落着いたようですね。 今気付きましたでしょうか、回りが明るくなっ
たり暗くなったりした事が。 実はそれは回りの景色が変ったのではなく肉体の
無い貴方が瞬間的に薄暗い地下と明るい地上を行ったり来たりしていたのです。
                                         {ゾーッとした瞬間又暗くなる}
ほらほら気を付けて下さい、心を落着かせて下さい。
                                             {又明るくなる}
そうですそうです。 まずこれが最初の体験ですが、今後貴方が旅を続けるに当
り何度も何度も今のように上がったり下がったり、明るくなったり暗くなったり
するのを経験する事でしょう。 そして今のように心を落着けさえすれば明るい
世界にその瞬間戻れるのだ、という事をしっかりと覚えておいて下さい。 この
事に例外はありません。 たとえ貴方が不意に誰かから殴られたような時であっ
ても、貴方の心が揺れた時はたちまち暗い地下の世界へと堕ちていきます。 そ
して貴方が自らの力で心を穏やかにしない限り、決して明るい世界へ戻る事はあ
りません。 この事を何度も何度も心に刻み、よく腑に落してからこのトレーニ
ングルームを出て行って下さい。
 それではこれから訓練に入ります。
今貴方は肉体から抜出してしまった為自分の体が見えません。 それは貴方が肉
体がないと思った結果が現れているのです。 この思考ワールドでは全てが貴方
の想ったままに、現象が貴方の回りに現れて来ます。

V(思考現象化訓練)

 それではまず貴方の肉体について考えて見ましょう。 生れてからこれまでn
年間慣れ親しんだ肉体が無いのは何かと心許ないものでしょう。 ご自分の体の
事を思い出して見て下さい。 もっとはっきりと明確にそして詳細に、ついでで
すから自分で気に入らない所は補って見たらどうでしょう。 例え足の不自由な
方であってもここでその不自由な足を引きずる事もないでしょう。
                        {段々体が現れて来る、白い1枚布の服をまとって}
 おっと体の事ばかり考えてたからか、服装がいまいちですね。 では今度はそ
の服に色を付けて見ましょう。 青くなれブルーになれと念じて見て下さい。
もう一度邪念を捨て、必ず出来ます私を信じて、そして自分を信じて、心を澄ま
せて、ただ自分の洋服の色に念いを集中して下さい。
                                              {服の色がブルーに染まる}
 素晴らしい、良く出来ましたね。 あと洋服のデザインは慣れて来たらどうぞ
ご自分のお好きな物とご自由にお取替え下さい。 進んでいけば分かる事ですが
この世界では、100年前に来た人はやはり明治維新の頃の格好をしていますし、
200年前に来た人は江戸時代の時の格好をやはりしています。 でもそれが決
りでそうしている訳ではなく、貴方が丁髷を結って現れても一向にかまいません。
 ここでは皆自由です。 貴方もすべて自由だという事をどうか忘れないで下さ
い。 此処には地球上で貴方を縛っていた何物もありません。 貴方を不自由に
していた家庭も、友達も、会社の同僚や先輩も居ません。 欲しい欲しいと思っ
ていた車もすぐ手に入ります。 そしてこれだけは命と引換えでも渡せないと思
っていた、貴方のプライドはどうですか? 仕事上の劣等感もなく、全て想い通
りに成る今、果して守るべきプライドなどあるのでしょうか。 ここでは貴方を
支配するのは貴方だけ、総ての点で貴方は自由なのです。

                        {自分の好みの顔を選ぶ}
                      {女性の時は女性の顔だけ表示}
 次は少し高等な訓練です。
 貴方はこれまで、自分と他人について別個の者という認識しかなかったと思い
ます。 しかしながら意識というものは地球上でも1つ2つというふうに数えな
い物ではないでしょうか。 空気中に発生する水蒸気のように、そして川の中を
流れる水のように。 コップで汲んだ水は1杯2杯と数えますが、1杯めの水と
2杯めの水に果してどれだけの違いがあるのでしょうか。
 貴方の意識は、やはり水のように2つにも3つにも分ける事が可能です。
やってみましょう。 自分は2つに分れる、割れる、分れる。 もっと強く念じ
てみましょう。 もっと強く、もっと強く、もっと、もっと、もっと強く ・・
・・・・・・。
 駄目なようですね。 地球上での長い間にしみ付いた物質意識が邪魔をしてい
ます。 もう独りの自分の存在という物がどうしてもイメージ出来ないのです。
それでは私が貴方を分けます。 よろしいですか? ・・・ いやいや恐がらな
くても大丈夫です。 良く考えてみて下さい、今の貴方は肉体を伴っていません。
したがって貴方には肉体の痛みという物は存在しないのです。 どうか安心して
私にお任せ下さい。 ハイッ 終りました。
                                              {もう独りの自分が見える}
 何れも貴方です。 ではもう一度やってみます。 ハイッ
                                                      {自分が四人いる}
 何れも貴方です。  そしてまず貴方は自分の服の色を黄色に染めてみて下さ
い。 少し心が動揺しているにしては旨くいきましたね。 そして貴方は赤に染
めてみて下さい。 そして貴方は紫に。 最後の貴方は緑色に変えてみて下さい。
大変よく出来ました。
 こうやって洋服の色を変えてしまえば、第三者から見れば全くの他人です。
貴方自身はどう思いますか? あなた方は此処ではこのままそれぞれ別行動を取
る事が出来ます。 一人が本を読み、一人が草刈りをし、一人が昼寝をし、そし
て一人が他の友と語らいをする。  そしてそれは皆自分であるのです。
 それでは一旦元の自分に戻します。 ハイッ
                                                      {元の一人に戻る}
 今の意識をはっきりと記憶して下さい。 これからの旅で必要がある時には又
複数に分れ、時には全く夫々が違った体験をするような事が起るかもしれません。
そして多くの体験を積み、貴方自身が今の数倍に成長した時には、百にも千にも
分れられる自分に成って行く事も知っておいて下さい。

 それでは取敢えず予備訓練はこれくらいにしておきましょう。
 いかがでしょう自信の程は、ひょっとして、このハピエストランドを立ち去る
時には、山の一つも楽に動かせる程に成っているかも分かりません。 そんな貴
方が地球上に戻られた時、貴方の会社で、そして家庭で旨く行かない事など果し
てあるのでしょうか。

V(思考世界<ハピエストランド>)

 この広大な世界を旅する前に、我々のゴッド、エル・ハピエスト様がお作りに
なられたこの世界について概略をお話します。
 貴方がいらした地球上に物理法則が在ったのと同じ様に、この思考ワールドに
も意志法則という物が在ります。 この法則に逆らいますと、丁度貴方が地球上
で急坂を自転車で駆け登るような、又流れ落ちる滝の水を上に持上げようとして
いるような物で、それなりの代償を覚悟しなけらばなりません。
 ここではその第1法則についてだけお話しをしておきます。

          <発展> と <調和>

 エルハピエスト様が最高の価値あるものとして、ここに集う全ての住人にこの
二つの喜びをお与えになりました。 何人と言えどもこの絶対法則の掟から逃れ
る事は出来ません。 この法則から貴方の心がずれた時には、すぐに貴方の心は
波打ち苦痛という咎めがやって参ります。 丁度"孫悟空”の頭に乗せられた輪っ
かのような物だと思えば良いでしょう。 その瞬間貴方は薄暗い世界へと堕ちて
いきますからすぐにその事に気が付くはずです。
 エルハピエスト様はこの発展の象徴としてこの世界に男性を作られ、調和の象
徴として女性をお作りになられました。 貴方が来られた世界に、発展の象徴た
る太陽が在り、調和の象徴たる月が在るのと同じではないでしょうか。

 ここでは総ての人が全く自由に暮しています。
 ちょっと考えて頂きたいのですが、想いがコミュニケーションの手段だとする
と、人の想いは全て筒抜け、隠し事という事が出来ません。  共同生活をしてい
て、何だあいつは嫌な奴だな、と思った瞬間それは相手に伝わってしまうのです
から。 とてもとてもこの世界では気心の合わない人同士が共に暮す事など出来
ません。 同じ様な価値観を持っている人同士が必然的に集り、その代り皆いつ
もいつも実に楽しく暮しております。
 その結果、此処にはいろんな違った価値観を持った達人が集って来る大都会は
在りません、皆それぞれに親しい人が小さな村を形成し、それぞれに好きな時代
で、好きな格好をして、好きな場所で生活しています。 そして明るい世界に共
通している事は、そのほとんどの村は草花のある田園風景であり、コンクリート
ジャングルのような都会風景で暮している方々は非常に希であります。
        このハピエストランドはそんな所です。




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