長編 #2538の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
一郎の提言で梅の咲く神社を散歩することになった。 外の大気はもうすでに春のあたたかさを含み、風はさわやかに流れわたっていた。 神社につくと子供達はかけまわり、親達は静かに梅を見上げる。梅の花は風にふ かれて散りゆき、赤い螺旋のもようを作りだし、頭や服におりたった。 神燈に浮かびあがる鳥居をひとつひとつ抜けていき、神水の冷たい水で手を洗う。 そして、本堂の前につくと思い思いに賽銭を投げ込み、拍をうって手をあわせた。 まだ幼い火斗には十分に理解できず、不思議そうにみんなを見渡していた。 「みんな、なにしてるの?」 「神様にお願い事」 弥生の答えは単刀直入だった。火斗は理解したようで、うんと頷く。 「ぼくも、おもちゃ、たのも」 火斗の無邪気な言葉に、玲がくすくす笑う。火斗と視線の位置を合わせるように、 座り込んだ。 「人間にはどうすることもできないことを、お願いするの。例えば健康とか、幸せ とか、安全とか」 「??」 4才の火斗にはまだ難しいらしく、大きな頭を傾け悩んでしまった。 「まだよくわかんないか。えーっと」 悩む玲に、海が助け船を出した。 「おもちゃ買ってくれるように、で構わないよ、火斗」 火斗はうなずいて、手を合わせて祈りだした。 「そんなのでいいの?」 「火斗の歳の世界だったら、おもちゃを買うことが『どうすることもできないこと』 だからいいのさ。だんだん世界は大きくなる」 海はたんたんと告げる。 玲はしばらく海を見つめ、納得したようにうなずいた。 お願い事を祈り終わった悟は、ふと横を見た。水香は両手をあわせたままじっと、 中に奉ってある鏡を見つめている。 放心しているように目に動きがない。 悟は肘でとんっと水香をこづいた。 「どうした?」 「あっ、うん。何を祈ったらいいのか解らなくなって……」 水香の心の中はいろんなものが混ざっていた。 それが混ざりすぎていて、いまは何を祈ったらいいのか水香自身、よくつかむこ とができなかった。頭を振って、何はともあれ家族の安全をお願いした。 水香の願い。 悟の願い。 火斗の願い。 玲の願い。 海の願い。 鏡はしずかに耳を傾ける。 天には星が、地には土。 きれいな大きな梅にいだかれ、家族と女の子は笑いながら歩く。 「もうすぐ桜が咲きそうだね」 華歩が嬉しそうに言う。 「川べりの桜、今年もきれいよ」 弥生はたもとに真希を抱く。一郎はついた梅の花びらをとってやっていた。 少し離れた後ろで、海と玲はよりそって歩いていた。 「浜野は何をお願いしたんだ」 「私は感謝しただけ」 「何に?」 「みんなに会えたことに」 玲は自信を持ってこたえ、海が恥ずかしそうにしていた。
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「長編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE