長編 #2510の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
愛子。淋しくなるといつもいつも手紙書いていてごめんね。迷惑だろうとは思うけ ど、今の僕は“発狂か、もしくは死か”という状況に追い込まれているから仕方がな くって。 極限の状況っていうか、哲学的にもものすごい行きづまりを感じているこの頃だか ら。 さっき、カワサキのFTを買う、って手紙書いたけど、もう今はやっぱりどうしよ うかな、と思ってきています。時代は変わっているんだ、という気もしています。新 しい時代が僕にも愛子にも始まっているんだ、とカワサキのFTをまた買おう、とか 考えていた僕はちょっと錯覚を起こしていたんだなあ、と思います。 僕は時代がもう変わってきていることにまだ気付いていないで、カワサキのFTを 、愛子とつき合ってた頃の思い出のバイクに、しがみつこうとしていたんだなあ、と 思います。まるで亡霊のようにしがみつこうとしていたんだなあ、と。 眠れなくて悲しい。睡眠薬を飲んだがいっこうに眠たくならない。強い抗不安作用 のある睡眠薬だが、自分はこのまっ暗闇の中でもう何時間転々反側していることだろ う。 眠れないとどうしてこんなに悲しくなるのだろう。ときどき響いてくるバイクの音 。もう朝になりかけている。そして家の新聞受けに新聞が入れられる音。今日もまた 憂欝な一日を過ごさなければならないのかと思うと悲しい。 いっそ、死んでしまいたい。そして永遠の眠りにつきたい。睡眠薬を一気に全部飲 んで。 僕は愛子の胸に抱かれて眠りたい。僕は淋しい。 遠くに聞こえる国道を走るトラックの音。ときどき近くの道を通りすぎる乗用車の 音。みんなみんな淋しげな響きばかりを僕に与える。そして一人っきりのこの部屋が 無性に淋しい。僕は眠れない。眠れない辛さに涙が出て来るような気がする。そして できれば愛子の胸のなかで泣きたい。 また一粒睡眠薬を飲んだ。そしてSSブロン錠というのも3錠飲んだ。 明日の朝、きっとものすごく眠たいままに8時近くになって起きるのだろう。 いろいろなことが頭のなかを駆け巡る。昔のことや、現実のこととは思えないこと とが。 僕が親にしてやれることは何だろう。共産党系の病院の奨学金は断られた。しかも あんなことまでも言われて。 僕が親に最後にしてやれることは何だろう。 『淋しくて電話してたのにいつもいつもいなかったでしょう、高見さん、いつもいつ も居なかったでしょう。』 『ああ、僕は毎日学校帰りには統一教会の処に行ったり、友達の処に行ったりしてい た。僕は愛子から電話が掛かってきているとは知らなかった。僕の家には誰も居なか った。愛子、手紙を出したら良かったのに。何故手紙を出さなかったんだい。僕は毎 日家に帰ってくると郵便箱の中を覗いていた。でもいつも何も入ってなかった。もう 愛子は僕を忘れたんだと、僕を棄てたんだと思っていた。そして僕は統一教会の御姉 さんにとても魅かれていた。年上だけどとても美しいお姉さんに。 助話機のむこうで泣きじゃくりながら時々とぎれとぎれに話している愛子の声が僕 には非現実の世界からの声のように虚しく聞こえていた。 完
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