長編 #2507の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
愛子。僕らの手紙は消えていった。悪魔によって消されていった。愛子、僕らの手 紙は消えていった。もう見えない見えない世界に行ってしまった。紅い紅い炎になっ て消えて行ってしまった。炎になって揺れながら消えていった。悲しいな。 それは僕らの青春の終わり、僕らの愛の終わりかもしれないね。 僕らの青春終わった。愛子はまだ若いけど僕はもう晩年だ。僕は自殺の一歩手前で あがいている。 僕の青春の形見だった僕らの手紙は炎と化して、僕の人生は変わった。本当に変わ った。僕の気まぐれですべてを棄てちまった僕は今ものすごく後悔している。もう何 もかも厭になったぐらいだ。でも自殺したら地獄だというし 僕の人生の危機においてその度に僕を救ってくれた愛子の手紙は僕の一生の宝物と なるはずであった。それを捨てた僕は悪魔にとり憑かれた男。きっと僕は悪魔にとり 憑かれているんだ。 自分の過去を美しく彩ろうとしたあの衝動は悪魔の誘惑だったんだ。 僕には再生できない。愛子の手紙を再生できない。 ときどき湧いてきます。 愛子の言葉の一つ一つが でもすぐに消えてしまう。 僕と愛子のはかない恋と青春のように。 僕は自分の過去を美しく彩りたかった。君の手紙をすべて捨てたとき、僕はあのと きたしかに何かの泣き声を聞いた。もちろんそれは君の泣き声ではなかったけれども 、あれは君を守っていた亡き君の母の霊の泣き悲しむ声だったのかもしれない。でも 僕はあのころ悪魔に憑かれていたから、耳を塞ぐようにしてクルマに乗り、急いで学 校へと向かった。血の色をしたボクの赤いプレリュードで。 戻って来い。戻って来い。僕が捨てた愛子の手紙たち。戻って来い。戻って来い。 ピンク色や黄緑色のあの綺麗な封筒や便箋たち。戻って来い、戻って来い。 12月31日 愛子。僕は眺め渡したよ。戸石の清掃場の丘に大きな大きなゴミの山を見つめなが ら立ちつくした。 僕らの青春の結晶だった愛子の手紙と僕の手紙の下書き、すべてすべてもうなくな っていた。あのゴミの山の奥の奥に詰まっているのかもしれないけれど。 僕は泣きながら立ちつくしていた。そして柔道の帯があればこのまま森の奥に入っ ていって首を括って死のう、と考えていた。また、手首を切って死ぬのも楽な死に方 のような気がして僕はジャンバーのポケットの中をまさぐった。 孤独だった。愛子から電話はかかって来ず、僕は2時頃フラッとこのまえ福田から 無理矢理ヘルメットとグローブ付きで8万5千円で買った400のGSXに乗ってこ こまで来ていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 福岡市南区高宮二丁目 ベスト電器 高宮寮 ○○愛子様 ーーーーーーーーーーーーーーー | 60円切手 | | ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 愛子へ 今日は元旦です。どこへ電話しても誰もいなくて、それに愛子の家には電話したら いけないかな、と思って、それにテレビ見たり本を読んだりするのも馬鹿らしくて、 かと言って町へ出ていっても僕は一人っきりだろうから、寂しくって、たまらなくな って、暇潰しも兼ねて愛子に久しぶりに手紙を出すことにしました。 もうずいぶん前のことになるけれど、一回酒を飲んで電話したことゴメンネ。愛子 は彼氏ができたのかなあ、電話もかかって来ないし手紙も来なくなったし… 僕最近ちょっとノイローゼぎみになって愛子の手紙ほとんどすべて捨ててしまった 。あとで物凄く後悔して清掃場まで行ったけどダメだった。なんだか僕の青春のかた みを捨ててしまったようで哀しくて哀しくて死にたいほど落ち込みました。それに留 年のダブルパンチもくらって。 僕はそれで民医連という共産党系の病院の奨学金を貰うことにしました。月5万円 貰えるので自宅だからゆうゆうと余ります。でも卒業したら熊本の病院で何年間か働 かなければなりません。 では愛子お元気で。暇だったら手紙か電話を下さい。 今日にも会いたい気持ちでいっぱいですけど会えなくて残念です。 ではお元気で。 いつもすれ違ってばっかりね。私たち、いつもすれ違ってばっかりね。 ----愛子は泣いていた。受話器の向こうで泣きじゃくっていた。僕はただ『ああ。 』と力なく答えた。 もう死期を予期した僕のせめてもの答えだった。僕が愛子の寮に電話した30日、 愛子は会社に出てて会社が終わるとまっすぐ博多駅へと向かった。そして僕から電話 があったことを知らなかった。 愛子はあきらめていた。僕をあきらめていた。しかし愛子の明るさがあれば僕はま だ生きられるのだった。一年間の屈辱に耐えて生きられるのだった。 でも遠く博多へ帰っていった愛子。もう会えないだろうかなあ。もう僕らは会えな いのだろうか。 愛子へ。 明日、姉が山口に帰ります。そのこと思うだけで涙が出るほど悲しくなります。な ぜこんなに感傷的になるのでしょう。もう会えないような気が心の底で何かしらして いるような気がするから? 悲しくて悲しくて、もう歳なのでしょうか。でもこんなに哀しくなるのなら今日民 医連の奨学金を断ってきてホントに正解だったな、と心の片隅で安堵感を覚えていま す。 僕はもう歳をとり感傷的になってしまったのだろう。愛子とデートしていた頃はも う3年以上前のことになる。あの頃の僕は元気だった。愛子を待って雪の降る中、バ イクで本屋の前を往復していたぐらいだった。 愛子。僕はあの頃の元気さを取り戻したいけど、もう僕にはその頃の元気さは帰っ て来ないのだろうか。愛子の手紙をすべて捨ててしまった僕には。僕の罪は深く深く 、僕は死後、湖の底で水晶か不思議な色をした石として何万年も留まり続けなければ ならないような気がする。 死が待ち構えている。死が僕の目の前で僕が今にも倒れ込むのを待ち構えている気 がする。 『愛子、結婚しようよ。愛子、結婚しようよ。』 僕の頬には涙が伝わり落ちていた。 『愛子、結婚しようよ。愛子、結婚しようよ。』 僕は再び言った。僕の胸が二つに裂け、体じゅうも顔も血糊でいっぱいになり、も う死ぬ寸前だった。 『愛子、僕を救ってくれるかい。愛子、僕を救ってくれるかい。』 『高見さん、逞しくなって下さい。高見さん、逞しくなって下さい。』 愛子へ 僕には卒業までに自分が破滅する。自分の体がばらばらになる、という恐怖と予感 があります。そうしてきっとそうなる、きっとそうなる、と馬鹿な僕は信じこんでい ます。 僕は馬鹿な男です。そんなことを信じこむなんて。だから不幸が僕にどんどん襲い かかってくるのだと僕はちゃんと解っているのに。 この頃(僕はこのごろ学校へはほとんど行かないで愛宕の○○病院という精神科の 病院に毎日アルバイトに行ってるんですが)僕の目の前に僕を救ってくれるような天 使さまのような女性が現れたような気がしています。僕と同じ歳でカウンセラーかソ ーシャルワーカーかよく知らないけどそんなことをしている女のひとです。向こうも 僕を好きなようです。でもいつもの幻滅で僕はフラれるようでとても心配です。 僕はこのまま死んでゆこう。愛子に手紙を出す前に死んでゆこう。 愛子。僕はこのごろ十時間ぐらいも眠っています。病院のアルバイトから6時半ぐ らい帰ってきてそれから病院の仕事の整理をしたり風呂に入ったりしたあとお酒をガ ブ飲みし食べ物をたらふく食べて寝ています。 そしてこの頃ふたたび希死念慮が現れてきたのです。僕の頭、どうなっているのか なあ、って思います。 僕はこのまま死んでゆこう。お風呂にも入らずに死んでゆこう。お風呂に入らない のはやはり悪いのかもしれない。でもお風呂にも入らず死んでゆこう。 戻ってこい。戻ってこい。僕が捨てた愛子の手紙たち。ピンク色やグリーン色に輝 いていた愛子の手紙たち。戻って来て僕に青春があったことを教えてくれ。
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