長編 #2502の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
あれは寒い冬の日だった。僕が愛子を待っていたのは。雪がコンコンと降っている 12月の寒い日だった。ボクはFTに乗って愛子が来るはずの本屋の前を行ったり来 たりした。でも来たのは愛子と同じクラスの女の子らしい2人連れだったようだった 。 愛子、なぜ来なかったのかい? 僕、待ってたよ。生徒会の仕事があってたのかい ? 僕待ってたよ。FTに乗って本屋の前を行ったり来たりしながら。 (小雪の降るなかボクは愛子を待った。) やがてバイクのスタンドをカタッ、と音をたてて立てて、僕は本屋から道一つ隔た った通りの上に立った。愛子は寒がりやだから、それにコートを持たないから、寒い から来ないのかな、と思った。道一つ隔てた本屋には依然として愛子から送られてき た愛子のクラスメートたちの写った写真の中にいたと思われる可愛い女の子が2人、 ちょうど待ち合わせの6時5分前に来ていた。僕は彼女たちに話しかけるべきだ、と も思ったけど、僕は恥ずかしかったので、僕は茫然とかかしのように、そして地縛霊 のように道一つ隔てた通路の上に小雪に顔を凍らせながら立ちつくしていた。 僕は喋れなかったので…吃って…吃ってしまうので。彼女たちに笑われてしまう。 変な人だと思われてしまう。 僕は茫然と立つくし続けた。そして彼女たち2人は美しくて(とくにそのうちの一 人はとても美しくて)僕は愛子が僕にその子たちと僕をつき合わせよう、私のような ブスとつき合うのはボクに似合わないとかそんなことを思ってそうしたのかな、とも 思った。 愛子へ 家へ帰ると孤独感に猛烈に襲われて、まるで今外で舞ってる吹雪のように孤独感に 襲われて、いたたまれなくて、そして大げさに言えば死にたくなるから、だから僕は いつも帰りは夜10時ぐらいになって、愛子に手紙を出すのがこんなにも遅くなって しまったけどごめんね。 僕は今日も夜の吹雪の中を僕のあの黒いカワサキの250のバイクで駆け抜けてきま した。母は『とても寒かったろ。』と言っていました。 でも僕には自殺した人たちの死後の世界の方が何倍も何十倍も寒いんだ、そして寒 くて辛いんだ、っていうことを知ってるから我慢していたというか。 実は今夜も統一教会の所に9時半までいました。もちろん僕が信仰しているのは高 橋信二という人のGLAですけれど。でも統一教会は明るくて楽しいから。 学一・二月 冬も終わりに近いある午後のことだった。度の強そうな完全にまんまるいメガネを かけた青年が浜ノ町をユラユラと歩いていた。つい最近2500円で買ったUOMOのト ックリセーターとラングラーのスリムジーパンと黒のコンバースを身に付けていた。 昨日留年の発表があり、今日の朝そのことを知ったのであった。進級できるんじゃ ないかなという考えがあったのでやはりショックだった。 ボクはアーケード街をフラフラと歩きながら、国家上級の試験を受けることを考え ていた。泥沼だった。耐えられないほどの心の渇きと言おうか焦りに苛まれていた。 国家上級の試験に受かって国立考古学研究所にでも入ろうと考えていた。それは東京 にあるだろうから試験に合格すると東京に住むことになるだろう。ああ、淋しいなあ 。とっさに僕の頭に愛子のことが浮かんできて愛しさと言おうか淋しさと言おうかそ んなものに耐えられなくなった。愛子のボクへの思慕が急に思い浮かんできたのだ。 ああやっぱり思われれば思われた人はその人を恋しくなるのだろうなあと思った。こ のように木村さんもボクが思慕していることを知ればボクを愛しくてたまらなくなる んだろうなあと思った。 でもボクが東京に出れば親も淋しいだろうなあと思った。親にとってはこのまま長 大の医学部に通ってそして卒業したあとも長崎に居てもらいたいのだろうなあと思っ た。 ホントに東京に出れば淋しいなあと思った。一人ぼっちになったボクはいったいど うしたらいいのだろうと思った。東京で彼女をつくろうかなあ。でも愛子が淋しいだ ろうなあ。愛子を東京に呼んで一緒に生活しようかなあ。 東京に住むことを考えたらなぜこんなに愛子が愛しくなるのかなあと思った。なぜ 木村さんのことが思い浮かんでこないのだろう。木村さんは適当にボクを思っている だけだけど、愛子は18才の純な心でひたむきに思うからだろうなあと思った。(木 村さんは29才だから) 愛子に誕生日のプレゼントをやらなければならないなあと思った。4月3日まで日 日が迫っているので急がなければならないなあと思った。 愛子へ 僕はまた落第してしまいました。これで2度目です。愛子に会いたいなあと思いま す。愛子は福岡へ行ってしまったんですか。それとも長崎なのですか。長崎のどこに 行ったら愛子に会えるのですか。 僕はちょっぴり愛子の人生を狂わせてしまった後悔とそして淋しさに包まれながら これを書いています。長崎の新地店に宛ててこの手紙を出そうと思っています。今日 浜ノ町を一人でぶらぶらしているとき何度かベスト電器へ行ってみようとも思いまし たけど恥ずかしくて行けませんでした。それで家に帰ってきてからこれを書いていま す。 春の風が吹いてきたのに、僕は淋しさに打ちひしがれ、愛子に手紙を書いたり、留 年の通知が来ていないかと毎日ポストの中を確かめたり、淋しさに打ちひしがれて浜 ノ町を一人で歩いてきたりしているけど、僕の心のなかにポッカリと空いている淋し い空洞には何も満たされない。そして僕は淋しさをこらえたまま、ただ黙々と毎日を 送っている。ビデオを見たり何をすることもないまま。 愛子へ 愛子。僕は今たまらない不安に襲われている。また留年した。また学一をやり直さ なければならないようになった。 まるで僕と愛子の恋のようだね、桜雪 (桜の散る絵と、散る桜の下にいる僕の絵) 昭和60年4月4日記す 待ってます。でもボクは愛子を束縛したくありません。ボクは愛子に楽しいOL生 活をしてもらいたいのです。 待ってます。楽しいOL生活をしてもらいたいのです。でも、最後には、ボクの元 に帰ってきて下さい。 (愛子との電話。4月5日のことだ。) 元、元元気、ん、元元気かな? うん。 うん。また留年してしもうたもんね。 いや、ま、またまた、りゅ、留年したけんやっぱい落ち込んではおったけど、うん うん。 うん。 うん。 うん。 いやいや(いやや) うん。 うん。 えっと深夜料金は8時からやったかな。8時やったかな。9時かな。 うん。 うん。 … … … うん。あれ、3日誕生日やったやろ。いや、4月3日 うん。 うん。 あっ、あっ、うん、うん、(チャリン)
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