長編 #2486の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
りぃだぁずぼいす 推理研に寄せられた一言感想。そんな読者の声を、一部掲載します。 「江戸川乱歩殺人事件」の時代がかった台詞が気に入りました。東京オリン ピックどころか、文明開化の頃みたい。続きでの薫子の活躍、楽しみにしてま す。(1回生 S・G) 「最初のアリバイ」がよかった。登場人物名を考えるのが面倒だったのかな と思ったが、読み進むに連れ、その訳がよく分かった。(3回生 N・T) 玉置三枝子名義のいわゆる「奇妙な味」のショート作品がなくて、ちょっと 残念。コンゲーム小説はまずまず。(助教授 S・Y) 「時森邸の殺人」、解答編を読んで、やっとすっきりしました。全然、分か らなかった。こんなのを解く人がいるなんて、信じられません。ましてや考え て作る人の頭、どんな構造になっているんでしょう?(2回生 E・W) エッセイ、「たかが本格されど……」は、現状に逆行しているように思う。 一部出版社の仕掛けによって本格が復権したように見えるが、それは錯覚で、 本流はスケールの大きなサスペンス物にあるはずだ。そのことを筆者はよく理 解しておいてほしい。(3回生 Z・O) 改竄は人のためならず 本山永矢 俺は徳田春男。今、彼女を殺したところだ。いや、元・彼女って言うべきだ ろうな。 最初見たとき、高草礼子は慎ましやかで、清純そうで、俺の理想のタイプの 女だった。俺はそのときから積極的に礼子にアプローチし、見事に彼女を射止 めたのだ。 一年ほど関係は続いたが、付き合いが深まるにしたがって、俺は礼子の嫌な 部分ばかりが目につき始めたのだった。と言うよりも、礼子は最初から猫を被 っていたに違いない。俺がひかれた点さえも、日に日に消え失せていく……。 破局が決定的となったのは、礼子が他の男と俺とを二股に掛けていたと分か ってからだ。その噂を聞いたとき、信じられない奴だと思った。 もう一人の男の名は江藤照彦といい、俺とは全く別のタイプと言えるだろう。 自分で言うのも何だが、俺は自分が野生的な魅力を持っていると思っている。 江藤の奴は正反対に、男にしては色の白い、眼鏡を掛けた学者タイプではない か。礼子がどういうつもりで、俺達を両天秤に掛けているのか分からなかった が、俺としてはそれだけで許せない行為だ。俺が理想とする女は、男を手玉に 取るようなことをしてはならない。一人の男に尽くして尽くして終わる、清純 な存在でなければならないのだ。 俺は外見と頭の中身が一致しているようで、物事を計画立ててやった試しが ない。行き当たりばったりである。それはこの度の殺人という重大事でも変わ らず、勢いに任せて高草礼子を殺すことに決めた。 いや、実は人並の犯罪者のように、完全犯罪となるべく、一応は殺人の計画 を練ってみた。しかしである。普段から計画を立てない俺に、完全犯罪の計画 が、そう簡単に思い付くはずがないではないか。殺人を決意してから、時間は 流れた。先の見えない計画に頭を捻っている間にも、俺の礼子に対する軽蔑・ 恨みはとどまることを知らぬかのように、膨れ上がっているのに。 もはや辛抱できなくなった俺は、何も考えずに礼子を殺すことにした。聞き かじりだが、突発的犯罪の方が計画犯罪よりも検挙しにくいらしいではないか。 そうだとも、夜、公園でいきなり刺し、ハンドバッグでも奪い取り、その場か ら逃げることさえできれば、誰が犯人なのか分かるはずがない。強盗がたまた ま高草礼子という女を獲物に選んだだけ。そうなるに違いない。 俺はそんな気持ちで殺人を実行に移した。ただ、よくよく調べてみると、礼 子の歩く道に、さっき言ったような好条件の場所がないのだ。はたと困ってし まったが、悩む必要はないのだ。分からないように彼女のマンションの部屋に 行き、音一つ立てずに彼女を殺してから、また誰にも見られないように出る。 もちろん、部屋の方は強盗が入ったように、適当に物色しておくのだ。これな ら同じ結果になるだろう。 そして俺はさっき、それを実行したばかりなのだ。礼子の首に両手をかけ、 思い切り力を込めて締めてやったら、あっさりと死んじまった。騒ぐ暇を与え ず、見事なものだったと自負できる。 さて、これから物色をしようとしたそのとき、俺は重大な物を発見した。 俺は礼子を壁に押し付けて締め殺してやったのだが、礼子は最後の力を振り 絞っていた。壁の、彼女の手の高さの位置に、傷があったのだ。礼子がその長 い爪で必死に彫った文字らしく、やや斜めを向いているが、どうやら「ト」と 書こうとしたらしい。 俺の名字、徳田の「ト」ということらしい。これは危険だ。俺はこれに気付 いた自分の幸運を感謝すると共に、どうすべきかを考えた。 真っ先に思い付いたのは、文字をさらに削って読めなくしてしまう手段だっ たが、これはうまくない。何故なら、壁を不自然に削ってしまうことは、この 殺人が強盗の居直り殺人に見せかけた物だとばれてしまいかねない。 この追い詰められた状況で、俺が思い付いた閃きは、素晴らしいものだった と自慢したくなるほどだった。俺は文字に手を加え、他の奴に罪を擦り付ける ことにしたのだ。 誰に擦り付けるか? ぴったりのがいるではないか。俺と共に天秤に掛けら れていた江藤照彦だ。「ト」の前に「エ」と付け加えてやれば、「エト」にな って、自然と江藤に疑いが向けられるだろう。江藤には高草礼子を殺す動機が あるのだ。正に好都合だ。ついでに「ウ」を尻尾に付けてやって、「エトウ」 としてもよかったのだが、そこまですると偽造がばれるかもしれないと思い、 「エト」にしておいた。 無計画犯罪が突如、計画犯罪の様相を呈してしまったが、俺は何も困りはし ない。それどころかこれなら、江藤が犯人として捕まるかもしれない。迷宮入 りよりもいいではないか! 俺は意気揚々と、しかし細心の注意を払って、礼子の部屋を出、誰にも知人 に見られることなく、自宅にたどり着いた。 ところが、俺は、礼子が殺されたという記事が新聞に出るか出ないかの内に 容疑者として引っ張られてしまったのだ。 「死んだ高草礼子、知っているね?」 刑事は高飛車な態度で俺に聞いてきた。すでに、犯人扱いの域だ。俺は自分 に、なあに、相手は何も知らないんだ。俺が礼子とつき合っていると聞き込ん だだけで、目星を付けただけさと言い聞かせた。それから、応対する。 「知っています」 「素直で感心だな。君、彼女を殺したね?」 「そんな! 僕はそんなこと、していません」 決めつけに出た刑事に対し、俺はか弱い一般市民のように答えてやった。演 技としては抜群だろう。 「ほう、そうかね? 駄目だなあ、肝心なところは素直じゃないなんて、よく ないぜ」 「いったい、何の根拠があって僕を犯人だと決めつけるんです」 「根拠? 簡単だ。被害者は殺される間際、必死の思いで犯人の手がかりを残 してくれたんだよなあ。女の執念は恐ろしいぜ」 「え、そんな……」 「そんなはずはない」と言いそうになるところを、俺は言葉を飲み込んだ。 誘導尋問かもしれない。だが、それにしてはあの文字のことを明かすのが早い ようだが。 「あの……何て書いてあったんでしょうか?」 「知りたいか? こうだよ」 刑事は懐から一枚の写真を取り出し、スチール机の上にばんと音を立てて置 いた。 「あ……」 俺は絶句してしまった。「エト」と読めるように書いたつもりだったのに、 警察の連中め、ひねくれてやがる。「エト」を立てて読んでやがる……。 それは「HT」と読めた。そう、HARUO−TOKUDA、俺のイニシャ ルになっちまう。 馬鹿げた話だ。俺はいい考えだと思って、あの細工をしたのに、こうなるな んて……。やっぱ、改竄はよくねーわ。 −終わり 舞台裏からマジシャンを 剣持絹夫 今回もカード当てのトリックをいくつか紹介してみます。もちろん、どこに でも売ってある普通のカードを用います。 まず一つ目。カードを一組取り出し、自分で何度か切ってみせます。疑う観 客がいれば、その人にも切らせてあげるとよいでしょう。 それから観客の一人を選び、舞台に立ってもらいます。そして、カードを手 に持ったまま、「好きなところからカードを選び、引っ張り出してください」 と言います。相手がカードを選びましたら、残りのカードを手にしたまま、後 向きになります。そして続けて、「私は後ろを向いていますから、そのカード を皆さんにも見せてあげてください。そして皆さんで覚えて」と指示します。 「覚えましたか?」と訪ねて、イエスの答が返ってきたら、また前向きにな ります。そしてカードの山を見せ、「では、そのカードを裏向きにこの山のど こでもいいですから、差し込んでください」と言います。カードが山の中にき っちりと入ったら、こう宣言します。「これであなたがあなたの意志で選んだ カードはどこへ行ったか分からなくなりましたね。でも、このカードは不思議 な物で、私以外の人が触ると、そこに個性が生まれるのです。そうですね、こ の場合、カードの山を私の背中越しに手渡すだけで、その個性が生まれます」 宣言と同時に、カードの山を左手から右手に、自分の背中越しに渡してくだ さい。そして、裏向きのまま、上から順に徐々にずらして行きます。やがて、 表向きのカードが現れます。それが相手が選んだカードなのです。「ほら、個 性が出ましたね。あなたの選んだカードは元気がよくて、このように一枚だけ ひっくり返ってしまいましたよ」と、とぼけた調子で言いながらカードを出せ ば、効果倍増でしょう。 え? 種明しになっていない? そうでした。実は後向きになっている間に、 細工をします。後向きになったとき、手元に残ったカードの山の内、一番底に あるカード(ボトムカード)をひっくり返し、さらにそのボトムカードが一番 上に来るように持ち直すのです。それまでトップにあったカードが底にきます。 こうして仕掛をした山をしっかりと片手で持ちます。何故って、少しでもず れたら種が見えてしまうからです。その山に相手のカードを裏向きに戻しても らいます。そして、背中越しに手渡すときに、再び上下を反対にして持ち換え るのです。この通りにして、最後に徐々にカードをずらして見せていけば、先 ほど記したような不思議な現象のように見せることができます。 もう一つ、後向きになってやるカード当てを。今度はもっと簡単です。ただ し、使用するカードは紙製の物にしてください。その理由はすぐに分かります。 まず、一組のカードを取り出し、切ってもらい、カードを選んでもらうまで は同じです。選ばれなかったカードは使いませんから、テーブルにでも置いて ください。カードを覚えてもらってから、演者は後向きになります。そして腰 の辺りに手を持ってきて、そこへカードを手渡してもらいます。 手はそのままの状態で、前向きになります。「指先の感覚でこのカードが何 か、当ててみましょう」と言います。そして片手を考えるように額のところに 持ってきます。そのとき、片手の指先でカードの端を破り取ってくるのです。 ほんの少し、数字と種類が分かるだけで結構です。その切れ端を盗み見れば、 簡単にカードの種類を知ることができます。あとは見せ方の問題。おもむろに 「分かりました」と言って、色、種類、奇数か偶数か、数字という順に言い当 てていくのも一興です。この奇術は、カードを破くという、日本人には馴染み のない発想を種にしていますから、期待以上の効果が上がることでしょう。 注意すべきは、破った箇所を見られないように、そこを持ってカードを山の 中程に押し込むことです。次のカード奇術を行うときは、うまく別のカード一 組とすり替えることもお忘れなきよう。そして何よりも、プラスチック製のカ ードですと、そうそう簡単に破り取ることはできませんから、くれぐれも事前 のチェックを怠らないようにしてください。紙製のカードは750円程度で売 っているはずです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ここまでコピーしてきて、ふと次はと見ると、あたしの原稿。ミステリーの 推薦も書きにくいんだけど、こっちの連載も行き詰まりそうでコワイのよねー。 そもそも、マキと桜井君にエールを送るつもりで書き始めた物だから、その役 目を果した(前作「焦点」参照)今となっては、これを続ける意味が薄れてき ちゃっている。 もちろん、ネタはちゃんとあるんだけど、ちんたらと書いていたら、どうも 調子に乗れないの。それに、明智小五郎を出すのも疲れる原因の一つ。いくら 小説で読んで知っているからと言っても、他の人(あの江戸川乱歩よ!)が生 み出した名探偵、おいそれとは動かせないじゃない。この辺りの不自由さも、 本当に辛いなあ。 まあ、愚痴はここまでにして、作業を続けようっと。 あたしは原稿をコピー機にセットした。江戸川乱歩殺人事件のタイトルが見 えた(このタイトルにしたって、あまり深い意味なしに付けちゃったなあ。ど うしよう?。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −続く−
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