長編 #2423の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (苦悩の少年) 苦しい少年時代を送ってまいりました。毎日毎日地獄の苦しみに耐えてきました。 人知れず苦しんできました。自分ほど不幸な少年はいないと信じていました。 毎日の学校が苦痛でたまりませんでした。学校さえなかったらといつも思っており ました。毎朝毎朝、学校へ行きたくないので寝坊ばっかりしていました。怠け者だか ら寝坊するのではありません。苦しいから寝坊するのでした。 まだ小さかった頃は、学校行きたくなくて、ダダをこねるのでした。大きくなった 頃、学校行きたくなくて、朝、寝床の中で、布団を噛んで声をたてずに泣いたことも ありました。 ※(途中、逸損) 幼心にも、地獄を感じておりました。人生の非情さを感得しておりました。しかし 、人の心だけは信じてまいりました。僕は盲目的なほど、人の心を信じてまいりまし た。僕の周囲の人たちは、みんないい人ばかりでした。 (未完) 二月二十三日記 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 生きることは苦しむことなんだ。こういう言葉が灰色の天井を見つめて寝そべって いた僕にポッカリと湧いてきた。僕はこの言葉を本で読んだわけでも人に聞いたわけ でもない。ただ16歳を目前にした僕の心に前兆もなく突然湧いてきた。まるで僕が その言葉を悟るために今まで生きてきたかのように… 僕はソッと窓外へ眼を向ける。するとそこに樹木や小鳥たちが飛びこんでくる。あ あ苦しいんだなあと感じとれる。生きるために苦労している。老いさらばえて今にも 枯れ朽ちようとしている樹木と飢えに追われて餌を捜し回っている小鳥たち… そうだ。生き物って物質世界の異端児なんだ。物質の本来の姿は月なんかのように 岩と砂だけの灰色の世界なんだ。だから生き物は苦しまねばならぬ。生き物は本来の 姿から離れて自分勝手に動き回っている。 つまり生き物は生まれながらにして罪人なのだ。その罪は死ぬまで離れぬだろう。 ぼくらはその罪を背負って毎日を生きてゆかねばならぬ。夕暮れと憎しみに包まれた 日々を、満たされぬ欲望と渇ききった大気に包まれた日々を。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (杏子の夢) 海が燃えているみたい。敏郎さん。海が燃えているみたいね。 (車椅子の杏子はそうして敏郎さんを見上げました。強い浜風が敏郎さんの髪を なびかせていました。杏子の髪も強い浜風に炎のようになびいていました。もう寒く なくなってきて少し熱気を帯びた浜風に変わっていました。) 『ねえ敏郎さん。なぜ私たち生きてるの。なぜ私たちこうして生きてるの。ねえ、敏 郎さん、私たちこんなに苦しんでまで。』 (昨夜のことを杏子は再び敏郎さんに尋ねていました。敏郎さん、ちょっと困ったよ うな表情をして杏子を見下ろしていました。そうして敏郎さんの目、とっても悲しそ うでした。今までの苦しかった敏郎さんの一日一日がその瞳の中に刻まれているよう でとってもとっても悲しそうな目でした。 『僕にも解らない。僕にも全然解らない。僕らが何故生きてるのか、生き物って何な のか、僕にも全然解らない。』 (敏郎さんはそう昨夜と同んなじ答を繰り返していました。敏郎さん、とても困った ふうに目をうつむけて呟くようにそう言っていました。私、また変な質問をしてしま ったことをとても後悔しました。敏郎さんをとても困らせたようで。すみません。敏 郎さん。でも敏郎さんが返事くれないからよ。もう一ヶ月近くも返事をくれないから よ。だからなのよ。だからこんなこと言ってしまうの。私、敏郎さんからの返事が来 ないのでとても悲しいからなのよ。だからなの。敏郎さんのせいよ。 潮風がますます強く吹いて杏子と敏郎さんの髪を炎のようになびかせていました。 そして海は沖の方に白い波が立ってまるで海が燃えているようでした。私と敏郎さん の今までの苦しかった悲しい過去を忘れさせるように海が今、燃え上がっているよう でした。悲しく、悲しく、白く燃え上がっているようでした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 敏郎さんに憑いている悪霊さん、離れてお行き。 敏郎さんを苦しめる悪霊さん、離れてお行き。 杏子が許さないわよ。 敏郎さんに憑いている悪霊さん、離れてお行き。 杏子さん、僕、生きるよ。 僕は身を震わせて決意した。 『敏郎さん、頑張ってね。勉強、本当に頑張ってね。』 高校をやめることを思っていた僕の耳にはその言葉も虚しくしか聞こえなかった。 しかしこんなにまで僕のことを思ってくれている杏子さんのことを思うとやはり僕は 頑張るしか他に方法はないようだった。 もう高校をやめよう、と思っていた僕の耳に、その声は悲しくあまりにも辛く届い た。 『敏郎さん、病気で苦しんでいる人たちのために生きて。敏郎さん、病気で苦しんで いる人たちのために生きて。』 『ああ、僕も今日そう思っている。僕と同じような病気で苦しんでいる人たちのため に自分を犠牲にして生き抜くべきだと----僕はこの頃、毎日毎日、高校をやめること を考えている。そんな僕だけど----僕と同じような病気の人はたくさんいるのだから 、自分の苦しさに負けずに生き抜くべきだと、自分は自分と同じような病気で苦しん でいる不幸な人たちのために、傲慢な思いかもしれないけれど、僕は今そう思ってい る。その人たちのため、ただそれだけに自分は生き抜くべきだとそう思っている。』 『あ、杏子さん。』 寒い寒い県立図書館の片隅で杏子さんが勉強していた。僕の座っている向こうの方 の壁の前の席に杏子さんは座っていた。もう7時すぎで外はまっ暗だった。そして今 日は雪が今にも降り出しそうに寒かった。 杏子さん。寒そうだった。僕も寒かった。図書館の中にはあまり人は居なくて、そ うしてイチョウの木の向こうに白いぼたん雪を見たようにも思った。 厚い靴下を履いてくればよかったのだけど、朝急いでいて持ってきていなかった。 寒かったけど僕は一生懸命勉強していたし、杏子さんも僕の帰るまで勉強するようだ った。 (僕はこの日、学校を休んで図書館で勉強していた。) 赤いぼたん雪は杏子さんの涙のようだった。 いつも閉館まで勉強している僕だから閉館まで杏子さんは僕を待っていてくれるよ うだった。 寒い寒い図書館の中で 杏子さんは赤いマフラーにくるまって寒さに震えながら僕を待ってくれているよう だった。 『敏郎さん、勉強頑張ってね。杏子、図書館が閉まるまで待ってるから、杏子もそれ まで勉強しているから、敏郎さん勉強頑張ってね。』 僕が立ち上がったとき君も立ち上がった。でも僕はそそくさと本やノートを鞄に入 れて立ち去っていった。君を置いて雪の降る戸外へと走るように出ていった。 僕は逃げるように走っていった。君があとを追って来るのじゃないかと雪の降る中 をバス停まで逃げるように走っていった。 僕は走った。君と喋るのが恐かった。君とまだ喋ったことはなかった。僕は幻滅さ れることが何よりも恐かった。 雪の中を僕は走った。君が僕と喋って幻滅することが、そして笑われることが、僕 はとても恐かった。 寂しかった、寂しかったからなのよ。だから私、現れでてきたのよ。寂しかったの よ。敏郎さん。---- 寂しかったからなの。寂し過ぎたからなの。敏郎さんの勉強の邪魔になると思った けど私、寂しかったからなの。 寂しかったから私、敏郎さんの前に現れてきたの。早く行かないとバスに遅れてし まうでしょ。私、歩けるから、駆けることもできるから、敏郎さん立ち止まらないで 。早くバス停へ向かって。---- (僕は県立図書館の閉館の7時50分まで一生懸命勉強して今諏訪神社前のバス停へ と向かっていた。粉雪が舞っていた。黒い夜空に粉雪がまっ黒い空から降りてきてい た。とても不思議な光景だった。 冷たい夜の闇に杏子さんが立って僕を見守ってくれていた。寒くて寒くて雪が舞っ ているのに、杏子さんはバス停へと駆ける僕を見守ってくれていた。 『幸せになりたいの。敏郎さん。私、幸せになりたいの。』 ----海の底から杏子さんが囁いた。冷たい冷たい冬の海の底から杏子さんがそう囁い た。 『そのためには題目を唱えなくっちゃ。題目を唱えなくっちゃ。“南無妙法蓮華経” と題目を唱えなくっちゃ。』 ----僕は冬の海に寒さに震える杏子さんにそう言った。でも寒さは厳しくて、杏子さ んが題目を唱え始めても寒さはだんだんと強くなるばかりだった。 図書館に居ても波の音が聞こえてくる 悲しいゴロの駆けてくる姿と 車椅子の上で僕を見つめている杏子さんの姿が 波の音と一緒に思い出されてくる もう僕の頭は疲れきっている。でも杏子さんの頭も頃の頭も全然疲れきってない。 ただ僕の頭だけがものすごくものすごく疲れきっている。 あっ、海辺で杏子さんが歌っている。 ----僕はさっと窓を開けた。外は凍てつくような寒さだった。でもたしかに聞こえた 。杏子さんの歌声が僕の耳元まで遠いペロポネソスの浜辺から聞こえてきていたよう だった。 闇が辺りを支配していて、夜の12時だった。杏子さんが海辺に出て歌を歌ってい ることなんて、(こんな寒いとても寒い夜なのに)ある訳がないのに… ----でも耳を澄ませば、凍てつく夜気をつんざくようにして浜辺の波音が僕の耳に届 いていた。海辺から300mも離れているのに波のせせらぎの音が僕の耳に聞こえて くるはずはなかった。でも僕は聞いた。久しく行ってないあの浜辺の波の音が一人ぼ っちの孤独と勉強に疲れきった僕の耳に聞こえてきていた。 でもなぜ杏子さんが今頃。それにゴロと一緒に僕を呼んでいるなんて僕はとても訝 しかった。
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