長編 #2418の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
----僕はウルトラマン---- 読む順番が迫ってきた僕の目に天国への門のように窓が太陽の光を乱反射して輝い ていました。それは眩しく僕の心を幻惑しました。走っていこうかな、その窓に。 でもなぜ僕は今まで気づかなかったのだろう。こんな解決策があったことを。 今まで悶々と悩んできたことが馬鹿らしく思えた。吃りを直すための本を高い金を 出して通信販売で買ったりしたことなど。そして学校を休んで家でその本のとおりに 発音練習を繰り返してきたことなどが。 その門は天国への門で神さまが僕を待っている。 僕は飛んでいました。長崎港を見下ろしながら鳥になっていました。高校に入って からよく願い続けたことが遂に現実になったのでした。 僕は高校に入って以来、グラウンドから空を見上げては悠々と飛び回るトンビを見 てよく不思議なもの思いにとらわれていました。ああ、自由そうだな。何にも縛られ てなくて自由そうだな。 高校の始めの頃、その頃僕は幸せだったから単なるかすかなあこがれを覚えただけ でした。でも七月八月とたち喉の病気のことで僕の憂愁は深まり、九月になり吃りが ひどくなってから僕は大空を悠々と飛び回るトンビをあこがれというのか解らない気 持ちで見つめるようになりました。 僕は幸福なトンビ 何もかも足かせから自由になったトンビ 僕は自由なトンビ もう座らせられることもなくなったトンビ 僕は自由なトンビ どこまでも飛んで行けるトンビ 僕は自由なトンビ 僕は幸せなまっ白いトンビ このまま杏子さんのいる純心中学に下りて行こうかな 僕は現国の授業に帰りたくないのでした。このまま現国の授業が終わるまで大空を 飛び回り続けたいのでした。僕には帰れるところがありません。僕はさっき現国の授 業のとき一文読みの順番が回ってきたときに突然窓際へ走っていって窓から大空へ飛 び立ったのでした。みんなあっけに取られていたようでした。 それで僕は教室に帰れないのでした。 (僕はウルトラマン) 僕はウルトラマン 強い強いウルトラマン 長崎港を見下ろしながら立山の山の上をトンビと一緒に飛んでいるウルトラマン 僕は強い強いウルトラマン 僕はウルトラマン 強い強いウルトラマン 僕は強い強いウルトラマンのはずなのに 実は授業中吃って声が出てこなかったため教室の窓から飛び出したウルトラマン 学校って何なのかな 僕やめようかな そうして教科書に載ってた“魚釣りのジプシー”か田舎の祖父のところで農業しよ うかな 僕は強い強いウルトラマン 僕は飛んでいました。眩しい眩しい青空でした。僕はこのまま消えていきたかった 。眩しい眩しい青空のなかに僕の魂は溶けてゆき僕の躰もなくなってしまうのだった なら。そうしたら僕の苦しみはすべて消えてなくなるのに。 トンビがいます。みんな黒い黒い色をしていてみんな僕の遠くにおたがい遠く離れ てジェット機のように飛んでいるだけです。みんな僕に知らんふりして悠々と一人一 人飛び回っているだけです。 ところどころ薄っすらと雲がかかっていてどこまでも大きい空でした。ちっぽけな 教室の中とちがって目の眩むような大きな大きな空です。あっ、あそこに浮かんでい るのはUFOかな。僕はゆっくりと旋回して近づいてゆきました。UFOの母船なの かな。ゆったりと動かないで葉巻みたいな形をしていて、まるで空のクジラのようだ な。空の大きな大きなシロナガスクジラのようだな。 僕はキューンとその母船から離れてなおも高く高く上空へと舞い上がっていきまし た。 【神さま】『敏郎君、戻りなさい、地上に戻りなさい、君はまだ生きなければなりま せん。』 僕は悪魔の誘惑に打ち勝ち、急降下して杏子さんのいる純心中学へと行くことにし ました。 僕はグングンと遥か上空の天空から地上へと舞い降りていました。そして次第に僕 に苦しさが(言語障害や喉の病気などによる苦しさが)怒涛のように舞い戻ってきて いるのを感じていました。朧ろだった僕の意識はそして地上に近づくにつれどんどん はっきりなってきました。 やがて僕は純心中学と高校の木立の中に舞い降りました。僕はウルトラマンの格好 をしたままキョロキョロととても不安そうに辺りを見回しました。カサカサと木の葉 がウルトラマンの僕の躰に触れて音を立ててます。 もう一年三ヶ月も見ていない杏子さんでした。僕は中庭を身を屈めながら杏子さん の教室を捜し始めました。杏子さんの教室は一階の窓からすぐに池の見える教室だと 手紙に書いてあったことを覚えていました。 僕には一年三ヶ月ぶりの杏子さんの姿でした。やっぱり可愛いなあ、と思いました 。車椅子の少女だといってもこんなに可愛いならほかにも杏子さんを好きなのがいる かもしれないと思って心配になりました。 杏子さんは同じ教室のどの女の子よりも大人びているように思えました。でもこれ は杏子さんの顔がこんなに綺麗だからなのだろうなあと思いました。 (杏子さんの顔はスフィンクスの顔) 杏子さんの顔はスフィンクスの顔。 いつか手紙で言ってたようにスフィンクスの顔。 杏子さん、教室の一番後ろにスフィンクスのように座ってました。 でもとってもとっても眩しくて、美しさが辺りに輝き渡っていました。 杏子さん教室の中で一番美しくて 窓際の前の方の席にも可愛い女の子がいて 僕正直言ってそっちの方に心惹かれたかもしれません。 でも杏子さんとってもとっても美しかった。 中三のときから1年3ヶ月会ってないから 久しぶりに杏子さんを見たことになるけど 以前と違ってずっとずっと大人びてしまってて、僕びっくりしました。 杏子さんの顔とってもとっても美しい顔で 窓際の女の子よりもずっとずっと美しい顔でした。 …でも、杏子さん、まるで、銅像のようで、僕、やっぱり窓際の女の子の方に心惹 かれました。 杏子さんの顔がどんなに美しくても 僕の心を満たさない何かがあって僕は君を本気になって強く愛せないものがあるの は確かです。僕はそれに中三の終わり頃から気づいていました。何かが君を僕から離 しているようなそんな気がしてなりません。ごめんなさい。杏子さん。 僕は帰らなければいけないと思うようになってきました。僕は飛び立とうと空を見 上げました。 僕は泣いていました。ふたたび飛び立ちながら泣いていました。なぜこんなに涙が 溢れてくるのかわかりませんでした。 僕は美しい杏子さんが車椅子の少女だということが悲しいのだろうと思いました。 なぜ杏子さんが車椅子の少女でなければいけないのだろう、と思って悲しくて僕は泣 いているのだろう、と思っていました。 僕は空を飛び始めました。早く学校に帰らなければいけないと思ったからでした。 僕は飛んでいました。飛びながら僕はさっき見た杏子さんのことを朧ろに思い出して いました。でも杏子さんも泣いていました。杏子さんも僕と同じように悲しくて泣い ていました。僕も空を飛びながら悲しくてたまりませんでした。 それは3分間の夢だった。周囲のみんなは言葉が出て来ずもじもじしている僕に振 り向くこともなくじっと背中を見せていた。それは哀れみの背中だった。打ち震える 僕。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 敏郎 高一 九月 もう夏が終わり、秋が来ようとしています。僕は今日、昼授業が終わってから一人 でずっと市民会館の七階で勉強しています。昨日の夜はものすごい雨が降ってました けど、いつものように雨がたくさん降った日は僕の心は何故か爽やかです。今週の日 曜日体育祭です。だから今日はこんなに早く学校が終わりました。でも僕は何もする こともなく一人この市民図書館では知ってる人が居たらヤバいなあ、と思って。 ずっと黒い雲が朝から立ち込めています。僕がこの市民会館へ来るときもそうでし たが、ときどき雨が降って来ています。なんだか僕らの(ときどき悲しくなったり寂 しくなったりする)心のようです。 この雨がやむと秋になるんだなあと思います。悲しい秋がやって来るような気がし てなりません。(いつも秋は辛く悲しかったから) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 杏子さんへ もう秋になり、寒くなくなってきました。朝なんか起きるのが辛くなってきました 。(特に僕は学会員だから朝の勤行をしなければいけないので。----だいたい30分 はかかります。)7時20分のスク―バスに間に合うためには6時半には起きなけれ ばいけません。----でも中学の頃なんか(ずっと冬の間カゼをひいていたのに)毎朝 一時間勤行・唱題をして学校へ行っていたのだから---- 寒さが身にこたえてくるようになると中学の頃の厳しい日々や杏子さんと出会った 頃のこと、貧乏だった小学四年の頃までの辛かった日々、病気ばっかりして半分も行 かなかった幼稚園時代、小学校にあがるまで毎日一回は必ず泣いていたこと、幼稚園 のスク―バスから降ろされて家までのたった50mぐらいの距離を歩けなくていつも 泣いていたこと、小学校低学年の頃までは貧乏だったため毎日のように父と母が喧嘩 していたこと、小学校の頃、夏休みや春休み、冬休みには必ず加津佐に行ってそうし て休みいっぱい加津佐にいてとても楽しかったこと、中一の冬にノドの病気になって 大きな声が出なくなって今までずっと悩んでいること、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 僕らをとりまく周囲はとても暗いけど、 夜の空はこんなに明るい。 あれがカシオペア、あれがオリオン座。 星が僕らに語りかけてくるようだ。 冬の夜の星たちが、 僕とゴロと杏子さんを、 暖かく暖かく包んでくれているようだ。 暗い暗い夜の闇が僕らを暖かく包んでくれているようだ。 僕らをとりまく周囲はとても厳しいけど、 でも僕らは負けない。 (杏子さんと。夜の浜辺で語り合いながら。)
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