長編 #2383の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
この街 で、はじめて見た風景。 闇の中にうかぶ誘導灯の明かり。 フェンス越しに揺らぐ、微かな街の灯。 外気は思ったより、冷たかった。 人気の無い、夜の滑走路は其なりに美しい。 かって一度だけ訪れたことがある、宇宙港としては小規模な基地だ。 俺にとってはあまりいい思い出の場所ではない。 尤もそれも、今となっては単なる過去にすぎない。 どうせ、チームのメンバーが集まる迄の2・3日のことだ。 何処でも変わりあるまい。 きゅうなコール。 休暇中の俺たちを呼び出してまで、かたずけて仕舞いたいというヤマ。 俺が一番この星の近くにいた。御陰で待つ羽目になった。 この街で・・・。あいつが死んだこの街で。 夜の帳の中、微かに揺らぐ街の明かりが、いま目の前に拡がっている。 暗く照度を落とした室内。 カウンターの中のバーテンの無表情で妙に落ち着いた瞳。 男達は思い思いにグラスを口に運び、語り騒ぎたてる。そして、ふと我に返り 暫しの間思い出に浸る。 「何を 「「?」 バーテンが聞く。 「バーボン 2つ」 俺は答える。 「2つ?」 さして驚きもせずに聞き返す。 「ああ」 無言で置かれた、グラス。 俺はその一方に手を掛け、置いたままの片方のグラスにあわせてみせた。 「誰かの弔い?」 カウンター越しに声がした。女の声だった。 俺は女を見る為にゆっくりと顔を上げた。 「昔の事さ。この星に来るまで忘れていた。此処を出れば、また忘れちまう」 「そう」 ハスキーボイス。赤い口紅。唇の右斜め下にあるほくろが、いっそう艶っぽさ を引き立てる。 「そう、じゃあ。今日はあんたの為に唄ってあげる」 そう云って女は紅いドレスでステージに向かう。 甘く切ないバラード 「「。別れの唄。 高く低く響きわたる唄声。スローバラード。 「ヘイ、ローズ」 客の一人が真紅の薔薇の花束を投げる。 手慣れた様に女は受け取る。 あちこちで歓声が上がる、やがて曲が変わる。 グラスが空になるころ、一輪の薔薇が目の前に突き出された。いつのまにか、 歌い終えた彼女が其処にいた。 「どう?感想は」 「・・・・・・」 「まあいいわ」 手付かずのグラスの中にその薔薇を投げ入れ、付け加えた。 「生きていたら、また来るといいわ」 *************** 空は鈍く、くすんでいた。 光りは遮られ、辺りは闇に包まれ、崩れ去った廃墟の街に俺たちは息を潜めてい た。 鈍い閃光が走った。 澱んだ灰色の空に立ち昇る炎。轟く爆音。其が引き金となって、あちこちで聞こ え始める戦闘の響き。 「ラルフ、合流地点までどれくらいある」 俺は手にしていた地図で現在位置との距離を弾き出す。 「あと、9qてとこか、俺たちが戻ってからおっぱじめりゃいいものを」 「そういうなって」 「ロバート、後ろの2人と此処にいろ。様子を見てくる」 こんな時にお荷物つきとはな。俺は思わず呟いていた。 「ラルフ・グレイ大尉。失礼ですが、私達は 「「」 「おっと、あんたと議論してる暇はない。ウォレンス少尉」 「ロバート」 俺はもう一度相棒の名を呼んだ。 「ラ〜ジャー!」 手を上げて俺の問いに答えた相棒の姿が見えた。 *************** 昨日は少しばかり感傷的になりすぎていた様だ。 御陰で妙な夢を見た。夢にしてはやけに鮮明だったが。 思い出しながら、俺は煙草に火を点けた。 青白い 煙が俺のまわりにまとわりつく、未だ余韻が残っているかのように。 メッセージボイスが入る。 「失礼します。グレイ中佐。 アルグレヒト大佐からの御伝言をお伝えします。 もし、御予定がなければ昼食を御一緒にとのことですが?」 聞き覚えのある声。 「御返事は?」 この声が記憶の通りなら、最悪だ。 「俺はまだ行くともなんとも言ってない筈だが」 「中佐の御返事を待っていましたら、日が暮れます」 勢いよく歩きながら、2人の会話もその速度と同じ位早いテンポで進んでいた。 「ウォレンス少尉 「「」 「お言葉ですが中佐、私の今の階級は中尉です」 「そりゃ悪かったよ。で、中尉。何であんたが此処にいる」 「アルグレヒト大佐に貴方をお連れする様申し付かりました」 相変わらず可愛くない女だ。 これで愛想がありゃ、すこぶる美人で通るが。 短く整った、金髪。ブルーアイズ。 「やあ、ラルフ」 「どうも、大佐」 差し出された手を握りかえす。 一瞬、目を疑った。 俺の記憶にあるこの人は、もっと若かった。 シルバーのステッキ、右足を軽く引きずる。 少なくとも2年前には見られなかった。 「あの時の・・・」 「ああ 「「」 そう云って微かに微笑んだ。 ***************
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