長編 #2382の修正
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sapaシリーズエピソード3 巨大要塞を覆うのは数十隻の巡視船だ。主砲やミサイルの雨を巨大要塞に降らせ ている。要塞はすでに半壊状態だ。あちらこちらから黒炎があがり、かけらのいく つかは、マースの地へ吸い込まれるように落ちていく。 「冗談じゃないわよ。このままじゃ皆殺しじゃないの」 ラミーはクリスの身体をホバーに乗せたあと、ファラルを探しに出た。そこで、 保安庁の一斉攻撃が始まったのだ。途中で、灰になったラジアンを見付け、それを 袋に入れる。 「ちょっとぉ、主任はどこいったのよ! 早く宮殿へ行って蘇生させないと、時 間がないわ」 大地震のように揺れる要塞のなかを、ただひたすら走った。パイプや壁がガラガ ラと煙を上げながら落ちてくる。クリスとラジアンが殺したメンバーの死体が散乱 し、それが煙のなかからチラチラと見える。炎が死体を焼いたのか、皆黒焦げだ。 まるで地獄絵のよう。 「主任!?」 煙の向こうから啜り泣く声が聞こえる。ラミーは濃い霧のように立ち込める煙を かきわけるように、泣き声のする方へ走った。 「主任、どうしたの」 ファラルは床にうつぶして泣いていた。 「ちょっとぉ、いい大人が泣いてないで、脱出するわよ」 「いやぁ、あたしはここに残る!」 「何バカなこと言ってんの」 ラミーは、ファラルの腕を掴む。 「いやよ、あたしはどこへも行かない。ここに残るの!」 「いいかげんにしなさいよ!」 ラミーはファラルの首を殴った。ぐったりしたファラルは再び床に倒れる。 「これでおとなしくなった。まったく世話が焼けるんだから」 ラミーは、気絶したファラルを背負うとゲートへ向かった。 すでに要塞はコントロールを失っていた。マースの人工大気へ向けて落ちるまで に、さほど時間はかからない。そんな様子を、バイアーは郊外の自分の店で見てい た。マースのテレビ局が生放送で伝えるリアル画像だ。 「ごらんください。要塞はマースに向けて落下しようとしています。このままで いくと、あと1時間はもたないでしょう。要塞は市街地へ向けて落ちるのです。こ の被害を神宮府はどう考えているのでしょうか。こんな無謀な政策が許されるので しょうか」 カメラは市街地に切り変わった。市民はパニック状態だ。 「力で敵を押さえるなんて、独裁者のやることだ」 バイアーは映像を見ながらぼそりとつぶやく。 「我々マスコミ陣はいままで神宮府の政策に目をつぶってきました・・・」 市街地にあるテレビスタジオで、そのキャスターは延々としゃべる。 「・・・しかし、これはひどすぎる。人間を虫けらのように考える神宮府に我々 は抗議する。わたしの命もあとわずかだ。だから言う。これが女神アフロディテの やることなのか!・・・」 そこで放送は終わった。おそらく神宮府が電波をカットしたのだろう。しばらく して、アフロディテのヴィデオが流れた。 「太陽系の守り神アフロディテ。美しい姿のその女神は人々に愛と裕福をもたら す。あぁ、なんと素敵な女神だろう」 ハーモニィのようにナレーションが流れ続ける。バイアーはスイッチを切って、 外に出た。赤い砂が風に舞っている。 「人類の本当の敵はチャイルドワンスなんかじゃない。ヴィーナスレノアでぬく ぬくと生活している神官の連中なんだ」 ラミーはホバーに乗り込むと、すぐにエンジンをスタートさせた。一気にもの凄 いGがラミーの身体にかかる。要塞を取り囲む巡視船の間をすり抜けたとき、巨大 要塞がマースの市街地へ落ちていくのが見えた。 「間一髪ね」 ラミーはマスクマンを取り逃がしたことを後悔したが、すぐに思い直した。 「とにかく、要塞は破壊したしメンバーもそんなに残ってない。あとはなんとか なるわよね」 マースは地上で光を放った。その光は3日間光り続けたが、その次の日には人々 は再び生活を始めた。マースに生きる者にとって、他に生活の場なんてないのだか ら。 女神の憂鬱 −完−
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