長編 #2380の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
sapaシリーズエピソード3 クリスはチェリードライバーのグラスを傾けながら瞳を細める。口許には笑みを たたえていた。ちょっと考えごとをするように首を傾る。 「いいお話しね」 美少女はうっすらと頬を赤らめながら感動している。鬱積した想いと現実の世界。 その隔たりはクリス・ターナにもある。 バイアー・リーノは照れ臭そうに笑顔を見せると、ラジアンに聞いた。 「あんた、何を飲む?」 ラジアンはブスッとしたまま、バイアーの呼び掛けに答えた。 「ミルクくれ」 そのラジアンの注文を聞き、2人の言動を注目していた店の客たちが一斉に笑っ た。張り詰めていた緊張が解けた。 「なんだよ、なんで笑うんだ?」 アブナイ目をした客たちの笑いは止まらない。クリスとバイアーも笑っていた。 「うるせぇ、何を飲もうが俺の勝手だろ!」 ラジアンが叫ぶ。笑いが止まった。そして客たちの表情に恐怖が宿る。別にラジ アンが怒鳴ったからではない。店の入り口から新しい客が入ってきたからだ。それ は団体客だった。チャイルドワンスのメンバーだ。 「へへっ、こんな田舎の飲み屋に美人がいるぜ」 メンバーのひとりがクリスを見て言った。 「あら、うれしいこと言ってくれるのネ」 他の客はバタバタと店から逃げ出した。バイアーはそれを見て、メンバーを睨ん だ。 「何の用だ。帰ってくれ」 「なんだぁ、俺たちゃ客だぜ。その言い草はなかろう」 「おまえらが飲むような酒はおいてない!」 バイアーの気迫に圧倒されたのか黙り込む。所詮はガキだ。 「まぁ、いいや。変わりに・・・」 兄貴分の少年が口を開いた。 「この女と遊ぶからよ」 そう言って、クリスの肩に手をまわした。 「あら、積極的なのね」 恐がらないクリスを見ておもしろくないのか、肩にまわした腕をクリスの股へ伸 ばす。クリスはニコニコしながら言った。 「そんなことしたらダメよ」 次の瞬間、少年の腕が吹き飛んだ。カウンターは血の大洪水だ。 「うぎぁぁ、いてえよぉ」 兄貴分の少年は血まみれになりながら床を転げ回った。フラワースカートの 美少女。クリス・ターナはカウンターを立つと、うろたえるメンバーの中へ割って 入る。 「ねぇ、クリスをあなたたちのボスに合わせてくれない?」 ピンッと張り詰めた緊張感に満ちていた。高価な家具に埋もれた2人の美女は黙っ たまま、数分が過ぎていた。 「わかったわ、聞かない」 先にラミーが降りた。グラスのなかのホワイトワインも残り少なくなっていた。 「いずれわかると思うわ」 ファラルは上の空で答える。 「でも、マスクマンのことは教えてくれるんでしょ?」 そのラミーの問いかけに、ファラルの表情が曇る。 「それもダメなの?」 「・・・マスクマンはチャイルドワンスを影から操っている黒幕よ。彼を倒せば チャイルドワンスは連邦警察だけでなんとでもなるわ」 「何者なの?」 「あたしが神宮府からもらった情報はそれだけよ」 「エミリーは何も教えてくれなかったの?」 しばしの沈黙。ファラルはラミーの瞳をじっと見る。 「聞いたわ。でも信じたくないから・・・ ごめん」 そのとき、執務室に取り付けた端末が警告音を響かせた。ファラルはサッと上司 の顔に戻るとデスクへ向かった。相手はクリスだった。 「主任さん、チャイルドワンスの子がボスに合わせてくれるらしいから行ってく るねぇ」 「クリス!」 「大丈夫、ラジアンちゃんもいるから」 そういって、通話は切れた。ただし発信器はつながったままだ。クリスの応援に 来て欲しいとの意志表示。 「主任、行くわ」 ラミーはマントを羽織ると扉のノブに手をかけた。 「待って」 ファラルが自分のロッカーからロングコートを取り出す。そして、ビームライフ ルと弾帯。 「主任?」 「あたしも行く」 「来なくてもいいわよ。デスクワーク忙しいんでしょ」 「あら、あたしは事務員じゃないのよ。たまにはカッコつけさせて」 そういって笑うファラル。ラミーはあきれた顔をしていたが、すぐに笑顔になる。 「了解。よろしくファラル・ケイム主任」 マース上空。人工大気がつくりあげた世界の上に、チャイルドワンスの要塞がある。 「ひゃぁ、これは凄い」 クリスは歓声をあげた。 「ねぇ、いつの間につくったのぉ!?」 大型ホバーの中央で失神している兄貴分の少年。無くなった腕からは未だに赤い 血液が流れていた。それを狂ったように舐めるラジアン。チャイルドワンスのメン バーは皆、恐怖で青ざめていた。 巨大要塞のゲートが開く。ホバーはゆったりとしたスピードで入っていった。 「なんだと、チャイルドワンスのナンバー2は俺だぞ」 22才になるゲイン・ヤマダは激怒していた。ジャンパーの背中に描かれたフジ ヤマという、テラの偏狭にある火山のパッチワークが小刻みにふるえている。チー ムのサブとして実権を振るうはずが、ノーラ・ジーンにことごとく意見されるから だ。 「勘違いをするな。あたしの意志はリーダーの意志なのだ」 24くらいになる女性、ノーラ・ジーンは静かに言う。ブロンドとオレンジの髪。 左目にはカメラアイを埋めこみ、肌は特殊シリコンと強化セラミックに改造してあ る。リーダーの側近であり、リーダーが最も信頼する女。 「あぁ、そうかよ!」 ゲインはノーラに怒鳴り付けると部屋を出た。ヤケクソだ。 「おもしろくねえ」 壁を殴る。右ストレートが決まる。ただし、ゲインの拳からは血がにじみ出た。 「ゲイン・ヤマダ」 ゲインを呼ぶ声。見るとマスクマンが立っていた。こいつもよくわからんヤツだ。 メンバーでもないのに、この要塞に出入りしている。 「なんだ」 「魔女が潜入したぞ」 「あぁ? 魔女が潜入しただと? この要塞にか。バカ言うな、この要塞にはメ ンバー以外の者は入れんよ。 ・・・あんた以外はな」 「そのメンバーが連れてきたんだ」 「・・・なんだとぉ!? 裏切り者か。誰だ!!」 「地上警戒に配置しておいたセファーヌの組だ」 「それで魔女は?」 「セファーヌの連中を皆殺しにしたあと、要塞内に逃げ込んだ」 「なにのんびりしてやがる。戦闘配置だ! 魔女をぶち殺せ!」 ゲインはコントロールタワーへ走った。要塞の全機能が集中する部屋だ。その途 中で、足に絡むものに気付き立ち止まる。 「血か?」 それは床一面を浸水させたように流れる真っ赤な血だ。その向こうには内臓が飛 び出し、頭が割れて脳が飛び出した死体がいくつも転がっている。 「なんじゃい、これはぁ!!」 チームのナンバー2、ゲイン・ヤマダもさすがに恐くなる。まともな連中じゃな いことを初めて実感した。腰のハンドガンをホルスターから抜く。白目をむき出し た死体の中をゆっくりと、慎重に進んだ。 ”ゴトン・・・” 何かを転がしたような音がした。ゲインは咄嗟にハンドガン を頭の上へ向けて撃った。上空に黒い影が見えたからだ。本当にそれは一瞬の事だった 。”ギャン!”という悲鳴に似た声とともに、黒い影は宙を舞った。 「チャイルドワンスのゲイン・ヤマダをなめんじゃねえ!」 黒い影、ラジアンは床の上に叩きつけられる。 「やったか!?」 ゲインは死体を確認しようと近づいた。その時だ、死んだと思ったラジアンがム クリと起きあがった。 「フゥー!!」 黒い悪魔、ラジアンはゲインの喉もと目掛けて飛び上がる。しなやかな黒い体は バレリーナのようにフワリと浮かんだ。 「うぎゃぁ!」 美少女クリス・ターナは、ゲートのコントロールをすべて解除した。かわいらし いフラワースカートを真っ赤に染めながら。ゲート監視室には、死体の山が出来て いた。皆、内蔵破裂でも起こしたように臓物をぶちまけて死んでいる。 「これで完璧ねぇ」 クリスはニコニコながら、肉片の散らばる赤い部屋でラミーを待っていた。 ・・・3へ
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