長編 #2375の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
【3】 ♂♂♂♂ 今日は、土曜日で、保育園が半どんだったので、太陽の高い、真っ昼間に、エミ を迎えに行かないとならなかった。 俺は、マンションのある丘の天辺から、坂道をとぼとぼと下っていたが、七月の 横浜の太陽は強烈で、ぎらぎらぎらぎらと照りつける太陽は強烈で、俺の腕や首の 後ろを、ジリジリ焦がしていた。それでも、坂道の左手の高級住宅街の高くて白い 壁から出ている欅の木陰に逃れながら、俺は歩いていた。右手には、入り江の堤防 が見えるのだが、ウィンドサーフィンをしている連中が、レトルトのカレーを堤防 のコンクリートの上に並べていた。それだけで、煮立ってしまう程、暑いのだ。 坂を下りきると、公園があって、そこが、保育園のバスの停留所という事になっ ているのだが、俺がついた時には、既に、五、六人の日傘をさした、白いワンピー スを着た奥さん達が、屯っていた。 奥さん連中は、俺の顔を見つけると、互いに小脇をつつき合いながら、二言三言 囁き合うと、内緒のお話し(どうせ、俺の就職問題など、要らぬお世話をして下さ っていたのだろう)は終わりにして、代表格の、旦那さんが県庁の福祉課の課長を している事が自慢の奥さんが、ハンケチで顔を仰ぎながら「暑いですねえ」と言っ た。 「当たり前じゃねえか、夏なんだから」とも言えないので、「そうですねえ」と言 うと、遠まきに、屯に加わったが、大坂さんの姿が見えないので、心配になった。 大坂さんは、俺のマンションの隣の部屋に住んでいて、里美とも仲がよくて、C Dやビデオを貸したり借りたりしている。大坂さんが来ないなら、大坂さんの子供 三人(みんな年子)を俺が送るべきなのかも知れないけのだれども、保母さんが、 果たして俺に渡してくれるかどうかが心配だ。何しろ、小学校教諭や警察官や下手 をしたら幼稚園の運転手まで、幼女強姦並の犯罪をするご時勢だから、俺みたいな、 中年のぷーたろーなど、誰も信用していないのだ。しかし、大坂さんは、バスが現 れるのと同じぐらいに、坂から、転がる様に駆け下りて来た。大坂さんの格好とい ったら、Gパンのチョン切ったのに、WORLD・GYMのTシャツ(ボディービ ルをやっているのだ)に、サンダルというラフなスタイルで、しかもノーブラで、 おっぱいを、ぶるんぶるんさせている。「あらっ」という軽蔑の声が、木綿のワン ピース組から上がった、様な気がした。テメーらだって、あれをしたから、こうや って子供を迎えに来ている癖に、おっぱいが揺れただけで、騒ぐな、カマトト。 俺や大坂さんや、ワンピースの奥さん連中も、子供を受け取ると、三々五々散ら ばって行ったのだが、俺と大坂さんは、方向が一緒なので、一緒に歩いていた。エ ミや、大坂さんの子供達は、俺達よりも、ずっと先の方を、じゃれながら歩いてい る。俺と大坂さんは、雅子さんは浩宮の奥さんに相応しいか、とか、みのもんたは 人生相談に相応しいか、とか、Jリーグで、プロ・スポーツのゲシュタルトが崩壊 するか、とか、つまりは、どうでもいい、英国紳士的会話をしながら歩いていたけ れども、坂道に差し掛かる頃に、かなり迷ってから、俺は、「大坂さん、お昼、ど うするの?」と聞いた。 「朝の残り」と大坂さん。 「俺さあ」と俺が言った。「エミと何処かで食べていく積もりなんだけれども、一 緒にどう?」 「わたし、財布、持ってきてないもの」と言うと、大坂さんは、あっちこっちのポ ケットをパタパタ叩いた。 「おごってあげる」 「あら、お金持ち」 「働いてもない癖にね」と俺は言った。 「ずいぶん、ひがみっぽくなったのね」と言って、大坂さんは笑った。「先駆者と しての誇りを持たなきゃあ」 「先駆者? なに、それ。そんなの信じない。世間なんて、そんなに甘いもんじゃ ないもんね。昼間からいい歳した男が女の子を連れていると、ツトム君扱いだ」 「主夫、四半期にして、ギブアップか」 「主夫なんて、嘘ですよ。ジョン・レノン以外の男がそういう事すると、ヒモとか 髪結いの亭主と言われる」
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