長編 #2348の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
腕時計をみてまだ7時だと知った。外ではあいかわらず激しい雨音。また雷を聞い た。少し音も大きくなってきている。近づいてきているのかも知れない。 「かあさん、飯まだ?」 僕は部屋をでて階段の上から、台所にいるはずの母に叫んだ。なんの返事も帰って こない。僕は階段をおりる。台所の電気は消えていた。 「かあさん?」 おおかた買い物にでもいっているのだろう。冷蔵庫を無意味にあけて食べるものを 探してみるが何もない。 僕は舌うちをする。しかたなく氷を二つ頬張って思い切ってがりがりとかみくだく。 まず歯にしみて、やがて頭がいたくなった。 暇に思えたので、妹とトランプをしようと考えた。 ノックする。 「はあい」 「おれ」 「入っていいよ」 さやかはテレビを後ろにして机にむかっている。机の上におかれた小さな地球儀を くるくると回していた。首をひねっている。 「おいおいテレビみてないのなら、電源消しておけよ」 「見てないけど聞いてるからいいの」 「集中できへんがな」 「出来るもん」 ちらっと僕をみた。意地っぱりだというのは幼稚園の頃から変わらない。友人の前 と兄である僕の前とでは大きく違うのだ。 「宿題してるんか?」 「ちがうよ」 「ならなんや」 「勉強」 「宿題ちゃうの?」 「宿題はもうとっくに終わったもん」 「ほんまか?」 「うん」 僕はどこでどう間違えたか、同じ親から生まれたはずの二人の間の大きな相違を、 ねたましく思った。 8月はあと1週間ですぎさろうとしている。僕はさやかの計画性というか、当然行 うべきものを実行できる一種アタリマエの能力をみて、その後自分に目を移しうんざ りした。 「はかどるか?」 さやかは首をふる。 「ああ、それなら、おれ暇やからトランプでもせえへんか?」 「えぇ。ちょっとまってよ。おにいちゃんは暇でも、私は全然暇じゃないよ。そう だ、ゲームボーイのトランプゲームかしたげるから一人でやっててよ」 そう言ってさやかは座っている椅子を後ろにずらし、引き出しのなかからゲームボ ーイを僕に差し出す。このゲームボーイとトランプゲームソフトは金に困った僕がさ やかに2千円で売ったものだった。 「もういい」 僕は少し笑いながら断る。 「そう」 さやかは、また机に向かう。来年高校受験をひかえたものの夏休みとはだいたいこ んなものかもしれない。僕の場合は大きく違ったなあ。 とりあえずベッドの上に腰をおろして、何も考えずさやかを眺めていた。 地球儀をくるくる回転させて人差し指で止めてる。そんなことを数度繰り返し始め ていた。不思議にみていると、さやかが楽しそうに笑う。 「ねえねえ、おにいちゃん、ちょっときてよ」 僕がそばまできて腰をかがめると、さやかは地球儀をまわし人差し指でツンと止め た。「あれえ、おかしいなァ」 そう言ってまた繰り返す。 「いったい何をしてる?」 「ん。さっきまでね、5回も連続して日本で止めたんだよ」そういって僕をみつめ て「すごいでしょ」と誇らしげな顔をする。唇を少しとんがらせ目を細めて笑うのだ。 僕は苦笑した。「アホらし。勉強せえよ」 「やりすぎたから、休憩してるんだってば」 軽くノートに目をやると実際さやかの言葉は本当のように見える。僕は何度かさや かの肩を揉むようにマッサージをしてやる。
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