長編 #2345の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
SAPAシリーズエピソード2 漆黒の闇に浮かぶ小惑星群。無数の砂と岩石の大軍は、火星と呼ばれたマースと 木星と呼ばれたジュピターの間をさえぎるように列をなしている。 いまから3000年もの昔に、ここを中心にして人類最大の戦争が起こった。太 陽系大戦である。当時、テラを中心とした地球連邦とジュピターを中心とした木星 共和国連合とが衝突したのだ。戦死者の数は数百億ともいわれ、特にジュピターが 使った惑星破壊ミサイルは、テラの環境を180度変えてしまい死の星としてしまっ たのだ。 人々は自らの悲運を呪い、平和を祈った。そんなとき、流星のごとく現れたひと りの青年、ポール・ミルン。テラ側、ケレス開放軍に身を置いた彼はことごとくジュ ピターの戦略を見破り、テラを勝利へと導いた。ジュピターの圧倒的な軍事力を叩 いたのだ。人々はいつしか彼のことを軍神と呼ぶようになった。 現在、このポールの物語は神話とされている。30世紀も昔の話しだ。事実を知っ ているものなど誰もいない。 しかし、小惑星群のひとつであるケレスに軍神ポールの石碑が建てられているの は事実である。 そんな小惑星群、アステロイドベルト地帯をゆっくりと横切る巨大な船影。神宮 府神宮保安庁の宇宙巡視船エルゴニクス。 現在の太陽系の法律・行政を取り仕切る神宮府。その配下には神宮警察庁と神宮 保安庁の2つ組織がある。これらを別名SAPA(SpecialAssociatePoliceAgence) と呼ぶ。 ネプチューンで毎年開かれる観艦式へ出席するために、ヴィーナスレノアから出 港してきた最新鋭船だ。エルゴニクスの貴賓室には神官ザンルフ・カイも乗船して いた。今年の観艦式での検閲官として出席するために。 テラ。3000年前まで地球という名で呼ばれていた水の惑星。 「チェイミー、あんたどういうつもりなの」 ラミー・クライムは困惑していた。突然押し掛けてきたチェイミー・キュロット は、ラミーの別荘に入るなり掃除や洗濯を始めたのだ。 「わたし、行くところがないんです。ここに置いてください」 ラミーの別荘は、特別保護地帯のテラの中でも特に森林に覆われた美しい場所だ。 人間はいっさい入ることをゆるされない。ラミーはそんな場所にSAPA特権で別 荘をつくった。 しかし、他のSAPA職員はほとんどがヴィーナスレノアかその近郊に住居を構 活の不便を考えると住居を造る者などいない。 だから、チェイミーがここで暮らしたいなどと言うのは信じがたかった。もちろ んチェイミーはSAPAの者ではないが、ラジアン同様ラミーが許可すれば一緒に 暮らすことはできる。ラジアンと違って同性であり、なによりかわいらしい彼女は ラミーが拒否する理由などない。 「なにが狙いなの?」 ラミーはチェイミーの企みがわからなかった。企みなどないかもしれない。でも、 こんな不便なところに、しかも普通の人間ではないとわかっているはずの自分と一緒 に暮らしたいなど、まともな考えじゃない。 「わたし・・・」 チェイミーは頬を真っ赤にしながら、濡れた瞳でラミーを見た。 「ラミーさんのことを愛してしまいました」 「・・・?」 ラミーは何を言われたのかわからなかった。上気しているチェイミーの顔を見て、 ぼんやりと内容が頭のなかに浮かんできた。 「愛してるって・・・ あなた何言ってんのよ。あたしは女よ」 「女の子、お嫌いですか?」 どうやらチェイミーは本気らしい。悲しそうな表情でラミーを見ている。 「ふう、困った子ね」 ラミーはため息をつくと、チェイミーのあごを右手でやさしく持ち上げ、じっと 瞳を見た。チェイミー静かにまぶたを閉じる。 「嫌いじゃないけど、あなたのこと完全に信用はできないわ」 その言葉にパッとまぶたを開ける。 「どうすれば信用してもらえるんですか」 ラミーは右ひざをチェイミーの下半身へギュッと当てた。チェイミーはそのまま ラミーの身体へ倒れこむ。それをやさしく包むように抱き止めるラミー。 「かわいい子ね」 チェイミーの耳元でつぶやく。あたたかいチェイミーの息づかいが、ラミーに伝 わってきた。頬にキスをする。そして首筋。 「あたしの奴隷になる?」 チェイミーはゆっくり縦に首を振る。ラミーのキバが、チェイミーの白い肌に当 たる。 そのとき、チェイミーは身体をずらして唇をせがんだ。サーモンピンクの口紅に 彩られたやからかそうな唇だ。 「本当にかわいいわね。でも、あたしに取り付いても、SAPAの情報は出ない わよ」 バッと、チェイミーは身体を突き放つようにラミーから離れる。先程までの従順 な瞳ではない。意地悪そうでふてぶてしい瞳をしている。 「あんた何者なの」 ラミーの問いに、ニヤリと笑いながら。 「さすがヴィーナスレノアの魔女ね。もっと簡単に落ちると思ってたのに」 「残念ね。あたしは硬派で有名なのよ、知らなかった?」 「神官から殺していこうかと思ってたけど、あなたたちの方が先になりそう」 「ここで殺してみたら?」 「ふふっ、楽しみはもう少し後でね」 チェイミーは凄いスピードで玄関口まで走ると、ラミーの方を向いて言った。 「チャイルドワンスは魔女狩りを始めることにするわ。それじゃぁネ」 轟音。 凄まじい轟音が庭先に響く。巨大なホバーが別荘の上空に静止した。 「待ちなさい!」 ラミーは追うが、ホバーから発射された機銃が行く手をさえぎる。チェイミーは ホバーのビームエレベータを使って乗り込むと、ホバーとともに上空に消え去った。 騒ぎを聞いて別館にいたラジアンが飛び出してきた。 「何があったんだよ」 大きな黒猫。オリオン座方面の知的生命体ラジアンがあんぐりと口を開け、ラミー を見た。 「なんでもないわ」 その時、モニターのコール音が響いた。ラミーは部屋へ戻るとモニターのスイッ チを入れる。そこにはラミーの上司であるファラル・ケイムの顔があった。 SAPA。 神宮保安庁と神宮警察庁からなる神宮府直属の権力組織。その活動範囲は太陽系 全般にわたり、場合によっては軍に代わって他星系へと出てゆく。 その2つSAPAよりさらに神宮府の神官たちに近いところにいるのがコア部隊 である。しかしながら、人々の目にコア部隊が入ることはない。神宮府の組織図に すら載ってない。実在することのない組織、それがコア部隊だ。人々は、神宮府が カリスマ性を持つためのでっち上げとか、作家や映画監督などが作り上げた虚像で あると信じていた。 ヴィーナスレノア。 昔は金星と呼ばれた太陽系第2惑星。テラにもっとも近い聖地であり、その距離 はわずか4000万キロである。 そのヴィーナスレノアの周りには3つの人工惑星が浮かんでいた。そのひとつ、 アテナにコア部隊の本部がある。本部の横の城にはファラルを始め、エミリーとク リスが住んでいた。 「キャハハ、タロウったらくすぐったいよぉ」 タロウと呼ばれた首輪をしたタキシード男は、クリス・ターナの耳掃除をしてい たのだが、クリスが身体を動かしながらケラケラ笑っているためうまくいかない。 「もう、いいよ」 桧でできた耳かきをタロウから取り上げると、奥を掃除していたポチを呼ぶ。タ ロウもポチもアンドロイドなのだが、本物の人間そっくりに出来ている。 「ねぇ、こんどはポチがやってぇ」 ピンクの椅子に掛けたクリスがポチを呼んだ。ポチは掃除を中断していそいそと クリスのもとへ来る。やることのなくなったタロウがキョロキョロしているのを見 て、クリス。 「今度はタロウがお部屋を掃除してね」 タロウはいそいそと奥へ行く。そこでタロウは花びらが落ちているのに気づいた。 小さなかわいらしい花びらだ。タロウはそれをヒョイとつまむ。そのときタロウの 目の前で花吹雪が舞った。あわてて飛び上がり、腰を抜かしてしまう。 「エミリー姉様」 クリスは椅子から立ち上がると、花吹雪の舞いを見た。花吹雪はゆっくりと人の 形になり、エミリー・ファラになった。 「いつも奇抜な登場するんだもん。クリスびっくりしちゃう」 エミリーはにっこり笑顔を見せたが、すぐに真顔に戻る。 「チャルドワンスが動いたわ」 「テロ集団? 赤い星は解散したんだろ?」 アステロイドベルトに向かって飛ぶホバーのなかで、ラジアンは指令書を見なが らつぶやいた。 「チャイルドワンスっていう新しい組織よ」 「なんかポコポコと懲りもせずよく出来るなぁ」 「赤い星の残存部隊とクレイジーチャイルドが結成して出来たらしいわ。それに しても神官の乗る船をジャックするなんて、よくやるわね」 「余計な仕事増やさないでほしいもんだ。ああ、そういえば本部からビデオディ スクが届いてたっけ」 ラジアンは紙包みをガサガサとやり、中から手のひらサイズのディスクを出した。 コクピットに備え付けのデッキにセットする。 それはおぞましい、目を背けたくなるような映像だった。チャイルドワンスの集 会。場所はマースの市街地らしい・・・ 「聞け、我が同士よ!」 可変調をはるかに越えたノイズだらけの騒音。荒れ狂う光の渦。電光掲示板に流 れる無意味な文字の羅列。スポットライトとビルの明かりがまぶしく輝く薄暗い街。 壊れた雨雲と積乱雲。役所の酸性雨警告灯はつねにレッドゾーン。セキュリティー 会社とポリスのパトカーが埋め尽くす公園。 「我らはここにチャイルドワンスの結成を宣言する!」 街の騒音をはるかに越えたアジテーション。ポリスがスピーカーでがなりたてて いる。 「ここは駐車禁止です。至急移動してください」 ポリスたちは震えていた。機銃やミサイルをごてごてと取り付けた改造ホバー。 力の有り余った若い肉体が2万人。 「すぐに移動しなさい!」 スピーカーで怒鳴ったところで、ポリスなんかの言うことを聞くヤツはいない。 「ヴィーナスレノアの魔女をぶち殺せ!!」 他の連中より高い場所に昇って叫ぶ、ブロンドとオレンジの長髪の女。片目はカ メラを埋めこみ、肌もセラミックに取り替えてある。おそらくリーダーか、その側 近。 「ヴィーナスレノアの魔女をぶち殺せぇ!!」 2万人の大合唱。ポリスたちは恐怖で逃げ出そうとしていた。それを女のカメラ アイが捕らえた。 「まずやつらを殺せぇ!」 女の掛け声とともに、2万人が一斉にポリスに飛び掛かる。骨がつぶれる音と血 しぶきが同時に起こった。ポリスたちは集団リンチでミンチになった。 −2−へ・・・
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