長編 #2335の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ああ、僕を夢見心地にさせてくれる美しい女性の思い出がある。でもそれも全てノ ドの病気や僕の躯に巣喰っている病気が追い遣ってしまった。そして僕は今浦上川の 川縁に死にたい気持ちで立っている。希望が…僕には希望がないようで…。そしても う27歳になろうとしているのにまだ親のすねを噛じり続けている罪悪感と戦いなが ら。 僕は この浦上川の流れの中に溶けてゆきたい 希望を喪った僕は あの苦しかったけれど希望に満ちていた中学・高校の頃の思い出を胸に秘めて 静かに静かに溶けてゆきたい 親にはとても悪いけど もう行き詰まった僕にはこれしか方法がないような気がする もうどうしようもなく行き詰まった僕には 胸の中で僕はいろんな少女との出会いを思い出していた。県立図書館でのあの子… 中学のときの2つ年下の女の子たち…そしてもちろんこの松山でのあの天使さまのよ うな目の大きい美しい女の子… 僕はそして歩道の白い手すりにもたれかかって川面を眺めたり俯いて自分の足元を 眺めたりしながら過ぎ去ったいろんな思い出を思い返していた。悲しい思い出があま りにも多すぎた。そしてそのために今にも死にゆこうとしている僕と…。 今ここにいて思い出せる…僕が今も一番気に懸かっている少女の思い出は目の前の 松山の体育館を舞台にしていた。あれは僕が高三のときだった。高総体の日のことだ った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 幻の美少女 あの日のことを僕は今でも憶えている。26になった今も。そうしてもうすぐ27 になろうとしているのに。 あれは僕が高校3年生の高総体のときのことだった。僕は松山の国際体育館にバス ケットボールの応援に行っていた。僕は友達と蛍茶屋の電停で会い、その友だちが松 山でのバスケットボールを見に行こうというのでついていった。 たしか第一日目のことだったと思う。僕は高総体のときも学生帽子を被らなければ いけないのかなと思ってその日学生帽を持ってきてなかった。それで体育館の前で出 席カードを出すときちょうど僕の一年のときの担任だった生物の馬場先生からゲンコ ツをもらったことを憶えている。 今もあのときのゲンコツの痛さは憶えている。とても優しい先生だったけどゲンコ ツだけはとても痛い先生だった。 僕はそうしてゲンコツをもらったあと友人と国際体育館のなかへ入っていった。 僕らは西側の空いている所に腰をかけた。みんなからちょっと離れて。その友人も 僕と同じようにちょっぴり孤独癖のある奴だった。 コートでは北側のコートで僕らの東高の試合が始まっていた。河野(僕と一緒に来 た友人)は友だちが試合に出ているので北側の長崎東の(たしか川棚高校だったと思 うけど)試合を熱心に見ていたけれど、僕は南側の方のコートの試合を見たりしてい た。僕らの座っている所はガラ空きで僕らは2人ポツンと座っていた。 そのときだった。僕のななめ前方5mぐらいの所にとても可愛いとても目の大きい 少女が僕を見つめて立っているのに気づいたのは…。ちょっとポッチャリした感じで そして今まで見たこともないほど目が大きくて…。そして今までに見たことがないほ ど美しい少女だった。 彼女は始め横顔を見せて立っていた。でも大きな目で僕を見つめて…。今思うけど 彼女はそっち側の顔の方が自信があったからだろうと思う。そうして横目で…大きな 大きな目で…僕を見つめて立っていた。4分ぐらいそうしていただろう。でも僕は俯 いたりコートの方を見たりして知らないフリをし続けた。僕は中学2年の頃から大き な声がでないというノドの病気に罹っていて静かな所以外では女の子と恥づかしくて 口がきけなかったから… 彼女はそして今度は真っすぐに僕を見つめ始めた。横顔で見つめていては駄目なの だろうと思ったのだろう。でも僕は依然として無視し続けていた。でも無視し続ける ことはとても辛いことだった。彼女より僕の方がきっと何倍も何倍も苦しかったと思 う。僕はもし喋りかけられたらどうしようと思って苦しくて苦しくてたまらなかった 。 僕は苦しみながらも彼女を僕の記憶のうちの女性の誰かと照らしあわせていた。川 崎さん… 僕が中三の秋ごろ一目惚れしてラブレターを書いたけど出さなかった川崎 さんによく似ている。目の大きさといい顔の輪郭といいよく似ている。川崎さんなの だろうか。僕の胸に三年近くになる思い出が蘇み返ってきていた。また高校二年の後 半、昼休みに誰もいない運動場で突然川崎さんへの愛慕の念に駆られて駆け出したあ の青春の発作みたいな光景も思い返されてきていた。一度も口をきいたこともなかっ たけど僕は彼女の青白い肌とちょっとポッチャリとした肉体を体育発表会の予行練習 のとき砂場の横に淋しげに立っていた体操着姿のあの光景のままに思い出していた。 再び彼女に付き添っていた小さい2人の少女が彼女に帰ろうと催促したようだった 。でも彼女は『もうちょっと待ってね』とでも言ったようだった。彼女は依然として 微笑みつづけていた。 やがて彼女は僕に背を向けて歩き始めていた。なんだか僕からすべての幸せが去っ てゆくような気がしていた。またこれからの苦しみに満ちた年月が始まろうとしてい るような気もした。彼女が去ってゆくのは僕の少年期が去ってゆきそして僕の青年期 が…苦しみに満ちた青年期が…始まるような気がしていた。 彼女は途中で一回フッと振り向いた。でも僕は試合を見ているフリをするだけだっ た。寂しげに試合を見ているフリをするだけだった。 彼女たちは歩いて行っていた。僕からどんどん遠去かっていっていた。 僕はいつの間にか目を潰っていた。そして目を開けたとき彼女の姿はもうほとんど なかった。ノドの病気が追いやったのだ。彼女のちょっと太めの悲し気な背中が行き 先を喪ってオロオロと入口の方で動いているのが見えただけだった。 それから3日間、ボクは狂ったようになって勉強した。将来きっと耳鼻科の医者に なると思っていたのだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ー 悲しげな悲しげなあの別れのとき、僕はあのとき未来の僕の哀しい姿を垣間見たよ うな気がした。ちょっと太めの彼女の体が僕の視界の端に揺れているとき、僕は自分 の将来を…悲しく精神病院の中の鉄格子の中で送っている発狂した僕の姿を垣間見た ような気がした。 そして今僕は発狂の一歩手前で留年を重ね続けている。悲しい一人ぼっちの留年生 活を何年も… 完
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