長編 #2267の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
sapaシリーズ1 バイアー・リーノは熟れたリンゴのような顔をして、ラム酒を飲んで いた。バックに流れるBGMはショパン。神話の世界のアーティスト。 「ジェノアたちは戻ったのか」 バイアーは、今朝ヴィーナスレノアに出かけたジェノアたちの事を、 奥のソファーに掛けるケイ・ブランチに聞いた。ケイは気だるそうにバ イアーに振り向く。 「知らないわ」 そっけない返事に、バイアーはフンッと鼻を鳴らした。ラム酒を口に 含む。 血気盛んな若者を押さえるのは大変だ。そんな事を考えながら、薄く なった頭に手をやる。 ジェノア・カーマインと数名の同士は、バイアーの制止を振り切って ヴィーナスレノアの宮殿へ向かった。 「いや、それはいい。それはいいのだが、宮殿を破壊したとなると、 sapaを敵にまわすことになる。できればそれは避けたい」 「帰ってきたみたいよ」 ホバーの音を聞きつけたケイが、ソファーからスルリと立ち上がりド アに向かう。 「違う、下がれ!」 バイアーは怒鳴る。 ドドーン!! ドアが破裂する。火炎と煙と血のにおい。 「sapaか!」 叫んだバイアーの上空を、ちぎれたケイの生首が飛んでいく。 「ニャニャーン」 黒いものが煙のなかから飛び出す。それは血まみれになったケイの首 なし死体に食らいついた。内臓を引きちぎり、グチャグチャと食う。 「何者なんだ」 バイアーは青い顔をして震えた。 「こんばんは」 崩壊したドアから現れた美女。黒い服に黒いマント。黒のミニスカー トからすらりと伸びた白く艶めかしい股が、妖しくかがやく。そして、 この世のものとも思えぬ美しい顔立ち。 「あら、ほかには何方もおられないのかしら」 心を取られるような美しい声で聞く。 「貴様の名は!?」 「sapa、ラミー・クライム」 その名を聞いたとたんバイアーは走った。立てかけてあるビームライ フルまで。 ラミーはそれをじっと見ている。いや、笑っている。おかしさをこら えているように、口許がゆがんでいた。 「死ね!」 バイアーはライフルを手にとると、ラミーめがけて撃とうとした。し かし、ライフルは反応しない。あせるバイアー。 「あたしとそんなもので戦うなんて、なんてかわいらしい」 こらえきれず、ラミーはケラケラ笑った。 そして、フラフラと怯える バイアーに近づく。 バイアーは青ざめ、ジリジリと後ろに下がる。よろめきながら、しか し、ラミーの青い瞳を凝視しながら。下がり、壁にぶつかった。 「フフッ」 ラミーはニコニコしながら、壁に張り付くバイアーにペタリとくっつ く。ラミーのやわらかな胸が、バイアーの中年太りの腹へ当たった。ラ ミーは瞳を見ながら、右手をバイアーの首へスルリと伸ばす。 「殺してあげる」 ゾクリとする冷めた口調で言う。バイアーの首を絞めている右手に力 が入った。 「恐い? 死ぬのは恐い?」 バイアーは白目をむき出し、口をぱっくりと開け、空に向かってなに か叫ぼうとしている。しかし、それはむなしくヒューヒューという空気 の漏れる音にしか聞こえない。 「フフッ、苦しいのかなぁ。でも、その顔は魅力的よ」 ラミーはさらに絞めている右手に力を入れる。バイアーの口許から、 白い泡が吹き出す。 「ラミー!」 ラジアンが叫ぶ。そして次の瞬間、ビームがラミーの頬をかすった。 「ウニャニャ!」 破壊したドアから数人の男たちが入ってくる。ラジアンはそれに向かっ て飛び付いた。真っ赤な血しぶきが上がる。男のひとりが倒れた。 「フーッ!」 ラジアンは毛を逆立て、威嚇する。 「貴様ら何者だ」 男のひとりが叫ぶ。ラミーはくるりと振り返ると言った。 「sapa、ラミー・クライム」 その言葉を聞き、男たちは後ずさりする。 「ヴィーナスレノアは楽しかった?」 ラミーのその言葉で、男たちは一斉に射撃を開始する。ラミーはスル リとビームの間を抜け、男たちの中に入り込んだ。 「うぎゃー!!」 男のひとりが、血まみれになって叫ぶ。ラミーの右人差し指と中指の 間にギラリと光る銀色のカード。それには血のりがべったりついていた。 「ふふっ」 ペロリと、かわいらしい舌でカードをなめるラミー。 「ウニャニャ」 ラジアンが別の男の首に食いつく。骨の折れる音と同時に血が吹き出 した。肉を引き裂き、血まみれになって食うラジアン。 「あんた少しはダイエットしてみたら?」 残りはひとり。震えながら、後ずさりしている。ラミーのキラキラ輝 くコバルトブルーの瞳がそれを捕らえた。 「逃げなくてもいいでしょう。革命の戦士さん」 ラミーはジリジリと歩み寄る。 「おやすみなさい」 ラミーの美しいソプラノを最後に、男は息を引き取った。 マース市立救急病院。 ジェノア・カーマインは深夜の通路を駆ける。ヴィーナスレノアから 帰ったあと、仲間と別れ自宅へ帰ったジェノア。 「おやじさん!」 部屋へ駆け込む。身体中にチューブを取り付けた、中年のバイアーが ゆっくり振り向いた。 「ジェノアか」 バイアーは瞳にいっぱいの涙を浮かべ、実の息子ようにかわいがって きたジェノアを迎える。 「おやじさん・・・ いったい・・・」 「そうか、おまえは無事だったのか。良かった。本当に良かった」 「なにがあったのですか」 「sapaが来た」 「sapa? sapaの警官がここまでやるなんて」 「普通のsapaじゃない。神宮保安庁でも神宮警察庁でもない、もっ と中枢にいるヤツだ」 「まさか、中枢のヤツって!?」 「そうだ。ヴィーナイレノアの魔女」 「おやじさん、しっかりしてくださいよ。コア部隊なんて小説か映画 の世界のおとぎ話でしょう」 「俺は見たんだ!」 バイアーは怒鳴る。そして、苦痛に顔を歪めながら、ゼイゼイと咳を しながら、身をベットから乗り出してジェノアの肩をつかんだ。 「ヤツは人間なんかじゃない。まちがいなく魔女だ」 ジェノアは、それでもまだ信じられないといったふうだ。バイアーは ジェノアの瞳を見ながら言う。 「悪いことは言わん。すぐ警察へ自首しろ」 「おやじさん!」 「ああ、恨んでくれていい。俺はおまえを死なせたくはないんだ」 「おやじさん、我々赤い星の崇高な目的はどうなったんですか。カイ 一族による独裁政権を打破する。そのために、我々は命を張ってきたん だ。死ぬのが恐くて革命は達成できない」 「そんなイデオロギーのために、赤い星は全滅するのか」 「たとえ、赤い星が滅んでも、我々の意志を受け継いだ第2・第3の 赤い星が誕生する。我々は捨て石になっても、太陽系の平和と民衆によ る真の独立を達成させなければならない」 バイアーはじっと黙っていた。ジェノアは少し興奮ぎみに頬を赤くし ていたが、やがて瞳に涙を浮かべた。 「どうせ違法なんだから、かまうことないよ」 ラジアンはそう言うと、ホバーから飛び出して立ち並ぶ露天商へ駆け ていった。 「まったく」 ラミーはブスッと頬を膨らませて、ラジアンの後を追った。 マース露天商街と呼ばれるここは、13区と14区の境にある。区警 察のテリトリーから外れているため、また、マース連邦警察からの管轄 からも外れているために、無法地帯となっている。免許を持たない違法 商らが、ここで闇市を開くのだ。 大蛇が地面に寝そべるように、大きな蛇行を描き並ぶ露天。赤い砂を 混ぜた風に吹かれる風鈴。奇声を発する奇怪な動物。意味不明な言語が 氾濫する汗臭い屋台。 「ウニャー!」 ラジアンが屋台ごしに顔を覗かせる。屋台の主人をやっていたアルデ バラン星人はびっくりして、持っていたフライパンを放り投げた。 「ケケケッ、うまそう」 ラジアンは屋台の肉団子を鷲づかみにして食い始めた。 「こら、ラジアンなにしてんの」 ラミーは腕組をしてラジアンの行為を見ている。 「ラミーもどうだい、なかなかいけるぜ」 ラミーはラジアンの首をつかむと、ヒョイっと猫のように持ち上げた。 「にゃにをするんだ」 「道草食ってないで帰るわよ」 「道草ってうまいのか?」 「あほ」 ズガガーン!! ラミー・クライムの鼻先で、ビームが飛散した。ラジアンは飛び上が ると攻撃体制に入る。 ラミーはくるりと振り返り、ビームライフルを 撃った男を見た。 「楽しいことしてくれるじゃないの」 男は脱兎のごとく走り去る。それを猛スピードで追うラジアン。2人 の姿が立ち並ぶ露天の奥に消えた時、ラミーの耳元で再び銃声が鳴った。 「ざけんじゃないわよ」 ラミーは振り返る。そこには数十人の男たちが手にライフルを構え、 ラミーを狙っていた。 ラミーはマントをひるがえし、一瞬にして男たちのなかへ入り込んだ。 次の瞬間、血しぶきがあがる。ラミーの黒いマントが、返り血で真っ赤 に染まった。 「誰を相手にしてると思って!」 男たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。ラミーはそれを追う。 そんな時、左肩に激痛が走った。ラミーの左肩から大量の血液が、噴水 のように吹き出している。辺り一面、赤い湖だ。 「銀弾!」 ラミーは青ざめ、左肩を押さえながら逃げ出した。数百年ぶりの恐怖 が沸き上がってくるのを感じたのだ。 ー3ー へ・・・
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