長編 #2213の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「傷心旅行」(1)−鬼畜探偵・伊井暇幻シリーズ− 久作 ●依頼(山本美貴) 「……ただ、条件があるのです」男は端正な顔を苦しげに歪め低く声を絞り出す。 仲々の美青年だわ。女の私が、押し倒して跨がりたくなっちゃうタイプ。こぉゆぅ 男は、女にサービスしてもらうのに慣れてて、自分からは何もしないし、しても下 手糞だけど、あの端正な顔が歪んでイク場面を想像すると、興奮cqイ言わせてあげるのに。 「は? ナンですかぁ」先生は好奇心に顔を輝かせ続きを促す。 「もし、妻が潔白なら、そのまま報告して下さい。しかし、しかし、もし、妻が 男をつくっていたなら、別れさせた上で……」 「殺せ、と仰しゃるんですね」先生はニタァリと唇を歪める。 「は? とっとんでもない。別れさせた上で報告して下さい」男は目を丸め早口 に言葉を繋ぐ。 「なぁんだ、解りました。お任せ下さい。但し、規定の浮気調査料金に五十万、 上積みになりますが」 「結構です。宜しく御願いします」男は深く頭を下げる。 ●囲う(三好恵) 可愛い寝顔、見せちゃって。愛おしくて堪らない。絶対に放したくない。さっき も、搦手から責め立てたら、まるで赤ん坊がムヅがって泣くように……。 結婚して五年、今年で二十八になる。今まで、こんな悦びは知らなかった。夫は いつも、私が寝てるところに覆い被さり、イキナリ挿入てきて、呆気なく終わって しまう。私が痛がるのを、感じてるんだと誤解して、端正な顔を歪め興奮しきって 果ててしまう。一回ヤったら、ヘタッと私の胸に顔を埋め眠る。すごく幸せそうな 顔で。犯られるのは、詰まらない。犯る方に回らなきゃ損よ、やっぱり。 この子をゲームセンターで拾ったのは三日前。まだイヤラシイ男の性徴を表して いない美少年。ストリート・ファイト系のゲームに熱中してた。後ろから近寄って も、ディスプレイを真剣に覗き込んでて全然、気付かない。目の前の白くスッキリ したウナジはヌメやか。淡く漂う汗の香り、深く吸い込んだら、まるで媚薬、この 子を押し倒す衝動が塊になって込み上げてきた。 ソッと横顔を覗く。上眼遣いにキャラクターの立ち回りを見つめる瞳は真剣その もの。半ば開けた唇は若々しく張りのあるピンク、色白の膚に似合ってる。興奮し て小鼻は開き加減、画面上の闘いが不利なのか、目は絶望に見開かれ、少しく呼吸 が荒くなってる。上気した頬には紅が差し、肌目細かい膚に、スッと脂が浮いてい る。凝脂を洗う、って感じ、艶めかしく愛おしい。 私は少年を組み敷き跨いで、腰を激しく遣う。少年は、悦びを羞恥に包み、困惑 の表情で私を見上げる。少年の呼吸が一層荒くなり、目が一瞬、大きく見開かれる。 画面の中で少年の闘士が正拳を突き込まれ、グッタリと路上に倒れる。同時に少 年は、「アアッ」と小さく叫び、固く目を閉ざした。ビクンとノケ反った喉が伸び きり、妖しく輝く。私の瞼の裡では、少年の苦しげな表情がスローモーションで再 生され、私の中へドクンドクンと脈打ちながら、噴出させている。私は左右の腿を 互いに密着させて、固くする。 「あぁあ、負けちゃった」ションボリ立ち去りかける少年の横から身を乗り出し、 ゲーム機に二枚、百円玉を入れる。少年が初めて私の顔を見る。真っ直な、でも射 竦める感じじゃなくって、少し拡散した無防備な視線。恐れも媚びも知らない、赤 ん坊の視線。 「ねぇ、君、一ゲーム付き合ってよ」私は、二プレイヤーボタンを押す。少年は 一瞬、キョトンとしたけど、ニッコリ笑ってジョイ・スティックに手をかける。 お茶に誘って、アパートに連れ込む。紅茶をいれる。砂糖の数を訊くと「一つ」 って答え。私は砂糖を一匙、それに一振りの愛情と一包みの睡眠薬を、サービスし てあげたのよ。 しどけなく眠る少年の首筋に軽く口づけ、頬に粘り着くエロティックな感触と淡 く塩っぱい味覚、この少年をダシにしたら美味しいスープが出来そう。ヒヤシンス の花びらを浮かべて頂く。 Tシャツを脱がせると、抜けるような白い肌に茶色のアクセント、生意気に脇毛 なんて生やしている。柔らかく、そして濡れ光っている。サラシなんかしちゃって、 どうしたのかしら。先にGパンを脱がせる。色気の無い紺無地のトランクス、でも 青く静脈が透けてる腿が際立ってセクシー。一気に擦り降ろすと……、そこには私 と同じモノが、もとい、幼い頃の私と同じモノが付いてて驚いちゃった。慌ててサ ラシを解くと、小さいけれど形の良い乳房が仰向けだというのに、ツンと澄まして、 そこに在った。女らしい肉体、には程遠く、線は細いけど肋骨が薄く浮き、おなか は浅く田の字に割れ、お尻は小さく丸く盛り上がっている。私、欲情しちゃった。 レズ気なんて無いと、自分では思っていたのに。私は、その子の手首を頭上に持ち 上げ洗濯紐で緩く縛った。私は、その子にユックリとのしかかり包み込んでいった。 気が付いた少女は暫らくモガいていたけれど、私の愛の囁きに戸惑いながらおと なしくなっていったわ。いつか夫にシテ欲しくって、女性雑誌で勉強した、ありと あらゆるテクニックを駆使して。小林純っていう名前らしい。私、「小林君、小林 君」って呼びながら犯ったから、本当に美少年をレイプしてるみたいな気持ちにな って、興奮しちゃった。 今、その子を囲ってる。郊外にアパートを借りて、そこに住まわせている。夫が 出勤して夜に帰って来る迄が、私の本当の時間。生の欲望を剥き出しにして、小林 君を……。家に帰ってからは、妻を演じるの。夫がシたそうだったら、私が上に乗 って目を閉じ腰を遣う。瞼に浮かぶのは、小林君、耳に聞こえるのは小林君の喘ぎ 声。私は「小林君」と呼びそうになるのを堪えて、瞼の小林君に「アナタ」って呼 びかける。 ●解決(オクトパス) 「……で、どうするんです」美貴ちゃんが深刻な面持ちで沈黙を破った。まさか、 小林君が調査していた浮気の相手だったとはなあ。急に九州に行くなんて言いだし たから、おかしいとは思ってたたんだが。中退した高校の修学旅行に付いて行く、 って言ってたが、今時、高校の修学旅行で九州はないだろうがよ。どうせ、どっか の男と乳繰り合ってると思ってたんだが、女と乳繰り合ってたとはな。 「勿論、解決する。請け負ったんだから」暇幻が目を閉じた侭、投げ遣りに言う。 「相手の奥さんはどうでもイイけど、小林君をどうやって説得するんだよぉ。私 たちに浮気のことバレてるって知ったら、小林君、二度と事務所に戻ってこな いわよ」美貴ちゃんて、小林君のことだと自分の弟のように心配するんだよな。 「解ってる。だから小林の方から飛び出してくるように仕向けるのさ」暇幻の奴、 ニタァリと笑う。どうせ碌なことは考えていない。 「どうやって」美貴ちゃんは怪訝しげ、俺は嫌な予感。 「なぁに、簡単さ。オクトパスが八変化のうち美少年タイプに変形して、その人 妻をタラシ込む。そして小林に現場を目撃させる」やっぱりな、そんな所だろ うと思ってたんだ。 「それって人道上、問題があるんじゃないか。小林君だって傷つくし」一応の反 論を試みてみる。無駄なんだけどさ。 「くっくっく、人道上だって? 俺の辞書には、そんな言葉は載ってねぇよ。だ いたいだなぁ、お前みたいな変態が言う台詞でもないだろ」……。 「ま、イイけどさ。でも美少年になる時には、それなりの手続きが必要だぜ」 「あん? 手続きだって」暇幻の奴、長い付き合いなのに知らなかったのかな。 「ああ、変形ってのは精神状態の変化に伴って起こるんだ。美少年に欲情してる 時はポッチャリ美少女か人妻、絶倫男に抱かれたいと思う時はイケイケ・ギャ ルに変形するのだ」 「イイわねぇ。私なんて男に欲情するけど体は男の侭なのよ」へっへ、美貴ちゃ ん羨ましいだろ。 「で、美少年に変形するには、どうやったらイイんだ」うむ、暇幻、イイ質問だ。 「経験上、確かめられているのは、いかにも美少年キラーって感じの美青年に、 そぉいぅ方法で愛されるか、清楚な人妻に押し倒されたら美少年に変形する」 「あ、じゃぁね、先生、宜しく。私、出てくるから、タップリ愛し合って」おろ、 俺はどっちかってぇと美貴ちゃんの方がイイんだが……。逃げるなよ。 「ちょっと待てっ。女装を解けば山本さんこそ正真正銘の美青年でしょう。ささ どうぞ、ベッドの方へ」 「えーー、だって好みじゃないもの。残酷そうな痩せ型の三十男って」 「お、俺だって女性なら余り好き嫌いは無いんだが……」もお、ジレったい奴ら だな。ほら、脱いでやる。どうだ、イイ肉体してるだろう。引き締まった脇腹、長 く筋張った脚、小さめの尻に収束する逆三角形の背中。……確かに、男が欲情する 体じゃないよな。 「まあ、小林君のためだ。入れちまったら美少女だってオジサンだって同じだろ さ、グズグズしないで俺を犯りたまへ」裸身を床に伸べ腕組みして待つ。暇幻 と美貴ちゃんは寄り添ってモジモジしている。 「あぁあ、ジレったい奴らだな。さぁ、来たまえっ」ガバと脚を開く。 「でもなぁ、股間にデローンとしたモノがあるんだもんなぁ。なんたって、デロ ーンだもんなぁ」暇幻の奴、指を銜えてブツブツ言ってる。 「先生のより遥かに大きいよね」美貴ちゃんが感心している。 「暇幻っ。男がそんなコト気にするなっ」大声で叱咤してやる。 「馬鹿野郎ぉ、男だから気にしてんじゃねぇか。男心の解らねぇ奴だな」 「古代ギリシアでは小さい皮被りが美しいとされ、巨根は醜悪で卑しいモノとさ れていたのだ。大艦巨砲主義は滅びた。ギリシア的肉体回帰のルネッサンスだ」 「何、ワケ解んねぇこと言ってんだ」 「ふぅ、やれば出来るものだな」先生は呼吸を整えながら、満足そうな表情で隣 から僕の髪を撫ぜ付けてくる。 「本当、こんなに可愛くなるなんて」美貴さんが僕を後ろから抱き締めながら、 耳たぶを嬲る。 「うむ、ピンと張り詰めた色白美少年の小林とは違って、生まれつき媚びを含ん だオリーブ色の美少年。タイプは違うが決してヒケはとらんぞ」先生がウット リ、と僕を覗き込んでくる。ううっ、醜いんだからアップになるなよお。 ●Heartbreak(小林純) 非道いよ。そりゃ遊ばれてるのは解ってたけどさ。一週間も経たないうちに別の 男の子を連れ込むなんて。本物の男の子だから、チャンと付いてるし。昨夜だって 僕のこと愛してるって言ったクセに。何度も何度も挑みかかりながら、耳元で……。 大人って汚い! まるで獣みたいに僕を貪ったクセに。鬼気迫る顔で髪を振り乱し てドロドロになりながら。思い出しただけで、寒気がするよ。地獄だよね、あんな の。でも、どうしよう。なんか、帰りにくいなあ。この侭、何処かに行っちゃおう かな。でも、何処に行こう。実家には帰れないし。自分の子供を変態扱いする親な んて、こっちから願い下げだよ! ……結局、事務所まで帰ってきちゃった。あれ、 誰か出てきた。先生だ。 「おぉい、小林ぃ、お帰りぃ。土産は何だぁ」って、叫ぶなよ。まるで人なつっ こい雑種犬。尻尾があったら振ってるね。 「小林ぃ、お土産、お土産っ」まったく恥ずかしい奴。やっぱり帰ってくるんじ ゃなかった、かな? 「待ってたんだ、小林」なんだよっ、単に欲求不満だったんだろ。どうせ、僕の 肉体だけが目当てのクセに。 「ただいま。でも土産はないからね」 「うん、イイさ。で、何を見てきたんだ、九州で」ビクッ。……こんな、ニコや かな普通の人みたいな笑顔、こんな顔は見たことない。きっと何かある。土産が無 いって言っても、がっかりしないし、もしかして、気付かれてるんじゃ……。えぇ い、本当の事を言ってやる。どうにでもなれっ。 「ふっ、地獄さ」 「へぇ、別府のかぁ。あそこ面白いよな。赤い泥の温泉がブクブクいってる血の 池地獄とかさ。間欠泉もあるんだよな。ブッシュウーーって」あぁあ、なんで そんなに無邪気なんだよぉ。調子狂っちゃって、言い出せないじゃないか。いつも みたくエゲツなく突っ込んでよぉ。 「え、えぇ」途端に守勢に回る僕。 「温泉卵は食ったか、不思議と旨いんだよな、温泉で食うと」今迄、そんな無邪 気な笑顔、見せたことなかったじゃないか。何処に隠してたんだよ、馬鹿! そん な笑顔を知ってたら、今回だって、僕、浮気なんてしなかったんだぞ。あぁあ、ど うしよう。凄く、後悔。浮気なんて、するんじゃなかったなあ。 「う、うん、美味しかったよ。温泉卵」話、合わせとこ。見たこともないけど。 「あのさぁ、帰ってくるなりで悪いんだけど、出張してくんない」 「へ、出張?」ちょっと、ビックリ。 「いや、事件じゃないんだ。俺の高知の山奥の実家、姉貴が民宿やってんだけど、 夏のシーズンで人手が足りなくてさ。バイトしてきてくれよ」 「それはイイけど……」とにかく暫らく離れてるのはイイかもしんない。 「じゃ、予土線の切符と弁当代、午後四時五十分に宇和島駅を出る」 「え、今すぐに行くんですか」 「あぁ、頼む。それと……、これを俺だと思って持って行け」 「なんですか? これ」 「バイブレ……んがっあああああっっっ。痛ぇー、本気で殴りやがったな」 「馬鹿っ」本当は僕、チョッピリ嬉しかった。ううん、張型が嬉しかったんじゃ ないよ。本当だよ! 独りの時は僕、指を遣うしさ。先生、知ってたんだね。僕の 浮気。恋する少年の直感さ。馬鹿みたく明るく振る舞っちゃってさ。本当に馬鹿、 全然洗練されてない田舎モン。ダサダサでプンプン臭ってくるよ。……でも、帰っ てきてヨカッタ。醜女の深情けならぬ、醜男の深情けってとこかな、へへ。 (つづく)
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