長編 #2153の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「私はここ」 ルースとクルマ椅子のエマがTEXACOの裏口からそこに入ってきた。ルー スはナホが飛出していったのと同時に裏で遊んでいたエマを連れてきたのだ。 「エマ・・・・」ゲンジが低い声で呟いた。 エマはクルマ椅子から起上がり、誰の力も借りずに立っているのだ。 「エマ!」それを見た彼がマシンから降りようとした。 ルースがそのゲンジを掌で引留めた。 「ゲンジ・・・・エマは私のムスメ、あなたの子は太郎よ」 彼女が優しい顔で微笑んだ。 エマの顔を見た。 ゲンジと離れる事の寂しさよりも、立てた事が嬉しいのだろう、ゲンジにどう だとばかりに笑いかけている。 「エマよくやった、凄いぞ!」ゲンジがエマにいった。 エマが「ゲンジー」と嬉しそうに叫んだ。 「また会いに来ていいか?」ルースに向って言った。 「エマにかしら? それとも私のことまだ好きだっていうの?」 ルースが小さく笑った。 ナホを振向いた。微妙にゆがんだ顔をほころばせていた。 「会いに来るよ、約束する、エマとルースに!」ゲンジは叫んだ。 「ゴ ア ヘッド」ルースがまた微笑みながら「行って」と手を振った。 ゲンジは別れの言葉をいうまい、また帰ってこようと思った。 思いを振切るように、マシンを発進させた。 インターステイトに出た。 ルースが見えなくなった。 同時に、ナホの額がトンと彼の背中にあたった。 とうとう泣き始めた。 前にいる太郎が、昔、親父のハーレーに乗った自分とだぶった。 俺はナホの夫だというだけじゃない、間違いなくこいつの親父だと思った。 FATBOYを想いだした。 リュウを想いだした。 ヨーを想いだした。 捨去っていたすべてを取戻した感じがした。 アクセルを一杯に開いた。 グオ〜ンとスーバー・グライドが加速する。 太郎の頭が、その加速でゴンと彼の胸にあたった。 ナホが後ろからしがみついてきた。 ゲンジは芯から笑った。 久しぶりに心から笑った。 「ナホ!」 「なにっ?」 「クラッチの繋ぎは上手くなったか?」 ナホが笑いながら「ここまで来たのよ」とゲンジの頭をぽかんと叩いた。 「どこへいこうか?ナホ!」 「決ってるでしょ、ゲンジ!」 「デイトナ・ビーチ!」ふたりの叫びが交わった。 あの日ゲンジが聴いたサム・クックの歌は、悲しい歌なんかじゃなかった。 あのメロディーがまたゲンジの耳に聴えてきたような気がした。 空の向うに何があるのか 俺にはわからない だけど きっと こんな時代もかわる時がくる 俺はそう信じる事にする そうだ 俺はそう信じている 太郎が首をあげて「ダダ」と彼に甘えるように笑いかけた。 ナホが後ろから手を延し、前にいる太郎をゲンジごと抱きしめた。 ゲンジは自分達の回りの荒涼とした風景が、ゆっくりとあたたかなものにかわ っていくような気がした。 後ろから「ヤッホー」というナホの声が聴えた。 [完]
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「長編」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE