長編 #2114の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
★行頭の空白について★ 段落の書き始めの行頭には、必ず空白をひとつ空けます。例外はひとつだ け、すなわち会話文です(後述)。 例:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 唐突にぼくの前に現れた下級悪魔がそう言った。 唐突と言っても、この下級悪魔にぼくが会ったのはこれが初めてというわ けではない。三つの願い事に関するレクチュアは先日すでに受けている。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 以下のようにするのは誤りです。 誤っているものの例:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 唐突にぼくの前に現れた下級悪魔がそう言った。 唐突と言っても、この下級悪魔にぼくが会ったのはこれが初めてというわけ ではない。三つの願い事に関するレクチュアは先日すでに受けている。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 何故段落の書き始めに空白をひとつ空けることになっているのかと言うと、 それはこの「書き始めの空白」から「改行」までが、「段落」と定義されて いるからです。――と言われるとミもフタもないかもしれませんが、じつは この「書き始めの空白」には、この定義とは別にもうひとつ実務的な必要性 があります。例を挙げます。 ○○○○○○○○○○○○。○○○○○○ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ○。 ○○○○。 という文書があるとします。1行は20文字です。 この文書を、「段落の書き始めの空白」を空けないことにして書くと、以 下のようになります。 ○○○○○○○○○○○○。○○○○○○○ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○。 ○○○○。 これでは、最後の「○○○○。」という一文がそれ単体で「段落」でもあ るのか、それとも単に直前の段落を構成するひとつの文章であるのか、どち らだか分からなくなります。1行の文字数が少ないほどこのケースに遭遇す る可能性は高まる、という点は少し考えればお分かりになるでしょう。「段 落」という「思想」を表現する行為の成功率が、偶然性により1以下になる、 というのは問題です。そういう可能性は排除し、確実に思想を伝えうる、す なわち確率的に1となるように手をうつべきです。「『書き始めの空白』か ら『改行』までを『段落』とする」という定義はそのための手段なのです。 ここから段落の開始だよ、ということを表す記号はべつに△でも○でも□ でも、何でも良かったのですが、日本語ではたまたま(かどうかは知りませ んが)「空白」がその記号として選択された、ということだと考えてくださ い。 ●例外:会話文の場合 会話文は、この例外となります。 例:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「さあ、三つの願いを聞いてやる。言ってみろ」 唐突にぼくの前に現れた下級悪魔がそう言った。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 会話文の場合は、段落の書き始めであっても行頭を空ける必要がありませ ん。会話文の「始まりの記号」すなわち 「 が空白の代用となる、と考え てください。 ただし、会話文であっても行頭に空白をひとつ空ける作家も存在します。 一般的でない例:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「さあ、三つの願いを聞いてやる。言ってみろ」 唐突にぼくの前に現れた小悪魔がそう言った。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 上記のような原稿用紙の使い方も認められるようですが、このような使い 方をする作家はわずかです。この使い方は、はっきりと間違いであるという わけではありません。あまり一般的でない、というだけですので、このスタ イルをどうしても用いたければそうしても特に問題はないでしょう。 最近では、この会話文の原則から派生したと推測されるものとして、例え 会話文でなくとも括弧記号の「始まりの記号」(例えば《【〈「『等々)が 段落の書き始めにきた場合空白を詰める、というルールがあります。このル ールに関しては、守っても守らなくてもどちらでもいいでしょう。新聞では このルールが否定されていますが、大衆小説では肯定されている場合が多い ようです。 何故新聞はこのルールを選択しないのかと言うと、それは「段落」の説明 のときに述べたのと同様の実務的な問題によるものです。詳しく説明はしま せんが、このルールを採用すると「段落」の区別がつかなくなる場合が稀に 出てくる、ということなのです。 ほんらいならばこのルールは「守るべきではない」のですが、最近の大衆 小説ではほとんどこのルールが採用されてしまっています。もしコンテスト 等で賞を狙うのならば、我慢してこれに合わせてしまうのも悪くはないかも しれません。 ★「?」「!」について★ 「?」「!」の直後は、「閉じる記号」がこない限り、必ず空白をひとつ空 けます。原稿用紙のかなり正確な使い方を知っている人でも、案外これを知 らない人がいます。手近な小説で確認してみてください。 例:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 パウエルの右手に握られている物体は、微かに緑色の光を放ちながらゆっ くりと動いている。なんだあれは? 有機兵器か? いや、違う。それなら 奴も素手でつかんでいられるはずがない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 例は「?」の場合ですが、これが「!」であっても同様です。「!?」も同 じ扱いをします。 また、会話文等で「閉じる記号」が直後に来た場合に限り、空白は必要あ りません。 例:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「おれがにせものだって?」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 例外中の例外として、原稿用紙の行のいちばん端に「?」「!」がきた場 合には直後の空白が必要ではなくなるのですが(空白を空けてしまうと段落 の書き始めの行頭空白と区別がつかなくなるため)、そのようなケースに遭 遇する事は滅多にありません。もしそのようなケースに遭遇した場合でも、 もちろん空白を削除すればいいだけの話ですが。 ★思考点について★ 思考点(リーダー)は、ふつうは「……」とし、原稿用紙の枡目をふたつ 使い表記します。「・・・」「…」「...」等は、正しい使い方ではあり ません。 また、中線すなわち「――」も枡目をふたつ使い表記します。 「………………」のように思考点を気分に応じてやたら長く続けるのは、 散文の場合あまり意味がありません。 これも、手近な小説で確認してみてください。 ★禁則について★ 句読点(「、。」)及び「閉じる記号」が行頭にきた場合には、その前の 行の最後にぶら下げます。行頭禁則となるのは原則として句読点及び「閉じ る記号」のみで、例えば「・」「ぁぃぅぇぉゃゅ」等はこの禁則の対象とは なりません。 以上です。これが、「原稿用紙の正しい使い方」です。あと、縦書き原稿 の場合アラビア数字は漢数字に変換した方が良い、等々もありますが、最低 限、絶対に守らねばならないルールは以上に挙げた物だけです。 たったこれだけの事を守るだけで、どこでも確実に通用する「原稿用紙の 正しい使い方」ができます。 まとめますと、 (1)文末に「。」をつける。 (2)段落の書き始めの行頭には、空白をひとつ空ける。 (3)「?」「!」の直後は、「閉じる記号」がこない限り空白をひとつ空ける。 (4)思考点は「……」とする。 (5)行頭禁則を忘れない。 と、なります。 なお、主な参考文献は、尾川正二『原稿の書き方』(講談社現代新書)、 本多勝一『日本語の作文技術』(朝日文庫)、です。これら二冊の本に、よ り詳しく解説されていますので、興味のある方はお買い求めください。両方 とも、さほど高い本ではありません。特に、『日本語の作文技術』のほうに は、この文書では省略した読点すなわち「、」の用法について分かりやすい 解説がされています。 純文学系の作品で、一般的でない原稿用紙の使い方を「この作品の原稿用 紙の使い方は、タイポグラフィー的表現方法のひとつだ」と強固に主張され ますとさすがにそれを「誤りだ」とは指摘しにくくなりますが、もしそうい う主張をなさる場合でも、それは「原稿用紙の正しい使い方」についてはっ きりとした認識をしてから、ということにしたほうがよろしいかと思われま す。 【おしまい】 第一版発表:一九九一年一〇月 加筆・修正:一九九三年五月二八日
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