AWC The Last War  1 − 1 Marchin Muller


        
#2103/5495 長編
★タイトル (AAA     )  93/ 5/16  22:47  (177)
The Last War  1 − 1 Marchin Muller
★内容
The Last War

 序章 サンフラワー
1
 人類はその誕生より自らの欲望のために争いを起こし続けて
きた。大国に取っての新兵器の発明は侵略の切っ掛けとなった。
小国に取っての新兵器は敗戦を決定づける物となった。刀、馬、
火銃、火砲、戦車、戦闘機、ミサイル、核兵器、人々は新兵器
の威力に恐怖し、戦争の終わった後その兵器の使用だけでなく
保持さえも規制してきた。良きにしろ悪しきにしろ兵器の発達
は民生品に応用される事で人類の営みに文化の文字を与えてき
た。
 二大国を中心としたの冷戦が終わって二十年間、混沌とした
情勢の中で各地で紛争が勃発し続けた。その都度、平和維持軍
が派遣されたがそれは対処療法に過ぎず、一時も地上から争い
の文字が消えた事はなかった。必ず地上のどこかで紛争が起こ
っており、それは必ずと言っていいほど貧困な国であった。
 そして、冷戦時代の緊張の中の平和を懐かしむ者さえいた。
さらに、そんな過去の状態に戻そうとする者さえ存在したので
ある。その歪曲した思考は、複数の意志と多数の欲望が絡み合
い巨大な謀略となった。謀略は各所で火の手を上げるべくくす
ぶり始めていたのである。この時点ではこの巨大な謀略を制止
する人物はまだいなかった。そして……

    2

 「やあ元気だったかねクレイドル チャニング中佐 あの時
はご苦労だった。 今回も大統領から、じきじきのご指名だ。」
 ケインズ元帥は初老の百戦錬磨の根っからの軍人を思わせる
男である。彼の胸には無数の勲章が有るのだが、当の本人はそ
の重みをあまり評価していない。
ケインズ元帥はシムス大統領補佐官の方をちらりと見た。
 「今回の作戦は宇宙だ」
 「私は高所恐怖症で……」
クレイドルは珍しく冗談をいいながらシムスの葉巻の煙を気に
している。
 「おお、チャニング君はタバコが嫌いだったな。こちらは、
大統領補佐官のキャドル シムスさんだ。」
 シムスは立ち上がり、クレイドルは差し出した手と握手した。
 「提督から噂は聴いとるよ、今回も宜しく頼む」
 クレイドルは顔をしかめたが、タバコ嫌いのためではなかっ
た。苦い思い出を回想していたのだった。過去に二度、直接は
会っていないのだが、クレイドルの部隊はシムスからの指令を
受けた事があり、二度とも厄介な指令であった。二回目の時は
スーダン戦の時であった。それは敵の背後に回り込み兵器や貯
蔵物資の爆破する事によって味方の侵攻作戦を援護するもので
あった。簡単な仕事と引き受けたのだが、敵の正規兵は凄腕を
取り揃えていて、悲惨な戦いとなった。クレイドル自身も重傷
を負い、生き残ったのは、今回の作戦に参加するクレイドルも
含めて五名のみであった。パラシュート降下したときには四十
二名いたのだからクレイドルにとっては忘れたくても忘れられ
ない苦い記憶である。
 さらに、クレイドルはその戦いで亡くした上官の言葉を思い
出していた。『シムスはうさんくさい野郎だ。何を考えている
か分からない。我々を使い捨ての道具とでも思ってるんだろう
な。でなければこんな無謀な事はさせないね。ウィル爺さんも
焼きが回ったかな。』クレイドルの部隊ではケインズ元帥を親
しみを込めてウィル爺さんと呼んでいた。
 「例の件ですか?」
 クレイドルは最近マスコミを騒がせている事件を思い出しな
がら言った。おぼろげながら衛星が怪しいと感じていた。
 「そうだ、この作戦には熟練した兵士と、プラントシステム
の専門家が必要だ。専門家は補佐官に手配していただいた。日
本からの助っ人だ。」
 「いつもひいきにしていただいて有り難うございます。」
 クレイドルは『全く困ったものだ。』と言う言葉の代わりに
嫌みとも感じられる言葉を吐きだした。先日もシムスの要請で
クレイドルの部隊に配属された男がいた。大した腕前ではなく、
よく特殊部隊に配属されて来たなと感じていた。一カ月前の人
質救出作戦で武勲をたてたという話だが、犯人はよほどの素人
か間抜けだったんだろうとも考えていた。

 シムスは近く編成されるであろう連合平和軍の創設に備えて、
軍内の優秀な人材をあらゆる分野で集めていた。今回の作戦も
その軍内の交流を考慮したものであって、本番前の予行演習と
言ったところであった。さらに、もう一つの考えもあったのだ
が…。

 作戦は発動された。

 「バーンズ、来てくれ」会議室から出てきたクレイドルは足
早に左に曲がった。
「今回はまた、危険な仕事ですか?」バーンズ中尉はわずかに
遅れながらも追いかける。
クレイドルは立ち止まる。
「いままでに危険な仕事があったかね?」
閉まりかけたドアを見ながらおもいっきり皮肉を込めて答える。
「最近世界各所で起きている事件を知っているだろう」
「謎の大量死の事件ですか」
「そうだ、今回の作戦はその対策だそうだ。」

3

茂は南米のブラジルに出張中だった。
「なや、これは、メチャクチャやんけ」送られてきたファック
を見ながら、電話を掛けた「ハロー」
「ハロー ジス イズ…」
「玉井や順ちゃん出してファックスおかしいんや」
「少々お待ち下さい。……竹田さーん……」
「なになに、ファックスがどうしたんだ。」
「しかし、お前は不死身だなあ、そっちじゃバタバタ死人だ出
てるそうじゃないか。死なないうちに帰ってこいよ、と言って
も昨日は日本でも死人が出たようだが」
「分かったっけん、ファックスもう一回送ってや。内容がメチ
ャクチャで読めへん」
「ちょっと待ってや、…チーちゃんこれ玉やんに送っといてや…
 今送らせたけんな。」
「サンキュー。」
「ほんま 気ーつけてや、危ないで。」

3
後藤田長官は直々に但馬空将を呼び事件対策の実行部隊の編成
を指示した。
「我々は民間の技術力を必用としているんだ。」但馬は唐突に
切り出す。
「危険な仕事であるが君でなければ出来ない仕事だ。目的地到
着までは山田一尉がサポートする。」
 山田が竹山に軽く敬礼する。
「まず、横田基地からアメリカに飛んでもらう」

 滑走路脇に雑然と並んだフライングタイガーのジャンボに山
田と竹山がタラップを上っていく。
「山田さんこの仕事が終わったら私は政府に特別手当を請求し
ますよ」
「この作戦で生きて戻れるかどうかをよく考えた方がいいじゃ
ないか。」
 ジャンボが夕闇の滑走路を走り、暗闇の中に消えて行く。
機内はアメリカの軍人やその家族が乗り込んでいる。その中ほ
どに竹山が東京のネオン輝く夜景を流し目で見おろし、山田の
方に振り向く。
「山さん、この故郷を守るためにですか…… 興奮気味で眠れ
そうにありませんよ」
「まあ、時差もあるが宇宙じゃあ夜昼言ってられないからな寝
られるときに寝ておかなければ…。」
と言いながら山田は眠る体勢に入った。

 Nellis空軍基地の格納庫で作戦の準備が進んでいる。整備員
が黒い船体に赤い文字で書かれたベイウルフの文字を撫でハッ
チを開け、扉越しに内側の操作パネルを叩く。
艇の下部から蒸気音と共にウエポンアームが姿を現す。整備員
が格納庫の奥から牽引車に乗って来る。“No2”と“No3”の
ウエポンラックが乗っている。その数字の脇には実弾を示す赤
いマークがある。
 「やあ、スコッティ 次のアームには追跡ポッドとミサイル
ポッドを装着してくれ」
チェイニー大尉はハッチの操作板を叩きながら、牽引車から台
車を切り放しているスコットを見る。
 「アイアイサー」
スコットは低い船底に身を屈めながら敬礼する。チェイニーは
開いたドッキングベイを上ってコックピットに入った。
「メインエンジンチェック、電源チェック、コンピュータチェ
ック、データ回線チェック」「異常無し」
チェイニーはシステムチェックを行うと、外部モニターを見る。
スコットが“No8”と“No1”のラックを取付終わるところだ
った。
「スコッティ いいか?」
「完了です」
スコットは右手を挙げながら答える。
「ドッキングベイ閉鎖」
ドッキングベイとハッチが閉まる。続いてウエポンアームが収
納される。
「リフトアップ」
ベイウルフ船体が持ち上がる。
「ギア収納」
船底のタイヤが収納される。続いてベイウルフはクレーンに持
ち上げれれ、前進し双尾翼のサーフィスプレーン運搬機の背中
に載せられた。

 陽炎の揺らめく中、銀色の機体が砂漠の滑走路を降りてくる。
別の基地でC130に乗り換えた山田と竹山がNellis基地に到着し
た。クレイドルの部隊も海軍の輸送機グレイハウンドに乗り、
同基地に到着した。

 ペンタゴン作戦本部、ケインズは秘書官の持ってきた文書に
目をとうしながら呟いた。
「私もプラント1に行くべきか…。」





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