#703/1159 ●連載
★タイトル (sab ) 09/04/03 20:42 ( 19)
She's Leaving Home 一回目の売り続き ぴんちょ
★内容
それからドンキの店内をぶらぶらする。
スナック菓子のコーナーではスナック菓子が棚からあふれそうなぐらい
パンパンに並んでいて、種類もすごい沢山ある。
それを南米系の女の人が目を丸くして見ていた。
自分の国にはこんなに色々なものはない、国に残してきた子供はバナナ
しか食べた事がない。とか思っているのかなあ。
でもバナナだって熱帯雨林の伐採でもう採れなくなる。
そして畑にしてスナック菓子を作る原料を栽培して先進国が搾取するのだ。
それで最後はセンター街のゲロになる。
100円均一コーナーに行ったら100円の缶詰を入念に見ているおばあさんがいて
可哀想だなあと思った。100円の缶詰を買うのにも慎重にならないといけない
なんて。それから100円のブドウを一房買っていた。
亭主に先立たれたのだろうか。あんなに悲しいならポアしてあげた方が
いいんじゃないか。人類なんて無くなってしまった方がいいんじゃないのか。
ミックスビーンズと羊羹を買って、漫キツに持ち込んで食べて、寝た。
途上国から搾取した金はどこへ行ったんだろうと考えつつ。
つづく。
#704/1159 ●連載 *** コメント #703 ***
★タイトル (sab ) 09/04/03 20:44 ( 25)
She's 売り2 ぴんちょ
★内容
次の日の夜もベサメムーチョに電話して円山町のラブホに行った。
モト冬樹みたいな顔をしたジジイだった。
パンツをおろしたらもう立っている。
「すごいねー」
「バイアグラ飲んできたから」
そんなにまでしてやりたいのか。ジジイ。
セックスが終わってから自分語りするジジイ。「内臓のガンでね、
もう抗がん剤では治らないからフィリピンに行って臓器移植するしかないんだよ」
そんなんまでして生きたいのか。ジジイ。
「がんセンターってねえ」とジジイが言った。「人間の心の動きをグラフに
するんだよ。縦軸に「落ち込む度」、横軸に時間があって、告知の瞬間、
2週間後、3ケ月後とかなっていて、グラフは告知の瞬間にがーんと落ちて、
2週間ぐらいでだんだん上向いてくるんだけれども、その上向き方がここまでなら
精神安定剤何ミリグラム、ここまでなら何ミリグラムとかね」
「牛の角を抜く時にも痛みを数値にするんですよ。痛みの数値が1.5なら鎮静剤を
打つの」
「なにを言っているんだ、君は」
「3万円もらえますか」
何でおばあさんだと可哀想なのにジジイだと憎たらしいんだろう。
もらった3万の内、1万は寄付した。インターネットで色々調べた。
国境無き医師団が信用出来そうだった。
つづく。
#705/1159 ●連載 *** コメント #704 ***
★タイトル (sab ) 09/04/03 20:45 ( 19)
She's 日常生活 ぴんちょ
★内容
そんな感じで毎日が流れて行った。オールだとホテルで寝てショートだと
漫キツで寝た。家へのメールは「さくらや」かビッグカメラから打った。
ミチコやケイコとはなんとなく疎遠になった。プリペイド携帯は商売と
着うたにばっかり使っていた。
食べるものはアミノタブレットとかリポビタンDとか。青豆。フジッコの
おまめさん。豆の缶詰。東横のれん街の豆腐。ゴマ豆腐。あんこ玉。芋ようかん。
外で食べるんだったらセンター街「はなまるうどん」をマイ醤油持参で。
あとは東急ハンズ前のサイゼリアのフォッカチオとか。
オーガニックの店も見付けた。ヴィーガンのランチを出していたけれども、
私は生野菜がダメだから食べられない。菊池桃子め。
だけどオーガニックの石鹸を入手したのはよかった。道玄坂にゲルマニウム温浴も
見付けた。そこで体重を計ったら40キロを切っていた。生理は止まっていた。
だんだん寒くなってきて、公園通りのGAPに行ったら大量のダウンが並んでいた。
あの大量のダウンを作る為にどれだけの水鳥が毛をむしりとられたんだろう。
想像すると口の中が酸っぱくなってきて胸が焼けてくる。
結局オーガニックの店でオーガニックのパーカーを買った。
つづく。
#706/1159 ●連載 *** コメント #705 ***
★タイトル (sab ) 09/04/03 20:49 ( 84)
She's 又売り ぴんちょ
★内容
朝、目を覚ましたらホテルのベッドに寝ていた。
窓のよろい戸から陽の光がもれてきている。円山町かあ。
枕元のスイッチで照明をつけると又夜みたいになった。
隣に爆笑問題・田中みたいな顔をしたやつが寝ている。
こいつが添い寝を要求して来たんだ。
ベッドから降りてトイレに行って戻ってきてテレビをつけると
天気予報をやっていてお台場が写っていた。あそこらへんはよくヒデオと
遊びに行ったなあ。お天気キャスターがファーの耳あてをしている。
あの耳あてを作るのに毛皮をはがれた動物の痛みを思うと胸が…。
爆笑問題が目を覚ます。そそくさとトイレに行って帰ってきて「もう一回
いいんだよねえ」と言って寄り添って来る。「ねえ、触って、触って」と言うと
私の手を股間にもっていく。
棒はふにゃふにゃだった。玉をクルミのようにぐりぐりやってやるとすぐに立った。
「たった、たった」と言うと両膝立ちになって固さでも確認するように自分で
ぶらぶらさせる。「唾つけていい?」と言うと私の性器に唾をつけて挿入してくる。
それから「はぁ」とか「うぅ」とか自分で盛り上げてピストン運動している
のだけれども全然行かない。
こんなのやって楽しいのだろうか。こんなの女性性器を使ってのオナニーじゃん。
結局行かないで手こきで抜いてくれとか。手でしごいてもなかなか行かない。
その内右手が疲れてきて左手でしごいて、左手もしびれてきた頃にやっと
じゅわーっと滲む程度の弱弱しい射精をした。
「なんでそんなに抜きたいの?」思わず私は聞いた。
「だって月に一回しかやれないんだもの」
「固め撃ち?」
オーガニックの石鹸でシャワーを浴びる。
ホテルを出ると「夜明けのコーヒー飲みたいんだけど」と男が言ってきた。
「えー」もう金はもらっているんでつっぱねてもいいのだが。「サイゼリア
だったら行ってもいいけど」
「サイゼリア? ここらへんにあるの?」
「あるよ。東急ハンズの前に」
「遠いよ。あそこにロイホがある」
「ロイホかあ」ロイホだったらまあいいや。
店に入ると私はドリンクバーを頼んだ。
「えー、なんか食べないの」と男。
「私、ちょーベジタリアンなんだよ」
「だったら、マンゴーとかあるよ」菊池桃子の事は言わない。「いいよドリンクで。
お兄さんなに頼むの? 肉とか頼まないでよ」
「なんで俺まで」
「肉の焼けるにおいがきもいんだよ。フォルクスやビッグボーイとかダメなんだから」
「ベジタリアンってにおいも嫌なの?」
男はマッシュルームオムレツのセットを注文した。
「おこちゃんがさあ」男が突然語りだした。おこちゃんって誰? 携帯で誰かと
話してんの? オムレツをつつきながら男は語り続ける。「派遣辞めるっていう
から、なんで辞めんのかなあと思ったらロースクールに行くんだって。しかも畠田
と結婚も決めてさあ。妊娠までしていてさあ。計算高い女だよなあ。脱落するのかと
思ったら全部を手に入れたって感じじゃん、って5人ぐらいで話していたら宮本が
「お前おこちゃんと話したことあんのかよ。ないだろう。お前には関係ない話なんだ
よ」とか言うんだよねえ。だけれども、俺は誰よりもおこちゃんを愛していたんだよ
ねえ」と言って顔を上げた。
「おこちゃんって誰?」と私。
「会社をやめてロースクールに行った人」
「畠田って誰?」
「おこちゃんの旦那」
「それって私に関係があるの?」
「そうだよねえ」ハッと気が付いたように言った。「あいたたー。俺っていきなり
具体的な事言っちゃうんだよねえ。KYなんだよ。この前もツタヤから出て来て
バス停で待っている人に「ジョゼと虎と魚たち」よかったですよーとか言っても
全然通じないでさあ」
「ジョゼって何?」
「あいたたー。どうして具体的な事言っちゃうんだろう。いい映画なんだけれども
公開されたばっかじゃないもんね。それってマイブームだもんね。3回もやったん
だから何話しても通じると思ったけど心通じてないもんねー。…俺にはマイブーム
しかないんだよ。でも2ちゃんに行ってジョゼのスレに書けばタイムリーな話題
なんだよねえ。おこちゃんの事だって片思いのスレ行けばタイムリーな話題なんだ
よね」
男は携帯を出すと音楽を聴きだした。バンプの「ギルド」を口ずさむ。
こいつの経験はばらばらだな、と思った。こいつ、私と3回やった事も掲示板に
書き込むんだろうなあ。バンプ、おこちゃん、ジョゼでぐぐって正体あばいたろか
と思ったけれども。そんな興味はこの人にない。
爆笑問題と分かれてから道玄坂を上る。
ほか弁でのり弁を買う。
「あのー、フライ無し、ちくわ無し、おかか無しにしてもらえますか?」
「え? それじゃあご飯だけになりますよ」
「でも、沢庵とかあれば…」
爆笑問題はオムレツを食べていたよなあ。私はのり弁当のご飯だけ。おかしいのは
どっちだよ。
携帯を出してあゆを聴く。「SEASONS」。
つづく。
#707/1159 ●連載 *** コメント #706 ***
★タイトル (sab ) 09/04/03 20:51 ( 46)
She's 拒食症の女の子 ぴんちょ
★内容
漫キツに帰ってほか弁を食べてSNSにログインしたら「メンヘラ」系コミュに
新着の書き込み情報があったんでなんとなくクリックした。
「私の拒食症の心理について。
私はだいたい1週間に1回ぐらい過食します。食べた後は全部吐くんですけれども、
どうしても食べたと同時に十二指腸に流れていってしまう食物があるんですね。
それを早く排泄したくて大量の下剤を飲むんですが、何時になったら過食時の脂質の
多い食物を排泄しきれるのか不明ですよね。そこで私はマーカーとしてコーンとか
カシューナッツみたいな消化されないものを食べるんです。うんちにコーンや
カシューが混じれば過食が終了です。本当にお弁当のご飯に乗っているゴマを一粒
ずつ取り除くぐらい潔癖な私ですからそこまでやるんですけれども。
そんな気狂いのような行為をしていて気付いたんです。私って脂肪分の多いものを
過食した後に嘔吐と排泄で消化管から全部出して安心します。それから脂質0.5%
以下のものを食べる。つまり断続的なんですね。
でも例えばミミズは土の中で口から食べて肛門から排泄しながらどんどん前に進む
から何時でも食べている感じでしょう。
でも人間は私みたいな気狂いでなくてもやっぱり断続的ですよね。朝食を食べて
昼食を食べて夕食を食べて。そうすると「今の食事は前の食事に比べて不味い」
とか「次の食事はもっと美味しいものを」とか比較するようになるのではないで
しょうか。今の食事は今の食事で有難いものなのに比較する為の物差しになって
しまう。過去を検討する為の。未来を予想する為の。そうすると今はもうすっかり
色あせた空想の世界です。そしてひたすら今よりもっと美味しいものを求める。
でも私の求めているものはもっと美味しいものではなくてもっと脂肪の少ない
もの。それから体についている脂肪も減らさなければならない。どれぐらい?
無限に減らさなければならない。
私の欲望は無限に脂肪を減らす事ですが、或る人にとっては偏差値だったり、
或る人にとってはディトレードで儲けるお金だったり、援助交際の稼ぐ
お金だったりするんじゃないでしょうか」
これってエイジに似ているよなあ。エイジは具体的な女はどうでもよくて
ポテンシャルの確認の為にどんどん女の水準を上げていくとか言っていたもの。
私はもっと具体的な見方をしていると思う。例えば、人体の標本とかスルメ、
干ししいたけ、アスファルト。そういう具体的なものを世界中からかき集めてきて、
丸で牡蠣が海水を大量に吸い込んで体の中にノロウィルスを溜め込むように
私の脳味噌の中に妙な体系が出来るのだ。
でもなんで人体の標本とアスファルトが関係あるのだろう。それは両方とも
動物の死体だから。「動物の死体」という共通項でくくっているのか。昔数学で
「因数分解ではまず共通因数をくくりだせ」と教わったな。私って動物の死体
という共通因数に注目しているだけで具体的なものを見ているわけではないの
かもな。
なんか、ミミズの彼女とかエイジとか、あと「これ一冊、あといらない」
という究極のH本が欲しいと言っていた医学生に似ているんじゃないの。
とか思った。
寝る。
つづく。