#590/598 ●長編
★タイトル (sab ) 22/11/11 11:39 (299)
あるトラニーチェイサーの死1 朝霧三郎
★内容
(作者コメント。未校正です。使い回しが多いです)。
登場人物一覧
小川浩二 警備員。佐藤浩市似。30歳。
大川 警備員。柄本時生似。32歳。アニメオタク。
蛯原 マンション管理員。立川志の輔似。60歳。
北野 警備員。62歳。
石松美也子 コンシェルジュ。藤谷美和子似。28歳。趣味はサーフィン。
小林達也 池袋署の巡査部長。江口洋介似。35歳。
加藤凡平 池袋署の巡査部長。高木ブー似。33歳。
佐伯明子 池袋署の巡査。渡辺満里奈似。私立大学(院)で心理学を専攻していた。
25歳。
アリス。ニューハーフ風俗のシーメール。目元が蒼井優似。20歳。
マキコ。ニューハーフ風俗の受け付け。マツコ・デラックス似。28歳。
【本編スタート】
小川が警備員をやっている池袋のマンションは、24時間友人管理だのコンシェ
ルジュが居るだのと、マンション管理のクオリティの高さを売りにしていたが、中
身的には、去年竣工したばかりで、管理会社は施主の子会社(本通リビング)の更
に下請けの清掃会社に丸投げされていて、管理員もコンシェルジュも、その清掃会
社がかき集めてきたパートにすぎなかった。
小川ら24時間警備員も、マンションの新築工事の時に交通誘導警備をやってい
た人間が、そのままスライドしてきてマンション警備員になっただけで、施設警備
に関しては全くの素人で、火災報知器の消し方も防犯カメラのデータの巻き戻し方
も知らなかった。
ただ、下請けの清掃会社に言われた通り、定時巡回をする程度だった。
もっとも、夜中の2時、丑三つ時に、自走式駐車場の壁面緑化の為に、駐車場の
壁面のU字溝に仕込まれている砂漠でも枯れない草、が入ったビニール袋につなが
ったビニールチューブ、に水を流す為に、駐車場一階の水道の元栓を開けに行かな
ければならないという面倒な作業もあったのだが。
しかし、このバカバカしい水やりも、居住者の車は濡らすわ手間ばかりかかるわ
で、撤去する事になっていて、昨日もその足場を業者が来て組んで行ったのだった
。しかし、安普請の足場の為か、すぐに一回崩れて、再度組み直したものの、今は
、赤いカラーコーンとトラ柄のバーで、立ち入り禁止になっていた。
今宵も、小川が、このバカバカしい水やりが終わって、管理室に戻ってくると、
時刻は3時だった。キンコンと管理室内のアイホンのチャイムが鳴った。防犯カメ
ラのモニタを見ると、新聞屋だった。モニタの隣にある盤の中にあるスイッチを押
して正面玄関の自動ドアを開けて入れてやる。新聞屋は朝日、読売、産経、毎日と
4人通さなければならなかった。
新聞屋を通してしまうと、やっと人心地ついた感じで、小川は管理員室の真ん中
に置いてあるデスクの椅子に座ると、がーっとのびをした。
(これで朝までは何もないだろう)
考えてみると、深夜の管理員室はまったりする。
家電量販店並の明るさ。右手に玄関ポーチに続く鉄扉、左手にカウンターに続く
鉄扉がある。正面に監視カメラのモニタや防災盤があって、そっち側からファンの
音が響いてくる。後ろにはNTTの盤が並んでいる。右側にホワイトボードがあっ
て1ケ月分のスケジュールが書かれている。左奥がキッチンになっていて、冷蔵庫
だの電子レンジだのがあるのだが、パーテーションで隠されていて見えない。
デスクの上にはネットの使えるPCが1台あった。
小川は、加熱式たばこをふかしながらyoutubeで「ゆず」などを再生した。
(まったりするわー)
突然「キンコン、キンコン、キンコーン」とアイホンのチャイムが鳴り響いた。
監視カメラのモニタで見ると誰かがエントランスの自動ドアに寄りかかっている。
フロント側から出て行って、自動ドアの内側に立つと、ドアが開いた。
「いやー、酔っぱらっちゃって、鍵をどっかにやっちゃったんだよ。ナルソックを
呼んでくんない? マスターキーみたいなの、持ってないの?」スーツを着た酔っ
払いが酒臭い息を吹きかけてきた。
「管理室の壁にナルソックしか開けられないキーボックスが埋め込んであるんです
よ」
「それはお前らは開けられないの?」
「そりゃあ、ホームセキュリティーの契約をしているのは、居住者様とナルソック
ですから」
「じゃあ、お前はなんだよ。ただのカカシか。カラスでも追っ払う」
「でも、ナルソックだって、管理室に入るには私らが付いていないと駄目なんです
けどね」
「なに言っていやがんだ。いいから早くナルソック呼べ」
言うと、フロントのカウンターにもたれかかってタバコを吸いだした。
10分でナルソックが到着すると、免許証で本人確認を行う。
小川はナルソックを管理室に入れてやった。
ナルソック隊員は、ホワイトボードの後ろの壁に埋め込まれたキーボックスの前
に行くと、磁気カードをかざした。ブーっと音がして、赤いランプが点滅する。素
早くキーボックスの扉を開けて、鍵を取り出すと、扉を閉める。もう一回ブーっと
音がして、ガシャンと扉が施錠される音がした。
ナルソック隊員と酔っ払いサラリーマンを、二重オートロックの2つめを通して
やる。
「すみませんねえ、酔っぱらっちゃって」と、酔っ払いも、ナルソックには全然態
度が違っていた。
ほんの10分でナルソックが帰ってきた。
「あの居住者、鍵、持ってましたよ」
「あ、そう。じゃあ、眠いからさっさと帰って」
「ちょっとすみません、作業がありますんで」と言うとナルソック隊員は、なにや
ら作業を開始した。
使用した合鍵の先端部をビニールで覆い、その上を10桁の数字の書かれたシー
ルで封印し、シールの半券を封印台帳に貼り付けてアタッシュケースにしまう。封
印された合鍵は、再度キーボックスを磁気カードで開けると、そこにしまう。
そういう作業の間にも、例えばアタッシュケースを開ける為に腰に付いているキ
ーホルダーに手を伸ばすなど、隊員が体をよじっただけで、防弾チョッキの様なダ
ウンベストにぶら下がっている特殊警棒だの無線機だのががさがさ音を立てるのだ
が、(あれは何か「ロボコップ」のオムニ社の隊員の様で、クールじゃないか)。
小川も紺の上下の制服を着ているが、どっちかというと菜っ葉服っぽい。
小川の眼差しは羨望の眼差しに変わっていた。
「お前なんてどうせナルソックの正社員じゃないんだろ」と小川は言った。
「そりゃあ、雇用形態は色々ありますけれども、ナルソックの隊員です」
「どうせどっかのアパートで待機していて連絡があると出向いてくるんだろう。つ
ーか、俺の事、キーボックスも開けられないパートだと思ってバカにしてない?」
「していませんよぉ」
「しているよ。ぜってー。見下している」
などというどうでもいいやりとりがあって、ナルソック隊員は引き上げて行った。
結局その日は朝まで一睡も出来なかった。
8時になって次の24時間警備員の福山が出勤してきた。
着くなり、警備員にあてがわれている一番上の引き出しから太田胃散を出すと一
匙口に含んで、キッチンコーナーに駆け込む。これは、夜勤明けと同時にアニメを
見ながら次の出勤まで酒を飲むという生活をしているので二日酔いなのであった。
「福ちゃん、着替えたら見せたいものがあるから来て」
「んー」と寝ぼけた顔でこっちを見ながら、福山は、フロント側のドアから出て行
った。ラウンジから裏口に続く廊下の途中に半地下のボイラー室があって、そこが
警備員の更衣室になっていた。といっても、プラの収納ボックスが一個ずつあるだ
けだが。
福山が、警備服風作業着に着替えてくると、小川は彼を連れて玄関側の鉄扉から
ポーチに出た。
空模様はところどころ青空が透けて見えるものの全体としては雨雲に覆われてい
た。
「もう梅雨だな」と小川。
「うん」
左に旋回して、ゴミ箱置き場と自走式駐車場の入り口のシャッターを見やりなが
ら、裏エントランスに通じる通路に入る。10メートル程度、駐輪ラックが設置し
てあって、その先は駐車場の壁面が露出していた。壁面緑化の効果は全く不十分で
、砂漠でも枯れない草は、あちこちぼぞぼぞと生えている程度だった。壁面には足
場が組んであって、下部には赤いカラーコーンとトラ柄のバーがあって、立ち入り
禁止になっている。
「福ちゃん、ここ絶対に入らないでよ。一回倒壊して作業員がケガしているから。
又何時崩れてくるか分からないからね」
「うん」
「分かったのかよ」
「分かったよ。でも、居住者は大丈夫なの?」
「だから、このトラ柄のバーで立ち入り禁止になっているんだよ。まあ、すぐに、
あの緑化の草が撤去になって、足場もなくなるけれどもな」
「あの草なくなるんだ」
「ああ」
「じゃあもう水やりは無くなるね」
「ああ、仕事が減っていいや。しかしその前に」と言うと小川は足場に手をかけた
。ぐらついて、カンカンと鉄パイプのぶつかる音が聞こえてくる。「俺が、足場の
下敷きになって死ぬかもな」
「何で?」
「俺、死んでもいいやと思ってんだよ。お前、そう思う事ない?」
「ある訳ないじゃん」
「俺は時々思うよ。殉職するのは恰好いいとか。ずーっと「太陽にほえろ!」のマカ
ロニの殉職の回を見ていたけど、夕べナルソックがきて思ったんだけど、オムニ社
のロボコップみたいに、こういう鉄骨の下敷きになって死ぬのも恰好いいかなあと
思って。つーか「ロボコップ」に似たシーンがあるんだよ」
「止めてくれよ。やるんだったら、俺のいない時にやってくれよ」
「まぁ、お前には迷惑かけないから」
管理室に帰ると、コンシェルジュの石松が3人前コーヒーを入れていた。福山の
と小川のと自分のと。
主任管理員のは入れてあげない。意地悪からか。それとも、そもそもコーヒーな
んて自分で勝手に入れるものだから、たまたま福山と小川が居るから一緒に入れた
だけで、主任管理員のはまだ出勤していないから入れないだけか。
(でも、何で俺にも入れてくれるんだろう。無視している癖に。福山と二人分じゃ
あ露骨すぎるからか)
石松は、コーヒーをスチールデスクの上に置きながら「おはようございます」と
こっちに微笑してきた。
しかしあの微笑は福山にであって自分は無視されている、と小川は思っていた。
(今日こそシカトの動かぬ証拠を掴んでやる)
3人でコーヒーを飲むと、なんとなく世間話をする感じになった。
小川は見えない様に、手で隠しつつ、Apple WatchのボイスメモAppを開いてボタ
ンをタップした。
「だんだん梅雨っぽくなってきたけれども、洗濯とかどうしてます?」と小川。
「福山さんは、洗濯、どうしているの?」と石松。
「部屋干しだな」
「IKKOが「おったまげー」とか言っているのが凄いらしいよ。でも梅雨なんてすぐ
終わるよ。すぐに夏本番だよ。石松さん、サーフィンとか行くの?」
「福山さんは、オタクの夏休みは?」
「夏はコミケだよ」
「コミケに似ているけれども、レインボープライドっていうLGBTのイベントが
あって、もうすぐ終わるって、ニュースでやっていた」と小川。
「「マツコの知らない世界」で、オタクが経済支えてるって言っていたわよ。「ら
き☆すた」の聖地巡礼で経済効果30億円とか」と石松。
「でも、オタクが聖地に殺到するのって、ウザいって言われているんだよね」と福
山。
「旅行だって、LGBTの市場規模は20兆円とか言われているんだよね。LGB
Tにフレンドリーになれば、LGBTインバウンドが増えるよ」と小川。
「アキバのオタクツアーのインバウンドがすごいんですってね」と石松。
「あんまりグローバル化されても荒らされちゃうよ」と福山。
「そんな事ないよ。サンフランシスコみたいにオープンになればいいんだよ。あそ
ここそLGBTの聖地だからなあ。♪夏には愛の集いがあるでしょう…」
「夏になったら、コミケだものね。コミケに行く人って、みんな単身者なの? 家
族連れもいるの?」
「コミケなんてみんな独り者だよ」
「最近、Eテレの「バリバラ」でLGBTが好きな人と好きな場所で暮らしたいと
かやっていたけれども、そういう系の番組が多いよ」と小川。
「福山さんは家族はいらないの? 生涯未婚だと67歳で死んじゃうんだよ。やっ
ぱちゃんと家族をもった方がいいんじゃないの? 今度紹介してあげようか。ねえ
、どう? その気ない?」
ここまで話したところで、主任管理員の蛯原が登場した。
真っ黒に日焼けしていて、肝臓でも悪いんじゃないかと思えるぐらいだ。
髪の毛がイノシシ並に濃くて、自分でカットするから、毛足が豚毛歯ブラシみた
いになっている。
Yシャツのボタンを3つぐらい外して、ネクタイをぶら下げて、ニットのベスト
を全開にして、開店前のスナックのマスターみたいないでたち。
まずデスクにスマホとタバコを置く。俺の領土、みたいに。
石松と福山は監視カメラのモニタの下へ、小川はフロントへ、と、蜘蛛の子を散
らす様に離れて行った。
蛯原は、キッチンコーナーでインスタントコーヒーを入れると持ってきて、タバ
コの横にどんと置いた。
(こぼさないかなあ)と小川は思った。(こぼせばいいのに。そうすればPCの裏
から吸い込んでおシャカになる)
蛯原はスチールデスクに半けつを乗せると、ばさっと新聞を広げた。
(ありゃ何気取りだ)カウンターから眺めつつ小川は思う。(デカ部屋の刑事コジ
ャックみたいな積もり? しかもタンソクだからつま先しか床に付いていないし)
「早く引き継ぎ、やってよ」と福山。
「じゃ、やっちゃいましょう」ネクタイを締めながら蛯原が集合を掛ける。
「おはようございます」と蛯原。「じゃあ、まず、コンシェルジュの石松さん、何
かありますか」
「何もありませーん」
「じゃあ、警備員の小川さんは」
「何もありませーん」
「じゃあ、私の方から。まず大ニュース。本通リビングのフロントから連絡があっ
て、管理会社が変わるかも知れないって」
「えっ。じゃあ俺らは」と福山
「まあまあ、経緯から聞いて。
管理組合に山田というマンション管理士が入り込んでいたろう。
あれが、管理会社を変えれば管理費が70%に抑えられるから、かわりに節約で
きた分の1年分の半分をよこせ、という提案をしていて、それを管理組合がのんだ
らしいんだよね。
それで、多分、本通リビングから四菱地所コミュニティというところに変わるら
しい。
もっとも、四菱地所コミュニティだって正社員に管理員やコンシェルジュをやら
せる訳じゃないので、どうせ派遣社員を採用するなら、今の主任管理員とコンシェ
ルジュ、私と石松さんを採用するかも、っていう話です」
「警備員は?」と福山。
「それが、四菱地所コミュニティは西武系の警備会社を使っているっていうんだよ
ねえ。だから、四菱地所コミュニティの口利きで、その西武系の警備会社のパート
にでもなれれば、警備員も雇ってもらえるかも」
「ずりーな。管理員とコンシェルジュだけスライドして、警備員はお払い箱かよ」
と福山。
「だから、警備員もスライドして採用されるかも、って」
「どうだか」
「とにかく、近々連絡があるって言っていたよ」
「ふん。又交通整理のバイトかなあ。あれ、夏場にやるとゴキブリみたいに焼けち
ゃうんだよなあ」
小川がボイラー室に着替えに行くと、これから1回目の定期巡回に行く福山もつ
いてきた。
「やっぱり、石松はシカトこいていたな。今日は動かぬ証拠をつかんだから、お前
にも聞かせてやるよ」
左腕を付き出してApple Watchを袖から露出させると、ボイスメモAppを操作して
再生する。
「「だんだん梅雨っぽくなってきたけれども、洗濯とかどうしてます?」と俺が問
いかけているだろう。だけれども無視してお前に、
「福山さんは、洗濯、どうしているの?」と聞く。
「IKKOが「おったまげー」とか言っているのが凄いらしいよ。でも梅雨なんてすぐ
終わるよ。すぐに夏本番だよ。石松さん、サーフィンとか行くの?」
「福山さんは、オタクの夏休みは?」
な。俺が石松に問いかけているのに、シカトして、お前に話しかけているだろう」
「そんなの偶然だよ」
「偶然じゃない。」
更に再生。
「「サンフランシスコみたいにオープンになればいいんだよ。あそここそLGBT
の聖地だからなあ。♪夏には愛の集いがあるでしょう…」
「夏になったら、コミケだものね。コミケに行く人って、みんな単身者なの? 家
族連れもいるの?」
ほらな、俺が石松に問いかけているのにシカトしてお前に言うだろう」
「それはお前が、LGBTとか言うからだよ。そんなのセクハラだよ」
「あー、俺、LGBTになっちゃおうかなあ。そうすれば、職場での人間関係も、
性的マイノリティの悩みであって、オスの悩みじゃないから、女々しくはない感じ
にならない?」
「へぇ?」
「お前、西武系の警備会社の話はどうするんだ」
「俺は、西武になるなら行くよ。ナルソックに威張れるかも知れないじゃない」
「俺は嫌だね。高校の時に居たんだよ、西武なんとか台に住んでいて、親が西武線
で西武の会社に通っていて、買い物は西武で、野球も西武、休日の行楽は西武園、
みたいなやつ。何でそこまで社畜にならないといけないのかって思っていたけど。
俺は実家が西武ひばりヶ丘だから、そんなのが多くてね。
あー、俺、警察官になればよかったな。桜田門なら西武より格上だろう?」
「分からないよ。でも、山口県の方には民間委託の刑務所もあるっていうし、その
内ナルソックとかが警察を兼ねるんじゃないの? オムニ社みたいに」
「自衛隊はどうなんだよ。ワグネルとかになるんじゃないの」
「もう除隊したし」
「自衛隊にはLGBTっているのかよ」
「いないよ」
「韓国の軍隊でトランスジェンダーが自殺したよな。あれは可愛そうだと思ったよ
。泣きながら記者会見する彼女を見て。それで思ったんだけど、ナショナリズムよ
りもLGBTの連帯の方が優先されるんだなーって。普段嫌韓、ネトウヨでも、L
GBTなら連帯出来るんだよ。つまり、トラニーになれば、もう、石松は勿論、西
武とも戦わなくていいってことだ。だって韓国と戦わなくていいんだから」
「トラニー?」
「お前、トラニーって知らないの?。女より可愛いんだぜ」
小川はスマホ取り出すと、porntubeで、Ellahollywood(エラハリウッド)の動画
を見せてやった。
「すげーだろう。上半身はエマワトソン、そして下半身には白っぽいペニスが生え
ていて、いいと思わない?」
「…」
「お前には無理かもな。自衛隊員だものな。
あー。いっそのこと、女性ホルモンを飲むかな。トラニーになればもう戦わなく
ていいから。
でも、これトラニーに言うとすげー怒るんだよな。ホルモンを遊びに使うなって」
#591/598 ●長編 *** コメント #590 ***
★タイトル (sab ) 22/11/11 11:40 (300)
あるトラニーチェイサーの死2 朝霧三郎
★内容
梅雨入り前で、蒸し蒸ししていて、駅まで歩くのがだるかった。
ダイヤゲート池袋のアンダーパスにもぐりこんところで、ホームレスが、ビッグ
イッシューを売っていた。スニーカーがボロボロだ。
こんな貧しい人がいるのに、西武はこんなにごついビルを建てる程銭があまって
いる。
(そんなに同情していられない。あとちょっとで俺もビッグイッシューを配らない
とならなくなる)
駅の近くまで行ったら、偶然、靴の量販店にナルソックのワンボックスが到着す
る場面に出くわした。売上金の回収に来たらしく、警備員の一人がジュラルミンの
ケースを抱えて店内に入って行くと、もう一人が特殊警棒をカシャ・カシャ・カシ
ャと伸ばして、通行人を威嚇するように反対側の手の平を打っていた。
(この野郎。警察でもない癖に格好つけやがって。ちょっと因縁つけてやろうか。
でもやめた。ナルソックも裏で警察とつるんでいるかも知れないから。何しろ刑務
所を経営するぐらいだから。オムニ社と同じだ)
池袋駅から埼京線に乗り、赤羽で京浜東北線に乗り換えた。
電車はすぐに荒川橋を渡りだした。
レールのつなぎ目の音がコツンコツンと鉄橋に響いていた。
電車が徐行すると、車窓から緑地で野球をしている人達が見えた。
窓の上半分が開放されていて、なまぬるい6月の風が入ってきていた。
何時も小川はここで妄想を開始する。
突然、連結部のシルバーシートのあたりに、「太陽にほえろ!」の関根惠子巡査が
浮き出てきたのだ。
窓から、緑地のグラウンドの方が見ている。
陽の光受けた惠子巡査の横顔は、ローマのコインに彫刻してもいいぐらいの美形
だった。
日差しに目を少し細めていて、髪の毛が窓の上半分から入ってくる風になびいて
いた。
電車は徐行していて、トラス構造の鉄橋の斜材の日影が惠子巡査にカシャ、カシ
ャっと差していた。
突然連結部のドアが勢いよく開くと、な、なんと悪役商会、丹古母鬼馬二と八名
信夫が乱入してきた。
丹古母が勢いをつけて惠子巡査の隣に座り込む。
そして、匂いでもかぐように顔を近づけて、目をぎょろぎょろさせながら迫って
いく。
惠子巡査は体を小さくした。
つり革にぶら下がっている八名が言う。
「よぉ姉ちゃん、真っ直ぐ帰ったってつまんねーだろう、これから俺たちとどっか
行こうじゃねえか、カラオケでも行こうじゃねえか、よお」
そして丹古母は考えられる限りの下品な笑い方で笑うと、首筋あたりをめがけて
、べろべろべろと舌を出す。
電車ががくんと揺れた。
八名が、「おっーっと」と言って身を翻すとそのまま惠子巡査の膝の上に座って
しまう。
「電車が揺れたんだからしょうがねえや」
「やめろーッ」叫ぶと小川は敢然と立ち上がった。
二人は、一瞬あっ気に取られた様にこっちを向く。
なーんだ兄ちゃんか、という感じで、惠子巡査を放置すると肩をいからせてこっ
ちに迫ってきた。
「なんだこのあんちゃん。スポーツでもするか」
言いつつ八名がこっちの襟を掴みにくる。
すかさず小川は手で払った。
おっ、猪口才な、みたいな顔をして更に手を突っ込んでくる。
それを又払う。
ネオ対エージェント・スミス、みたいな組み手をしばらくやるのだが、丹古母が
、遠巻きに小川の背後に回ると、懐からドスを抜いた。
そして卑怯にも背後からドスで小川の背中を袈裟切りに切り付ける。
白いワイシャツが裂けて背中の肉もざっくりと切れる。
「キャーッ」と悲鳴を上げて惠子巡査が顔を覆う。
しかし小川はがっばっと丹古母の方に向き直ると、超人ハルク並のパワーを発揮
して、まるで紙袋でも丸める様にぐしゃぐしゃにるすと放り投げてしまう。
今度は八名に向き直ると、「ちょっと待ってくれ。話せば分かる」
などと泣きを入れてくるのを無視して、同様にぐしゃぐしゃにして放り投げる。
……電車が反対方向の電車とすれ違って、窓ガラスが風圧でバーンと鳴った。
妄想から覚めた。
電車が行ってしまって静かになっても、もう妄想の続きはなく、惠子巡査は現れ
ない。
なんとなく背中に手を回したがシャツが切れているわけもない。
(あのまま妄想が続いていたら、俺は殉職していただろう。
シャツが切れて肉もさけて、そっから出血して出血死する。
惠子巡査が覆いかぶさる。
「死なないで、死なないでー」
しかし俺は息を吹き返す事はなかった。
…萌える。
自分の死に萌える。
何でだろう。
何で俺は殉職したいんだろう)
「京浜東北線の南浦和行きです。次の停車駅は川口です」
という車内アナウンスで我に返った。
しかし、何故殉死したいのかという謎はしばらく脳内を駆け巡っていた。
西川口駅で降りるて、駅前通りから陸橋通りに入って、陸橋とは逆方向に5、6
分行った、中山道に近い辺りに、小川のヤサはあった。
1階が布団屋で2階から上が1Rアパートになっている。
誰も居ない部屋に入ると、玄関脇のキッチンの冷蔵庫からペプシを取ってきて、
居室に入った。
机に腰掛けると、引き出しからアイコスを取り出して、タバコステックを差し込
むと、すーっと吸い込んではーっと吐き出す。
吐き出された煙はエアロゾルですぐに霧散した。
とりあえずコーラを飲みながら一本吸い尽くす。
吸い殻は、薬瓶に入れてギュッと蓋を締めた。
さて、小川はベッドに移動すると、造り付けのクローゼットを開けて、ダンボー
ルを出した。「自分が死んだら開けずに捨てて下さい」とマジックで書かれている
。それを開けると数々の大人のおもちゃが入っていた。みちのくディルド、アナル
プラグ、アネロスなどの中から、アナルビーズ(8連。先端のビーズは1センチ、
根元のは2.8センチ)を取り出した。
とじ紐を3本つなぎ合わせて、アナルビーズのコックリングに結びつけた。
机の中にあったコンドームを取り出すと、アナルビーズにかぶせた。
(こういうことをするのはこれが初めてじゃない)と小川は思った。
(そもそも最初から、精通の時から、俺はおかしかった。
精通したのは中二だったが、あの頃は性に関しては全くの無知で、俺のペニスは
、包皮がカリんところに溜まった恥垢にひっかかって剥けないでいたのだが、あれ
を無理に剥くと、えんどう豆の様に脱落するんじゃないかと思っていた。
それでも入浴の度に、少しずつ溶かしていって、そしてとうとうある晩剥け切っ
た。
生後十四年にして、とうとう外気に触れた自分の亀頭。
最初は皮を剥いて突っ張らせて膨張させることだけで快楽を得ていた。
ただ、あの頃から 肛門の疼きはあって、自然とアナルをいじるようになった。
それがエスカレートして、ペンやらドライバーやらリコーダーを枕元に並べてお
いて、夜な夜なアナルへの挿入を楽しむ。
そうしてとうとう或る晩射精したのだが、それは包皮を強く剥く事と肛門への刺
激のみによる精通だった。
だからって別にホモじゃない。
じゃあどういうプレイがいいのか、というと…)
追憶から目を覚ます様に頭を振ると、小川は、アナルビーズを持って、ベッドに
移動した。
ベッドの向こう側の真ん中へんにクローゼットの取手あるのだが、そこに紐を縛
り付けた。
ペペのローションをアナルビーズにたらすと、指先で入念に塗りつけた。
(これで準備オッケーだ)
ベッドに横になって、仰向けに寝て両足を開いてみたり、左横向きに寝て左手で
ハンケツを掴んで右手で挿入をこころみたり、結局、左横向きに寝て金玉鷲掴み、
右手の人差し指でアナルビーズの一個目を肛門に押し付けた。
括約筋がビーズを押し戻そうとするが、力を入れると、ヌルッっと吸い込まれて
いった。二個目以降は、アナルビーズを引っ張れば括約筋が吸い込もうとするので
、その勢いで吸い込む様にする。そうやって、とうとう8連の全部を直腸に入れる。
両手を前に回して、右手でペニス、左手で睾丸を握った。
そういう状態で、腰の動きだけで、アナルビーズを抜こうとしては、括約筋を締
めて肛門内に吸い戻す。
アナルビーズの丸みが括約筋を刺激するたびにペニスがびくびくするのを更に手
で揉む。
そして小川は妄想の中へ沈んでいった。
(ここはどこだ。
ここは京浜東北線の駅の医務室か。
俺は丹古母鬼馬二に切られた背中の傷の為にここにいるのか。
いや違う。
ここは警察病院だ。
俺は、京浜東北線で瀕死の重傷を負ったが、そこで、殉死する筈だったが、奇跡
的に助かったのだ。
薄暗い警察病院のカーテンの向こうから、ナイチンゲールの格好をした関根惠子
が現れた。
惠子はかがみ込んで俺の顔を覗いた。男前な顔が間近に見える。
「包帯の交換にきました」
ピンセットやガーゼの乗ったトレイをもったまま惠子は背後に回った。
それから、かちゃかちゃ音を立てて準備をしていたが、やがて、傷口に詰め込ん
であるガーゼを取り出す。
「いたッ」
「我慢して」言うと、惠子は背中で処置を続ける。
それが終わると、こっちの二の腕に手を乗せて耳元で
「まだまだ肉が盛り上がってくるまでには時間がかかりそうだわ」とささやいた。
「じゃあ体を拭きます」
惠子に背中を拭かれる。腰のあたりから、尻の膨らみのあたりまで拭かれる。
「あ、お尻の刃物の傷跡も消毒しないと。でも、大量の出血で肛門に血が流れ込ん
でいる。これだけ入っているとお湯で拭いただけでは無理ね。捲綿子で取り除かな
いと」
惠子はまず、尻のほっぺを広げて肛門を露出させて、大雑把に肛門周囲をタオル
で拭いた。
それから、親指と人差し指で、ぐーっと肛門を広げると、捲綿子を挿入してくる。
血で汚れた捲綿子は鉄の皿に捨てられた。
惠子は更に指に力を入れて思いっきり肛門を開くと、二本目の捲綿子を突っ込ん
でくる。ぐりぐりぐり。
そして、汚れた捲綿子を捨てる。
やがて血は綺麗に取り除かれて、ピンクの直腸粘膜が現れた。
丸で十四年ぶりに恥垢が取り除かれた亀頭の様に綺麗なピンク色をしている。
「ほら、こんなに綺麗になった」惠子はこっちの二の腕に手を乗せると俺の顔を覗
き込んだ。
「それじゃあ肛門の内側にクリームを塗っておきますからね。必要な処置ですから
くすぐったがらないで」
言うと惠子は、クリームを乗せた指2本を肛門に滑り込ませてきた。
ずぶずぶずぶ。
「ああーっ」
「我慢して」
クリーム擦り込ませるために、肛門の内側にぐるり一周指を這わせた。
ぬるぬるぬる。
「あっ」
更にもう一周、ぬるぬるぬる。
「あーーーッ」
「はい終わりましたよ。今度は奥の前立腺の方にも塗りますからね。これは、治療
上必要なことだから恥ずかしがらないで」
言うと指2本を付け根まで挿入させると、前立腺側を、ぐりぐりぐり。
「あーーーー」
「もう少し我慢して」ぐりぐりぐり〜。
「おおーーーー」)
そしてリアルの小川は大量の射精をした。
ぴゅっぴゅっ、とペニスが痙攣する度に括約筋が閉まって、アナルビーズがギュ
ーッと吸い込まれる。
しかし既にそれは性的な快楽ではなくて、排便の際の肛門の感覚に成り果ててい
た。
はぁーと小川はため息をついた。
ティッシュの上に放射線状に撒き散らされた精液からは、かすかな栗の花の匂い
が立ち上ってくる。
肛門からアナルビーズを取り出してコンドームを外した。便はついていなかった。
机のところに戻ると、丸で一仕事終えたみたいに、又タバコに火をつけた。
スーッと一吸い。
PCを立ち上げたるとyoutubeを開いた。
射精の後は何故か、プロラクチンが分泌されるからか、賢者タイムで、芸術的な
気分になった。
(音楽でも再生しようか。でも今日は…)
再生したのは、「ロボコップ」一場面「Movie CLIP - Sayonara, RoboCop!」。
何時もこういうタイミングで見るのは、女の為に殉死するという類のものが多い
。例えば「タイタニック」でローズの身代わりになって冷たい海に沈んでいくディ
カプリオとか。「砲艦サンパブロ」で揚子江の上流にキャンディス・バーゲンを助
けにいって中国の兵隊に狙撃されて死ぬスティーブ・マックイーンとか。
しかし今日はより血なまぐさいのが見たくて「ロボコップ」の廃工場のシーンを
再生した。
廃工場の水たまりにアン・ルイス隊員がケガをして尻餅をついている。
そこに銃をもった悪党のボス、クラレンスが迫る。
「バイバイベイビー」と銃口を向けるが…。
しかし、ロボコップ参上「クラレンス!」
と思いきや、子分のレオンが高所で、クレーンの操作室へ走って行くではないか。
アン・ルイスは対戦車砲バレット82に近付くが、
クラレンスは銃を捨ててニヤつく。「OK、ギブアップだ」
「もう逮捕したりはしない、処刑だ」
しかし、クラレンスはロボコップをおびき寄せていたのだった。
「まあまあ、ちょっと待て」
何も知らないロボコップは近付いて行く。
操作室のレオンが、モノレバーを操作して、UFOキャッチャーのクレーンみた
いなのに掴まれている鉄骨をロボコップの頭上に移動させる。
「まあまあ、ちょっと待て」と更におびき寄せる。
ちょうどクレーンがロボコップの頭上に。
操作室でモノレバーを引くレオン。
大量の重量鉄骨がロボコップを直撃する。
「やったぞ、クラレンス、ロボコップをやった」
しかし、操作室のレオンはアン・ルイス隊員の放った対戦車砲で木っ端みじんに。
クラレンスは驚くが、とがった鉄パイプをもつと鉄骨の下敷きになっているロボ
コップを襲いにくる。
鉄パイプを振り下ろすクラレンス。
最初の2発3発は腕で跳ねのけるが、クラレンスは両手で握って振りかぶると、
とどめを刺す様に胸部にぶっさしてて、ぐりぐりぐり。
「うぉーーーーー」と絶叫するロボコップ。
「さよならロボコップ」
ロボコップ絶命か。
しかし、ロボコップはデータアクセス用ニードルを手の甲から突き出すとクラレン
スの頸動脈をぶっ刺す。
血しぶきがぷしゅー。
クラレンスはのたうち回って絶命。
あのままロボコップは殉職するのだろうか。アン・ルイスの見ている目の前で。
(俺も、関根惠子、或いはナンシー・アレンの見ている目の前で、絶命したい)
小川はスマホを出すと、トラニーのアリスにショートメールを送った。
>貸してくれた「ロボコップ」返さないと。
>youtubeでロボコップが、廃工場でクレーンで、
>鉄骨を落とされてぶっ潰れるシーンを見付けた。
>繰り返し見ている。
>そういえば、勤務先のマンションに崩れそうな足場がある。
>あれの下敷きになれば同じ様に死ねるのか。
高田馬場にあるニューハーフ風俗、リブレ高田馬場は、賃貸マンションの一室を
事務所兼店舗にしていた。
マンションの玄関を開けると受け付けのカウンターがあって、その向こう側にリ
ビングがあって、突き当りの引き戸を開けると、トラニー達の詰め所の和室になっ
ていた。
和室の外にベランダがあって、トラニーのアリスは、加熱式たばこを吸いながら
スマホで喋っていた。
「そもそもこっちはちんぽを切って女になりたいんだから、元々は女でしょう?
それをトラニーチェイサーというのは、ちんぽのついている状態を求めてくるんだ
から」
「うん」
「もう、歪んだ性欲をこっちに向けてくる段階でムカついているのに、それに加え
て、遊びでホルモンやってみたい、なんて言っているのよぉ」
「えー」
「ノンケの癖にホルモンやろうなんて輩は許せないわよ。こっちはホルモンですご
い苦労しているのに」
「私だって、タチのトラニーチェイサーに散々やられて、どうしても性転換手術で
お金が必要だったから我慢していたけれども、アナルローズにされちゃって人工肛
門になっちゃったんだから、あいつらは憎いわよ。だから、そいつを突きまくって
、アナルローズにしてやればいいんだ」
「その前に、足場の下敷きになって死ねばいい、とか思っているのよね」
「えぇ、なにぃ?」
「そいつは警備員なんだけれども、現場に足場があって、崩れそうだって言うのよ
。その下敷きに出来ないかなぁと思って」
「そんなの無理でしょ」
「でも、そいつは自殺願望があって、「ロボコップ」でも「ターミネーター2」で
も「タイタニック」でもみんな死ぬから、死にたいのが普通でしょう、とか言って
いて。プレイでも、「太陽にほえろ!」とかの殉職シーンを使っていたんだけれど
も、今は「ロボコップ」のDVDを貸していて、それをプレイに使っているのね。
そうしたらさっきショートメールが来て、鉄骨の下敷きになるシーンみたいに足場
の下敷きになって死にたい、とか書いてきたんだから」
「だったら、メスイキの状態とか、”ところてん”とかだったら、トランス状態で
無意識の扉が開けっ放しだから、そこに、ロボコップが、鉄骨の下敷きになるシー
ンを埋め込んでやればいいのよ。そうすれば自分から下敷きになりに行くかも知れ
ない」
「そんな事出来るの?」
「だって自殺願望があるんでしょう?」
「そうだけれども」
「特攻隊だって、そうやって背中を押されて死んだんじゃないの?」
「じゃあ、どうやってご指名ご来店してもらうかが問題ね。だって、まだこの前来
てから1週間もたっていないもの。あいつはパートの警備員で給料も安いから、そ
う何回も来られないのよ」
「そこを来させるのよ」
「どうやって?」
「ドタキャンが入ったから今日なら遊べます、これを逃すと1ケ月は無理、旅行も
行くし当分無理、とか言って」
「ふーん」
「なかなか手に入らないものほど欲しくなるものなのよ。売り切れ寸前のところで
、1個だけ在庫がありました、とかいうと欲しくなるでしょう? ハードトゥゲッ
ト。簡単な恋愛心理学よ」
「じゃあ、ショートメール打ってみるか」
「やってみな」
#592/598 ●長編 *** コメント #591 ***
★タイトル (sab ) 22/11/11 11:41 (341)
あるトラニーチェイサーの死3 朝霧三郎
★内容
>今日、まぐれに近い、キャンセルが出ました。
>それ以外は1週間先まで埋まっているし、
>その後は、タイに下見を兼ねた旅行に行くので、なかなか会えないよ。
>もしかしたらそのままタイで性転換しちゃうかも。
>そうしたらもうやってあげられなくなるし。
>どうする?
>今日来れない?
小川は西川口のアパートでショートメールを確認すると、
スマホで“リブレ高田馬場”を検索した。
“リブレ高田馬場”は一番上に表示された。
>ニューハーフ風俗リブレ高田馬場ニューハーフヘルス
>コンパニオンのほとんどが現役OLや学生という23区内の超穴場優良店です。
>”彼女”達は元女優でも元モデルでもないから初々しいったらありゃしない。
>その癖テクは極上というからおったまげー。
>そんな男の娘とニューハーフがあなたを…
そこをタッチすると店のhpが表示された。
在籍一覧、スケジュール、料金…というメニューの中から、在籍一覧をタッチ。
AKB48メンバー一覧の様に画像がつらーっと表示される。
アリスのパネル写真をタッチ。
プロフィールのページが表示された。
(目元が蒼井優に似ている。それなりに顎がしっかりしているから、歯並びがいい
。顎の細い女は歯が収まりきらなくて歯並びが悪くてよくない)
大きめのパネル写真は数秒ごとに切り替わっていたが、その1枚は、バックで片
足をテーブルに乗っけている写真で、ビキニ姿なのだが、股間にふくらみがこんも
りとあり、ぺろりを脱がせばちんぽがでてくると思えて、小川は萌えた。尻周辺も
ホルモンをやっているせいか、女性的なふくらみがあり、色も白いのでアナルもピ
ンクかも知れない。
喉がカラカラになってきた。
スマホを擦ってスクロールさせる。
【スペック】
名前:アリス
年齢:22歳
T:170
B:90 (Dカップ)
竿:有り 玉:有り
Pサイズ:15
タイプ:ニューハーフ/地毛
【オプション】
AF:◎
逆アナル:◎
3P:◎
生フェラ:◎
射精:○
ソフトS:◎
ソフトM:◎
「パネルの通り、月夜のごとく澄んだ目元が印象的なアリスさん。
引き締まった抜群のスタイルにホルモンも効いてきて、
ピンクのびーちくがでてきばっかり。
でも、ペニクリはまだびんびんという、
トラニーチェイサーにはたまらない状態。
しかも、プレイに関してはまだ修行中の未熟者、
かえっていろんな事ができちゃうかも。
とにかく元気なので、カマなしでも逆AFok。
もちろん透明射精つき。
こんなトラニー現在進行形のアリスを逃す手はありません。
本当にこの旬な時を逃すなんて、ありえませんyo----」
出勤スケジュール
6/7 14:00〜 空 残り1名様
6/8 満員御礼
6/9 満員御礼
6/10 満員御礼
6/11 満員御礼
6/12 タイ旅行
6/13 タイ旅行
6/14 タイ旅行
6/15 タイ旅行
堪らなくなって、福山に電話した。
「福ちゃん金貸してくれ」
「えー、この前も貸したじゃん」
「ちゃんと返しただろう。それに、利子替わりに、そっちの自衛隊時代の漫画をス
キャンして、youtubeにうpしてやったじゃないか。あれだって、一コマずつに分
割するに結構苦労したんだから。あの漫画がバズればお前だって銭が入ってくるん
だから、今ちょっとぐらい貸してくれてもいいじゃないか」
「幾らだよ」
「2万。paypayで送って。頼む」
「じゃあ、今回だけだぞ」
paypayで入金を確認すると、アリスの90分コース2万円に予約を入れた。
シャワーを浴びてから、コミネのシングルライダースジャケットを着こむ。これ
だってこだわりが無い訳じゃない。松本人志がクロムハーツの60万の革ジャンを
買ったと聞いて、安くてもブランド価値のあるものを、と思ったのだ。
(何で松本人志が関係あるんだろう。人は人なのに。西武は西武なのに)
階下に降りて、ホンダ N-BOXに乗り込んだ。昔はアコードに乗っていたが、所ジ
ョージの世田谷ベースだの、ヒロミの八王子なんたらだのを見ている内に車に金を
かけるのがバカらしくなったのだ。
(何で所ジョージやヒロミが気になるんだろう。他人は他人なのに。西武は西武な
のに)
そんな事を思いつつ、キーを回す。
ナビに店の住所を入力すると案内開始ボタンにタッチした。
「ルート案内を開始します。実際の交通規制に従って走行して下さい」
というナビの音声案内に従って、車を発進させた。
SHOの”ヤクブーツはやめろ”を大音量で流す。
表通りの中山道に出ると、ひたすら南下。高島平からは池袋線の下を走っていっ
て、山手通り、新目白通りと走っていって、山手線の高架をくぐって右折すると目
的地だった。
走行距離キロ15.5キロでも全然疲れない。犬は獲物を追いかけている間は全
く疲れを知らないというが、トラニーチェイサーもトラニーを追いかけている間は
疲れないのか。
高田馬場1丁目パーキング3時間1500円に駐車する。
(高田馬場というのは、坂が多くて路面電車が走っていて、丸でサンフランシスコ
みたいだな。変態が似合う街だ)などと思いながら、一通の裏道を歩いた。昼間な
のに、人通りはまばらだった。途中セブンで2万円を引き出す。
到着すると、オートロックで部屋番号を押す。
「14時から予約している小川ですが」
アイホンのライトが付いてから、無言のままオートロックが解錠された。
504に入るとそこが受け付けになっていた。
玄関先にカウンターが据え付けてあって、身長180センチ体重100キロの巨
漢のオカマが手をついていた。
「いらっしゃい」
玄関右手には三段ボックスがあって、DVDが積まれている。裏DVDを売って
いるのだ。
カウンターの向こうはダイニングで、応接セットがある。
その奥に引き分け戸があって、向こう側が和室になっている。
左手にもドアがあって洋間がある。
その手前が洗面所で洗濯機が回っている。
その左側がキッチンコーナー。
マドンナの「Live To Tell」が流れていた。
和室から、一人若いトラニーが出てきて、キッチンコーナーの冷蔵庫からドリン
クを出すと持って行ったが、途中で止まって、ちらっとこっちを見た。
そのトラニーが和室に帰ると、別のトラニーが顔を出してこっちを見る。顔を引
っ込めると、部屋の中から、キャッキャッ聞こえてくる。
「誰が指名されるんだろう」とか話しているのでは。
トラニー達の柑橘系の香水の香りが漂っている。
目の前の巨漢オカマはチョコレートの香水を付けていた。
それからマドンナの「Live To Tell」。
一気に気分が高揚してくる。
どんなに陳腐な景色でも若い性的な人間と、良い曲、マドンナの「Live To Tell」
とか、と、香水の香りとでドーパミンが出るのではなかろうか。
「あんた、あの子をご指名ね」と巨漢オカマがタブレットを見せてくる。「それじ
ゃあ20000円になります」
さっき引き出してきた1万円札2枚を渡した。
それと引き換えに、キーボックスから出した鍵を渡される。
「それでは206号室でお待ち下さい」
206は504とは違ってリビングもなく、純然たるワンルームだった。
真ん中にベッドがあるだけで後は造り付けのクローゼットがあるだけ。
ちょっと蒸し暑い気がして、小川は自分でエアコンを入れた。室温はドライ24
度。
キンコーン。
「おじゃましまーす」
鼻にかかった声で言いながら、アリス嬢が玄関を開けて入ってきた。
ユーチューバーの元男の子の青木歌音が言っていたが、元男の子は女の声を出す
為に「ワレワレハウチュウジンダ」と鼻声を出してだんだん高くしていくのだ、と
。それで鼻声なんじゃなかろうか。
一週間ぶりだが、見た瞬間(いい)と思った。
顎はともかく、目が蒼井優似の切れ長で、しかも鼻すじは通っている。
走ってきたのか、息が荒く、小鼻が収縮している。
息のニオイはピーチとかフルーツの香り。
ベッドに一緒に腰掛けると、こっちの太ももを撫でてきた。
「今日は”ところてん”やろうか」
「”ところてん”?」
小川もアリスのぴっちりデニムの太ももを撫でた。
「前立腺のそばの精嚢をつつくと、たらたら精液が垂れ流すの。勃起しないまま。
そうすると、プロラクチンが出ないから賢者タイムにならないからオーガズムが続
いてトランス状態になるの。その時に、何かをイメージすれば、その世界にトリッ
プ出来るから」
「ふーん。気持ちよさそうだなぁ」
「ねえ、さっきショートメールで、足場の下敷きにになりたいなんて言ってきたけ
ど、なに?」
「いやー、西武系の警備会社に入るかも知れないんだよねぇ。入れないなら追い出
されるんだけれども。
俺、西武って大嫌いなんだよねぇ。公園通りは西武セゾンが作ったなんて聞いた
だけで渋谷に行きたくなくなるんだよね。今いる池袋も、ダイヤゲートだのサンシ
ャインシティだの西武色が強いけど。とにかく西武が嫌いだからさ、西武系の警備
会社に入るぐらいだったら、あの足場の下敷きになって死んだ方がマシだ、と思っ
たんだ」
「へー、珍しいわね、つーか偶然ね。そういうお客さんが居たわよ。60歳ぐらい
で、警察官なんだけれども、西武が大っ嫌いなんだって。
その人が20歳の頃、埼玉のfラン大学の食堂のテレビで、西武の堤オーナーが
ライオンズの広岡監督を公開処刑したのを見たんだって、記者会見で。広岡監督は
、選手に、肉は食べたらいけないとか言っていて、野球選手によ。そんな独特な食
事療法を押し付けておいて、その癖自分が痛風になったうえに成績もふるわなくっ
て。それで、記者の前で、オーナーに、「痛風になる人は精神がぶったるんでいる
そうですなぁ」と言われたんだって。それが、すっごい動物的な迫力があったっん
だってさ」
「それでそのおっさん、桜田門に入ったのか。桜田門なら西武より格上だからな。
俺も桜田門に入っていればよかったよ。そうすれば西武系の警備会社に入る事なん
てなかったのに。あんな警備会社に行くんだったら死ぬよ。ロボコップみたいに。
鉄骨の下敷きになって。西武の警備会社に反乱するロボコーップ」
「あのDVD早く返してよ」
「今度持ってくるよ」
「あの映画、私大好きなんだから」
「へー」
「じゃあ、今日はそういうプレイにする?」
「え?」
「あの、廃工場の水たまりで鉄骨の下敷きになるシーンからスタートして。マーフ
ィは、修理をしないといけないのね。特殊合金で隠れているけれども、顔とお尻だ
けは、人間のままなの。お尻を手術しないと…みたいな展開」
「ああいいよ」
「じゃあ、私脱ぐよ」
アリスは、デニムジャケットを脱ぐとクローゼットに入れた。
ぴっちりとしたカジュアルシャツに、スリムなジーンズ。
ほんのりと乳房のふくらみもわかる。
それも脱ぐと、ブラとパンティになった。
おっぱいはかすかに膨らんでいるのに、股間は盛り上がっている。
喉がカラカラになってきた。
クローゼットからバスローブを出すと、「小っちゃんもこれに着替えて」と渡し
てくる。
「なんか飲むものないかなあ」
「なんで? 喉乾いてきちゃった」
アリスは冷蔵庫から、ジャスミン茶のペットを2本だしてきてくれた。
バスローブ1枚でベッドに座るとブラにパンティのアリスが横に座った。
「じゃあ、上、脱ぐよー」と言うと、ぺろんとブラを外す。
白い水泳選手の様な肌にかすかに膨らんでいる乳房、そしてピンクの乳輪がある。
「いいなあ」
アリスはうずくまる様にしてパンティも脱ぐ。ダビデ像の様な包茎が現れた。ま
さにダビデの包茎。
「アリス、最高!」
「小っちゃんも脱いで」
小川はバスローブを脱ぐ。
小川は「いいねえ」を繰り返しながら、アリスの背中をまさぐると、胸の方に手
をまわして、微かに膨らむ乳房を手のひらでおおい、ピンクの乳首をつまむ。
手を尻にまわすとお尻のほっぺを開こうとする。
「ああ、まだシャワーを浴びていないから」
「いいよ、そんなもの」
ここで、ひらりと身をかわすとアリスはベッドの上で四つん這いになった。
猫の伸びのポーズ。
色素沈着していない肛門と、股にはさまれた金玉とペニスをいいと思う。
「いいねえ」
「どこが?」
「顔と、ちょっと出たおっぱいと、大きすぎないダビデのペニスが」
四つん這いで、肛門が見えていて、股間に金玉を挟んだ状態で、蒼井優似のアリ
スがこっちを見ている。
(俺は何をいいと思っているのだろう。顔がいいと思うっているのか。絶対にマッ
ド・ディロンじゃダメだから、女を求めているのか。みんなボーイ・ジョージに何
を求めているんだろう。しかし、絶対にそこにまんこがあったらダメだから、女を
求めている訳じゃあない)
「マッド・ディロンみたいなのはごめんだからな」小川は呟いた。
「えー、なに、それ」
「いやー、エロ動画のシーメール物で、マッド・ディロンみたいに顎の長いのがズ
ラをかぶったのがあって、ああいうのはかなわないな、と」
「ふーん。ホルモンが遅かったのね。かわいそうに。私もエラはっているから気に
しているんだけど」
「そんな事ないよ。ちょうどいいよ。つーかそれより細かったら歯並びが悪くなる
よ」
「じゃあ、小っちゃん、”ところてん”希望だよね」
「”ところてん”、やられたい」ジャスミン茶を飲みながら言った。
興奮して喉はカラカラだった。
アリスは前面に立つとペニスを見せた。
「じゃあ、逆AFしないと…」と言って自分の股間を見下ろす。「あー、どうしよ
う、まだ私の立っていない」
勃起していない包茎のペニスをこちらに寄せてくる。
「ちんぽおおきくして」とアリス。
アリスのを見ると、勃起はしていないが、立ったら小川のより2、3センチはで
かかろうというサイズだった。
(舐めたい)と小川は思う。(肛門性愛だけじゃない。包茎のちんぽも好きなのだ
。何でだろう。何で包茎のちんぽが好きなんだろう)
謎が脳内でうずまいて、それでテンションが上がる。
最初手で持ち上げてみたが、触らないまま空中にある状態のダビデの包茎を口で
受けてみたい、と思った。
アリスの前に跪くと目の前に包茎ペニスがあった、朝露に濡れる朝顔の蕾の様な。
「じゃあ、吸うよ」
アリスのペニスを口に含む。
口の中で徐々に勃起してくると、包皮が剥けるのも分かった。
勃起してくると、アリスは手を伸ばしてきて、こっちの乳首を強めにつまんだり
、なでたりした。
完全に勃起すると、ハモニカみたいに横を舐めたり、リコーダーの様に縦に舐め
たりする。
今やアリスのペニスはぎんぎんにいきり立っている。
そして上半身には小さい白い乳房とピンクの乳首があるのだ。
「じゃあ、逆AF行く?」とアリス。
「行く」
「じゃあ、最初、ほぐしてあげる」
アリスは体を離すと、トートバッグから短めのアナルビーズとローションを出し
てきた。
「じゃあ、お尻にこれ塗らないと」
「え、何それ、新しいやつ?」
「これ教えてもらったの。SODローション ロングバケーションタイプ。これが
一番いいんだって」
(SODってそんな物まで作っているのか。「マネーの虎」の高橋がなりは。そん
なものを作るんじゃあ生産設備も必要だろう。そんな資産があるのか。それともO
EMで名前だけ貸しているのかなあ。なんか、西武の堤一族みたいな勢力の大きさ
を感じて、嫌だなあ)
そんな事を考えている間に、ローションは塗られて、アナルビーズの一個目は既
に吸い込まれていた。
「ほら一個吸い込んだ」とアリス。「お尻を緩めて、緩めて。ほら、又一個吸い込
んだ」
そうやって、すぐに5個まで吸い込む。
「じゃあ、抜くわね」
ずるずるずるーと引っこ抜かれる。
そして、指2本でアナルをぐりぐりする。
(感じるー)
しかし不思議な事に、ちんぽは萎えていた。
「さあ、お尻の方はバックオーライ」
アリスは、コンドームを取り出すと、器用に装着した。
小川のちんぽを見て、「あれぇ、勃起していないのにお汁がたれている。勃起し
ていないのに感じているの?」と言う。
手を伸ばしてきて、こっちのちんぽに指を絡めてくる。
「じゃあ、四つん這いと正常位とどっちがいい?」
「四つん這い」
言うと小川はベッドに手をついて尻を出した。
アリスが尻のほっぺを広げてじーっと視姦する。
「丸見え」
SODを内部にまで塗りたくった。ぐりぐり、ぐりぐり。
「さあ、じゃあ、あなたはマーフィ巡査ね。あの廃工場でクレーンで鉄骨の下敷き
になって修理が必要なの。特殊合金で見えないけれども、顔とお尻だけは人間の肉
体のままなのよ。じゃあ、肛門の治療をしないと」
言うとアリスは指を突っ込んできた。ぐりぐり。
「これじゃあダメだわ。こっちの道具で」
と、ペニスを入れてきた。
SODの協力な粘度のせいか、ずるんと入ってくる。
「はぁ」と小川は息を漏らした。
アリスは、一回深めに入れてから浅めにして、鬼頭で前立腺の位置を探す。
「ここでしょう? ここをペニスで擦ると漏れるんだから」
ゆっくりとピストン運動が始まる。ずぶずぶずぶ、ずぼずぼずぼ。
「は〜ぁ、いい」
入れる時には、精嚢を擦る様に入れる。
勃起していないちんぽから本気汁が垂れている。
「いい、すげーいい」
本気汁に混じって精液がにじみ出てきた。
「ほら、たらーんと出てきた」
「あ〜あ、いい」
「ほら、突いた時に出るんだから。いいでしょう」
「いー」
「トランス状態よ。
さあ、マーフィは記憶を失った訳じゃないのよ。クラレンスの一味に、鉄骨の下
敷きにさせられた時の事が脳裏によみがえるの。どんな感じだった? 鉄骨が、足
場が落ちてくる時の感じは」
ずぶずぶずぶと挿入する。
ちんぽの先から精液が垂れてくる。
「あー、いい。でも、死ぬんだ、アン・ルイスを守る為に。アン・ルイスはアンヌ
隊員に似ているな。「ロボコップ」の元ネタは「ウルトラセブン」なんじゃあにの
? モロボシダンも死ぬでしょう。あ〜あ、いい」
ずぶずぶずぶと突いてくる。
たらーりと精液が垂れてくる。
「ほら、鉄骨が胸の上に落ちてくるのよ」
「あーあー」
精嚢を突かれる度に、たらーりと、”ところてん”をする。
長いオーガズムが続いた。
もう十分だ、という頃なると、アリスは後ろから右手で小川のペニスを掴んでし
ごき出した。
「あっ、あっ、あっ、行く、行く」
「さあ、治療は終わりよ、行っちゃって」といいながらピストン運動を激しくする。
「あっ、あっ、行くー」
そして小川ははてるのであった。
#593/598 ●長編 *** コメント #592 ***
★タイトル (sab ) 22/11/11 11:42 (277)
あるトラニーチェイサーの死4 朝霧三郎
★内容
シャワーを浴びてもまだ時間が余っていた。
ベッドに腰掛けてジャスミン茶を飲む。
「俺は、何を求めているのかなあ。女を求めているのにペニスを求めている。何で
ちんぽが欲しいのかぁ」
「3つ説があるの。
第一の説は、ペニスをクリトリスに見立てている感じ。
ペニクリっていって、バイブを鬼頭に当てて、行きそうになると離して、おさま
ると又当てて、って、何回もやると、じわーっと精液が滲み出てくるっていうプレ
イもあるんだけれども。
第二の説。女にペニスがあるのは面白いという説。
第三の説。女性性器嫌悪説。気持ち悪いじゃん、おまんこって。内臓みたいで」
「インターフェースが変わったって事かな。つまり、相変わらず女を求めてはいる
のだが、つながる箇所が女性性器から男性性器に変わったという事?」
何気、関根惠子巡査のナニを想像してみたら、内臓が剥きでている様で(嫌だな
)と思えた。
(という事は第三の説かも知れない。いやー、それがペニス羨望の理由とは思えな
いなぁ)
N-BOXに戻った頃には、すっかり賢者タイムになっていた。
(何時もこうなると、殉死したくなる。惠子巡査を守って殉死したい。何か見るも
のはないか)
スマホでyoutubeを開いた。
いきなり、「Movie CLIP - Sayonara, RoboCop!」が再生される。
廃工場でクラレンスに胸を刺されてぐりぐりされるロボコップ。
「さよならロボコップ」ぐりぐりのシーンを繰り返し見る。
(今日は、サウナにでも行こう)と小川は思う。(新大久保の大泉でいいや。あそ
この休憩室から見える歌舞伎町の空は、なかなかおつなもの。水族館(ライブハウ
ス)でビールでも飲んでから行こう)
翌朝、中1日で小川は出勤した。もう一人いる24時間警備員の北野が休みだっ
たので。
ボイラー室で、警備服風作業着に着替えてくると、フロントに突っ立っている福
山に行った。
「福ちゃん、”ところてん”って知っている」
「つるつるーって食べるやつ」
「そうじゃなくてよぉ、アナルにちんぽを挿入して、その先っぽで、前立腺のそば
にある精嚢をつくと、勃起していないのに、精液が出てくるんだよ。たーらたらと
。ずーっとだぜ。その間中行きまくっているんだから、すげーオルガスムスだよ。
普通の10倍だよ。もう、トランスしちゃってさぁ、プレイ中にインストールされ
たものが脳裏に焼き付いている」
「何が焼き付いたんだよ」
「まあ、「ロボコップ」のシーンだけれどもな。ロボコップが廃工場で鉄骨の下敷
きになるシーン」
「お前、俺の貸してやった2万円で、そんなところに行っていたのかよ」
「今度、福ちゃんにも案内してやるよ」
「嫌だね。俺はそんな変態じゃない」
「やっぱ自衛隊は固いなぁ」
ここまで話したところで、ラウンジの向こうから、ハイヒールの踵を鳴らして石
松が登場した。
「おはようございます」と目を合わせてにっこりと微笑する。
(なんだなんだ、今日は無視しないのか)
石松はキッチンコーナーでコーヒーを入れると、管理室のスチールデスクにおい
た。
「コーヒー入りましたよー」
と呼ばれるので、福山と言ってみる。
「全く梅雨でムシムシして嫌ですね」ずずずずーっとコーヒーをすする。
(何で無視しないんだろう。どうせお別れだからだろうか。主任管理員と石松だけ
採用されて警備員はお払い箱かなあ)
「管理会社が変わる件だけれども、蛯原さん、なんか言ってた?」と聞いてみる。
「あー、それだったら何か動きがあったみたいですよ。さっき更衣室に入って行っ
たからすぐに来ますよ」
言う前もなく、Yシャツのボタンを2つ3つ外してネクタイをぶら下げた蛯原が
登場した。
「蛯原さん、管理会社の件、決まったの?」
「決まったよ。昨日言った通り四菱地所コミュニティが後釜に座るらしい」
「そんで俺らの扱いは?」と福山。
「今度の水曜日に、サンシャインシティ会議室で会社説明会があるんだって。まず
それに参加して、希望者は面接だってさ。でも、基本、パートなら雇ってくれるら
しいぞ」
「ずるいよな。自分で一からやるのが面倒くさいからって俺らを雇うのは」と福山。
「何言ってんだよ、福ちゃん。今いる土方の警備会社に比べたら西武系の警備会社
なんて雲の上の存在だぞ。たとえパートでも採用されれば、もしかして行く行くは
正社員という事だってあり得るだろう。特に福ちゃんなんて元自衛官なんだから」
「小ちゃんはどうするの?」と福山が降ってきた。
「俺かぁ。俺は分からないな」
言うと、小川はふらふらと、正面玄関側のドアの方に歩いて行った。
「あれ、どこ行くの?」
「辞めるかも知れないから、見納めに一回りしてくるわ」
言うと小川は鉄扉を開けて出て行った。
駐車場奥の裏エントランスに通じる通路を行くと、足場の前に行った。
カラーコーンとトラ柄のバーの前から見上げる。
上の方で微かに揺れている様に見える。
(やるっきゃねーな)
小川は、カラーコーンを蹴飛ばした。トラ柄のバーが外れて転がった。
小川は肩をいからせてパイプに掴みかかると、揺らしだした。
カンカンと鉄パイプがぶつかる音がして、上の方で、揺れている。
しかしジョイント部が固くて、崩れる気配はない。
更に揺らしても、揺れは大きくなるものの崩れない。
小川は踏み台の1段目に飛び乗ってしがみつくと、オラウータンの様に揺さぶっ
た。
足場が、組立ったまま、ギーーーーっという音と共に、こちら側に傾いできた。
ガッシャーんという轟音と共に完全に倒壊する。
1段目の踏み台の縁が小川の胸部に食い込んだ。
「うぅぅぅぅー」唸ると白い泡を吹いた。
肋骨が折れて肺を潰しているようだ。
息が詰まってすぐに意識が薄らいできた。
(ロボコップみたいに鉄骨の下敷きになるのとはちょっと違ったな)それが最後に
小川の脳に浮かんだ観念だった。そのままブラックアウトして意識を失った。
蛯原が通報して救急車と警察が来た。
ガイシャは、足場の下敷きになっていて、既に死んでいるのは明々白々だったが
、警察と消防で引きずり出して死亡を確認した。
救急搬送は行われず、警察が現場検証を始めた。
事件の可能性もあったので、刑事課に連絡が行った。
刑事課の小林達也巡査部長、加藤凡平巡査部長、佐伯明子巡査が臨場した。
「こりゃひでーな」遺体を見下ろして小林が言った。
「スマホもめちゃくちゃ」と加藤。
右のズボンのポケットから飛び出しているスマホはバリバリにヒビが入っていた。
「上着のポケットから何かの破片が飛び出しているな、なんだ」と小林。
加藤が片膝をついて摘まみだしてみる。
「DVDですね。「ロボコップ」。割れているんで見られませんね…、ん?なんか
名刺みたいなのが挟まっている。なんだ、これ。風俗の割引券ですね。ニューハー
フリブレ高田馬場」
小林、加藤が遺体を見ている間、佐伯巡査は事情聴取を行っていた。
「絶対に近づくなって言っていたのに」と福山。
「小川さんがそう言っていたんですか?」と佐伯明子巡査。
「でも、ここで下敷きになって死にたいって言っていたんだ」
「え、そんな事言っていたのか」と主任管理員蛯原が顔を突っ込んできた。
その背後から石松が覗いている。
「あなたはいいから、ちょっとこちらの方に話を伺いたいから」
言うと、佐伯明子巡査は福山の袖を握って、規制線のところに突っ立っている制
服警官の向こうまで引っ張って行くとそこで聞いた。
「どっちなの?。下敷きになりたいと言っていたの?。それとも、近づくなって」
「近づくな、でも自分はガレキの下敷きになって死にたい、ロボコップみたいに」
「映画の「ロボコップ」?」
「そう」
「何時そう言っていたの」
「昨日かな」
「それから」
「うーん ホルモンをやりたいと言っていた」
「ホルモン? 焼肉のこと」
「そうじゃなくて、ニューハーフのやるホルモンだよ」
「あの人、ニューハーフだったの?」
「そうじゃないけど、そういうのが好きだったんだよ。こういうのだよ」
福山はスマホを出すと、シーメールの画像を表示した。
「Ellahollywood(エラハリウッド)っていうんだよ。顔はエマワトソンだけれど
もちんぽが生えていて。これがニューハーフの中では一番いいらしい」
小林と加藤もこっちにくるとスマホを覗いた。
「それで、自分もそうなりたいからホルモンを?」
「そうじゃないけど、ホルモンをやれば、石松さんや西武と戦わなくて済むからっ
て」
「石松さん?」
「あそこにいるコンシェルジュだよ」福山は規制線の向こうで野次馬をやっている
石松を指さした。
「西武というのは」
「今度ここの警備会社が西武系に変わるんだけれども、俺らもそっちに雇われる予
定なんだよ。だけれども小川は西武を嫌っていたんだ」
「何で?」
「分からない。石松を嫌っていたのは無視するからだって。アップルウォッチで録
音までしていたよ。シカトの動かぬ証拠だと言って」
「ふーん。それが昨日の事ね? 昨日はそれで退勤したの?」
「あ、電話がかかってきた」
「なんて」
「金を貸してくれって。ニューハーフヘルスに行くから。好きなニューハーフがド
タキャンされて急に会える事になったって」
「それでお金を貸したの」
「うん」
「いくら?」
「paypayで2万。それで夕べ風俗に行って”ところてん”でトランスしたって」
「”ところてん”?」
「”ところてん”というのは勃起しなくても精子が出てくる技らしくて、それでト
ランスして、「ロボコップ」のシーンをインストールされたって」
「どういうシーン?
「ああやって、ガレキの下敷きになるシーン」福山は倒壊した足場を指さして言っ
た。
「ふーん。それで」
「それだけだよ。俺の知っているのは」
「分かった、ありがとう」
証人を返してしまうと刑事3人になった。
「ロボコップが鉄骨の下敷きになるシーンを風俗でインストールされて、それを自
分でやったって?」と小林が言った。
「後催眠といって、催眠が解けた後にも催眠の効果が残っているのがあるんです」
と佐伯明子巡査。
「それじゃあ、これは自殺じゃなくて、風俗嬢が催眠をかけたって事か」
「分かりません」
「臨床心理士、佐伯明子巡査の出番だな」
佐伯明子は、私立大の心理学科院卒で、臨床心理士の資格を取得していた。
「どうするんですか?」明子巡査が聞いた
「ガイシャのヤサに行ってみよう。免許証から住所が分かったよ。西川口だ」と小
林。
「ニューハーフ風俗の方は?」と加藤。
「西川口の後だな。令状なしで任意の事情聴取だな」
西川口のアパートの1階には青山ふとん店という店舗があって大家が経営してい
た。事情を話すと大家立ち合いの下で中を見せてくれるという。
ワンルームの居室に入ると、押し入れというかクローゼットの横にベッドがあっ
て、反対側にデスクとその上にPCがあった。
クローゼットの取っ手にはとじ紐がついていて”大人のおもちゃ”らしき何かが
つながっていた。
「なんだ、ありゃ」と小林。
「アナルビーズです」と加藤。
「詳しいな。何で紐でしばってあるんだ」
「ああやって縛っておいて、ケツを動かして抜きながら前をいじる」
「変態だな」
言いながら部屋の中へ入って行く。
「pcがスリープ状態ですね」と明子巡査。
「立ち上げてみな」と小林。
電源ボタンを押す。パスワードは設定されていなかった。サインインすると
youtubeの画面だった。「Movie CLIP - Sayonara, RoboCop!」
「再生してみな」と小林。
再生してみると、ロボコップの頭上に鉄骨が落ちるシーンだった。
「ガイシャは、これをやったのか?」と小林。
「多分、そうですよ」と明子巡査。
「何で?」
「分かりません」
ニューハーフリブレ高田馬場に向かう途中、池袋署の近所で、明子巡査が言った。
「ロサ会館のツタヤに寄って下さい」
「何で」と加藤
「「ロボコップ」を借りて行くんですよ」
「なんでそんなもの」
「よく観たいんです」
TSUTAYA池袋ロサ店に立ち寄って、「ロボコップ」を借りると、警察車両
はリブレ高田馬場に向かった。
店のあるマンションに到着すると、表のオートロックから「池袋署のものだ、ち
ょっと聞きたい事が」と言う。
504室のカウンターまで行くと、巨漢オカマと対峙した
「あら、なんですの」と巨漢オカマ。「うちはいわゆる本番行為はやっていないお
店なんですよ」
「そういうんで来たんじゃないんだよ。生活安全課じゃないんだ、刑事課だ。おた
くの客の一人が事故で亡くなったんだ。その事でおたくの風俗嬢に聞きたいんだよ」
「まあ、玄関に突っ立っていてもなんなんで、じゃあ、あがります?」
「じゃ、あがらせてもらうよ」
刑事3人は、リビングに上がり込む。
「この向こうに女がいるの?」小林は引き戸を指して聞いた。
「そうよ」と巨漢オカマ。
「話しを聞きたいから、全員出てきてもらえないかなあ」
「しょうがないわねえ」
言うとオカマは引き戸をあけて中のトラニーに言った。
「みんな、ちょっとでておいで」
トラニー6人が引き戸の前に勢揃いした。
「こりゃあすごいなあ、完璧な女だな」小林はにやけた。
「そうですかぁ。よく見れば男っぽいのもいますよ」と明子巡査が小林に小声で言
った。「そんな事より、誰がガイシャに「ロボコップ」のシーンをインストールし
たか調べないと」
「ああ」
「誰がやったか私に突き止めさせて下さい」
「そうだな、臨床心理士だものな」
「じゃあ、みなさーん」明子巡査は引き戸の前に立っているトラニー6人に言った
。「何が起こったのか説明します。
みなさんのお客さんが一人が勤務先マンションの足場の下敷きになって亡くなり
ました。
自分で足場を揺らして倒壊させたそうです。
しかも、ここでのプレイの最中に後催眠をかけられてそうやったって噂です。
そんな事、あり得ると思いますかー?」
「え、なんのこと」などいいながら、トラニー達は顔を見合わせている
「じゃあ、何が起こったのかを最初っから私が説明します。
その前に、みなさんの荷物をもってきて、このテーブルの上において」
「え、荷物?」
「カバンの事?」
「そうじゃなくて、プレイの時に使う道具とか」
「そんなもの…」
トラニー達は、指図を仰ぐように巨漢オカマの方を見た」
「いいから、もってらっしゃい」と巨漢オカマ。
トラニー達は和室に入ると、トートバッグに入った商売道具をもってきた。
「はい、ここに並べて、ここに」と、明子巡査は「ロボコップ」のDVDを持った
手でテーブルを指図した。「ここに置いたら、どっか適当なところに座って。話は
長くなるかも知れないから」
トラニー達はソファーやひじ掛けやカーペットの上に座った。
明子巡査はDVDでトートバッグをつつくと中身ちチラ見した。
「これは何?」と、SODのローションをつつく。
「ローションよ。男のアナルに塗るのよ、はっ、ははっ」とトラニーの一人が冷や
かす様に笑った。
「う”ん、う”−ん」と咳払いをしてから、全員の前で明子巡査は言う。
「それじゃあ、これから何が起こったかを説明します。
何で自分で足場を崩したか。自殺ですが。「死への欲動」とも言いますが。
それと同時になんであの人は肛門性愛者なのか。
あと、何故トラニーが好きだったのか。つまり、何故ペニス羨望があったのか。
つまり、一つは、「死への欲動」、
もう一つは「肛門性愛」、
そして、もう一つの謎は、ペニス羨望、トラニーが好きな理由、
この3つについての謎解きですね。
この3つを謎と思わないんだったら、この謎解きを聞いてもつまらないけど」
#594/598 ●長編 *** コメント #593 ***
★タイトル (sab ) 22/11/11 11:43 (196)
あるトラニーチェイサーの死5 朝霧三郎
★内容
明子巡査はトラニー達を見渡した。
「それじゃあ、まず、「死への欲動」から。
みなさん、フロイト博士って知ってますか?
フロイト博士によれば、人間にはそもそも原初の状態に戻ろうとする傾向がある
との事です。原初の状態とは、生まれる前の、原子の状態、つまり死の状態です。
そこに戻りたいと思っている。これを、タナトスといいます。
でもみんながみんなそう思っている訳じゃない。この世で成熟した女性と上手く
行っている人は、いちゃいちゃするのは楽しいから、ここにいたいと思う。快感原
則ですね。これをエロスといいます。
では、どういう人が、エロスを捨ててタナトスに向かうか。
それがこの世で成熟した女性との関係が上手く行かない人。
どういう人が上手く行かないかっていうと、赤ちゃんの時に母親の無限の愛を得
られなかった人ですね。
人って、胎内、母子関係、世界での男女の関係、と、人間関係を広げていきます
が、このこの母子関係のところで、無限の愛が得られるか得られないかが重要なん
です。
母子関係の愛って、無限の愛なんですね。だって赤ちゃんは言葉が喋れないから
、何が欲しいとは言えないから、母親の方が「おっぱいが欲しいのかな、それとも
オムツが濡れているのかな、それとも何かな」と、無限の愛をくれないとならない
んです。赤ちゃんは無限の愛が欲しいのだから、何をくれても泣く、泣く、だって
おっぱいが欲しい訳でも、オムツを換えて欲しい訳でもなく、無限の愛が欲しいの
だから、何をくれても泣く訳です。
でも、ここで無限の愛を得られたと感じれば泣き止む。そして、母は自分を愛し
ている、だけれども、おっぱいはでない時もあるんだなあ、と納得するんですね。
ところが、この無限の愛が得られないと泣き続ける。おっぱいをやってもオムツ
を交換しても、無限の愛を求めて泣き続ける。そしてとうとう無限の愛を得られな
いままの赤ちゃんも居る。
こうやって、大人の世界に行くと、無限の愛を得た人は、例えば女が変な態度を
とっても、「変な女だな、まあ、女にも色々あるからなぁ、つーか、女だって何時
でも濡れている訳じゃないからなぁ」ぐらいに思うんですね。母は愛してくれてい
るよ、でも何時でもおっぱいが出る訳じゃない。女だって何時でも濡れている訳じ
ゃない。こういうのはエロス的ですね。
一方、母子関係で無限の愛が得られなかった人はどうなるのか。大人になっても
、基本的に愛はないから、何時までも愛があるか調べ続ける、赤ちゃんの時に泣き
続けた様に。こういうのはタナトス的なんですが。
どうやって調べるかというと、昔、岸田秀という心理学者が居たんですが、その
人は、自分は母親に愛されなかった、と50歳になって言い出すんですね。母親と
は20歳の頃に死別しているのに。母親は自分を家業の跡取りとしか考えておらず
、愛してはいなかった、利用する事だけを考えていた、と言うんです。だから、ギ
ターでも何でも買ってくれたが、勉強に関するものは買ってくれなかった、それは
、学業の道に進まれると跡取りに出来ないからだ、とか。それで、50歳になって
、ノートに線を引いて、左に「母は愛している」、右に「母は愛していない」と、
昔の言葉を思い出して書くんですよ。そして愛していなかったと結論する。
心理学者でも、赤ちゃんの時に無限の愛を得られないとタナトス的になっちゃう
、と気が付かないんですね。
さて、今回の事件のガイシャも、なんと、同じ事をしていたんですね。職場のコ
ンシェルジュの言葉をアップルウォッチに録音して、愛はあるか、ないか、とチェ
ックしていたんです。まったくタナトス的ですね。
こういうタナトス的な人間がどうなるかというと、この世での男女関係に上手く
行かないものだから、母子関係、胎内へと逆行するんですね。更には生まれる前の
状態、つまり死の状態に戻りたいと思う。これが「死への欲動」という奴です。
でも、実際には、タナトス的な愛って、録音でチェックする様なカチャカチャし
たもので、おっぱいを吸う様なねっちょりしたものではないから、なんとなく臨場
感がないから、それで鉄骨の下書きになって臨場感を出していたのかも。拒食症患
者がリスカして臨場感を出すみたいに。
とにかくこれが「死への欲動」の解決編です。みなさん、「そうだったのかー」
と膝を打ちました? まるでミステリー小説を読むみたいに。
「じゃあ、肛門性愛は?」とトラニーの一人が聞いてきた。「死への欲動と肛門性
愛になんの関係があるの?」
「それは、成熟した男女の関係から、母子関係、胎内へと退行しているのだから、
フロイト博士的に言えば、性の男根期から性の肛門期に退行した、って感じだけれ
ども。
或いは、タナトスというのはアップルウォッチで録音してチェックする、みたい
な厳密なものだから、排便の時の快楽を厳密にコントロールしたかった、とも言え
るし。
でも、実際には、コンシェルジュに愛される事に絶望して、もう女はいらない、
女性性器ではなく肛門がいい、と思ったのかも。
「じゃあ、ペニス羨望は?」と別のトラニーが聞いてきた。
「このオトコは、成熟した男女の関係から母子関係に退行したわよねえ。この時こ
の赤ちゃんが欲望しているものは、自分の欲望ではなくて、母親が欲望しているも
のなのね。じゃあ、母親が何を欲望しているかというと、それは父親のペニスなの
。だから赤ちゃん、つまりトラニーチェイサーにはペニス羨望があるのよ」
「ふーん」
「「死への欲動」と肛門性愛とペニス羨望は分かったわよ」とアリスが言った。「
でも、実際には小っちゃんはロボコップみたいに鉄骨の下敷きになって死んだんで
しょう? そんな洗脳が可能なの?」
(語るに落ちた。誰もロボコップなんて言っていない。こっちは、足場の下敷きに
なって死んだと言っただけだ。こいつがホシだ。もう少しせめてみよう)
「そうねぇー」明子巡査は腕組みをして右手で顎をつまんでみせた。「もともと「
死への欲動」があったから「ロボコップ」のイメージだけであんな事をやっちゃっ
たのかしら。
でも、プレイでトランスしている時に、無意識に、ロボコップが鉄骨の下敷きにな
るシーンを埋め込むなんて出来ないわ。そんな後催眠みたいな事はあり得ない。
それより重要なのは、さっき言ったペニス羨望って事なんだけれども。あの客はも
の凄い勢いでペニスを羨望していたと思うんだけれども。
それはもう、母子関係に退行したらもの凄い勢いでペニスを羨望しちゃうんだけれ
ども。
そのペニスの代わりにポケモンがきたら、そこいらの子供がポケモンカードに萌え
ている様になるし、ブランド品がきたらOLの様にブランド品に萌えるし、お経が
来たらカルトの様に宗教にハマるし。そして、ペニスの代わりに「ロボコップ」の
あのシーンが来たら、それはもう激しくあのシーンを羨望する。だから、洗脳とい
うより、ペニス羨望の代替でロボコップ羨望した、って言えるかもね。
「分かったわ。ハウダニットは」と巨漢オカマが口を挟んできた。「じゃあ、誰が
それをやったのよ」
「それは多分この中にいるんじゃないの」明子巡査はトラニー達を見渡した。
「誰?」
「まず、みなさん、自己紹介してよ。はしから」
「はるなでーす」と左端のトラニーが言った。
「ちょっと待って。スペックも言ってよ。このお店のhpに、竿アリ、玉ナシとか
、ニューハーフとか男の娘とかあるでしょう。ニューハーフっていうのはホルモン
をやっていて、男の娘というのはホルモンをやっていない人の事?」
「そうよ」
「それも言って。左から」
「はるなです。竿アリ、玉無しです。玉無しだから当然ホルモンはやってます」
(これは完全は女だな)と思った。
「しのぶです。竿アリ、玉あり。ホルモンはやっていません。男の娘です」
(kpopのアイドルより男っぽい。ジャニーズのタレントレベルかな)
「アリスです。竿アリ、玉あり、ホルモンはやってます。ニューハーフです」
(これは微妙だな。ジャスティン・ビーバーがズラを被った様にも見える)
「しおりです。竿アリ、玉あり、ホルモンはやってます。ニューハーフです」
(こりゃあ、背は高いが、顔は女っぽい)
「ゆきです。竿アリ、玉あり、ホルモンはやってます。ニューハーフです」
(デブっているが、顔は女っぽい)
「なつきです。竿アリ、玉あり、ホルモンはやっていません。男の娘です」
(これも結構男の娘だな)
「マンションの警備員の証言によると、ガイシャは、ドタキャンされたからと誘い
出された。早く買わないと、最後の一個だから、みたいに。心理学では、ハードト
ゥゲットとかゲインロス効果とか言われるけれども。
でも、こんなのにひっかかるのは、そもそもガイシャが、愛はあるんか、と、何時
でも愛に飢えていたからなのね。コンシェルジュの言葉に愛はあるんか、みたいに。
だから、簡単にひっかかってしまう。
「ロボコップ」の洗脳をしたのはその人。その日にプレイをした人。
それって分かるんでしょう?」と明子巡査は巨漢オカマの方に言った。
「さぁ、令状がなければ言えないわ」
「hpに出ているスケジュールも、店でいくらでも調整出来るんでしょう?」
「そうね」
「じゃあ、こっちで当てなくっちゃ」明子巡査はトラニーの方を見た。「ガイシャ
は愛に飢えていたからひっかかったのだけれども、トラニーの方にも、自分は愛さ
れていない、おちょくられているだけだ、という気持ちがあったんじゃないかしら
。ガイシャが、遊びでホルモンをやろうとしたら激怒した、という情報もあるわ。
トラニーの憎しみはホルモンに関するものね」
明子巡査はトラニー達を見回した。
はるな。竿アリ、玉無し。ホルモンはやっている。
しのぶ。竿アリ、玉あり。ホルモンはやっていない。男の娘。
アリス。竿アリ、玉あり、ホルモンはやっている。ニューハーフ。
しおり。竿アリ、玉あり、ホルモンはやっている。ニューハーフ。
ゆき 。竿アリ、玉あり、ホルモンはやっている。ニューハーフ。
なつき。竿アリ、玉あり、ホルモンはやっていない。男の娘。
(まず、男の娘は除外される。ホルモンをやっていないのだから。
あと、玉無しのはるなも除外。玉無しまで行っていれば、相当に女だろうから。
残るは、アリス、しおり、ゆき。
さっき語るに落ちたのはアリス。でも、トラニー同士で情報交換していたかも知れ
ない。だから、ゼロから想像しないと。
この3匹の中でホルモンで苦労していそうなのは…)
「ずばり、言うわ。アリス。あなた」
「何で私?」
「直観よ。つーか、ちょっと顎が長いからホルモンが遅かったんじゃないの? だ
からホルモンをもてあそんでいたガイシャが気に入らなかったんじゃないの? 結
構エラも張っているし。これが本当のエラハリウッド」
「そこまで言うううう。でもそんなの状況証拠もいいところだわ」
「ところがこれ」明子巡査は「ロボコップ」のDVDをかざした。「ここにはホシ
の指紋がべっとりついている筈。それと、そのトートバッグの中のSODのチュー
ブについている指紋を照合すれば物証だわ」
突然アリスは、自分のトートバッグに飛びかかるとSOD ロングバケーション
を引き抜いた。
「ほーら、ひっかかった」と明子巡査。「この「ロボコップ」のDVDは、さっき
借りてきたものなんだから。ガイシャのは足場で木っ端みじんになっちゃったんだ
から」
「そんな…。だましたの?。そのDVD私のじゃないの?」
「まんまとトラップにひっかかったわね」
「だとして、犯罪になるの? 小っちゃんは死にたかったんでしょう? しかも後
催眠でもないんでしょう。ペニス羨望みたいに死への羨望があっただけでしょう。
それ、私に関係あるの? そんなんで起訴出来るの」
「それは分からない。ブランド品に夢中になるように洗脳するのは罪か、お布施を
する様に洗脳するのは罪か、分からない。でも、死ぬ様に洗脳するのは問題がある
んじゃないの?。たとえ、もともと死にたい人だったとしても。そこらへんはそれ
は検事さんが決める事だわ」
「とにかく署には来てもらうよ」と小林が言った。「ローションをひったくったか
らね。刑訴法221条、警察官は被疑者が任意に提出した物を領置することができ
る。それをひったくったんだから、公務執行妨害だ」
「勾留されるの?」と巨漢オカマ
「多分な」
「何日ぐらい?」
「最初10日、更に10日」
「留置場って、男と一緒なの? それとも女?」
「さあ、独居が空いているんじゃない」
「そうしてやって? 男と一緒になんて出来ないわよ」
加藤がアリスに手錠をかけた。
アリスと刑事3人は504から出て行った。
通りに出ると、警察車両に、ぽつりぽつりと雨が落ちていた。
梅雨明けまでにはまだ1週間はかかるだろう。アリスの勾留期間は恐らく20日
間。
彼女が出てくる頃には、からっからに晴れているだろう。
【一応 了】