AWC 本の感想>『猫柳十一弦の後悔』   永山



#8699/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  15/10/26  21:22  ( 21)
本の感想>『猫柳十一弦の後悔』   永山
★内容
・『猫柳十一弦の後悔』(北山猛邦 講談社ノベルス)15/5361
 名探偵が当たり前に存在する世界。大学には当然、探偵助手学部がある。探偵の助手
を志す者が通う学部だ。そこの講師は名探偵が務め、学生は名探偵のゼミに入り、議論
や実践を通じて探偵助手としてのスキルを身に付けていく。
 探偵助手学部に入った君橋と月々の二人は、世間に知られた名探偵に付きたいと希望
を出すも、猫柳十一弦という影の薄い、若い女性探偵のゼミに入れられてしまった。や
がて合宿の季節になり、名探偵・雪ノ下のゼミとの合同合宿が決まった。ゼミ生の一人
が所有する島の屋敷がその舞台となるが、思いも寄らぬ“本物の”殺人事件が発生。探
偵とその助手候補だらけの孤島で、殺人に手を染めたのは一体何者か?

 横溝正史が創出した名探偵・金田一耕助はその昔、一部で“被害者が全員死ななけれ
ば解決できない名探偵”と揶揄されていたと記憶していますが、その真逆が猫柳十一弦
と言えるかも。死者が出ない訳ではありませんが、犠牲者を出さぬよう、文字通り身体
を張って必死に奮闘する様は共感できますし、本来のあるべき名探偵像と言えそう。
 謎の設定についてはなかなかよい感じ。遺体を蛍光色で彩る理由とか、小さな箱に閉
じ込められた遺体の謎とか。事件そのものについては、ちょっとおかしなところがある
気がするし、各人物の動きと物語の流れが(一見)ちぐはぐで、そのおかげでかえって
事件の真相に察しが付きやすくなっているのは難点かと。
 でもまあ、頼りない&有名でない名探偵の活躍は、味わう価値があると思います。

 ではでは。




#9007/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ    *** コメント #8699 ***
★タイトル (AZA     )  16/08/17  18:22  ( 25)
本の感想>『猫柳十一弦の失敗』   永山
★内容
・『猫柳十一弦の失敗』(北山猛邦 講談社ノベルス)15/4461
 探偵の猫柳十一弦は、大学の探偵助手学部で、君橋と月々の二人をゼミに迎え、指導
している。が、前回の事件を経て、しばらく引き籠もり状態に。
 その間、君橋と月々は、同じ大学の知人から相談を持ち掛けられた。山奥深い稲木村
では名家として知られる後鑑家のお嬢様宛に、脅迫状が届いたという。事件を解決しよ
うと乗り出した彼らは、探偵助手としてもまだ半人前だが、意外な手段によって、不安
は取り除かれたように思われた。
 しかし、話を聞いた猫柳は、まだ完全には解決していない、新たな事件に発展すると
推理し、稲木村に急行する。
 有名でない名探偵・猫柳十一弦の奮闘を描いたシリーズ第二弾。

 前作『猫柳十一弦の後悔』に引き続いて、猫柳が大活躍します。と言っても、基本的
に隠密行動なので、派手さはほとんどなし。ただ、とにかく犠牲者を出さないことを最
大の目標に行動するというのは名探偵像として、ユニークで面白い。
 今回は倒叙ミステリの趣が強く、犯人が誰かという謎は、ほぼないと言っていいでし
ょう。一風変わっているのは、犯行前かつ探偵側からのみ描いた倒叙物だという点。量
産できるスタイルじゃないでしょうが、非常に興味深い試みだと思いました。そもそ
も、極力犠牲者を出さないミステリというのが、かなり変わっていて(構築するのが)
難しいスタイルと言えますが。
 第一作と違って、真相(動機等)は見えにくくなっているけれど、代わりに猫柳の推
理が神がかっているような。特に、トリックを見破る想像力が。その辺に不満を感じた
ものの、細かい暗示やキャラクター小説としての側面で魅せくれたので、充分に補われ
たかな。癖のあるミステリですが、一読の価値はあるかと。

 ではでは。




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