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★タイトル (GVB ) 00/10/22 18:28 ( 74)
新種のあひる 〜初代佐野祭の生涯〜 2
★内容
佐野祭の思惑とは裏腹にウェブはなかなか浸透していかなかった。祭はもっと
ウェブを広めるにはどうしたらいいかを考えていたが、ある日三浦大門の家へ相
談に訪れた。
「なあ、大門。大門」
「どうした」
「いろいろやってはみているのだが、なかなかウェブが広まらん。何がいかんの
かな」
「さあねえ」
「どうも今一つ手応えがないような気がする」
「手応えったってねえ。芝居と違って拍手があるわけじゃないし、新聞と違って
売れ行きがあるわけではないし」
「そうなのだよ。正直言って読まれているか、読まれてないのかすらもぴんとこ
ないのだよ」
頭をひねりながら帰っていった祭だったが、その後一ヶ月ほど姿を見せなかっ
た。
心配になった大門が祭の家を訪れると、祭はひげぼうぼうの姿で画面とにらめ
っこしていた。
「祭、どうした」
「俺はウェブが読まれているかどうか調べる方法を思いついたぞ」
しゃべりながらも祭の目は画面から離れない。
「名付けて読者計測器だ」
そう、今でいうアクセスカウンターも先代が始めたのである。
「ほう。何人読んだかがわかるのか」
「ああ」
「すごいな。それはどういう仕掛けになってるんだ」
「ああ、そうだ」
「今どのくらいの人が読んでるんだ」
「ああ、まあな」
どうも祭の様子が変だ。大門が顔色をうかがっていると祭がぽつりとつぶやい
た。
「来た」
祭の手元には「正正正 ̄」と書かれた紙がある。祭は筆をとってそこに棒を一
本付け足した。「正正正T」になった。物事はなんでもそうであるが、最初のア
クセスカウンターは手動だったのである。
「十七人」
それまで画面から目を離さなかった祭が急に顔を上げた。
「やあ、大門じゃないか。ちょうどいいところに来た、ちょっと代わってくれ。
俺は寝る」
こいつは今まで誰と話しているつもりだったのだろうと大門がいぶかるひまも
あらばこそ、祭は大門に紙と筆を渡して敷きっぱなしの布団にもぐりこんだ。
十時間後。祭は大きく伸びをして目を覚ました。
「あああ、久しぶりによく寝た。や、大門じゃないか。こんなところで何をして
いるんだ」
大門は祭の首を絞めたくなったが、十時間画面を見続けた大門にもその気力は
残ってなかった。大門は黙って「正正正下」と書かれた紙を指しだした。
「十八人か。あれから一人しか増えてないな」
「なあ祭、これ自動化できないのか」
「俺もなんとかしたいのだが、まだそこまでいっとらん。とりあえずそれは次の
段階だ」
「だいたいこの数字あってるのか」
「うーん、一人や二人見逃しているかも知れん。俺も途中朦朧としていたから」
「しかしこんなことをやっていては、肝心のウェブの更新ができんではないか」
「それなのだよ。あっ」
画面を見ていた祭があわてて筆を取り上げ、「正正正下」に一画加え、まあそ
んなフォントはないのでどうなったかは省略するが、「十九人」とつぶやいた。
「なあ大門、いま思いついたんだが」
「なんだ」
「次二十人目だろ」
「うむ」
「あなたは二十人目のお客様です、おめでとうございまーす、って、表彰するの
どうかな」
「うん、それは面白い。話題になるぞ」
「そう、なんだったら記念品も付けちゃおう」
「うむ、そうするとちょうどの番号欲しさに読む人が増えるかも知れない」
祭と大門はじっと画面を見張った。
待つこと七時間。画面に変化が現れた。
「来た」
祭は紙に線を一本引き「正正正正」とすると、声高らかに叫んだ。
「おめでとうございまあす、あなたは二十人目のお客様でえっす!」
祭は拍手する。大門も拍手する。ひとしきり拍手した後で大門が言った。
「で、これどうやって本人に伝えるの」
「さあ」
続く