AWC Last Words paragraph 2


        
#7200/7701 連載
★タイトル (ZWN     )  00/ 1/19  23:15  (137)
 Last Words  paragraph 2
★内容
                         
  Last Words >paragraph 2<


「摩耶は、死んだんだよ」
 菊子は静かにそういった。美菜へのショックを、最小
限にするための配慮を考えて。
「うっ、嘘でしょう?」
 美菜は震える声を抑えながら、そう答えた。そして、
美菜の目からは、知らない間に涙がこぼれていた。
「嘘じゃないの・・・。本当に死んだのよ、摩耶は」
 美菜の質問に、菊子は繰り返すようにそういった。
 受話器を持つ美菜の手が、かすかに震え始めた。それ
だけではなく、美菜の体全体が、支えがなくなったよう
に震えている。
「だっ、だって・・・。じゃぁ、摩耶から来た手紙は、
いったい誰が出したの・・・?」
 そう言いながら、美菜の頭の中では、色々なことが巡
っていた。
 さっきの手紙は、誰が書いたものなの?
 手紙には、また、会いたいって書いてあるのに、本当
に摩耶は、死んじゃったの?
「美菜、本当に、摩耶の字なの?」
 菊子は、確かめるように聞いた。電話越しに聞いても
美菜が動揺しているのが手に取るようにわかるからだ。
なるべく動揺させないように。美菜をいたわりながら。
「・・・字?」
「そうよ、書かれてる字は、摩耶の字なの?」
「・・・。そっ、そんなこと言われても、だいぶ見てな
いから、わからないよ・・・」
 美菜の声は、完全に鳴き声になっていた。
「でも、何となくなら、わかるでしょ?」
「たっ、たぶん・・・」
「もう一度読んで、確かめてみてよ」
「うっ、うん。わかった・・・」
 美菜はそう言うと、便せんを手に取った。そして、今
度は字に集中して、もう一度読んだ。
「・・・」
「美菜。どうなのよ?」
「やっぱり、摩耶の字だよ、これ」
「確かなことなの?」
「うん」
「誰かが、似せて書いた可能性は?」
「多分ないと思う・・・」
 独特の字。摩耶が書く、特徴的な字。簡単には、まね
することが出来ない、だいぶ時が経っても、忘れられな
い字。
「特徴的なの、摩耶の字は。だから、簡単には、似せて
かけないはずなの・・・」
「・・・」
「菊子。聞いてるの?」
「うん」
「いつ、摩耶は死んだの?」
 美菜は、摩耶の死を疑うことにした。手紙が存在する
以上、摩耶は生きているはずだと、よんだからだ。
「美菜が村を出て、2年くらい経ったときだよ。死んだ
のは・・・」
「10年も前なの?」
「そう・・・。村の人たちは、全員知っているわ、その
ことは。私も、お葬式には、参列したし・・・」
 美菜は黙り込んだまま、何もすることが出来なくなっ
た。また、振り出しに、戻ってきてしまったのだ。手紙
は誰が書いたのかという・・・。
「誰かのいたずらじゃないの?」
「そんなはずはないの。ここの住所を知ってるのは、菊
子しか、いないし・・・」
「私も、誰にも聞かれなかったから、教えてないから・
・・。いたずらじゃないなら・・・。でもそれじゃぁ、
誰がやったの?誰にも出来なくなっちゃうし・・・。摩
耶が手紙を書くことは、当然出来ないんだよ?」
「わっ、わかってるけど・・・。摩耶にも、ここは、教
えてないの。なのに手紙が来るし・・・。」
「しらないはずの摩耶が、送ってよこすのは、出来ない
んじゃないの?」
 そうだ。摩耶は、ここのことを知らない・・・。じゃ
ぁ、本当に、誰がやったの?いたずらするような人は?
・・・、いない・・・。そんな人は、知っている限り、
誰一人としていない。
「知り合いには、そう言う人がないなの・・・。誰がや
ったの・・・。怖いよ・・・。」
「大丈夫だから、ねっ、美菜。平気だから・・・」
「平気って言われても、現実には、ここに在るんだよ、
手紙が。どうしようもないじゃない・・・。誰かがやら
ない限り、届かないんだから・・・」
「そうだけど・・・。でも、いないんでしょ?そう言う
人が・・・。」
「うん」
「でも、現実に、あるんだから、誰かがやったの。摩耶
からの手紙じゃないのよ、それは。誰かが、美菜のこと
を怖がらせようとか、不安にさせようって、思ってるの
よ。じゃなきゃ、そんなものは・・・」
「そっ、そんなものは、何なの?菊子、言ってよ」
「摩耶の事って、私たちと村の人か、知らないのよねぇ」
「そうよ。当たり前・・・」
 そう言う途中、美菜は、はっと、気がついた。村の人
・・・。誰もここのことは、知らないはず。菊子は知っ
てるけど、絶対にやらないし・・・。なら、誰なんだろ
う・・・。
「む・ら・の人?」
 美菜の口から、そんな言葉が出た。
 菊子も同じ事を考えていたが、絶対に言い出せなかっ
た。
「そっ、そんなことは、ないはずよ。だって、知らない
はずでしょ、美菜のことは。住所だったり、連絡先だっ
たり」
「そうなの・・・。なら、どこからきたの?この手紙・
・・」
「もう、やめようよ。考えるの」
 はじめにそう言いだしたのは、菊子だった。
「でも・・・」
「気になるのは、わからないでもないけど、考えていて
も、結論は出ないでしょ?」 
「うん」
「同窓会に来るって、その手紙には、書いて会ったんで
しょ?」
「うん」
「なら、その時に確かめてみれば、いいんじゃないの?」
「どうやってよ」
「手紙を出した人は、必ずくるはずよ。なら、行動とか
で、わかるんじゃないの?」
「たぶん・・・」
「なら、そうしてみようよ。考えてると、美菜が、心配
だから」
「ありがとう・・・」
 美菜はそう言って、言葉を詰まらせた。もう、何も考
える余地が、頭の中に存在しないからだ。
「じゃぁ、切るよ? 平気?」
「うん。もう大丈夫。ごめんね、心配させて」
「ううん。良いのよ」
「じゃぁ、同窓会でね」
「うん」
 美菜は電話を切った。
 そして、摩耶が書いたと思われる手紙を、もう一度読
み返した。


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