AWC 三宮晴樹とその友人達(33)           ハロルド


        
#6509/7701 連載
★タイトル (GSA     )  98/ 5/19   1:30  ( 46)
三宮晴樹とその友人達(33)           ハロルド
★内容
 晴樹が自室で勉強していると、和世がドアをノックした。
「エースプロダクションの川瀬さんから電話が入ってるけど」
 晴樹には、電話に出る前からどんな用件なのか、わかっていた。週末のスタジオ
撮影を手伝って欲しいのだろう。晴樹は受話器をとった。
「晴樹君、今度の土曜日やっぱりアシスタントとして出られないかなあ? 他のス
タッフがどうしても掴まんなくてさあ、忙しいのはわかってるけど」川瀬の声には
哀願の響きがこもっていた。
「申し訳ないんですけど、やっぱりテスト前ですからねえ。叔母もうるさいんです
よ」晴樹は申し訳なさそうに言った。
「じゃあ、誰かあんたの代わりで、このバイトやってくれそうな子は見つかった?」
「あまりお勧めは出来ないんですけどねえ」晴樹は言いにくそうな様子だった。
「じゃ、いるのね」川瀬の表情が希望に満ちてきた。
「いたことはいたんですが」晴樹は渋々言った。「覚えてますか? この前の展示
会でのインタビューの撮影の時にいた、あの・・・」
「まさか、あの柏原って子?」川瀬の表情から希望の色が失せた。
「そのまさかですよ」
「でも、あの柏原って貴方の学校のクラスメートでしょ? だったらあの子もテス
ト勉強で忙しい筈じゃない。なのにどうして彼は出られるの?」
「確かに変な話ですけど」晴樹は言った。「でもその柏原は、『どうしてもそのバ
イトには出られる』って言い張ってるんですよ」
 その話を聞いていて川瀬は、郁太郎の雇用に警戒心を強めていた。彼には、この
前のインタビューの仕事で痛い目に遭っている。正直な話、少し常識外れなところ
のある郁太郎とは、あまり一緒に仕事をしたいという気にはなれない。
 しかし選択の余地はなかった。今回の撮影には人手を欠いており、必ずそれが撮
影の進行に影響を及ぼすに違いない。ないよりはマシだと思って、保険のつもりで
確保だけはしておこう。
「わかった。それじゃあ彼の電話番号がわかったら教えて。雇うかどうかは別にし
て話してみるわ」川瀬は言った。「清水の舞台から飛び降りたつもりで」

 撮影の日、川瀬はとうとう郁太郎の代わりとなるスタッフを手配することが出来
なかった。仕方なしに事務所で郁太郎が来るのを待っていたが、彼は待ち合わせの
時間に五分も遅れていた。
 やがて郁太郎が現れた。
「お早うございます」
「お早う。でも貴方の友達は貴方に、この業界は時間厳守どころか待ち合わせ時間
の十分前には来ておくのが常識だということを教えてくれなかったみたいね」
「いやあ、デートのときには待ち合わせ時間に遅れてやってきて相手を焦らせるっ
て方法もあるんですけど、この場合はやっぱり通用しないみたいですねえ」
 郁太郎は、いけしゃあしゃあと笑っていた。
「それにしても、今回の仕事にわざわざ僕を指名して頂いて有り難うございます」
「礼には及ばないわよ」川瀬は言った。「だって貴方以外、誰も志願しなかったん
だもの」
「もしかすると」郁太郎は言った。「やっぱりこの前のインタビューでのことが評
価されたんですかね」
 川瀬は、郁太郎の嬉しそうな表情を冷たい視線で眺めていた。
                                                              (98/05/17)




前のメッセージ 次のメッセージ 
「連載」一覧 ハロルドの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE