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★タイトル (GSA ) 98/ 5/14 1:11 ( 50)
三宮晴樹とその友人達(31) ハロルド
★内容
会場内には、並べられたパイプチェアーに何十人もの観客が座ってフィル・ティ
ペット氏の来場を待ちかねていた。やがて組み立てられた舞台にティペット氏が現
れ、盛大な拍手が巻き起こった。イベント中には晴樹のする仕事はなかったので、
彼はカメラマンの横でぼんやりとことの成り行きを見守っていた。
インタビュアーが、映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の見どころやSFX
の秘密等を伺い、ティペット氏は通訳を通してそれに答えていた。
やがて会場内からの質問コーナーとなり、インタビュアーが観客に呼びかけた。
「ここでフィルさんに何か質問のある方はいらっしゃいませんか?」
何人かの手が上がった。その中には当然郁太郎の姿があった。インタビュアーは
川瀬ディレクターからの打ち合わせで、彼の顔は知っていたがすぐに指名すること
はしなかった。会場内の雰囲気や流れに合わせてタイミングを決める。
フィル・ティペット氏は最初の内、観客からの質問に時折ジョークを交えながら
的確に答えていた。しかしあまりに平凡な内容の質問には、相槌だけをうつような
受け答えになっていた。
インタビュアーは、何かここで目新しい内容の質問が欲しいと考えた。
「他に何か質問はありませんか?」
郁太郎はまだ指名されていなかった。インタビュアーはここぞとばかりに彼を指
名した。
<あまり変な質問して台無しにするなよ>
晴樹は心配しながらその様子を見守っていた。
「アメリカのSFX業界の内情についての質問なんですが宜しいでしょうか?」郁
太郎は立ち上がって言った。
「何でも構いません。どうぞ」通訳を通してティペット氏が言った。
「貴方はSFX工房の『ティペットスタジオ』を経営なさってますが、貴方の友達
にはアメリカで最高のSFX工房『ILM インダストリアル・ライト・アンド・
マジック』のリーダーであるデニス・ミューレンさんがいらっしゃいますよね」
あまりの挑発的な質問の仕方に会場内は静まり返った。通訳は郁太郎の質問の内
容をそのままの意味で、少しどもりながら直訳した。しかしティペット氏は平然と
笑いながら言った。
「彼とは親友です」
「そのミューレンさんと貴方との比較に関しての質問なんですが宜しいですか?」
そのやりとりを聞きながら、川瀬ディレクターは、郁太郎の指名は大成功だった
と考えていた。もしここでティペット氏がライバルであるミューレン氏とその考え
について語れば、その内容が好意的なものであろうと批判的なものであろうと、番
組の内容的には大きな収穫となる。
ティペット氏は言った。
「どんなことでも聞いてくれ。僕と彼の考えているSFX観の違いかな? それと
も僕が、彼がリーダーを勤める『ILM』を辞めたということで彼との間に何か確
執があったと疑っているのかな? それとも僕のスタジオとILMとではどちらの
方がCG設備やSFX技術に優れているのか、僕の観点から答えて欲しいのかな?
それとも何かな?」
郁太郎は言った。
「ティペットさん。貴方とミューレンさんとでは、どちらの方が頭の髪の毛が薄い
のでしょう?」
(98/05/12)
※この物語は架空のものであり、実在する団体、事件、作品、個人等
とは何の関係もありません。
・参考資料「ジョージ・ルーカスのSFX工房」
トーマス・G・スミス著 朝日新聞社刊