AWC ベツレヘム777  第13話       リーベルG


        
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ベツレヘム777  第13話       リーベルG
★内容

 マイクロボアスーツを脱ぎ、ジャンプスーツ姿になったヴェロニカは、次の
行動を促すように、カーティスとサオリとジャーランを交互に見た。サオリと
カーティスは、山積している質問の中のどれをぶつけようかと、一瞬迷って顔
を見合わせた。その隙を突くように、ヴェロニカが先に口を開いた。
「あの、みなさんのお名前をうかがっていませんが……」
「ああ、あたしはサオリ。サオリ・グレイヴィル。リーダーよ」最後の言葉で
カーティスが目を剥いたが、サオリは無視して続けた。「<ジブラルタル>か
ら来たの。こっちはカーティス。あたしのボディーガード。乱暴者で粗忽者だ
けど、腕はいいやつよ。あの子はジャーラン。無愛想で自分勝手なやつだけど
システムハッキングは一流よ。あと、あたしの弟のサニルがいるんだけど、今
は行方不明」
 ヴェロニカの顔色が変わった。
「ということは、四人でここに来たのですか?」
「そうよ。それが何か?」
 ヴェロニカはそれには答えず、ターミナルに向かっているジャーランを見た。
「ターミナルを貸して下さい。確かめなければならないことがあります」
「何を?」
「後で話します。お願いします」
 ジャーランは困ったような顔でサオリを見た。
「ヴェロニカさん。悪いけど、あなたが敵ではないという保証が得られない以
上、完全に信用するわけにはいかないわ。何をするつもりなの?」
「そんなことを言っている場合ではありません」ヴェロニカはもどかしげに答
えた。「わかりました。では、私の指示をこちらの方に実行してもらうという
ことではいかがですか?」
 サオリはカーティスの顔を見てから頷いた。
「いいわ。ただし、おかしなことをしないでね」
「わかっていますわ」ヴェロニカはジャーランに向き直った。「システムコー
ド、FZ−658−45をお願いします。エントリーポイントは、J490。
パラメータなしで」
「ジャーラン」サオリが声をかけた。「実行する前に何をするのかを調べて」
「OK」ジャーランはデータグローブの中で指を動かし、すぐに答えを返した。
「危険はなさそうよ」
「何の命令なの?」
「<ベツレヘム>の人口調査よ。今現在の」
「前に773人だったじゃない」
「かなり死にましたよ」カーティスが口をはさんだ。
「死んだんじゃなくて、あなたが殺したんでしょうが。その減少がシステムに
反映されてるのかしら?」
「やってみればわかるわ」ジャーランは指示を実行した。
 答えは一瞬でディスプレイに表示された。
「592人」サオリは驚いた。「反映されてるわ」
「たぶん、ソウルズたちのヴァイタルサインがモニタされていて、カウントさ
れたんでしょう」
「ヴェロニカ?これ、何か意味があるの?」
 ヴェロニカは唇を噛みしめて数字を凝視していた。
「やっぱり動いてたんだわ」小声でつぶやく。「システムコード、AA−05
1−71を。エントリーポイントは同じ。パラメータなし。パスコードが必要
になります。パスコードは『baptizing』です」
 ジャーランは言われたとおりにコマンドをエントリーしたが、困惑で眉をひ
そめた。
「ジャーラン?」
「何だかわからないわ。システムの最深部に属するコマンドオブジェクト群だ
から、パスコードなしじゃ手が届かないやつだったの。それどころか、こんな
コマンドがあることさえ分からなかった。実行して何が起こるのか、見当もつ
かないわ」
 カーティスはその言葉を耳にすると、疑念の表情を隠そうともせず、ヴェロ
ニカに詰め寄った。だが、ヴェロニカは恐れる色も見せずに懇願した。
「おねがいします。あなた方に害を及ぼすようなことはありません。神に誓っ
て」
 サオリもカーティスもぎょっとしたように、ヴェロニカを見た。
「あ、あなた、ソウルズなの?」
 ヴェロニカは頷いた。
「そうです。お願いですから、コマンドを実行して下さい」
「ダメです、お嬢さん」カーティスが大声で遮った。「この女はソウルズなん
ですよ。あいつらの仲間です。忌むべきテロリストたちと同じ存在なんです!
何を考えているか知れたもんじゃない!」
「落ち着いて、カーティス」
「落ち着いていられますか。サニル君を拉致した奴らの仲間なんですよ!お嬢
さんが平静でいられるのが不思議なぐらいです」
「落ち着きなさい」サオリは繰り返した。「ヴェロニカさんが、あいつらとは
違うことぐらい一目見ればわかるじゃないの」
「しかしソウルズであることは間違いないでしょう」
「あたし、聞いたことがあるんだけど、ソウルズは神に誓えば絶対に真実を話
さなければならないそうだわ」サオリはヴェロニカに目を向けた。「そうなん
でしょ?」
「その通りです」
「いいわ、ジャーラン。実行して」
 カーティスが反対の声を上げる前に、ジャーランはコマンドを実行した。
 ディスプレイから、今までのGUI画面が消えた。替わりに表示されたのは、
シンプルなキャラクタ画面で、中央に次のような文字列が浮かんでいる。

        Nazareth Plan

           Executing
                 T+01:10:18

              Progress : 23.8 %

「やっぱり……」ヴェロニカは呻いた。「始まってしまった」
「これは何なの?」サオリは強い口調で訊いた。「ナザレ計画が実行中だと言
っているみたいだけど」
「そのとおりです。23.8パーセントまで進んでいます」そう答えてから、
ヴェロニカは驚きの表情でサオリを見た。「どうして、ナザレ計画のことを知
っているのですか?」
「ジャーランが探し当てたのよ。どんな計画なの?」
「お話するわけにはいきません」ヴェロニカは素っ気なく言ったが、すぐに言
い直した。「というより、言っても信じていただけないと思います。ただ、こ
れだけはお話しておきます。私に協力していただくために」
「何?」
「ナザレ計画が発動すれば」ヴェロニカは厳かな声で告げた。「人類は滅びる
でしょう。地上と宇宙を問わず、あらゆる人々が死に絶えます。それはすでに
実証済みです」
 サオリたちは絶句した。
「実証済み……って、まさか、ホーリーナイトが?」
 ヴェロニカは悲しそうに頷いた。
「あなた方が何と呼んでいるかは存じませんが、2028年に地球が一夜にし
て壊滅した原因は、エルサレムにあったソウルズの施設<ヨハネ22>で、最
初のナザレ計画発動によります。。この<ベツレヘム>は、<ヨハネ22>の
双子です。<ヨハネ22>が攻撃されたときのバックアップとして用意されて
いたものなのです」

                                つづく





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