AWC 「続・ティアフルガール(迷子少女)」 No8 大二郎


        
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★タイトル (AWJ     )  97/ 3/15  17:30  ( 98)
「続・ティアフルガール(迷子少女)」 No8 大二郎
★内容


 一般にドッペルゲンガーというのは、その人物の精神だけが具現化し、本体から離
脱したものとされています。
 しかしながら、こういったファンタジーの世界には、ときとして己の姿を自在に変
化させたり、他人の記憶や能力をコピーしてしまうという、非常識な生き物も、まま
存在することもあるわけでして・・・・。
「・・・・そーゆーやつらは、ぼくらの間ではすべてA級、ときにはS級の指名手配犯と
されているんですけど・・・・」
 と言いながらカイ、後頭部をちょっとカキカキ。
「どうにも、こっちから捜し出す手段がまったくなくて、いつも苦労するんですよね
・・・・なのにうちの課長ときたら、こっちの苦労も知らないで・・・・」
「・・・・で? こいつは結局、誰なんだ?」
 話が脱線しかかったのを見て、も一度言う黒装束達のリーダー格。
「えっ? 詳しく誰か、って聞かれても・・・・」
 それ以上の説明はもとより不可能なカイくん、あっさり答に詰まった。
 と・・・・
「ふふふ・・・・」
 別にカイに助け船を出したつもりでもないだろうけれど、フレイアさんのにせもの
が、不敵そうに笑って口を挟んだ。
「わたくしが何者であるかなど・・・・この際、解く必要のある謎でしょうか?」
 にせフレイアさんのファジィな言葉に、ちょっと気圧されるカイと黒装束のリーダ
ー格、それにファズタ先生。
 ちなみに他の黒装束達は意味が解らないらしく、顎に手を添えて首を傾げている。
 本物のフレイアさんは・・・・その表情では何を思ってるのかさっぱり判らなかった。
 と、にせフレイアさん、リーダー格を含めた黒装束達に向かって、
「わたくしが何者だろうと、いままであなたがたに与して差し上げた事実は変わるも
のではないのでは?」
「・・・・それはまあ、そうだな」
 とは、黒装束のリーダー格の男。
 おおっ、さすが親分、意味が解ってる。と感心する他の黒装束達はほっといて、
「じゃ、すみませんけどあの方々、やっつけちゃっていただけません?」
 にこやかに言うにせフレイアさん。
「うーん、しかしなぁ・・・・女を殺すってぇのは・・・・」
 リーダー格がちょっとためらうと、「あらあら・・・・」と呆れたような感心したよう
な声を上げてから、
「・・・・それじゃ、わたくしが逃げるまでの間、足止めして下さるだけで結構です」
 と、ちょっとつむじを曲げたように、依頼の内容を訂正するにせフレイアさん。
「よし、それならいい」
 と、なんとも安直に相談はまとまり、
「いくぞ! 野郎ども!」
 おう! とリーダーの号令一下、ときの声を上げてカイ、ファズタ先生、そしてフ
レイアさんを改めて取り囲む黒装束達。
「まあたいへん、どうしましょう・・・・わたくし、おなかがすいてますのに」
「夜食ならすぐ作れます」
 いまいち緊張感のない二人に、カイもまた、どうしたことか余裕の様子で苦笑した。
 とそこへ、
「たーっ!」
 お約束のように、包囲の中へ飛び込んできて、シュタッ、とその中心にさっそうと
立つ・・・・
「シュンリー仮面、ただいまさんじょー、なんですねっ!」
 目の部分に穴を開けた黒いハチマキで顔の上半分を隠したつもりらしいシュンリー
が、言ったのだった・・・・。
「な、なんだこのガキは?」
 黒装束の一人が、面食らった声を上げた。
「ガキじゃないんですね! シュンリー仮面なんですねっ!」
 と、腰に手を当てて仁王立ちしながら訂正するシュンリー。
「ええい、なんだって構いやしねえからガキはすっこんでろ! でねえとそいつらと
一緒にやっちまうぞ!」
 ・・・・幸せな奴(皮肉)。
「やれるもんならやってみろっ、なんですねっ!」
「こらシュンリー、そんな言葉も覚えなくていいの」
 カイがたしなめるのとほぼ同時に「大人をなめやがって!」と頭に血が昇ったその
男、シュンリーに掴みかかろうとした。
 ・・・・けれども、
 ズバキャッ!
 シュンリーお得意の垂直飛び蹴りが、男の顔面にまともにヒット! しかも2発。
 相手もまさか、150センチあるかどうかの女の子に180センチ以上の自分の顔を
“蹴られる”などとは思ってもみなかったらしく、
「はぐわっ!」
 と一声、後ろへぶっ飛んでひっくり返った。
 で、ピクリとも動かない。いとあわれ。・・・・自業自得だけど。
 一様に後ずさりする黒装束達に向かってシュンリー、
「“悪いオトナ”はシュンリー仮面がみんなに代わっておしおきなんですねっ!」
 ジャジャジャーン!
「プレイヤーさんのにせものさんも、逃げたってダメなんですねっ!」
「・・・・フレイアなんですけど」
 にせフレイアさんに向かって言ったシュンリーに突っ込みを入れる本物のフレイア
さんをとりあえず無視して、逃げようとしていたにせフレイアさん、立ち止まった。
 あーややこしい。
「・・・・なるほどそうでしたね。PDFであるあなたに正体を見破られて、このまま逃
げるわけには参りませんわね。なにしろここにはわたくしのDNAサンプルがたくさ
ん残っているんですから、ね」
 にせフレイアさんの言葉に、あちゃー、と顔を手で覆うカイ。
「もちろん、本部へも既に連絡が届いて・・・・ますよね」
 カイ一人だけが事態の深刻さを味わっている中、シュンリーはそろり、そろーりと
にせフレイアさんの背後に回っていった。
 で、
「てぇーい!」
 と、悪役のごとく、後ろからなんの前置きもなしに蹴りをかます。
 ・・・・が、にせフレイアさん、あさってのほうを向いたまんま、あっさりそれをかわ
してしまう。
「ふふ・・・・まあそんなに焦らなくてもお相手して差し上げます・・・・」
 そして、静かだがやけに頭に響く声で、にせフレイアさんははっきりと言ったのだ
った。
「なにしろ、この孤児院ごと、あなたがた全員を消さなければならないのですから、
ね・・・・」





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