#4958/7701 連載
★タイトル (XVB ) 97/ 2/22 22: 8 (104)
吉外信報50 大舞 仁
★内容
はじめての出血経験
一日目
ある夏の日のことである。わたしは、数年後に一部崩壊する三宮駅からバスに乗
り空港に行くのであった。
時間は五時、待ち時間は二時間強、何もすることなく秒針は少しずつ動いていき、
退屈、退屈、退屈の文字が何度も何度も繰り返し頭の中をよぎっていく。そして腹
の中はぎゅるるるるる、腹減ったぞ〜、何か食わせろとわめき出してきた。いつも
はお金が少ししか入っていないとりあえずミエだけで買った財布にも今日ばかりは
大金ががっぱがっぽ入っている。少しぐらいの豪遊をしてもいいかと、少しの料理
なのによそよりもはるかに高い喫茶店にてまずいサンドイッチをぱくつくこととな
った。これで腹の虫は退治されたのであった。
一時間後空港のおねえさんに今まで持ったこともなかった大きいトランクを渡し、
トランクよなごり惜しいが少しの間さらばじゃ〜。そして我々は機上の人となった
のであった。なんといっても、初めての経験である。することなすことじぇんじぇ
んわからない。シートベルトをおつけください。何やり方がわからんゾ。何だこれ
はゲロ袋だ。さすがにJALだ、ゲロ袋までつけてくれておる感心なことじゃ。こ
ちらには何かわからんがスイッチがある。押しまくれ、押しまくれ! お、電気が
ついたぞ。これは読書灯か、それじゃこっちはラジヲのスイッチか、おうおうそう
みたいじゃ。このときにはすでに袋から出してヘッドホンを耳に差し込んで遊んで
いるのであった。
上にあがっていく〜、地球よさらば〜、身体が地上から離れていく。こんなに地
球が懐かしいと思ったことはなかったぞ〜、それにしても耳が痛いぞ〜、異様に痛
いぞ〜死ぬ! 死ぬ! 死ぬ! 痛い! 痛い! 痛い! 耳の鼓膜が破れてしま
う。わたしの身体はとてもきゃしゃに出来ているのだから、少しのことで壊れてし
まうのだ。よし、つばをごっこんしてみよう。ピー、ゴー、あ〜少しだけ治まった。
一時は死・・・死ぬかと思った。きっとあれは地球を離れようとしたから、霊が邪
魔しようとしたのだ。きっとそうに違いない。
スチューワデスのおねえさんがジュースを持ってやってきた。くれくれくれ、わ
しにくれ、もちろん貰う。スチューワデスのおねえさんがお菓子を持ってやってき
た。くれくれくれ、わしにくれ、もちろん貰う。高い金を出して乗った以上貰うも
のは貰う何か文句ある? 文句はない、よろしい。おかわりをいじぎたなく貰って
しまった。
これが間違いだと弁当を貰ったときに気付くこととなった。腹太い〜もう食べれ
ないよ〜。
腹が太くなったら普通の環境なら寝れるはず・・・だか、ここは一種異常な環境
なのだった。期待は脹らむ、機体は揺れる、これじゃ心身とも興奮して眠れるのは
とうてい無理な話である。それでも眠るのだ、眠れ〜眠れ〜すやすやすや〜、ひつ
じが一匹ひつじが二匹ひつじが三匹、めえ〜めえ〜めえ〜、なんだ山羊が混じって
いる。これでは寝れない。時差惚けを解消するには眠るしか方法がないのだぞ、な
んとしても寝るしかないのだ。しかし、とうとうというべきが、当然というべきが
最後まで寝れなかった。そのかわりと言っては何だが、日本時間の一時に真黄色の
太陽を直視してしまった。なんまいだぶ〜ありがたや〜ありがたや〜ち〜ん。
とまあ、こんなふうにあこがれのハワイまでたどり着いたものの、時差惚けが頭
の中はぱぁ、観光案内のバスは来ない。来たと思ったら、最初のバスは故障、二台
目のバスは屋根から水盛りがしている。なんじゃこりゃあ、その上運転は超荒い、
日本を比較してのことなので、外国から考えれば、日本の運転は丁寧すぎるという
のかな。
まあ、それなりに楽しんで、ウエルカムディナーは日本人の口にあわず、とても
まずい。アイスクリームだけを食べる人がほとんど、コックのおじさんいわく、日
本人はマナーが悪いのだと、うまい料理を食べさしてくれるのだったら食べるのだ
けどね口にあわないの、ごめんね。
オプションの予約、旅行会社からでもできないことはなかったのだけど、そうす
ると高くつくからやめたの、それで自分たちで予約、コインを入れてて電話がかか
らない。おーい、わしらの金はぁ、ぼんぼんぼん、電話をぶったたく。金が戻って
こん。故障だ。故障だ。どこかでお金がつまっているのだ。困った。他の受話器に
いって、金を放りこむと今度はお金がじゃらじゃら落ちてくる。なんだこれは、ま
あ払ったお金と戻ってきたお金がほど同じだったからいいようなものの、日本では
こんなことはないだろうなとしみじみ実感。
二日目
昨日(さくじつ)予約していたオプションにいく。約束の時間に車がこない〜、
くそ〜、こっちは待っているのだゾ。なぜこないのだと待つこと三十分、やっと車
がきた。「パラセーリングするのですか」と相手は英語で聞く。こっちは本当はス
キューバダイビングをする予定だったのだが、思わず「いえ〜す」まいあがってし
まってうまく会話をすることができないのであった。こんなとき学校の授業が生き
てこないのが哀しい。
まあともかく、海についた。ハワイの海は最高。とても水が澄んでいて、海底の
底まで見えてくる。
小さなモーターボートに乗っていく。さすがは太平洋の真ん中にあって、潮がき
つい。大きな波がなんどもなんどもよってくる。小さなモーターボートが木の葉の
ような乗り心地。ようやくクルーザーに合流するまできゃあきゃあいっていたわた
しも次第に元気をなくしていく。生欠伸がぽかり、ぽかりと出てくる。やばいや、
これは、少し酔ってきたな。ええい、大馬鹿ものの三半規管こんなときにかぎって
活躍してくれよ。
それでも最初は金髪のねーちゃんたちと魚の写真を見て、ビューテフルとか、簡
単な英語を使って楽しくお話をしていた。三半規管はそれでも直ることができなか
った。
ついに・・・・
げろげろげろげろげろ
やってしまった。食べ物が胃から逆流して嘔吐してしまった。
その嘔吐してしまったせいか、魚が妙によってくる。目当てはげろだ。げろを食
べに魚たちがやってきたのだ。もっとくれもっとくれと魚が言っているようだ。そ
こでもうひとがんばり、
げろげろげろげろげろ
ようし、ようし、魚たちはとてもよろこんでいるな、げろをあげている本人は死
ぬほどつらいのに・・・さらに数回吐くころ、胃液はでてくるわ スキューバした
後になって鼻をツーンツーンした影響で、生まれて初めて鼻から出血してしまった。
これぞ、初めての出血体験なり。
それからのことはほとんど死人状態のためよく覚えていないが、げろに誘われて
大亀がぷかーんぷかーん浮かんでいたらしい。大亀の写真を取ればよかったのだろ
うけど、こっちは出血体験とげろ後のため、そんなことする力はなくなっていた。
あと数日ハワイにいたのだけど、もう数年前のお話だから記憶がごっちゃになっ
て覚えていない。
大舞 仁