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★タイトル (HKT ) 97/ 2/10 18:39 (190)
熱闘!ブロンコス96(17) Faith
★内容
レギュラーシーズン第15週。
プレイオフをかけてどこだって一つも負けたくない今週は、各スタジアムとも波
乱に満ちた試合となった。
マイアミ。カウボーイズを90年代最強と呼ばれるまでにしながらオーナーとの
確執でカウボーイズを飛び出し、優勝請負人としてドルフィンズのヘッドコーチに
就任したジミー・ジョンソン。QBとして手にしていない栄光はスーパーボウルリ
ングだけと言われながら、ベテランとして毎年引退をささやかれるようになってし
まったダン・マリーノ。
優勝候補と言われ続け、今年こその意気込みも強いドルフィンズであったが、先
週までで6勝7敗。残り全て勝った上で上位チームがコケるのを待つしかないドル
フィンズのプレイオフへの夢を、ジャイアンツが砕いた。
スコアは17対7。
別に性格が悪いわけではないのだが、こういうときの西村は底意地の悪い顔をす
る。ジャイアンツの勝利よりも、ドルフィンズの最後の希望を葬ったことで、ただ
でさえつむっているように細い目をいっそう細めた笑顔を作った。
そのジャイアンツの結果以上にファルコンズの結果が気になる西村だが、11敗
同士の弱小対決はファルコンズが敵地でセインツを31対15で下していた。ラム
ズがベアーズに負けたため、NFC西地区の順位のビリ争いは
ラムズ 4勝10敗
ファルコンズ 3勝11敗
セインツ 2勝12敗
となった。来週はファルコンズ対ラムズ(ファルコンズのホームゲーム)があり、
まだ自力で地区3位にあがるチャンスがある。そこでジャイアンツがセインツ戦を
勝てば、ファルコンズの単独最下位はなくなる計算だ。
弱小同士の潰しあいともいえるが、とりあえずファルコンズ勝利を伝えようと、
西村はめぐみの職場にダイアルした。
下位3チームは放っておいて、NFC西地区の上位2チーム、常勝49ersと
新興パンサーズは今日、49ersのホームで直接対決となった。同地区内はホー
ム&アウェイで2度対戦があるのだが、今季パンサーズのホームでの試合は、去年
できたばかりのチームのパンサーズが勝っている。ちなみに去年の結果は1勝1敗
だったが、さて結果は。
パンサーズのQBのコリンズが327ヤードを投げ、3っつのタッチダウンパス
を決めるなどで30対24で勝ってしまったのだ。49ersのQBヤングは、確
かに体がぼろぼろかもしれない。それにしても、2年目のチームがあの49ers
に2連勝するとは。
パンサーズも49ersもこれで10勝4敗。他のスタジアムの結果もあって、
両チームともプレイオフ出場が決まったが、勝率が同じだが直接対決で2勝したパ
ンサーズの方が現時点で地区トップである。それにしても、チーム結成2年目でプ
レイオフ出場はNFL史上初だ。
結成2年目のもう一チーム、AFC中地区のジャガーズは、オイラーズとアウェ
イで同地区内対決。
この地区はトップのスティーラーズが、プレイオフへ一縷の望みをかけるチャー
ジャースを16対3という、試合展開はどうあれ勝てば官軍とでもいうような勝ち
方で10勝4敗地区優勝を決めたため、プレイオフに出る条件がさらに厳しくなっ
てきている。
6勝7敗のジャガーズは、負ければプレイオフに出られないところだが、チャー
ジャース出身のランナーであるミーンズが2TDを上げる活躍で、7勝7敗のオイ
ラーズを23対7で破って望みをつなげた。
オイラーズにとっては取りこぼし以外の何者でもない。7勝なら、数字の上では
まだジャガーズにもプレイオフのチャンスはある。パンサーズに続いてジャガーズ
も出てくるようなことがあれば、前代未聞どころの話じゃなくなる。あとの2試合
はシーホークス(6勝8敗)、ファルコンズ(3勝11敗)相手にホームゲームだ
から無理な話じゃあ、ない。
取りこぼしといえば、こちらもそうだ。先週までチーフス、ペイトリオッツとと
もに9勝4敗でプレイオフ戦線の先頭だったビルズが、シーホークス相手に18対
26でまさかの敗退。この間にペイトリオッツは、気の毒なほど勝てないジェッツ
をホームで撃破し、ビルズをかわして地区トップとなる10勝目を上げ、プレイオ
フ出場を決めている。
チーフスはと言えば、アウェイでレイダースとの雨中のマンデーナイト戦だった
が、レイダースの方がQBホステトラーのタッチダウンパス2発などで26対7で
勝利。3連勝で7勝7敗としてプレイオフの望みを取り戻すとともに、チーフスの
プレイオフ出場決定を保留にしてしまった。
ヒゲが洋物のポルノ男優を思わせるホステトラーは、もとはジャイアンツの控え
QBだった。当時のジャイアンツの先発QBは名手シムズだったが、ケガでプレイ
オフの試合に出られなくなった。それでホステトラーに登板機会が巡ってきたのだ
が、順調にプレイオフを勝ち進んでスーパーボウルに出場、そのまま優勝してシン
デレラボーイとなったのである。
あの栄光をもう一度と燃えるホステトラーに対し、プレイオフに出るにはもう一
つ勝てばいいと思ってしまったのだろうか、第12週までは好調に地区トップだっ
たのに、ブロンコスに負けて以来チーフスは元気がない。スターティングQBのボ
ウノが出場していないのは不調のためかケガのためか、
「渇を入れんかい!」
16戦全勝を予想していた水上であったが、語気荒くなるしぼみぶりである。
コルツは木曜日の試合で、イーグルスを37対10で破っている。ここでAFC
の状況を整理すると、
地区優勝 ブロンコス(西)、スティーラーズ(中)
10勝 ペイトリオッツ(プレイオフ決定)
9勝 ビルズ、チーフス
8勝 コルツ
7勝 オイラーズ、ジャガーズ、レイダース、チャージャース
となった。
残り2試合だから9勝の2チームが有利と言いたいところだが、今週の調子では
予断を許さない。
今週の注目度No.1は、なんと言ってもブロンコス対パッカーズであった。こ
こまでブロンコスは11勝1敗、パッカーズは10勝2敗で、ともにスーパーボウ
ル出場候補であり、他のチャンピオンシップ(AFC、NFCそれぞれの決勝。勝
てばスーパーボウル出場)常連が振るわない中で、スーパーボウルはこのカードに
なるとの見方がおおかたである。
舞台はパッカーズのホームフィールドである。パッカーズはエースQBのブレッ
ト・ファーブが登場。
「逸材とは思ったけど、こんなに早くスーパーボウルを狙えるところまでくるとは
思わなかったよなぁ」
正木がインターネットを覗きながらつぶやいた。解説者の中にはパッカーズを推
す声も多かったのだが、NFCは当分49ersとカウボーイズの2強だと思って
いたのだ。
これからQBは、おそらくこのファーブ辺りになっていくのだろう。その後には
ペイトリオッツのドリュー・ブレッドソーなんかが続いていく。ムーンはもちろん
のこと、エルウェイやマリーノ、ケリー辺りはもうベテランだし、ヤングは相当体
を痛めていそうだ。世代交代の時なのかもしれない。
今日の試合はだから、ファーブ対エルウェイの新旧対決と言えるだろう。と思っ
たのだが、
「エルウェイが出場していない!?」
一瞬、近年の悪夢がよみがえる。シーズン終盤にエルウェイが負傷で出場不可能
になるパターンか?必死の形相で、全面に英文が表示されたディスプレイの解読に
かかる。しかし数分して、どうやら温存しただけらしいとわかり、吹き出していた
汗をようやく拭うことができた。
で、結果の方はと”Recap”(要点)の表示をクリックした。出てきた表示
は、”Packers 41, Broncos 6”
「ぐぇぁっ!」
あるいは、”ギャッ”とか、”ビャッ”とかともとれる奇声が、正木の口からほ
とばしった。正木の同僚達も、昼休みに正木がパソコンの前で大騒ぎするのにはい
い加減慣れてきていたが、それが思わず驚いて振り向くほどの怪鳥のような悲鳴で
あった。そして皆が振り向いた先では、正木が硬直していた。
時間が止まったように、ピクリともしない。ただ表情だけが、多少老け込んだよ
うに見えるのは、気のせいだろうか。絵のモデルでも、もう少しは動いてしまうだ
ろうに。微動だにしないとは、こんな状態だろう。
「おい、死んだんじゃないか?」
まわりからそんなヒソヒソ声が出初めてしばらく経ち、ようやく正木がまばたき
した時、
「おーっ、生きてる生きてる」
まわりから散発的ながら拍手さえ上がった。
「んじゃ、食事に行きますか」
「危うくメシがまずくなるところだった」
三々五々立ち上がり、地下の食堂へ降りていく。唯一藤代だけが、正木の顔をの
ぞき込んで声をかけた。
「ブロンコス負けちゃったんすかぁ?」
黙って正木がディスプレイを指さす。その先を目で追った藤代も、
「あらー」
と言ったきり、言葉が続かなかった。
「エルウェイを温存するのはいいけどな、これじゃ志気に関わるぜ」
ファーブは4本のタッチダウンパスを決めている。一方のブロンコスはフィールド
ゴール2本のみ。これは、ブロンコスのオフェンスはエルウェイ抜きでは何もでき
ないという意味か。
「去年の夏のアメリカンボウル見たか?」
「ええ。エルウェイが引っ込んで控えQBに変わったとたん、オフェンスが空回り
したんですよね」
ブロンコスは95年8月のアメリカンボウルで来日し、東京ドームで49ers
と対戦した。プレシーズンゲーム(オープン戦)として行われるアメリカンボウル
は、日本やヨーロッパなどのNFLを生で観戦できないファンへのサービスという
意味と、選手をふるいにかけるという意味を持つ。1チームが保有できる選手の人
数は決められており、キャンプから開幕に向けて人数を絞り込むのだ。当落線上の
選手は、プレシーズンゲームで実力をアピールできなければチームを去るのみとな
る。
アメリカンボウルでも、チーム残留が決まっているようなスター選手は、試合開
始後少し出場するだけで、あとは控え選手をどんどん試合で使って実力を見ること
になるのだが、あのときはエルウェイの後に出てきたQBが、インターセプトは喰
らうは落球するはで最悪だったのだ。
「もし今後、エルウェイが負傷欠場なんてことになったら」
「立て直されてきているとは言っても、ディフェンスだけで勝てるほどスーパーボ
ウルは甘くないだろうな」
エルウェイはブロンコスにおいて、まさにボーリングのヘッドピンなのだ。ヘッ
ドピンが倒れれば後ろのピンがバタバタ倒れるように、エルウェイが倒れればブロ
ンコスは終わってしまうだろう。
NFC東地区では、先週8勝で並んでいた3チームから、先に述べたようにイー
グルスがまず脱落。カウボーイズは格下のカージナルス相手に、これもいやらしい
展開で10対6と勝って9勝目、レッドスキンズはNFC中地区最下位のバッカニ
アーズに10対24で破れた。
NFC中地区ではバイキングスがライオンズに24対22で辛勝して8勝目を上
げ、プレイオフの望みをつなぐ。この結果、
地区優勝 パッカーズ(中)
10勝 パンサーズ、49ers(ともにプレイオフ決定)
9勝 カウボーイズ
8勝 イーグルス、レッドスキンズ、バイキングス
となっている。7勝はいないため、9勝と8勝の4チームで、東地区優勝も含めて
残り3っつのプレイオフ出場権を争うことになった。
次週(第16週)
ブロンコス 対 レイダース (レイダースのホームゲーム)
チーフス 対 コルツ (チーフスのホームゲーム)
ファルコンズ 対 ラムズ (ファルコンズのホームゲーム)
ジャイアンツ 対 セインツ (ジャイアンツのホームゲーム)
−To be continued.−
<<注>>
チャンピオンシップ
AFC、NFCそれぞれのカンファレンスの決勝戦。勝てばスーパーボウル出場と
なる。
アメリカンボウル
NFLとしては日本を有力な市場と見ていたらしく、ブロンコスや49ersを
はじめ、人気チームや前年度スーパーボウル出場チームなどを日本での試合に送っ
てくれていた。しかしスポンサー不足から97年は開催されない方向で、今後は隔
年開催となるらしい。