AWC とぜんそう3>【地球環境】のために      久礼嶋努


        
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★タイトル (TRG     )  95/ 6/28  22:47  ( 51)
とぜんそう3>【地球環境】のために      久礼嶋努
★内容
以下、1995年6月23日付日刊工業新聞より。
   (引用始め)
     アユ放流でカワウソ絶滅!?
     日韓の比較調査で高知大が”謎”解明
   【松山】絶滅が危惧されている国の天然記念物
   ニホンカワウソ。これまでは水質の汚濁や河川
   の改修工事といった環境破壊が激減の原因と考えられてい
   た。高知大学理学部の町田吉彦教授は松山市で開かれた日
   本動物園水族館協会の総会で、日韓の比較調査をもとに、
   「アユの放流がカワウソを追い詰めた」とする新説を発表
   した。事実とすれば”開発=自然の敵”という紋切り型が
   通用しなくなりそうだ。
   (中略)町田教授は、カワウソのエサである淡水魚の分布
   状況に注目し、日韓で比較してみた。その結果、韓国では
   コイ科の魚が多く、わが国では戦後盛んに放流されたアユ
   が多いことがわかった。八三年までカワウソが生息してい
   た高知県の仁淀川でも、アユが大幅に増加していた。アユ
   はカワウソの好物とされ、エサのアユが増えたにもかかわ
   らずカワウソが減ったことから開発による環境破壊が激減
   の原因と考えられていた。
    町田教授はカワウソの糞にズナガニゴイの骨が含まれている
   ことに着目。動きが鈍く捕まえやすいコイ科の魚を、カワ
   ウソが好んで食べている可能性が強まった。汚濁が進んで
   いる韓国の河川で、なぜカワウソが生息できるのか謎
   だったが、濁った川を好むコイ科の魚が主食となれば
   うまく説明できる。もともとわが国でもコイ科の魚が多か
   ったが、急増したアユに追われるように、その数もめっき
   り減少している。
    町田教授は「水が澄んでアユが泳ぐ川は非常に自然豊か
   な風景に見える。我々が環境を守るつもりでやったこ
   とが、カワウソを絶滅に追い込んだとしたら皮肉としかい
   いようがない」と、環境破壊の本質的な評価の難しさを指
   摘している。
   (引用終わり)

ことほどさように自然というのはデリケートなもので、安易な植林や稚魚の放
流などが生態系を破壊することだってある。今日の杉花粉症の蔓延も、戦後の
杉の植林が原因といわれている。つい先だっても、九州の小学校が毎年大阪の
小学校にホタルを送っているという美談が、環境保護団体から生態系の破壊に
つながるという指摘を受けて今年から中止されたニュースを聞いたばかりだ。

ましてや現在のように科学が発達した時代になっても、いや、科学が発達した
時代になったからこそ、これまでの定説や常識が次々と覆されている。あの映
画『ジュラシック・パーク』の恐竜は少し動きが早すぎると専門家から指摘さ
れているが、それでも30年前の常識・恐竜は動きが鈍く、刺激を与えてから
数十秒経たないと痛みを感じないなどという説を信じる人はもういないだろう。

古い常識や感傷的意見で進める環境保護は、かえって自然そのものを破壊した
り、逆に人間に災厄をもたらすこともある。よく分析し、新しい説も取り入れ
て正しい環境保護を実行しないと、それこそ稲の生育を助けるために田んぼか
ら稲を引き抜く愚か物になりかねない。




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