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ちょっと恐い話 第九話 登季島
★内容
ところはごく平凡な高校の一教室である。ユージは雑誌
をぺらぺらめくっていた。ユージの手が一瞬止まった。
「おい、ちょっと来てみろよ、何だよ、これ」
ユージはケンに向かって手招きをした。ケンがめんどく
さそうに近づいてくる。ケンはいつもそんな感じだ。
「高校生の処女喪失平均年齢、何と十六才と三ヶ月だって
よ、どうする、おい」
ユージは雑誌の見出しを指さしている。
「ということはだな、我がクラスの大多数は処女ではない、
ということか」
ケンの声はいぶかしそうだ。ケンとユージは高校三年生
だ。
「もしそうだとしたら、おまえの好きな由希子さんなんて、
絶対もう失っているな。あれだけの美人だもの」
ケンの口調がユージをからかうようなそれに変わった。
「バカ野郎、彼女に限って」
ユージに顔に動揺が現れた。
「わかんないぞ。言い寄る男は数知れず」
ケンはにやにやすると
「ユージ、ここはもう告白しかない」
と断言した。
「そんなこと急にいわれてもなあ」
ユージは結構臆病だ。そう簡単には決断できない。
「今ならまだ間に合うかもしれない。だけどあすにはもう
彼女の操は奪われているかもしれない」
ケンはさかんにおもしろがってあおっている。
ユージはついに決断した。放課後ユージは由希子に告白
をした。しかし、結果は無惨だった。
「まだそういうことは、ちょっと」
由希子は丁寧に断った。ここでユージはたいへんバカな
ことをした。ショックのあまり、つい出たことばだった。
「じゃあ、由希子さんはまだ誰にも奪われていないよね」
由希子は少しあぜんとして、それから軽蔑の目をユージ
に向けた。
「何言ってるの」
きつい口調でそう言うと、くるりと背を向け、去ってい
った。
ひととおり、ケンはユージから話を聞くと
「いやあ、それは残念だった、しかし人生はまだ長い」
と笑ってユージの肩をたたいた。
「ああ、それからあの記事な、おまえ見出ししか見なかっ
たけど、中をちゃんと読むとだな、高校生で性経験がある
のは二十二パーセント、七十八パーセントは性体験がない
そうだ。つまり、二割のみが処女を失っているということ
だな。たったの十人のうちのふたりだよ。それでだな、処
女喪失平均年齢十六才と三ヶ月というのはだな、その二割
のうちの平均が、ということだったんだよ、うん、まあそ
ういうことだから、こんなに急がなくても良かったような
気もするよな、うん・・・まあ・・・でも、人生はまだ長
いから・・・」
おわり
今の時期、マスコミをチクリとするのは、何となくちょ
っと気が引けたが・・・。本当に作品を書きにくくてしょ
うがない・・・。なお、出てくる数字は推測で適当ですの
で、悪しからず。
登季島 吾郎