AWC The Last War   6 − 3  Marchin Muller


        
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★タイトル (AAA     )  93/11/28  11:35  (195)
The Last War   6 − 3  Marchin Muller
★内容

 第五章 バルカンの嵐   [後編]

    4

 『今日、大阪大学研究センターの激光XXで放射の事故があった模様です。原因
はまだ明らかになっていませんが、燃料ペレットの水素吸着パラジウムに何らかの
不純物が混じっていたとの見方が有力です。なお、研究センターを中心とする一〇
キロメートルの範囲は警戒区域として立ち入りが規制されており、付近の交通は完
全に麻痺しています』
 明はテレビを切り、背伸びをした。
 「うー 、竹山さん いや教授が生きていたらなんと言うかな」

 西暦二〇二四年 五月三日 クレイドル チャニング中佐はペンタゴンの会議室
に呼び出されていた。
 「なんでしょうか?」
 「相変わらず唐突なご挨拶だな」ケインズ元帥は大統領補佐官の方に目配せしな
がら答えた。
 「元気だったかね、大佐」葉巻の火を消しながら、シムズは立ち上がった。
 「お久しぶりです」私はできるだけ皮肉さを込めないように答え、ケインズ提督
の方に向き直った。
 「昇進ですか?」
 「そうだ」
 「それだけですか? いつもの事で、それだけではないでしょう」
 「もちろん ……」
 「ボスニアに行ってもらう」 ケインズ提督の言葉にかなさるようにシムズがこ
たえた。
 「ボスニア……」
 「ボスニアの鉱山の坑道の奥深くにに大量の兵器が蓄積されている。兵器が使え
ないように鉱山を破壊してもらう」
 「そんなものは爆撃してしまえばいいでしょう」
 「蓄積されている兵器の中には海軍から流出した兵器もあるから、秘密裏に破壊
してしまう必要がある」
 「私には流出兵器の事よりも、流出事件を秘密する事の方が問題だと思うのです
が」
 「兵器の流出ルートは既に押さえてある。今度、横流しをしたら現行犯で捕まえ
る事になっている。今はこれから始まろうとしている戦争の火種を消す事が大切だ」

 五月七日 クレイドルの特殊部隊は深夜のパラシュート降下の末 ボスニアの鉱山
に侵入することに成功した。
 「バーンズ 君は向こうの坑道をやってくれ」
 「了解! キリー 行くぞ」 バーンズ大尉はキリーとともに暗闇の斜面を下って
行った。

 「ここの坑道も調査しておいた方がいいな」
 「大佐 、兵器庫にしては手薄ですね」
 「そうだな、通路が一つだから警備は殆ど必要ないからな。少尉 調べてくれる
か?」
 「では」ジョンはすばやく坑道にはいると、忍者のように姿を消した。
 「ジョーンズ 参ったな。ここは戦場とは思えん。我々はなんだか悪い事をして
いるようだ、まるで盗人だな」
 「大佐 問題ないですよ。坑道をふっ飛ばすだけでしょ」
 「おまえは気軽でいいな」シムズの悪人面を思い出しながら、ジョーンズの脳天
気さを嘆いた。まあ、それがジョーンズの持ち味なんだろうが…。

 「大佐、大尉から無線が入っています」
 「バーンズ、状況報告を」
 「大佐、倉庫にスティンガーミサイルを発見しました」
 「バーンズ大尉 どのくらい有る?」
 「二〇発 前後です。他には何も有りません」
 「たった二〇発か、M4を〇四三〇にセットして、戻ってきてくれ」
 「了解」

 ザザー
 バーンズと私はほぼ同時に音のした方に銃を向けた。気がつかない内にジョンが
すぐ近くに戻ってきていたのた。
 「ご苦労だった」ジョンのギョットした顔に声をかけた。
 「〇四三〇に爆弾をセットしてきました」
 「それで、なにか見つけたか?」
 「兵器を発見する事は出来ませんでしたが、中にいた男が言うにはここはパラジ
ウム鉱山ということです」
 「こんな所にパラジウム鉱山があるとはね。なるほど、こりゃいっぱい食わされ
たな。引き上げるぞ!」

5

 五月九日 一七時二〇分 一回目の出撃の後、帰投したジェットエンジェルスの
隊長 マーチン ラング大尉は国連軍南ヨーロッパ方面空軍指令官 ドワイト ラ
イト少将に会っていた。
 「少将閣下 お願いがあって 参りました」
 「二人の救出 かね?」
 「はあ では、即実行を?」
 「だめだ」
 「何故です?」
 「ここは戦場だサーカスみたいな真似をやっている暇はない」
 「人命が第一です。救出すべきです」
 「人命? 救出班の人命はどうなのだ?」
 「はあ」
 … 指令官は当てにならんな。どちらにしろ 救出しなくては……

 ラングは救出のために出動可能な部隊をあたっていた。
 「よう! チェイニーじゃないか ウォルフは元気か?」
 「ああ、このごろ宇宙はめっきり寂しくなってね。暇だよ」
 「こんな所でなにしてるだ」
 「休暇だよ。羽を伸ばそうとエーゲ海にと思ったんだが、この始末さ」
 「部下が敵地に脱出降下したのを救出したいのだが」
 「それは… 心中をお察しするね。さっき、クレイドルを見かけたが……。そう
いえば前の紛争の時には一〇〇万人レイプ事件があったな。民族同士が対決の格好
で、他の民族を捕らえて 一斉に やったそうだ。拷問は悲惨を極めたな。膣の中
に金属の棒を突っ込んで何百ボルトの電流を流したそうだ。ヒクヒクと … あれ
 ………」
 チャニングが気がついたときには、ラングはもうそこにはいなかった。

 「チャニング大佐! 」
 「君もいっぱい食わされた口かね 紛争で疲弊しきった国に戦争をする体力が残
っているなんておかしいと思っていたんだ」
 「え? なんのことですが、私は部下を敵地に置き去りにしてしまいました。救
助にいきたいのです」
 「ジョーンズとかいうのがいたな」
 「はい、救出したいのはジェニファー ジョーンズとジェーン コナーです」
 「なるほど、私もうっぷんばらしがしたかったところだ。アメリカ人救助という
大儀名文もあるしな。喜んでお受けしよう」
  「よろしくお願いします。私も援護します」
 「いや、こっそりやりたいんだ。三〇分後に来てくれないか」
 「アイアイサー」

       6

 「私はアメリカ人よ!すぐに解放しなさい! 私たちに何かあったらアメリカが
放っておかないわよ!」
 「 ……… 」 何を言っているのか分からない。たぶん、セルビア語だろうか。
 「へへへ」
 「いやーー  やめてぇーー」
  ハァハァ ハア ……
 「いゃぁ……」

 ババババ・バリン
 周囲が突然 明るくなった。ヘリの爆音とともに、数人がなだれ込んできた。
 「ジェニー!」
 「にぃさん? 兄さん! ここよ!」
 五月九日 二三時〇〇分 クレイドルの特殊部隊が救出しにきた。二機のヘリで
最前線から三〇〇kmも奥の敵地に侵入を果たし、ジェニファー ジョーンズ少尉
とジェーン コナー少尉を救出した。
 二三時一〇分
 救出は成功し、ヘリは幌馬車隊を救出しに来た騎兵隊ののりで離陸した。
 「大佐 あれは対空ミサイ……」離陸したヘリの目の前におびただしい量の兵器
が並んでいた。
 「大量だな 撃て!」
 「了解!」
 ババババ・シューーーン  ドン、ドドドドド
 トラックに山積されていた兵器が誘爆していた。
 「こういう光景を見ると スカッとしますね」
 「ジョーンズ お前は根っからの戦闘好きだな」
 「ははは」

 「ジョーンズ 私がアメリカ軍を辞めて、国連軍に志願したらついて来るかね」
 「 え…… 」
 「いや、何でもない。忘れてくれ」
 本当に疲れた。いっそのことジョーンズみたいに脳天気になれたら悩まずに済む
のだが……。

    7

 ユーゴの大半はクロアチア勢力に制圧されてしまった。当初よりアメリカ軍は積
極的な攻撃をしていなかった。しかし、それが表面化してきたのは国連軍が制圧し
ていた地域で抵抗が頻発しはじめた この頃であった。
 五月一〇日 二〇時二四分 ドワイト ライト少将の怒りが爆発した。怒りの矛
先は国連事務総長アドリア ライト、少将の兄に向けられていた。
 「これでは我々はピエロではないか」
 「まあ 冷静になれ。 ドワイト」
 「冗談ではない。こんな扱いをされては事実を…」
 「慌てるな。 悪いようにはしない」
 「全軍、一時撤退させてもらう。体制を立て直さなければ全滅だ」
 「分かった。 で、総反撃はいつ頃だ。 各国を説得するだけのものがなければ
な」
 「取りあえず 一週間」
 「よし、一週間だな」

 五月一八日 三時〇〇分
 ギリシャ領内に撤退していた国連軍は総反撃に転じた。
 この日、初めて地上軍/コブラ/を投入した。また、空母、戦艦も投入し、戦艦
は艦砲射撃で建造物に攻撃を加えた。このあと、対艦ミサイルによって、戦艦は中
破される。しかし、空母の活躍はめざましく、完全にクロアチア勢力の侵攻を押さ
えた。
 五月二〇日 クロアチア政府は非合法軍事組織と国連の仲介役を買って出た。そ
して、非合法軍事組織は武器を放棄して撤退する事を約束した。組織化されていな
い兵力との紛争と呼ばれる形態の戦闘の収拾としては、きわめて異例といえるほど
早かった。

8

 薬師寺は戦火の中、自ら指揮をとり、戦火をくぐり抜けた。
 「ゆっくり風呂に使って、日本酒をキュウとやりたいな」
 「ほんとうに そうぉ だ」
 「そろそろこの辺で脱出しないと…。平和施行軍が配備されるから動きにくくな
るからな」
 戦闘… これは、いい経験ではあったが 二度としたくないな……

 薬師寺と武田は、この事が後に大きく影響する事を認識していなかった。拠点を
一つ失ったMG連合は独自の武力を持つ事により、状況の挽回に期待した。


                                                  1993.08.01 原案
                                                  1993.11.27 Rev1





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