AWC Long Night(4)    うちだ


        
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★タイトル (TEM     )  93/11/ 1   7:41  ( 61)
Long Night(4)    うちだ
★内容

聡は階段をのぼった。彼の素足の足元からぺたぺたと小さな足音だけが響く。
まず一番奥の部屋に向かった。扉を開けて手探りで電気をつけた。
部屋がぱっと明るくなる。先程と同じだった。机もひっくりかえった椅子も、
黒板とその意味のない落書きも。「やれやれ」
聡は何げなく袖についていた白い粉を払ってドキリとした。あわててもう一度、
右腕をあげてそでを見たが、もう何もついていない。
「気のせい・・・・かな?」
聡は黒板に触れた覚えがないのに、うっすらとチョークの粉がついてたように
思えたのだ。
「のぞみちゃんが怖がるからって、俺までどうかしてんじゃないよな」

しばらくして聡は居間に戻った。
「どうだった?」のぞみがソファから立ち上がった。
「ん、やっぱり誰も居なかったし、何にもなかったよ。ねずみとかそーゆーの
じゃない? だいたいこの家ってオフシーズンの管理が全然なってないじゃん」
「そうね」のぞみがやっと顔色を取り戻す。「そうよね」
ふたりはそろってソファに腰を下ろした。
「だからって、眠れそうにもないし」
しばらく沈黙が続いた後、のぞみの顔を覗き込んで聡が言った。
「どうしようね、今から」
「喉かわいた」のぞみが即答した。
「・・・チョコ食べたもんな、そういえば。俺もなんか喉かわいた」
聡は立ち上がった。「水汲んでくるよ」
聡は台所に入り、また冷蔵庫を開けた。「ホントに何にもないでやんの」
それから水道の蛇口を捻りコップに水を入れながら、聡は台所の小窓から外を
見た。雨は降っていない。月明かりで異様な物がぶらさがっているのを聡は見
た。「!?」
その時声がした。「聡くーん」
ギクリとして聡が振り返った。のぞみが台所まで来ていた。
「そういえば使ってない水道水をイキナリ出すと、赤錆が出るから・・・何よ、
怖いカオ・・・」
のぞみは聡の背後に廻ると、彼の肩越しに小窓を覗いた。「やだ・・・何?」
二人は目を細めてそれを見極めた。黒猫。棒の先に黒猫が首をくくられて吊さ
れていた。のぞみも聡も唖然として黙り込んだ。真っ青になる聡。
「やばいよ、ここ。きっと変質者が巣くう家だって」
のぞみは黒猫から目を離さずつぶやいた。「どうしてそう思うの?」
「俺、同じようなことしてる奴見たことあるもん。逃げよう、助けを呼ぼう」
聡に手を引かれながら、のぞみが言った。
「・・・でも電話もないわよ」
「いや、あるんだ、実は」
二人は応接間へ行った。聡がソファーの隙間に手を入れる。「あれれっ」
「どしたの?」とのぞみ。
「ここに電話が」
「やあねえ」のぞみが笑った。「そんなトコに電話があるわけないでしょう?」
聡は探りつつ、言った。「だって、俺、確かにここに」
「何で」
「あのさ。実は電話、この部屋にあったんだ」バツが悪そうに聡が言った。「だ
から確実に帰れる訳だし。別荘に戻るよりここで二人きりのほうがって、ちょ
ーっとやましく考えちゃって・・・俺、のぞみちゃんのこと好」
最後のセリフの途中を皆まで言わせず、のぞみが重ねて言った。
「で、ここに電話を隠したってワケね」
「・・・・そうなんだ。接続コードを引っこ抜いて電話ごと、このソファの隙
間に突っ込んでおいたんだけど・・・・・どこへいっちゃったんだろう」
聡が青い顔をしてうつむいた。
「もしかして誰かいるのかしら」
「え」
「だってあの猫だって。あそこは入る前に通ったところでしょ? その時はな
かったじゃない」
二人は黙り込んだ。
                                つづく




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