AWC アノンサーガ通信      永山


        
#3202/7701 連載
★タイトル (AZA     )  93/ 8/ 3   8:29  (200)
アノンサーガ通信      永山
★内容
これまでのお話
 面倒ですので、ライブラリィの5の595〜582を読んで下さい。(^_^;)
代わりに、この物語に関するマメ知識。
ウェルダン・・・大陸を支配する大国。注.肉の焼き加減ではない。この物語
        を書き始めた当時、永山は肉の焼き加減について何も知らな
        かった。偶然の産物。
ゴウ・・・馬に相当する獣。馬車は『ゴウ車』という。
マニマニ・・・四本足で翼を持つ獣。ゴウの代わりになる。これに車を付ける
       とマニ車となり、チベットのお経道具の一つと同じ名前になる
       が、偶然である。偶然とは恐ろしい。
流血獣(ブラディ)・・・熊と猫を足したような大きな獣。凶暴な性質。
GTH・・・幻覚剤の一種。精製はそれなりの技術を要する。略称G。
エテム、オリックエテム、マーグ、オリックマーグ
・・・長さの単位と重さの単位。各々、こちらの世界でいうメートル、キロメ
   ートル、グラム、キログラムに相当する(1エテム=1メートルという
   意味ではない。それだけ生活に密着した単位だということ)。
キノ、ロッド・・・お金の単位。1000ロッド=1キノ
 その他、石油のような物は自力で発掘されてはいない。火薬技術も未発達。
空を飛ぶ技術もほとんどない(凧程度)。時計は自然の鉱物あるいは植物を利
した物がある。魔術の類は実際にはないが、完全に否定されている訳ではない
(魔術を信じている者・研究している者も割と多い)。数式の記号は、こちら
の世界と同じ。十進法を採用。年月や時間の流れも、こちらの世界と同じ。ア
ルファベットも存在する。
 そして……この物語の住人も、基本的には、頭が一つ、胴体一つに、腕二本
と足二本、指の数は五本ずつで、肉体的強さ・能力も含め、こちらの世界の人
間と(ほとんど)同じです。髪の色や瞳の色などは、おかしなのがいますけど。
 三年ぶりの再開、乞うご期待! と言い切りたいのですが、久しぶりに出会
うキャラクターに動いてもらうのは、ちょっとしんどい……。調子の波に乗る
まで、しばらくの猶予を。
 また、戦法に関する元ネタを『三国志』や『項羽と劉邦』に求めている場合
がありますが、なるべくアレンジしているつもりですので、御容赦を。さらに、
私が勝手に考えた「戦術論」もありますので、そこの部分は鵜呑みされないよ
うに!
 ということで、今回は番外編。外伝にも異聞にもなっていないですが、メイ
ンキャラクター達から何人かを選び、彼らの小さな二つのお話を。
 なお、本編を未読だと、どこが面白いのか掴めないかと思います。できれば、
アノンサーガの1〜13を読んでから、以下のお話に目を通して下さい。
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アノンサーガ/プレリュード      永山
「この問題が解けるかい?」
 ロハンは地面に棒切れで、一つの数式を記した。
 ___________
 |   ________
 |   |   _____
\|X+\|X+\|X・・・=2   (ルートX+ルートX+・・・=2)

「ふーん。この『・・・』は、永遠にこの左辺を繰り返すという意味だね?」
 ルイコウは、日差しを手で避けながら、ロハンに聞いた。戦火を逃れ、この
クローナスに来たこの子は、ロハンと同じ学年で、見る間に一番になっていっ
た。今まで一番だったロハンにとって、内心、面白くない。
「そうさ。今度ばかりは、君も簡単には解けないはずだぜ」
「……」
 得意そうなロハンに対し、ルイコウはしばらく考えている様子だったが、急
に口を開いた。
「Xは2だ」
「ええ? 何でわかったんだ」
 驚きを隠し切れぬ表情のロハン。
「まず、両辺を二乗すれば、こうなる」
 対するルイコウは、事もなげに答えると、地面に式を書いた。
    ________
    |   _____
 X+\|X+\|X・・・=4

「そしてこの部分は」
 と言いつつ、彼は、
  ________
  |   _____
 \|X+\|X・・・

 ↑の部分の下に、線を引いた。
「最初の式の左辺と、意味としては同じだ。永久に繰り返すのだから。つまり、
ここの部分は2と等しい。これに2を代入すれば、二番目の式は、X+2=4
となる。これを解くのはたやすいからね。Xは2と出る」
「ちぇ! また解かれたか。先生に聞いた問題だったから、自信があったんだ
けどな」
 ロハンは、悔しさをあらわにして言った。もし、ルイコウが解けなかった場
合、先生に教えてもらった問題だと言うつもりはなかった。だが、解かれた今
となっては、すぐにでも白状し、自分の頭で考えた問題ではないのだと宣言す
るに限る。それが、少しでも自尊心を保てる……。
「今度は僕の番だね。ここに九頭のゴウがいると思ってほしいんだ。そして、
檻が四つある。檻にゴウを入れたいんだけど、ゴウの持ち主が変わった人で、
それぞれの檻にいるゴウの頭数は、必ず奇数にしたいと言うんだ。この人の願
いはかなえられるかな?」
「なになに……」
 頭の中で問題を繰り返しながら、ロハンはつぶやいた。
「そんな事を言うぐらいだから、かなえられるんだろうなあ。(1,1,1,
6)、(1,1,3,4)……。だめか。待てよ。よく考えると、奇数を四回
足すと、必ず偶数になるぜ。これは不可能じゃないか?」
「さすが、頭の回転は早いね。普通なら、あらゆる場合を試してみて、無理だ
と気付くのがほとんどじゃないかな」
「できないのか?」
「それじゃあ、問題にならない」
「しかし……。どう考えても、できるはずないんだ」
「それが結論?」
「……」
「答を言ってもいいかい? 例えば、こうするんだ」
 ルイコウは、軽い笑みを浮かべると、地面に木の棒で、こんな図を描いた。

 ・−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・
 |                       |
 | ・−−−・   ・−−−・   ・−−−・ |
 | |G G|   | G |   |G G| |
 | | G |   |G G|   | G | |
 | ・−−−・   ・−−−・   ・−−−・ |
 |                       |
 ・−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・

「Gというのは、ゴウの事だよ」
「ちょっと待て。何だ、これ? 檻が三つしかないじゃないか?」
「あるじゃないか。その三つの檻を囲むようにして、四番目の檻が」
「あ!」
 ロハンはそう言ったきり、あっけに取られてしまった。
「三つの檻に三頭ずつで奇数。さらに大きな檻に九頭がいる事になるから、こ
れも奇数。持ち主の願いはかなえられましたとさ」
「だまされたなあ」
「これをだまされたと感じるなら、いつまで経っても、こういった問題は解け
ないかもしれないよ、ロハン。机上の話だけでなく、実際の場合もね」
 ルイコウのこの言葉は、「永遠におまえは、このルイコウには勝てないんだ
よ」と言っているように、ロハンには聞こえた。たとえ、ルイコウにその気が
なくとも……。
「おい! 二人とも何をしてるんだ! 試験があるんだろう。戦の中でも生き
抜くには、高い官位に着いてなくちゃだめだぞ」
 大人の声がした。
 しばらくして、ルイコウはまた、他の土地に移る事になる。

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「おばさん、こんな所で何をしているんだ?」
 ドグマは、しゃがみ込んでいる女性を見つけ、興味を持った。彼は、敵を追
ってこの森を捜索しているのだ。そんな戦場に、普通の女性がいるのがおかし
かったのだ。
「薬になる植物を探しておるんです」
 顔をこちらに向けもせず、女性は言った。
「あー、俺は兵を追って来たんだ。テラエルの兵を見かけなかったか? 小柄
ですばしこい野郎だ」
「兵? 何だ、おまえさん、兵士かい」
 ようやく女性は振り返ると、若者の姿に目を向けてきた。
「ああ。俺はウェルダンのドグマ。テラエルを制圧しに来ているんだ。おばさ
んは、テラエルの人間か? もしそうなら、何の抵抗も隠し事もしないのが身
のためだぜ。無抵抗の平民には手を出すなって言われてるからな」
 ドグマは、上将軍の言葉を思い出していた。初めて一つの部隊を任されたア
スミ国との戦いでは、兵士も民も関係なく、皆殺しにしてしまった事をいさめ
られていたのだ。
「いや、私はリペア族だよ。誰も見ちゃいない」
「リペア族……。ああっ、各地の森を放浪してる薬師の連中の集まりだったな。
それなら、信用してやるか。どうだ、怪我にいい薬はないか?」
「血を止めるのはあるが、消毒のための物は少ないねえ。戦が始まってから、
頻繁に採っているからかね」
「ふむ。止血の薬でいいから、分けてくれないか」
「代金はいただくよ。ほら」
「リペアが金にうるさいのは知ってるさ。ん?」
 薬草を受け取りながら、ドグマは、少し離れた場所に小さな影を見つけた。
「何者だ!」
 ドグマが叫ぶと、影ははっきりと姿を現した。
「この人、誰?」
 影の正体は年端の行かぬ子供、男の子だった。きかん坊らしい目で、ドグマ
を見上げている。
「何でもないんだよ。ちょっと道を聞かれただけさ」
 リペア族の女性が、たしなめるように言って聞かせた。
「ふうん。これ、使える草だよね?」
 子供は突然話を換え、女性に対して言った。
「ああ、これは消毒によく効くんだ」
「向こうに、もっとあったよ。採って来る」
 そう言うが早いか、男の子はかけだして行く。
「元気のいいチビだ。あんたの子供かい?」
「違うよ。預かってるんだ。あんたらのおかげで、親のいない子らが増えてし
ょうがない。さっさとケリを着けてもらいたいね」
 このばばあ、と思ったドグマだったが、そろそろテラエルの兵を捜す方に専
心しなくてはならず、無駄口を叩く暇はもうなかった。
「リペアの何て人だい、おばさんは? ウェルダンがこの大陸を統一したとき
に、訪ねてやるよ」
「ふん、いつの事かね……。まあ、おまえさんも名乗ったんだからね。私はジ
ータっていうんだ」
「ジータ、何年か後、あの時会った若造が、ウェルダンの頂点にいると知って
驚くぜ。それまで生きていろよ」
 ドグマはそう言い捨てると、子供の走った方とは逆に歩き始めた。
「迷わず出な!」
 ジータの声が背中に届いた。迷うなと言っているのは、この森の事なのか、
それとも国の未来の事なのか、ドグマに考えている時間はなかった。
 しばらく森を行き、ドグマは捜していた兵士−−テラエルのブリズガンを見
つけた。一気に潰してやろうと考えていたドグマだったが、ブリズガンが森を
抜け出、見る間に視界から消えたので、思惑が外れた思いで、後を追った。
(森を抜けた? 逃亡をやめて、どうする気だ……?)
 ドグマの疑問に、すぐに答は見つかった。ブリズガンは、ウェルダン国の王
・ワイリの背中をとらえ、死にみやげとばかりに切りかかって行ったのだ。ワ
イリ王は気付いていない。
「王様! 危ない!」
 ドグマの叫び声に、ゴウ上のワイリ王は危険を察知したか、振り向くと同時
に手にした剣で応戦した。
 それでも、ブリズガンの執念はすさまじく、ワイリ王をゴウごと押し倒さん
ばかりの勢いである。
「ウォッーッ!」
 ドグマは自らの刀を抜き、それを槍のようにブリズガンめがけ、投げつけた。
 DOWUUUN!
「王様! ご無事ですか?」
 ドグマがワイリ王に取り立てられるきっかけとなった一件である。そしてま
た、彼が意識下に、ワイリでさえ油断する事があるのだと刻んだ一件でもあっ
た。

−おわり−




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