AWC The Last War   5 − 1  Marchin Muller


        
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The Last War   5 − 1  Marchin Muller
★内容
 第四章 JetAngel2

    1

 西暦二0二四年 一月一日 国連事務総長アドリア ライトは新年の挨拶として
国連軍の戦力の拡充を発表した。それは、従来の兵器から国連軍仕様の兵器への切
り替えを順次進めると言っている。 特に国連空軍の機動力を上げるべく、戦力の
増強を進める事を明言していた。
 そんなとき、また、バルカン半島で紛争が激化していた。国連保護軍が撤退して
一0年、旧ユーゴスラビアは平和とは言えないが一時の休息の日々を送っていた。
それは、国連保護軍が行った武器狩が功を奏しているかの様でもあった。しかし、
民族間の凝りと言う物はそう簡単には消えないものである。このバルカンの地でも
そうであった。ボスニアのムスリム、セルビア、クロアチアの各民族の間の均衡は
武器によってなされていた。そして、ひとたび戦いが始まれば過去のそれとは比べ
られないほど悲惨なものになる… であろうとの予測から、戦いの口火を切るもの
はいなかった。しかし、それまで兵器の供給元であった周辺各国の兵器ブローカー
が ウェルス共同体とMG連合の二大体勢の強化に伴い 変革していた。欧米各国
からその独立を承認されたクロアチア側にはウェルス共同体が、反対に国際的に孤
立している新ユーゴスラビアが後押しするセルビア人勢力にはMG連合が兵器を供
給するようになった。ボスニアへの兵器売却のためMG連合は各種の新兵器を新ユ
ーゴスラビアに大量に持ち込んでいた。そして、ボスニア国内の兵器のバランスは
崩れ始めていた。
 ボスニアの人口構成は、ムスリム,セルビア,クロアチア人が一:四:五の比率
である。ムスリム、クロアチア人は西隣のクロアチア人の国家 クロアチア共和国
の援助を受けている。反対にセルビア人はセルビア人を中心とする新ユーゴスラビ
アの援助を受けていた。
 クロアチア側は 新ユーゴスラビアからボスニアへの兵器の大量持ち込みに神経
を尖らせていた。そして、クロアチア勢力はボスニアへの兵器持ち込みに対し、先
手を撃って新ユーゴスラビアに兵を向けた。
 南隣のギリシャはマケドニア問題の件もあり、戦火が自国へ飛び火するのを恐れ
て国連安全保障理事会に提訴し、アドリア ライトに国連軍派兵を依頼していた。
 ほぼ時を同じくして、ひとたび戦争が始まれば新ユーゴスラビアのコソボ自治州
のアルバニア人が自国へ難民として流入してくる さらには、それを追って戦火が
やってくる。その事を危惧したアルバニアも安全保障理事会に提訴していた。
 国連事務総長アドリア ライトは緊急に対処する必要があると判断した。そして、
ギリシャ軍を国連軍として派兵する事を決定した。そして、ギリシャ空軍のドワイ
ト ライト大佐を国連空軍の南ヨーロッパ地域の指令官に任命した。同時にドワイ
ド ライトは準将に昇進した。彼は国連事務総長のアドリア ライトの弟である。
 ドワイト ライト準将は兄に空軍力の投入を要請した。そして、準将はジェット
エンジェルスも最前線へ投入する事を決めていた。しかし、現在のジェットエンジ
ェルスは編隊長が欠けている。今の状態では、とても前線に投入できる状態ではな
い。そこで、実戦経験があり指揮官の素質も兼ね備えた人物が必要である。残念な
がら、最適の人物とも言えるニトムズ中佐は婚約者を失ったショックと落胆からか
退役していた。 ドワイト ライト準将は適任者を求めて右往左往していた。

    2

 西暦二0二四年一月三日 ジェットエンジェルス二番機パイロット ジャニス
レイリー中尉はクリスマス休暇の余韻を残しながらも空軍基地に戻ってきた。

 ジェットエンジェルスの使用機が更新される。従来のF18から新型機Fe-101ル
ナに代わるのだ。今日は我々にとってその新型機との初対面の日となるのだ。基地
には他のメンバーも揃っていた。
 「ハーイ」
 「ジャニス、休みはよかった?」
 「ええ」
 ジェニファーが話しかけてきた。
 「今度のはF18より小回りが効くらしいわね」
 「乗ってみてのお楽しみね」
 はっきり言って、私は新型機には期待していない。あのウェルス共同体の設計、
製造した機体だからだ。安っぽい作りで、空飛ぶハリボテという感じが払拭できな
い。
 電気バスが格納庫の前に止まった。七機の新型戦闘機Fe-101ルナが並んでいる。
双発のジェットエンジンの上にコックピットが載っている。F16を双発にしたと
言う感じである。そして、エンジン吸気口は優美な曲線を描いている。それは今で
は珍しい鋭角な曲線である。
 「何なのこれは、これじゃレーダー誘導ミサイルの標的になってしまうじゃない」
 木原さとみがエンジン吸気口の曲線を撫でながら浩子に話しかけている。
 「……。リーダー 専門家に聞いたら?」
 二人の話はもっともだと思いながら振り返ると何人かいる整備士の中に責任者ら
しい男がいた。その男は年齢からして大尉くらいだと思う、が間違えたらまずいと
思い こう話しかけた。
 「少佐 なぜ、この機体はこんなに鋭角的なの? 最近の機体には珍しいわね」
  「私は軍の者じゃありません。私はスタインガード、ビル スタインガード、設
計技師です。こいつには最近開発された電波吸収材を使っています。レーダー電波
散乱対策のために形状を気にする必要はないのです」
 この機体はジェットエンジェルスのトレードマークとも言える赤い塗装色ではな
く、真黒に塗装されている。それが電波吸収材であることは予測がつくいてはいた。
 「ウェルスの方ですか どうも有り難う 貴方がこのルナの設計責任者なの?」
 「そうです。 こいつらを可愛がって下さいね」
 三0歳前後だろうか、若いのにかなりのやり手のようだ。
 「たぶん改造の要求を出すからよろしくね」
 「はい、何でもおしゃってください」
 「たのもしいわね」 私は心にもない事を言っている。
 「しかし、私はもう次の新しい仕事が決まっているんですよ」
 「残念ね」
 「いえ、またお会いできるかもしれませんよ」

 「エンジン始動」
 ウィーン  ……  キーーーーーーーン
 高いジェットエンジンの音が格納庫の壁を叩いている。
  「管制塔 離陸許可願います」
 「ジュリエット アルファ 一二番滑走路に移動して下さい。離陸準備願います」
 「了解 ジェットエンジェルス離陸準備します」
 五機のルナが誘導路を走って、滑走路の端に並ぶ。
 「ジュリエット アルファ離陸して下さい」
 「了解 アルファ2 離陸します」
 「アルファ3 離陸!」
 五機は離陸した。
 「ジョーンズ少尉 テスト中は三0000フィートより降下しないように」
 「アルファ4 了解」
 「中尉! 最大速度の試験をしたいのですが」
 「ジェーン 今日は無理しないように、急降下は無しよ」
  「はい、はい JA6了解」
 みんな、無理して落ちなきゃいいんだけど…。ほんと危ないのばっかりだ。マリ
ーがいなくなってからまとまりがない。しかし、私たちは、あの事件のことを忘れ
るように努力しなければならない。 ……どうしたらいいの?…… こんな時 中
佐がいてくれればいいのに……。
 「全機 基地から半径一五0kmの範囲内でテストするように 高度は三000
00から三0000フィート」
 「了解」
 キーーーーーン
 五機は散開して、各々のテスト飛行を開始した。

    3

 そのころ基地にはアーノルド ウェルスが現れていた。ウェルスはスタインガー
ドに話しかる。
 「スタインガード君 順調かね?」
 「はい、見ての通り、順調です」
 「パルサー/Fc-108/の方だよ」
 「ルナの方で手いっぱいで、まだ…」
 「ルナは適当に切り上げてくれ。後は他の者に任せればいい」
 「はい、分かりました」
 パルサー/Fc-108/は単座の大気圏外用戦闘機である。この小型機の他にウェル
スが宇宙戦艦と呼ぶ駆逐艦クラスの戦闘艦の製造に向けて動き始めている。さらに、
小型機の母艦として軽巡洋艦クラスの宇宙戦闘艦の開発も検討段階に入っている。
 ウェルスは何を考えているのか……。 宇宙空間で戦争する? いったい……。
宇宙には、いや、地球の軌道上にさえ人類は定住できていない。現在、大気圏外で
活動しているのは二00人程度だ。
 「会長! 考えを聞かせてください」
 「ん 何かねスタインガード君」
 「宇宙空間に兵器を展開しても、いったい何から守るのですか?」
 「ほう 君はこの計画に反対か」
 「そうは言っていませんが、何故必要なのでしょうか?」
 「それは、私の感だ。ライト兄弟が初めて空を飛んだとき、人々はそれに期待し
たかね。今では飛行機は当たり前のものになっている。無くてはならない物になっ
ているじゃないか」
 「はい」
 「宇宙を自由に飛び回る、今がその時が来たのだ」
 「しかし、それならば兵器ではなく 民間向けの宇宙船を造るべきでしょう」
 「民間か、まだまだ宇宙は民間人のものにはなっていない。飛行機も初期の段階
では兵器として発達してきた。『宇宙空間を駆け巡る』その価値が一般に認められ
るまでは、宇宙船も兵器として発達するしか無いだろうからな」
 「なるほど」
 確かにウェルスの言う通りかもしれない。しかし、本当に 将来、民間にその場
を譲るつもりがあるのか……。空は民間機も飛ぶようになったが、戦闘機は無くな
らない。今でも、いや、将来も空は戦場のままではないか。宇宙も戦場になるのだ
ろうな。人類が……そこにいる限り、そこは戦場となる……のか。
 トゥィーーーン
 振り返ると格納の前に電気バスがやってきて停止した。そのバスから、男が降り
てきた。その男は顎の尖った、三日月顔である。たぶん、ドイツ人であろう。
 ウェルスは、その男が乗ってきたバスに乗り込みバスは出発した。私はウェルス
を見送ると、ルナの飛行データをチェックするため端末のある格納庫の中の別室に
入った。
 端末のモニターを見ながら、各機のデータに目を通す。
 「各機のデータを出してくれ」
 「一番機 計器チェック中、 二番 OK、 三番 ……」
 「なに?」
 キーーーン
 「一番機には 誰が乗っていいるんだ!」
 私は端末室を飛び出した。
 「誰が乗っていいるんだ!」私は一番機の方に向かって叫んでいた。
 「さっきバスに乗ってきた男です」と脇にいた整備員が答えた。
 「なんだって、 止めろ!」
 「大尉と言っていましたが…」
 「何も聞いてないぞ スパイだ!」
 私は一番機の前に走り出た。
 そのパイロットいや、男はは右手を上げた。何なんだ こいつは!
 その男は私の制止も聞かず、エンジン推力を上げた。 キーーーーーン 私は両
手を広げて一番機の進行を押さえていたが やむなく、道を開けた。
 一番機はスルスルと滑走路の方に進み出た。そして、すばやく滑走路の端に出る
と、滑走路を滑り出した。ルナは天を駆け上り、真っ青な上空に消えて行った。






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