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★タイトル (KCF ) 93/ 5/24 22: 6 (112)
掲示板(BBS)最高傑作集57
★内容
(「掲示板(BBS)最高傑作集56」からの続き)
会場内がざわめきました。みんな、不満げに小さい声でぶつぶつ言っていまし
た。
「あーあ。どうせあの3組だろ!」
「そんなの分かりきったことじゃねーか!」
司会者はまだ懲りもせず、話し始めました。
「今日は少ないですね。」
「いつもは7〜8組できるのですが、今日は本当にどうしたのでしょう。」
「今日は日が悪かったのかもしれませんね。」
「それでは、カップルになられた方々の番号をお呼びいたします。」
「番号を呼ばれた方はこちらへいらしてください。」
「まず、最初のカップルは、15番の男性と8番の女性。そして、7番の男性と
25番の女性。最後のカップルは、22番の男性と4番の女性です。」
「番号を呼ばれた方、どうぞこちらへいらしてください。」
3組、6人の男女が恥ずかしそうに司会者のほうへ歩いてきました。その3組
とはもちろん、A男とA子、B男とB子、そしてC男と例の女でした。
こんなのは、2回目のフリータイムの時から分かりきっていたことです。この
6人以外の参加者にとっては、まったく面白くもなんともありません。今までは
比較的平静さを保っていた参加者達は、次第に怒りをあらわにし、騒ぎ始めまし
た。
「つまんねーぞ! 馬鹿やろー!」
「猿芝居はやめろ!」
「金返せー!」
私のすぐ横では、参加者の男と女が口喧嘩を始めました。
「どうしてこのねるとんパーティーは、ブス女しかいねーんだ!」
「あーら、ハンサムな男だってひとりもいないじゃないの!」
「おまえ、よくそんなこと言えるな。鏡で自分の顔を見たことあるのかよ!」
「なによ、この猿男!」
「言ったな、このヘビ女!」
私は喧嘩しているその2人の顔をのぞきこみました。
「猿男」というのはピッタリでしたが、「ヘビ女」というよりはむしろ「ミミ
ズ女」でした。
司会者は、会場内の混乱にはお構いなく、3組のカップルにインタビューして
いましたが、参加者は誰も聞いていませんでした。というよりも、みんなの罵声
やわめき声で聞きたくても聞こえないのです。
これほどつまらないねるとんパーティーなら、嫌気がさしてパーティー会場を
途中で抜け出す人もいそうなものですが、実際には帰った人はひとりもいません
でした。というのは、「最終希望カード」で指名した相手とカップルになれなく
ても、他の異性が自分を指名していた場合、その人のカードをスタッフからもら
えるため、参加者は全員それを期待して最後まで残っていたのです。本当に情け
ない奴らばかりです。
やがて、参加者の怒りは頂点に達し始め、とうとうコップを投げたり、テーブ
ルをひっくり返したりして暴れ出す者がで始めました。
司会者の男と女は、自分の身が危ないと判断したのか、インタビューしていた
3組のカップルを適当にあしらって、どこかへ逃げてしまいました。
スタッフは借りているディスコ会場を荒されてはまずい、と思ったのか、みん
なをなだめるため、マッチングしなかった「最終希望カード」をみんなに配り始
めました。
暴れていたパーティー参加者はこれを見て、自分の席に素直に戻りました。会
場内は再びシーンと静かになりました。みんなは、スタッフが自分の番号札をよ
く見れるよう、胸を張りました。
「第1印象カード」の時は、たったの5人しかカードをもらえなかったのです
が、この「最終採取希望カード」はかなり多くの人に渡されていました。これは、
「最終希望カード」では第3希望まで指名できるため、みんなは第1希望、第2
希望にA男やB男、A子やB子を指名し、第3希望に「すべり止め」として自分
のレベルに落とした異性を指名したものと思われます。
私はといえば、この「最終希望カード」ですらスタッフから1枚ももらえませ
んでした。このカードはかなりたくさんの参加者がもらっていたので、私は非常
に恥ずかしい思いをしました。
私は、スタッフが「最終希望カード」を配り終えるのを確認するやいなや、会
場を逃げるようにして飛び出し、閉まりかけていたエレベーターに飛び乗りまし
た。
エレベーターには、「最終希望カード」を1枚ももらえなかった情けない男が
すでに4人乗っていました。
私が乗り込んでから数秒するとエレベーターのドアが自然に閉じ始めました。
ドアが完全に閉じる寸前、B子とB男がエレベーターの方に向かって走ってくる
のが見えましたが、彼らのために「開ボタン」を押して閉じかけているドアを開
けてあげる人はエレベーター内には誰もいませんでした。
エレベーター内の男達は全員、下を向いていたため、表情をうかがうことはで
きなかったのですが、みんな相当悔しがっているようでした。4人の男達はなる
べく自分の感情を他の男に知られたくないらしく、努めて平静を装ってはいまし
たが、悔しさのためか、体を震わせながら、
「畜生! 畜生!」
と小さな声で叫んでいました。
私は普段、他人と同じことをするのが大嫌いなため、わざと他人とは別のこと
をします。しかし、その時ばかりは、「最終希望カード」を1枚ももらえず、心
底悔しかったためか、他の4人の男と一緒になって
「畜生! 畜生!」
と叫んでいました。
エレベーターが1階に着くまでは非常に長く感じました。パーティー会場は3
階だったので、エレベーターが下りるまでの時間はせいぜい10秒ほどのはずで
すが、私は2分くらいに感じました。嫌な時間は長く感じるものです。おそらく
他の4人の男達もそう思ったことでしょう。
やがて、エレベーターは1階に着いたらしく、ガクンと止まりました。その時、
うつむいていた男達が全員、顔を一斉に上げたのです。
男達は、醜男だらけだったねるとんパーティーの中からワースト4を集めたと
言ってもいいような、どうしようもなく醜い容姿をしていました。
「これじゃ絶対に女にもてねーな!」
と私が思った瞬間、4人の男達は全員、私の顔を一斉に見たのです。
すると、どうでしょう。4人とも、ほっとため息をつき、
「こいつにだけは勝ったな!」
と言いたげな表情をしたのです。
私はその時、自分がねるとんパーティーでの「Z男」であったことに初めて気
付いたのです。
私がねるとんパーティーに参加してから、すでに2ヶ月以上たつのですが、A
子とB子からの電話連絡はまったくありません。また、私のプロフィールが載っ
ている会報を見て、私のところへ連絡をよこした女も現在までのところまったく
いません。
○コメント
今回の作品は非常に長く、PC−VANの掲示板に登録すると、20くらいに分
割して登録しなくてはならないため、面倒くさいのでやめました。従いまして、
この文章に対するメールはありません。
これで終わりです。掲示板(BBS)最高傑作集58をお楽しみに。
フヒハ