AWC ショートショート『ウナ』 ・峻・


        
#884/1336 短編
★タイトル (NFD     )  97/ 8/30  23:27  (102)
ショートショート『ウナ』 ・峻・
★内容

 他のネットで、「うなぎ」のお題でショートショートの競作をし
たときに書いたものです。
 つまらないものですけど。

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    『ウナ』
                ・峻・

−今日は、人気タレントのウナさんのお宅にうかがっています。ウナさん、こんにち
は。

「はーい、ウナでーす」

−ウナさんは、今うなぎに夢中だとか。

「もう、私の生活そのものなの。うなぎは人間と同じくらい知性の高い生き物で、昔
から人間のお友達だったのよ」

−昔から人間の食糧だったのでは。

「ひどーい! こんな愛らしい生き物を、殺したり食べたりするなんて、絶対許さな
い!」

−すみません。

「見て、こんなに可愛いんだから」

−リビングは水槽だらけです。うなぎの首にみんなリボンが巻いてありますけど。

「キュートでしょ。このピンクのリボンがキムタク、ブルーのがトヨエツ、グリーン
は反町、レッドは竹野内……」

−全部、雄なんですね。

「あら、そうね」

−毎朝、うなぎを連れて散歩をなさるそうですが、水から出しても大丈夫なんですか?

「一時間や、二時間は平気よ。知性の高い生き物だから」

−はあ、そうですか。ウナさんがうなぎと街を歩いたら、目立つでしょう。

「うふふ、そうなの。男の人なんかいっぱい寄ってくるの。猫も寄ってくるけど」

−あっ、一匹逃げ出して、床を這ってますよ。

「触っちゃだめ! それ、電気うなぎ」

−うわっ

「番犬の代わりだから」

−危ないなあ。さて、こちらはウナさんのベッドルームです。ここにもうなぎの水槽
があります。このうなぎは、少し形が違いますね。

「うふふ。八目うなぎ」

−おや、これで噂の恋人に精力をつけさせるのかな。ああっ、やっぱりうなぎを食べ
るんじゃないですか。

「食べません! うなぎは人間のお友達なのよ。なめるだけです!」

−なめる?

「あのヌルヌルが効くのよ。彼にこのヤツメちゃんをなめさせてるの。彼ったら目が
血走って、すごいんだから」

−なんだか壮絶ですね。なめる方も、なめられる方も。

「お風呂でーす」

−はい、つぎはバスルーム。ウナさんはうなぎと一緒に入浴するそうです。さっそく
準備していただきました。

「うなぎのヌルヌルがお肌にとてもいいの。今日のお相手は、ピンクのリボンのキム
タクちゃんでーす」

−水着を着たままなのがちょっと残念ですけど、バスタブのうなぎとピチピチギャル。
きわどくて、そそられますね。

「あなたって、オヤジね」

−すみません。

「そこの、小瓶を取ってちょうだい」

−はい、これですか。

「これは、私が二十種類のハーブをブレンドして作った、特製の乳液なの。うなぎも
私もとってもリラックスできるのよ。うなぎは人間のお友達だから」

−わかってます。

「こうやって、お風呂の中で溶かすと」

−へえ、ずいぶん濃い色をしている。あ、いい匂いですね。とても美味しそうな。

「あっ、まちがってタレ入れちゃった」

        (完)




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