AWC  お題>ノックの音がした>裏切り      金剛寺


        
#847/1336 短編
★タイトル (ZWN     )  97/ 8/ 8   1:24  ( 76)
 お題>ノックの音がした>裏切り      金剛寺
★内容

 ノックの音がした。
 金剛寺は机に向かって、原稿を書いていた。締め切りがあるという
わけでもないが、数カ月に1作でもUPしないと、存在が忘れられる
のではと思い込んでいるので、こうして書いているのである。
 「はい。どうぞ」
 そう言うと、ドアの外にいた人物がドア延へと手をかけ、ゆっくり
と回して入ってきた。ドアは少し音を立てて開いたが、金剛寺はそち
らへと振り向きもせず、こうこうとした画面を見つめて、指を動かし
ていた。
 金剛寺は、ドアに向かって背を向けている。部屋は2つしかなく、
風呂とトイレは兼用で、小さいキッチンがある。
 「がんばってるんだ」
 そう声をかけたのは、知り合いの葉月だった。
 葉月も金剛寺と同じ趣味を持つともで、同じこうこう2年である。
葉月は金剛寺と違い、推理ものが苦手で、ファンタジー系を得意とし
ている。
 「締めきりか?」
 金剛寺は振り向かずにそれに答えて、
 「そういう訳じゃぁないんだけど。この頃書いてなかったから、ソ
ロソロかなぁって、思っただけだよ」
 「珍しいこともあるんだな。俺なんか、計画的に書いてるから、ネ
タ切れになっちゃうよ」
 「嫌みったらしい言い方だな〜。邪魔しにきただけなら帰れよ」
 金剛寺は、そう言いながらも、原稿を書いていた。
 「何々・・・。ノックの音がした。 金剛寺は・・・」
 「勝手に読むなよ!!」
 「まぁまぁ、いいじゃないか。なっ」
 「駄目なものは駄目だ!!」
 「ちぇっ!!解ったよ。どうせUPするんだろ?」
 「あぁ。そのつもりで今書いてるんだ」
 「楽しみは後でってか。まぁ、それもいいかな。ただし期待を裏切
るなよ」
 葉月はそう言うと、ドアに向かって歩いていき、静まり返った外へ
と、消えていった。
 金剛寺は静まり返った自室で、書き途中の原稿に、再度集中した。
 それから、3時間ほど経ち、時刻は午前4時を少しまわっていた。
時々、トイレにいったり、夜食を買いにいったりしているうちにこん
な時間になってしまったのだ。
 コンコン
 ノックの音が、再び聞こえた。
 金剛寺は、こんな時間に葉月が来るわけがないと、心の中で考えて
いたが、気にせずに応答した。
 「どうぞ」
 そういう前に、ドアの外にいた人物は、部屋の中へと入ってきた。
ドアを足でけったのか、勢いよく開いた。そして、土足のままで、部
屋の中へと上がってくるようであった。金剛寺が振り替えると同時に
、その人物は頭上から金属バットのようなものを振りおろしてきた。
 金剛寺は床へと落ちた。落ちただけではなく、微妙足りとも動かな
くなってしまった。
 白っぽい絨毯に赤々とした血が広がっていった。その人物はパソコ
ンの画面に映っているものをファイルに「保存」し、フロッピーを持
って、部屋を出ていった。
 
     *     *     *      *

 ふ〜〜〜〜〜〜ぅ
 金剛寺はそう言って、文章を保存した。
 現在時間午前4時10分。
 今度UPする小説の一部分を書き終わった金剛寺は、文章を二度保
存した。
 テキストファイルを綴じ、Windousを終わらせる手続きをし
た。
 その時である。不意にドアをノックする音が聞こえた。
 ーノックの音がした
 金剛寺は頭の中にそのフレーズが過ぎった。
 「はい。どちらさまですか?」
 そう言いながらも、金剛寺は少し恐れ、ドアのカギを外した。
 ドアが開いた瞬間。金剛寺は床へと倒れた。そして、深い眠りへと
ついた。
 赤い血が、玄関へと広がる。今、金剛寺を殴った葉月は、その血に
気をつけながら、金剛寺の愛用しているパソコンへと向かった。そし
て、Windousを立ち上げ、パソコン通信を始めた。
 つい今しがたまで書いていた小説を冒頭に一文を書き加えてUPし
た。
 〜この作品は、亡き金剛寺に捧げます〜と。




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